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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『The Meteors / Wreckin' Crew』

Meteors_WreckinCrew.jpg 1980年代にロカビリーをグランジにしたような音楽が流行したことがありました。サイコビリーです。イギリスで結成されたメテオスはサイコビリーの元祖と言われているバンドで、これはセカンド・アルバム。1983年発表です。

 このアルバム、刺青を入れたサイコビリー好きのクラスメイトに貸してもらいました。サイコビリーって、名前からして過激でサイケデリックなロカビリーと思っていて、すごくワクワクしていたんですが、いざ聴いてみると過激でもサイケデリックでもなくて、ロカビリーそのもの。「サイコビリー」なんていう魅惑的なネーミングに期待し過ぎたのが悪かったんでしょう、80年代にロカビリーをやっていたバンドと思って聴けば、何の問題もなく楽しめたのかも知れません。

 サイコビリーもパンクロックも、「過激だ」「不良でカッコいい」なんて推薦してくれる友人がいて、なんとなくコントラバスのスラッピングがカッコいい気がして興味をそそられたんですが、いざ聴いてみると音楽は普通どころかむしろ保守的、演奏も過激どころか大人しくて刺激の少ない音楽と感じてしまいました。でもパンクは後から色々と知って「なるほど、音じゃなくて行為が過激なんだな。音楽というよりメッセージや人となりをリスペクトするものなのかも」な~んて思ったので、もしかするとサイコビリーも音楽そのものではなく、もっと色んなものをひっくるめて評価されているバンドなのかも知れません。観た事はないんですが、なんとなくライブでは汗を飛ばして熱い演奏をしていそうなバンドな気がしますしね(^^)。


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『Buena Vista Social Club / At Carnegie Hall』

Buena Vista Social Club At Carnegie Hall そして、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのライブ盤です!観客の拍手と絶叫がすごい!盛り上がり方が半端ない!1曲目「チャン・チャン」が流れた瞬間に、僕も「おお~」ってなっちゃいました。いや~、これは良かった!

 とはいえ、よく聴くと、アレンジからなにから、スタジオ録音のアレとほとんどおんなじです。熱狂的なオーディエンスにつられて燃えちゃったけど(^^;)>。僕がジャズやロックが好きだからなのか、ライブではスタジオ盤と違うアレンジやアドリブソロを聴きたいと思っちゃうところがあるのです。昔、人に連れられてパット・メセニーのライブに行った事があるんですが、スタジオ盤と何から何まで同じで、「なんだ、これならCDでいいじゃん。こんなのジャズじゃねえな」と思っちゃったことがあるんですよね。中南米の音楽でいうと、タンゴあたりもキューバ音楽に近いところがあって、アドリブの余地があんまりない音楽ですが、なんとなくライブ演奏ならではのスペシャルなものを感じるんですよね。また、サルサだと、ライブならではの激しいパーカッション・ソロやトランペット・ソロがあったり。ああいうライブならではの見せ場や工夫がもうすこし欲しかったなあ。

 でもこのライブって、普段のライブではなく、カーネギーホールでのお披露目という、このバンドの活動のクライマックスにして最大の晴れ舞台だったのでしょうから、あのCDとまったく同じものを披露するという側面もあったのかも知れません。大好きな1枚である事に変わりないです!


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『Ibrahim Ferrer / Buena vista social club presents Ibrahim Ferrer』

Ibrahim Ferrer Buena vista social club presents Ibrahim Ferrer これもブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに参加したヴォーカリストの作品。イブライム・フェレールです!キューバのダンスクラブで生まれ、キューバ危機の時代を生き、ハバナに移住した人が、人生の晩節に来て世界をツアーするキューバン・バンドに参加。さらにこんな素敵なソロアルバムを作なんて、なんと素晴らしい人生でしょうか!

 このアルバム、バラエティに富んでいて、聴いていて最高に楽しかったです!オマーラ・ポルトゥオンドのCDに比べると、古風な曲の比率が高いかな?それは最初からそうで、1曲目「ブルカ・マニグア」は、アフロ色の強いソン。いかにも古いキューバ音楽という感じでしたが、アルセニオ・ロドリゲスの曲でした。ものすごく優雅で、これぞ南国の楽園音楽という感じなのに、歌われる詞は、重労働に耐えかねた黒人奴隷が山に逃げ込む内容。いや~、中米の島々の音楽って、けっこう音楽のムードと詞の内容にギャップがあるものがありますよね。レゲエにも、すごく能天気な音なのに、詩を見たら「奴らの支配から解放される戦いを起こせ」みたいだったりする事がありますし。カリプソもそうですよね。

 一方で、かなりモダンに感じる曲も入ってました。ため息が出そうなほどロマンチックな2曲目「エリド・デ・ソンブラス」は、ボレロ/カンシオーンとなっていますが、キューバ音楽に明るくない僕からすると、ブラジル音楽のバラードか、アメリカン・オールディーズのバラードのよう。この曲のためだけにこのCDを買ってもお釣りがくるほどの美しい曲でした。なんていい曲と演奏だろう。。

 キューバ音楽に明るくない分だけ、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ関係のCDは、1枚聴くだけでもものすご~く深く楽しむ事が出来ました。ソン・モントゥーノって歌部分と掛け合い部分あるなとか、カンシオーンって「歌」って意味じゃないのかとか、ボレロってキューバ音楽だと2拍子系なんだなとか。この曲はキューバ音楽のクラシックなんだなとか。ブエナ・ビスタ系のCDはどれもピアノが素晴らしいけど、ぜんぶルベン・ゴンサレスだな、とか。子どものころ、プロ野球の選手を覚えたり、少しずつルールを覚えていったりした時の楽しさに似てます(^^)。


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『Omara Portuondo / Buena vista social club presents Omara Portuondo』

omara portuondo buena vista social club presents omara portuondo 2000年発表、キューバの女性シンガー、オマーラ・ポルトゥオンドのアルバムです。僕はブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブで彼女を知ったクチで(あれ?CDには入ってなかったかも)、中古盤屋でブエナ・ビスタ関連のCDを見つけるたびに、片っ端から買うほどにキューバ音楽を好きになってました(^^;)。でも全然詳しくないんですけどね。

 僕が意識してキューバ音楽を聴いたのは、ブエナ・ビスタが最初でした。そこから遡って、楽園時代のキューバ音楽や、ソン大流行のきっかけになったセテート・ナシオナールなんかを聴いていきました。そこから一巡してブエナ・ビスタ関連に戻ってきたのがこのCDでした。エレキベースじゃなくてアンプラグドのコントラバスの「ボーン」という音、キューバ音楽独特のリズム、南国の陽気さだけでなく、どこかで哀愁も感じる音楽…メッチャいいです。キューバ音楽を意識して聴くようになってからまだ数年のニワカだったくせに、「ああ、ここに帰ってきた、懐かしい」と感じた不思議。

 このアルバム、マンボもボレロもグアヒーラもハバネラもカンシオーンもソン・モントゥーノも入ってます。伝統的なキューバ音楽の曲種はひととおり聴けるんじゃないでしょうか。そして…なんというんでょうか、若いころより、齢をとってからの方がこの音楽が心に沁みます。キューバは激動の歴史を歩んだ国ですが、植民地になっても、軍事政権になっても、庶民はどこか優雅に、ゆったりした価値観を失わずに生きてきたんじゃないか…な~んて、音楽で世界旅行をしてるような気分になってます(^^)。これは名盤、大推薦です!


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『スネークマンショー / スネークマンショー海賊盤』

SnakemanShow Kaizokuban スネークマンショーって、本当は2枚のレコードを出して終わりにする予定だったそうです。でも空前の大ヒットでファンの声が押し寄せ、それで発表されたのが1982発表のこのアルバムでした。子どものころ、友だちからカセットを貸してもらって聴いてました。

 このアルバムで好きなコントは、「しもやけ」「ご覧ください」「ジャンキー大山ショー」「はやく寝ましょうよ」などなど。

 「ご覧ください」、これは笑ったなあ(^^)。パーティーのあいさつで女がなにか言うたびに拍手するあれです。「今夜は私のためにたくさんの方にお集まりいただき、本当にありがとうございます」パチパチパチ…「私は、歌が歌えないんです」パチパチパチ…「ギターもピアノも弾けません」パチパチパチ…このなんとも言えない面白さ、聴かないと分からないですね(^^)。

 「ジャンキー大山ショー」は僕的スネークマンショー最高傑作!僕だけじゃなくて、みんなそうじゃないでしょうか。「あんたまがきかくなってまして、こゆくてかまるのです」「まくほんをとんこに貼りつけ」「まろんぱすをさんこに貼っても構いませんが」「まかいあんこや、まらさきむんこは全然いただけませんから」「じゃ、らたまいしゅう」。当時だってこういう事を言っていい風潮だったわけじゃないと思うけど、それをやったからこそ受けたんでしょうね(^^)。

 スネークマンショーはどれも面白かったですが、一番印象に残っているのがこれです。「ジャンキー大山ショー」のインパクトがとにかくすごかった(^^)。僕が子供のころ、スネークマンショーを嫌いな友人なんてひとりもいなかったけど、あの不謹慎なお笑い文化は今どこへ。戦後昭和のお笑い&ラジオ文化、ばんざい!


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『スネークマンショー / 死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対!』

SnakemanShow_SinunohaiyadaSensouHantai.jpg 『スネークマン・ショー』と同じ1981年に発表された、スネークマンショー2枚目のレコードです。これも音楽とコントが半々。でも僕はコント部分ばかり聴いてたなあ。このレコードで好きなコントは、「愛の野球場」「愛のホテル」「どんぐりころころ」「愛の戦場」です。

 「愛の野球場」は、セックスしてるふたりと野球放送がシンクロしていくあれです。「彼のバットを注目してください。少し曲がってるんですね。この曲がり方が気に入って、彼女はもう4年も使ってるんですね」みたいな(^^)。

 「愛のホテル」は、ホテルのラジオCM調のアレです。「そんなクリスタルなあなたに」…ジワるわ、これ。

 「愛の戦場」は、戦場リポーターのコント。「あちらに、いまちょうど弾に当たった方がいらっしゃいますので、早速インタビューしてみましょう。お元気ですか?」内容以上に喋り方が面白いんですよ(^^;)。

 スネークマンショーって、元々はラジオのDJみたいに曲の合間にちょっと話すぐらいだったのが、だんだんコント調になり、そのコントが大受けして、最後にはコント部分が本編を食ってしまった、みたいな話を聞いた事がありますが、この逸脱っぷりはたしかに大受けしておかしくないと思いました。何より子供のころの僕がドツボでしたからね。今だと「こんなのを面白いと言ってるのがダセえ」とか言っちゃう痛そうな人がいっぱいいそうな空気感を感じるので、なかなかこういうのは流行らないかもですね。80年代の能天気な昭和ばんざい。


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『スネークマン・ショー』

SnakemanShow_IsoideKuchideSue.jpg YMO とのコラボ・アルバム『増殖』の翌1981年にいよいよ登場したスネークマンショー名義のレコード第1弾、通称『急いで口で吸え』です。ラジオ番組風の構成でコントと音楽が半々ぐらい、音楽はシーナ&ザ・ロケッツやYMO などが担当。いま聴くとコントと音楽のバランスが良かったんだなとも思うんですが、子どものころはコント部分ばかり聴いてました(^^)。
 このアルバムに入っている超お気に入りコントは、「盗聴エディ」3つと、「はい、菊地です」、そして「正義と真実」でした。

 「盗聴エディ」は、麻○パーディーをしている友人宅に電話をかけて注意を促すも、電話に出た相手がラリってて会話が成立しないというもの。不謹慎です(^^)。「鮎川とシーナがいま博多から来たからね」は、シーナ&ザ・ロケッツの事ですよね。「小林とね、伊武とね、桑原はね、今日はじめてやるんだって」「久保田とサンディはね、夫婦で13万円持って待ってるからね」…いや~爆笑です。

 「はい、菊池です」は、「はい、こちらポール・マッカートニー取り調べ係の菊池です」のアレです。こういうネタをコントにしてしまう所が最高に面白い(^^)。ところで、スネークマンショーのコントの台本って、誰が書いてたんでしょうね。

 「正義と真実」は、選挙演説にちり紙交換がオーバーラップしていくあれ。これ、ネタ自体も面白いですが、「まったくその通りでございます」のセリフの発音が大好きです。

 今だとこういう際どいネタを笑いにかえていくのって、色々と口やかましくクレーム入れる奴がいて難しくなってしまった感がありますが、70年代80年代は間違いなく笑いの本流でした。落語だって、けっこう際どいこと言うので、元々はなかなか言えない事を言葉に出してあげて社会のガス抜きをするという効果もあったのかも知れませんね。そしてこういう不謹慎ネタの笑いって、落語にしろツービートの漫才にしろ、東京のお笑いに多かったです。お笑いというと大阪というイメージですが、関西に住んでいながら、僕は東京のお笑いの方が自分のツボでした。僕の世代的には、スネークマンショー、ツービート、俺たちひょうきん族、元気が出るテレビ…というあたりが際どい笑いをやっていて、どれも自分のツボ。楽しかったなあ。


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『Yellow Magic Orchestra / 増殖』

Yellow Magic Orchestra_Zoushoku YMO とスネークマンショーがコラボしたミニアルバムです。YMO としては3枚目のアルバムで、リリースは1980年…あ~もろにリアルタイムで聴いてたんだなあ、発売年とその時の友達が完全に一致してるわ(^^)。このアルバムを最初に聴いたのは小学生のころで、友人から聴かせてもらいました。音楽も、普段聴いている歌謡曲やテレビの主題歌と違ってすごくカッコよく感じたんですが、子どもの自分にとって面白かったのは、やっぱりスネークマンショーのコントのほうだったなあ(^^)。

 中学生になっていたなら、英語のわからない日本人をからかうコント「Mr.大平」も笑えたと思いますが、小学生では英語自体が分からないので無理。やっぱり爆笑したのは「ここは警察じゃないよ」「林家万平」「若い山彦」でした。60年代中ごろから70年前半に生まれた日本男子なら、この3つは間違いなく聴いた事があると思いますが、僕もそのひとり。毎日飽きもせず学校で友人たちとスネークマンショーのネタを話し続け、セリフを全部覚えちゃうぐらい夢中になりました(^^)。楽しかったなあ。

 これが僕のスネークマンショー初体験。まだ子供だったので自分でレコードを買う事は出来ませんでしたが、友だちとカセットを貸し借りして、何度も何度も聴いたものでした。いま聴いても、やっぱり面白いっす(^^)。


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『Milton Babbitt: Piano Works | Robert Taub (p)』

Milton Babbitt_Piano Works_Robert Taub 1986年発表、ロバート・トープ演奏によるミルトン・バビットのピアノ作品集です。バビットにとってロバート・トープは特別な人。数学者でありかつトータル・セリーを用いて音楽を作っていたバビットの書く曲が簡単であるはずもないですが、それにしたって演奏不能レベルに難しかったもので、とうとうバビットは電子音楽で作曲する事に。でもバビットは決して電子音楽にしたくてしたわけではなかったようで、バビットの書く難解な曲を苦もなく演奏してしまうトープが出てきたことで、バビットは「おっしゃ!」と、またアコースティック楽器のための作曲に戻ってきたそうです。

 僕がこのCDを買ったのは、「ピアノのための3つの作品 Three compositions」(1947-8)が入っていたからでした。この曲、トータル・セリー登場の嚆矢となるぐらい重要な作品と言われてるんですが(だって1948年でトータルセリーですよ、すごくないですか?)、演奏が難しいからか、録音が全然きけなかったんです。それが録音されたもんだから、現音好きでピアノでもなんとか食べていければ…と思っていた僕みたいな人間が飛びつくのは当然。で、いざ買って聴いてみたら、弾けるどころか演奏の表現も見事で、まるで高橋アキさんの演奏のように正確無比&冷たくも鋭い表現、みたいな感じでゾクゾク。いや~作品の前に演奏にひれ伏してしまいました。すげえ。。

 でもってこのCDですが、作品発表順に9曲がずらっと並んでいました。凄いと思ったのはやっぱり演奏。たぶんスコアにも指定されていない方法で(というのは、僕はどの曲もスコアを見てないんですが、他のバビット作品の録音から察するに、たぶんスコアにそういう事は書かれてないだろうと思いました)、曲にデュナーミクや速度の変化をつけて、音楽的な起伏がつけられていたのです。こうした音楽的に優れた演奏のおかげで、妙に機械的でアンチクライマックスに感じていたバビットの曲が躍動して、感じ入ってしまいました。ぜんぜんスコア自体に触れていない感想で申し訳ないんですが、僕の感想は本当にこれ。

 シェーンベルクの「5つのピアノ曲」を見事に躍動させたのもグールドの演奏でしたし、難解一辺倒で硬質だった無調やセリーの音楽が、80年代ごろから音楽的に演奏されはじめ、音楽が躍動していったという歴史があるように感じます。バビットって、ともすれば「トータル・セリーの始まりを作った人」ぐらいの価値だけでかたをつけられそうな人な気がしますが、後半に進んで調的重力を感じさせる曲は実に素晴らしい響きだったし、さらに80年代以降の無調音楽を見事に音楽的に表現する演奏の中に入ると、なかなか素晴らしい音楽になっるんだと思いました。これもいいレコードでした!


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『Milton Babbitt: All Set | Boston Modern Orchestra Project』

Milton Babbitt_All Set アメリカの現代音楽作曲家にしてトータル・セリーの走り、そしてピッチクラス・セット・セオリーで知られるバビットのCDです。2013年リリース、演奏はボストン・モダン・オーケストラというわけで(でもフルオケでの演奏は無かったかな?)、バビットのラージ・コンボぐらいのサイズまでのアコースティック音楽を聴く事が出来ました。いろんな時代の作品が収録されていましたが、僕の狙いはバビット初期作品の中で有名な「Composition for Twelve Instruments」でした。初期作品では、本当は「Composition for Four Instruments」を聴きたかったんですけど、現代音楽系の辞典にはよく出てくる曲なのに、録音に出会った事が無いんですよ。。ところが、狙っていた曲以外の曲に感動させられたのでした(^^)…まあ、世の中そんなもんですよね。本物のミュージシャンって、若い時の方が注目を集めたり世評が高かったりするけど、実際の音楽は晩年になるほど良いという事が往々にしてありますし。

 「Composition for Twelve Instruments」(1948) は、12音列技法を使っていたバビット初期作品の中で、「Composition for Four Instruments」と並んで名高い作品です。使われる楽器はフルートをはじめとした管が6、ハープ、チェレスタ、弦4。楽器がいっぱいあるので音色がカラフルな分だけ楽しめましたが、相当にアンチクライマックスな音楽なので、けっこう途中で飽きちゃった(^^;)。音列技法を使ったからと言ってそうなるとも限らないのですが、バビットの作品はアンチ・クライマックスな所がちょっと僕には合わないのかも。

 All Set」(1957)。え、なにこれ、ジャズ?そこまで無調にも感じないし、かといって現代音楽的な新しい響きや様式への挑戦は感じるし、メッチャかっこいいじゃん!これ、どういうシステムで書いたか分かりませんが各楽器が同じ音を3つ連続させる所からフレーズが始まる事、それがずれるので他の楽器が追いかけるように聴こえる事…こうなったら、和声面じゃなくて旋律面から調的なものを感じたとしてもおかしくないですね。同様に、打楽器が入る事で小節線やリズムが整理されたところも、僕程度の音楽能力しかない人にはわかりやすくなった理由かも。

 「Correspondences」(1967) は、弦オーケストラとシンセサイズド・テープのための音楽。最初の響きがむっちゃカッコいい…やっぱり魅力的なサウンドを創るには無調を無個性な方面に発展させてはダメで、伝統的な調音楽の枷を超えて拡張していく方向で使うべきなんじゃないかと感じました。同様に、生楽器の響きがやっぱり素晴らしかったです。これって無意識にも強弱や音色に表情をつけていくから、音が表現的なものになるからじゃないかと。バビットって、あまりに演奏が困難だから電子音楽に進んだけど、難しいスコアを演奏できるプレーヤーに出会ってからは生演奏に戻したって聞いた事がありますが、バビットさんだって音が豊かに響いてくれるんだったらそっちの方が嬉しかったんじゃないでしょうか。
ただし、やっぱり楽式的な展開していくようには聴こえずずっと同じ、みたいな所は僕的にはずっと聴いている意義を感じられなかったです。

 「Paraphrases」(1979)。10楽器を使ったアンサンブル作品です。これはタイトルが作曲意図をあらわしてますね(^^)。作曲年代が違いますが、これも「Correspondences」と同傾向の印象を覚えた曲で、響きが見事、でも展開が冗長に感じました。それにしてもバビットが創るこういう無調と調の中間ぐらいのゾクゾクする響きって、もしかして楽器ごとに配列の違う12音を指定して、その縦線を揃えていくつかの調的な響きを作ったんじゃないか?な~んて感じたんですが、実際にはどうなんでしょう。これ、スコア見てみたい…。

 「The Crowded Air」(1988)、こっちは11楽器を使ったアンサンブルで、「Paraphrases」に似た印象。これも素晴らしい響きに密な構造でしたが、短い曲だった事もあり、やっぱり時間軸上での展開が乏しいかな、みたいな。

 「From The Psalter」 (2002) 。ソプラノと弦楽アンサンブル(オケかも)のための作品でした。「Vision and prayer」が似たような音楽でしたが、もしかするとあれを上回ってるんじゃなかろうかというほどの素晴らしさ。

 正直に言うと、若い頃は刺激的と感じていた12音無調音楽も、いまは「またこれか、ある時代の現代音楽ってワンパターンすぎるよな」と感じ始めている自分がいます。それは現音系の電子音楽にも言えて、昔は刺激的な音と思っていたのが、今ではむしろ表現に乏しい音楽と思えたり。CRI 制作のCD『Milton Babbitt』の前半や、このCDの最初の曲あたりもそう感じてしまいました。ところがバビットの曲は後年になればなるほど調的なウェイティングも演奏面での表現もついてきて、とても素晴らしい響きを持った音楽になっていったと感じました。時間的展開に欠けるところはやっぱり僕の趣味ではないんですが…。
 それでだんだん分かってきた気がしたんですが、バビットって最初は数学の統計的な無調から始まったけど、音にウェイティングをかけることである意味での調的な感覚を曲に与えて活路を見出したんじゃなかろうかと思いました。僕が今までに聴いたバビットさんの音盤の中では、これは1~2を争う好みのCDでした。これともうひとつあげるとすれば…それはまた次回!


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『Milton Babbitt | The Group for contemporary music, Alan Feinberg (pf), Betthany Beardslee (soprano)』

MiltonBabbitt.jpg 1988年にCRIが発表した、アメリカの現代音楽作曲家ミルトン・バビットの作品集です。バビットは数学者でもあって、セリー音楽を発展させた厳格なトータル・セリーに踏みこんだ最初の人とも言われています。バビットの編み出したMusical Set Theory(ピッチクラス・セット理論)という作曲理論は有名ですが、残念ながら僕はこれを勉強していません。トータル・セリーへの踏み込みという意味ではブレーズあたりより早かったと思うのですが、僕がそのへんの音楽の勉強をしていた90年代前半の日本では、バビットさんの音源はなんとか聴けても理論はほとんど紹介されていなくて、音楽辞典やディスクレビューの端っこにその作曲理論の概略がチョロっと書いてあるだけ、みたいな。ピッチクラス・セット理論って、12音音楽であっても音列技法ではないんですよね、たしか。今ではこの技法の研究本の邦訳も出ているのですが(『無調音楽の構造: ピッチクラス・セットの基本的な概念とその考察』アレン・フォート著)、中古で安く出たら買おうと思っているうちに数万円の値がつく高額になってしまいました(^^;)。。

 このCDの背表紙に実際に記されているタイトルは「Milton Babbitt」のみ。いろんな時代の色んな編成のバビットの作品が収録されていたので、きっと「バビットの音楽を時代や編成の偏りなしにザックリ知りたい人のために」みたいな制作意図があったんじゃないかと。どの時代にせよ、バビットの音楽は無調的ですが、後期(1980~)はセリー的な構造の中にも調を感じさせたものが目立っていました。こういう表現が正しいかどうか分かりませんが、グルッペンとかフェルトと言われた技法に近いのかな?
 一方、より無調的だった初期(~1960)は12音列技法系列の技法とそれを自分で数学的に発展させていた頃。中期(1960~80)は電子音楽に踏み込みながら生楽器との可能性を探った時期みたいです(『作曲の20世紀』第2巻の水野みか子さんによる)。

 このCD、ざっくりいうと4つのパートに分かれていました。第1は中~後期の合唱曲、第2は全期間のピアノ曲、第3は後期の室内楽、第4は中期の電子音伴奏の歌でした。

 「An Elizabethan Sextette」(1979) は6パートに分かれた無伴奏合唱。バビットってガチガチのセリー主義者で無調の徒みたいな人かと思ってましたが、これはかなり調を感じる曲でした…まあでも世間一般的に言えば無調か(^^)。最初に聴いた時はピンとこなかったんですが、でも瞬間ごとの構造性は相当なもので、こういうところは理論ガチガチに作ったものはそれ相応の強度が生まれるなあと感心しました。だって、これだけ聴き慣れない音でも構造美を感じるんですから。

 ピアノソロ作品は、 7曲目から11曲目までの5曲。うち4曲は長くても2分半というショート・ピース、残りの1曲「About Time」は12分ほどの曲でした。全体として言えば、演奏(ピアニストはAlan Feinberg…よくこんな曲弾けるな、すげえ^^;)や録音が良かった事もあるのでしょうが、細密画のように綿密に出来ていて感心しました。でもこれって演者の巧みな演奏表現に助けられたところもあったかな?そうじゃないと、ぜんぜん音が音楽的に響いてこなかった気も(^^;)。
 ピアノソロの中でも特に面白く感じたのは、「Minute Waltz (or) 3/4 ± 1/8」(1977) 「It Takes Twelve to Tango」(1984) 「Playing for Time」(1977) で、これらも例によって調と無調の間ぐらい。もしかして音列技法ではない12音音楽のピッチクラス・セットって、こういうものを生み出す理論なのかな、と思ったり…やっぱり勉強したかったな。。

 「Groupwise」(1983) は室内楽で、編成はviolin, viola, cello, piano, flute(フルートはピッコロやアルトフルートと持ち替え)。聴いた感じだと、恐らくフルートが主の曲かも。

 「Vision and prayer」(1961) は、電子音とソプラノによる曲でした。詩はディラン・トーマスの手によるもの。60-70年代のバビットといえば電子音楽にも走った時期ですが(アコースティック楽器のための曲も、この曲みたいに電子音とアコースティックの共存した曲もあります)、その理由は、あまりに厳格なセリー音楽に走ったもんで演奏困難になり、だったら電子音楽に走っちゃえ、みたいな(^^)。
 この曲の電子音、僕にはピアノの代用のように聴こえました。そして、なるほどこれをピアノで演奏しろと言われたら難しすぎてみんな演奏しないだろうな、みたいな(^^;)。面白いのは、せっかく電子音を使ったのに、音色やダイナミクスにはまったく無頓着だったことで、バビットさんって音高と音価にしか興味がないんじゃないかと思ってしまいました。それでも面白く感じられたのは、ソプラノのBetthany Beardslee という人の表現力が高いから。シェーンベルク『月に憑かれたピエロ』のシュプレヒシュテンメみたいに歌われるところもありました。やっぱり電子音楽って電子音だけだと限界ありますね。

 全体を通して思ったのは、さすがに瞬間ごとの音の組織化はかなり堅牢、ここは今の作曲にも大いに参考にできると思いました。一方で、大きなクライマックスがあるわけでも、ある調的重力に一気に傾くわけでもないので、頭で考えただけの音楽すぎて感覚的な歓びが薄いな、とも思ったり。最初はこういう所から始まって、途中で一気に同じ音の連打になってクレッシェンドしていったりしたらすごくカッコよくなるんじゃないかな、な~んて思ったりもしましたが、そもそもそういう人本主義的なものとして音楽を捉えてないんでしょうね。だから、「音楽とは何か」という根本的なところで、数学的な音楽に同調できない人には合わないだろうし、構造への挑戦みたいな所に魅力を感じる人には面白い音楽になるかも…それだってかなりのソルフェージュやアナリーゼの能力がないと、初期や中期前半の音楽はおぼろに予感するぐらいしか分からない気はします。音楽能力の低い僕が気に入った曲は後期寄りのものばかりだったのは、そういう理由なのかも。それでも最初は「難しい音楽だな」と思いましたが、引っかかるものはたしかにあって、「あれ?これってどういう事だろ」と2回3回と聴けば聴くほど好きになっていく自分がいました。
 「Vision and prayer」をバビットの最高傑作にあげる人もいるぐらいだし、いろんな時代のいろんな編成のバビットの音楽が聴けるので、バビットを1枚で済ませたい人には最善のCDじゃないかと!


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『石川さゆり / 二十世紀の名曲たち 第8集』

IsikawaSayuri_20seikinoMeikyokutachi 8 石川さゆりさんの「二十世紀の名曲たち」シリーズの第8集は、なんと10曲中4曲が若草恵(わかくさとおる、男性です)アレンジによるチェコフィルのフルオケ!これが素晴らしいアレンジに演奏に録音(プラハで録音したらしいですが、音がメッチャいい)!!とにもかくにもこのチェコフィルの演奏と録音の素晴らしさがとんでもないもんで、本シリーズで僕的イチ押しはこの第8集です。他にも、ビッグバンド入りの曲、タンゴ5重奏団伴奏曲など、とにかく金のかかったCD。これで採算が合うとは思えないので、チェコフィルのものは、さゆりさんがプラハ公演か何かをして、そのついでに録音したんじゃないかな…。

 ただこのアルバム、さすがに8集ともなるとネタ切れになってきたか、選曲やら何やらに問題を感じなくもなかったです。
 ひとつは、石川さゆりさんに合わない詞の曲のセレクト。吉田拓郎に井上陽水にタイガースと、このシリーズにしては60年代後半~70年代という新しめの曲が多く取り上げられたんですが、この詩の世界観がどうにも石川さゆりさんに合わないと感じました。拓郎さんの「旅の宿」なんて、貧乏学生の汚い男が歌わないと様にならないだろ、みたいな。
 キー合わせに失敗したと思える曲も。特に残念だったのは「八月の濡れた砂」で、これは好きな曲でもあるし、詩の世界観もさゆりさんに合ってそうなのに、さゆりさんの声のおいしい部分にキーをあわせてない…。ついでに言うと、選曲もあるのかも知れないけど、全体的にさゆりさんは歌をそのまま歌ってるだけで、表現を決めないまま録音に入った感じがしました。第2集での歌唱は素晴らしかったのになあ。。

 これだけの弱点がありながら、チェコ・フィルの演奏と録音が素晴らしくて、すべての弱点は帳消し。音の素晴らしさに圧倒されてしまいました、最近のクラシック録音でもここまでいい音の録音って少ないのではと思うほどの素晴らしさ。それも若草恵さんによる管弦アレンジがあったからこそ、オケがいい音で鳴るんでしょうね。若草さんと言えば研ナオコ「かもめはかもめ」(これがまた素晴らしい音なんですよね^^)や美空ひばり「愛燦燦」の管弦アレンジが有名ですが、これはそれらを凌ぐ名編曲ではないかと。


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『石川さゆり / 二十世紀の名曲たち 第5集』

IsikawaSayuri_20seikinoMeikyokutachi 5 石川さゆりさんが日本の20世紀の名曲をカバーする企画ものシリーズの第5集です! アレンジは2曲が和田弘さん、1曲がスカパラ、残りはすべて宮川彬良さんでした。カバー集ってアレンジが重要なので、ここに期待!

 と思ってたんですが、肝心の宮川彬良さんさんのアレンジがちょっと…。奇抜な事をしろというわけじゃないけど、アレンジの方針を決める詞や時代性を考慮できてないように感じて、つまらなかったです。小唄も取り上げてましたが、そういう遊女たちがいた時代考証とか、そういう音楽の何を聴かせるかとか、今の時代とのギャップに何を見せるかとか、それが聴こえてこない、みたいな。レトロな音楽集を新録で出すなら、そういう所こそ大事じゃないですか、それを音だけ取り出されてもなあ。

 というわけで、アレンジよりも詞に魅せられたものが多かったです。「南国土佐を後にして」なんて、坊さんが普通に街を歩いていて、クジラが実際に港から見えて、みたいな詩なんですが、捕鯨を実際にしてた時代を想像するだけで楽しくなってしまいました(^^)。
 「夕焼けとんび」では、東京に働きに行ったお兄ちゃんを思って、自分の上を飛んでいるトンビの視点に立てば東京が見えるかなと思ったりして…兄弟がいっぱいいて、大人になったら集団就職していた時代なんですね。
 「恋はやさし野辺の花よ」は、詞も曲も合わせていわずとしれた大名曲ですが、これって大正時代の曲なんですね。そして大正も20世紀なのか…そういえば『はいからさんが通る』でもこの曲って歌われていた気が。なるほど、女性の地位向上が詩にもあらわれていると感じました。

 詞以外で感じたのは、こんな事でした。小唄端唄のたぐいは、選曲がベタすぎてダサい…。あと、やっぱり市丸さんや藤本二三吉とかの本物を聴いてきてしまったせいか、やっぱりこれはニセモノだな、みたいな。
 男声コーラスの和田弘とマヒナスターズの絡んだムード歌謡な音楽は、良くも悪くも自分たちの得意をやったように聴こえました。こういうエロい昭和ムード歌謡って、受験戦争に勝って役人や一流会社に入ったけど、女関係はてんでダメなオッサンたちに夢を見せるというだけの音楽だったんじゃないかと思ったりして(^^;)。そういう事を含めて、昭和にこういうおじさん文化があったと感じられたのは良かったです。
 ジャワ民謡「ブンガワンソロ」は、選曲に唸らされました。そうか、ジャワって日本が植民地化した地か。それも20世紀の日本の歴史なんですね。自然崇拝的な多幸感にあふれた音楽だけに、逆に切なかったです。

 というわけで、詞や選曲に良いと感じた部分もあったけど、総じて音楽がつまらないと感じてしまいました。わけてもアレンジがね。。第2集での前田憲男さんのアレンジは、どういう時代性を感じさせるかまで考え抜いたような素晴らしさだったのになあ。宮川彬良さんって僕あんまり好きじゃないんですよ、色々と薄っぺらく感じてしまって、それがヘアスタイルや顔にもあらわれてるな、みたいな。お父さんの宮川泰さんの宇宙戦艦ヤマト組曲は素晴らしかったけどなあ。


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『石川さゆり / 二十世紀の名曲たち 第2集』

IsikawaSayuri_20seikinoMeikyokutachi 2 石川さゆりさんが続けている、古い日本の名曲を歌うシリーズの第2集です。内容は、演歌、軍歌、唱歌、戦後昭和歌謡とさまざまでした。しかし石川さゆりさんって美人ですね。私的演歌界4大美女は、石川さゆり、伍代夏子、藤あや子、長山洋子さんですが、これってあの演歌特有の「あなたに尽くします」的な謙虚な詞もプラスに働いている気が(^^;)。

 編曲が前田憲男さんだったことが大成功で、ビッグバンドが伴奏を務める事の多かった戦後から60年代あたりまでの日本歌謡曲の雰囲気が実によく出ていました。僕が若い頃は、そのあたりの日本の歌謡音楽ってカビ臭くダサく感じて苦手だったんですが、いま聴くと昔の日本の光景が蘇るようで、ジワッと来ました。神戸もそうだけど、東京でも東京駅とか上野動物園とかって、けっこう昭和レトロな雰囲気を感じません?あんな感じ。
 レトロ感は、ビッグバンド・アレンジの目立つ編曲面だけでなく、詞にも感じました。「明治一代女」の「人目忍んで小舟を出せば、拗ねた夜風が邪魔をする」なんて言うのは、もうほとんど端唄小唄の世界観ですよね、う~んこれは風流です(^^)。他では、「銀座カンカン娘」「長崎物語」「東京の屋根の下」あたりに、昔の日本の市民の心情がにじみ出ていて、しびれました。

 そして、歌。あれ、こんなにうまい人なのかとゾクッと来ました。曲によって謡い回しが変わるんですが、僕的に良かったのは民謡演歌調のこぶしをまわす歌唱。「明治一代女」は戦後昭和歌謡というより、戦前の民謡とミックスした演歌のよう、曲やアレンジはタイプじゃなかったんですが、コブシが回りまくるさゆりさんの歌が凄かったです!石川さんって元々はアイドルでデビューした人ですよね?それがここまでになったんだから、師匠の二葉百合子さんが教え上手だったのかも。そういえば、藤あや子さんも二葉百合子さんに師事してましたよね。そうそう、二葉百合子さんについては、いつかまた書きたいと思います…書く暇あるかなあ(^^;)>。

 今の日本の歌って洋楽の物真似ばかりになってしまったじゃないですか。それは僕が若い頃もそうだったけど、歳をとると「一体僕たちって何なんだろうな」というアイデンティティの問題も感じるようになったりして、日本的なものを探している自分がいたり。自分が生まれてもいない時代の音楽ですら懐かしく感じる、ふしぎな郷愁に駆られるアルバムでした。


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『石川さゆり / 特選集~越前竹舞い』

IsikawaSayuri_EchizenTakemai.jpg 1991年にリリースされた、石川さゆりさんのCDです。これがベスト盤かどうか分からないんですが、演歌の人って昔は「シングルを売ってラジオでかかってカラオケで歌ってもらってなんぼ」みたいな所があったので、そもそもアルバムという概念が薄くて、CDやLPはみんなシングルの順列組み合わせみたいになっちゃったりするんですよね。僕がこのCDに手を出したのは、CMで流れていた「ウイスキーが、お好きでしょ」という曲が好きだったからでした。

 このアルバムに入っている有名曲と言えば、シングルにもなった演歌調の「夫婦善哉」や「天城越え」でしょうが、この2曲はどうもピンと来ず。「夫婦善哉」は「何もなくても心は錦」とか、なんだか貧乏くさかったし(^^)、「天城越え」はいかにもご当地ソングといった風で地名を連呼するばかりで、「あなたを殺していいですか」なんて詞も狙いすぎてクソダサく感じていました。
 そんな中、僕が本当にいいと思ったのは、そういう定型に嵌めただけのハートのない演歌調の曲じゃなくて、フォークやムード歌謡調の歌でした。中でも「ごめんネYuji」という曲の歌詞が出色で、これには胸を打たれました。作詞は星野哲郎さん。

 ごめんねYuji、もう私、あと戻りはできないのよ
 軽い女とでも笑ってよ 待ってる人がいるの
 あなたとの事も知ってて愛してくれるの
 約束したのよ、今夜の船でそっちへ行くと
 ごめんね、もう私、戻れない


 ああ、もうこれは…。お互い好きで一緒に暮らしてたけど、若かったり、仕事が安定しなかったりで結婚できないままズルズルいった関係が、こういう終わり方をするのってありますよね。同系統の詩に、松山千春さんの「恋」がありますが(曲想もアレンジも似ているので、もしかしたら参考にしたのかも)、僕的にはまったく他人事に思えなくて、心に刺さってしまいました。Hちゃん、7年も一緒に住んだのに別れちゃったよな。今も元気にやってるのかな…みたいな。

 このCD、ベスト盤にしては「津軽海峡冬景色」も入ってなくて中途半端な代物ですが、「ごめんネYuji」が入っているだけで値千金。「ごめんネYuji」って、他の石川さゆりさんのベストにもなかなか入ってないんですよ。。


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『Volnitza Ensemble from Rostov / Russia: Cossack Songs』

Russie Chants cosaques ensemble Colnitza de Rostov これもロシアのコサックの歌を集めたCDです。レコード『The Don Cossacks Of Rostov / Cossack Folk Songs』と似て、ほぼすべて無伴奏合唱で、舞曲ではタンバリンやウクレレやアコーディオンといった伴奏楽器が入ってくる、みたいな。合唱はVolnitza Ensemble from Rostov(Ensemble Volnitza De Rostov)という合唱団でした。これまたロストフのグループですが、ロストフってコサックの生き残りがいたり、合唱団がいっぱいあったりするのでしょうか。

 録音がややデッドだから余計にそう感じるのかも知れませんが、レコード『The Don Cossacks Of Rostov / Cossack Folk Songs』より編成はかなり小さめに感じました。でも両者の音楽はかなり近くて、僕が勝手に分類するなら、正教系系統の音楽、民謡系の音楽が発展して合唱音楽と化したもの、お祭りか何かのための舞踊音楽、この3つに大別できるのではないかと思いました。
 そして、その舞踊音楽の中に僕が思っているコサック・ダンスのうしろで流れていそうな、あのどんどんアッチェルしていく舞踊音楽も入っていました(M11「it is time for marriage」はアコーディオン伴奏、M25「she went down the road」はタンバリン伴奏)!こういう曲は対外的に作られたものではなく、実際にコサックが持っていた事が分かって、なんか安心しました(^^)。

 違うグループの違うレコードを聴いてどちらにも似たような曲が入っていたので、これらはレコード用にお化粧された音楽ではなく、ロシアのコサックは実際にこういう合唱音楽の文化を持っていたという事なんでしょうね。『The Don Cossacks Of Rostov / Cossack Folk Songs』の方が壮大、こちらのCDの方が村の小さなお祭りでのパフォーマンスといった感じで、どちらも良かったです。コサックって武家コミューンなので怖いイメージがあったんですが、いざコミューンの中に入ってみると宗教心もあり、楽しみや優しさもあったんだろうと思ったりして、ほっこりしました(^^)。


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『The Don Cossacks Of Rostov / Cossack Folk Songs』

The Don Cossacks Of Rostov Cossack Folk Songs 昔、ウクライナロシアにはコサックという人たちがいたそうです。これは人種や民族というよりも社会階層みたいなもので、軍人というか、日本に例えれば徳川家や柳生一族みたいなものをイメージすれば近いのかも。共同体だったそうで、時の政府や自治体に雇われて軍隊的な任務を果たしていたそうです。その中でもかなり大きな共同体を形成し、ロシア帝国に使えたのがドン・コサックだそうです。
 1975年リリースのこのレコードは、そんなドン・コサックのなかでもロストフ(モスクワの近くにある古都)にいる人たちが持っていたフォークロアを集めたもので、Anatoly Kvasov という人が音楽監督を務めて、かなりハイレベルな音楽に仕上げていました。

 無伴奏の合唱音楽、管弦楽伴奏の合唱、いくつかの楽器を伴奏につけた舞踊曲、軍楽的なものなどが入っていました。
 無伴奏合唱は正教系の宗教曲の影響(か、それそのもの)もありましたが、合唱の技術がすごいうえに独特のスラブ的なものを感じる民謡っぽいものがありました。アレンジもあるんでしょうが、民謡といったって、ブルガリア民謡をもう少し正教系のが合唱音楽に近づけたような壮大さで、これがとんでもなく素晴らしかったです。合唱は、もうそのへんの合唱団ではかなわないほどの素晴らしいパフォーマンスで、やっぱりウクライナより東の地域のスラブ系の声楽のレベルはとんでもないなあ、みたな。ビックリしたのは、ブラームスがアレンジした曲もちらほらあった事。これがまたすごいんですよね、さすがだなあ。

 一方、独特に感じたのはA面に入っていた舞踊曲と軍楽的な音楽で、このへんの音楽は僕がイメージしている戦闘民俗コサックに近いものでした。ほら、前田日明がリングスという団体で、グルジアとかロシアとかウクライナから、軍隊格闘技をやっていたすごい人たちを日本に呼んでいた事があったじゃないですか。蹲踞したまま左右の足を素早く交互に出すとか、ああいう事を平然とやっちゃう兵法に通じたちょっとやくざな人たちが持ってる音楽、みたいな。そういえば、このレコードのジャケットも、やさぐれた男たちが集まって博打に興じてる雰囲気ありますよね。。

 コサックといえば、僕が子供のころから何となく見ていたのはコサック・ダンスで、あの陽気な音楽とはかなり趣の違う音楽だと思いました。僕は他にもコサックの音楽のレコードを聴いた事があるのですが、意外とあのアコーディオンで伴奏する東欧の舞踊音楽的なコサック・ダンス的なものには出会わないんですよね。コサックって、大きな町の数だけコサックの共同体があったらしいので、色々あるのかも知れませんね。

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『Victor Mishalow / Bandura -Ukrainian Instrumental Music-』

Victor Mishalow_Bandura ウクライナの楽器といえばこれ、ハープとリュートとダルシマーを混ぜたような楽器、バンドゥーラです!フィンランドにもカンテレという似たような楽器があるし(アッティはツィター族の楽器)、このへんではハープ的な楽器がメジャーなのかも知れません。どう見たって演奏が難しそうですけどね(^^;)。CD『Ukraine: Traditional Music』を聴いて、この楽器にが全興味を持った僕は、中古盤屋さんでこのレコードを激安で発見。プレーヤーさんをまったく知らなかったのですが、バンドゥーラのレコードというだけで即買いでした。この手のレコードで下手な演奏家って聴いた事ないですしね。だいたいうまくなかったら、器楽独奏のレコードなんてとてもじゃないけど作れないでしょうし。

 針を落としてすぐ、余韻が長く低音の少ないその楽器の音に魅了されてしまいました。いやこれ、ただ音を聴かされただけだったらチェンバロと言われても信じてしまうぞ。美しすぎです、素晴らしい…。
 そして、1曲目のまるでルネサンス音楽のような曲に思いっきり魅了されました。でもこれ、ウクライナのフォークロアをアレンジしたものでした。CD『Ukraine: Traditional Music』でも思いましたが、ウクライナの民俗音楽って、古楽そのものみたいなものが残ってるんですかね。それともアルメニアのコミタス・ヴァルダペットみたいな作曲家が近い時代にいたのか?これもまた感動でした。

 ところが、聴き進めるうちに、ベートーヴェン「月光」なんかが出てきて、ちょっと困惑。普通に考えたら撥弦楽器で月光ソナタを弾くだけでとんでもなくすごい事だとは思うんですが、なんだか引いてしまった僕がいたりして(^^;)。そういうのって感心する事はあってもまず感動しないんですよね。むしろそういう事をやると、「ほら、凄いですよ」という技術を聴かされてる気がしてしまって、音楽を聴いている気分になれなくなっちゃうところもあるし。で、そういう技術演奏を聴かされると、「指が動く技術はあるけど音を謳わせる表現が薄いな」とか、意地悪を言いたくなったりして(^^;)>。

 きっと僕は、このレコードを買って、ウクライナの音楽を聴きたかったんだと思います。でも聴かされたのはバンドゥーラの上手な模範演奏に感じてしまいました。実際にはウクライナのフォークロアが多いんですが、ちょくちょく挟まれるものが…。琵琶のレコードを買ったのに、平家物語の合間にクラシックや演歌も聴かされた気分で、これはこれで良いんだろうけど、僕の需要にはちょっと合わないレコードでした。

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『Ukraine: Traditional Music (Musiques Traditionelles)』

Ukraine_Traditional Music レーベル「Unesco Collections」がリリースしたウクライナの民俗音楽集です。録音自体はウクライナ独立前のものらしいですが、かなり音がいいので古くても1980年代録音じゃないかと。
 このCD、昔から欲しかったんですがなかなか見つからなかったんですよね。僕は中古レコード屋でエサ箱を漁るのが好きで、その中から探しているものをどんどん買っていくスタイルだったのですが、これはどうしても見つからず、とうとうアマゾンでポチった一品でした(^^;)。ワールドミュージックのCDって、中古屋で見つけられえば安いけど、ネットで買うとけっこう高かったりします。それってつまり数が少なくて、それを売れないものと見るかレアものと見るかの差なんでしょうね。

 このCD、7割がたが無伴奏の歌で、そのほとんどが何人かで歌うものでした。農家のおばちゃんたちが歌っているようなもの(といってもフォークアンサンブルの名称がクレジットされているのでプロなのかも)はユニゾンの斉唱が原則でしたが、要所でハーモニーになったり、人数が増えたり減ったりとなかなか構造的。コブシの入り方が東欧的というか、聴いていてほとんどがユニゾンとは思えない素晴らしさでした。
 もう少し組織されたグループの合唱になると、ハーモニーがアルバニア正教系の無伴奏合唱に通じるものに近づく感じでした。というか、ヴォイシングはまさに正教会系のそれで、33曲目「Chumak song」なんて間違いなく宗教歌で、曲も合唱もものすごい素晴らしさ。でもどこか民俗音楽っぽさが入ってくるものがあるのがなんとも独特。スラヴ系民族の合唱というと、この近辺ではグルジアやブルガリアが有名ですが、僕が聴く限りでは他の地域もみんなすごいです。

 他には、伴奏つきの独奏が何曲か入っていて、伴奏楽器はヴァイオリン(バグパイプ?)だったり撥弦楽器だったりするんですが、特に撥弦楽器バンドゥーラを伴奏にした歌が素晴らしかったです。まるでルネサンス音楽のようで、魂を持っていかれてしまいました、凄い…。本当にこれが現代も歌われているのでしょうか、そうだとしたらなおさらゾクッと来るなあ、凄い…。

 他で入っていたものは、牧童の笛っぽい音楽や、インストのアンサンブル。アンサンブル音楽は、打楽器や弦楽器も入ってるんですが、匂いがバルカン・ブラスっぽい感じ。そんな中、M11「The reapers」やM27「The seducer」は、僕にはクレズマーそのものに聴こえましたが、もしかするとバンド音楽は政治的に西からもロシアからも迫害されたユダヤ教徒さんたちの音楽なのかも。

 ちょっと感動したのは、M29「On the wide Danube」。無伴奏合唱はスラヴの農民さんたち、ブラス音楽はユダヤ教徒さんたちの音楽だと思っていたのが、お祭りでの舞曲みたいなこの曲で何と共演!同じことが終曲「Arcan: The lasso」にも言えて、今度はクレズマー・バンドに地域楽器のバンドゥーラが入り込んでいました。戦争ばっかりしてないで、こうやって仲良くしていけたら人間って幸せになれると思うんだけどなあ。。

 ウクライナの民俗音楽、バルカン半島の音楽と正教会系の音楽のミックスに聴こえましたが、どれもレベルがかなり高かったです。バルカン半島の音楽より洗練されて聴こえたのは、ウクライナの方が繫栄の歴史がある分だけ都会的なのかも知れません。素晴らしかったです!


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『Duke Ellington & John Coltrane』

DukeEllington John Coltrane ジャズを代表するビッグバンド・リーダーに対してこんな事を感じるなんてアレかもしれませんが、僕が『女王組曲』に次いでデューク・エリントンの中で好きなレコードは、ビッグバンドじゃなかったりします(^^)。それがこれ、エリントンとジョン・コルトレーンの共演盤です!1962年録音で、エリントンのピアノにコルトレーンのサックスが絡むカルテット演奏なんですが、即興性の強いジャズという音楽であっても、少しアレンジが入るだけでここまで良く出来るというお手本のような音楽だと思いました。マジでこれが素晴らしいんですよ。。

 1曲目の「In a Sentimental Mood」からしてメッチャクチャ素晴らしい!ここでエリントンはひとつのフレーズを作って、それをオスティナートとして使い、音の空間を広く持たせるんですが、それだけでここまで魅力的な音楽になるのかと驚き。!レイドバックした雰囲気も、『女王組曲』に匹敵するほど気持ちいいです。
 同じように、「My Little Brown Book」のピアノアレンジとレイドバック加減がまたたまりません。ああ~~~気持ちいい。。エリントンのピアノ、コルトレーンのバックに回ると、カウンターラインを奏でるとか、軽くコードプレスするとか、本当にちょっとしか弾かないんですが、これが本当に効果的。音を埋めればいいってもんじゃないんだなあ、すごい。。ついでに、マイナーに転調したコーダ部を作ってますが、これだけでコーラスを繰り返すだけのアメリカン・ソングフォームな音楽が劇的構成に聴こえるという素晴らしさ。ほんの少し作曲を加えるだけで、ジャズって本当にすばらしくなるんですね。

 レスター・ヤングあたりもそうですが、アーリータイムを生きぬいたジャズマンって、レイドバックしたオールドジャズを演奏できるのが無類の強みだと思います。アドリブの雨あられしかジャズと思ってなかった若いころの僕が、アーリータイムジャズの素晴らしさやアレンジの大事さを教わった、リラックスしていると同時に音楽の壺をついた素晴らしいアルバムです。最初は「エリントンなんて古い人がコルトレーンと渡り合えるのか?しかも、アレンジじゃなくてピアノで絡むなんてちょっと難しいだろ」と思って敬遠していたのですが、そんな事を考えていた自分が恥ずかしくなるほどの素晴らしい音楽。いや~気持ちいい、大推薦です!


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『Duke Ellington / The Ellington Suites』

Duke Ellington Ellington Suites デューク・エリントンの音楽のあのアメリカ音楽的なエンターテイメント性が趣味に合わず、若い頃はどうも苦手でした。でも、「エリントンは他のビッグバンドとは違って、芸術性が高い」「エリントンが好きなクラシック作曲家もたくさんいる」なんて話をチラホラ聞くものだから、もしかしたら音楽性の高い作品に出会ってないだけなんじゃないか…と思って『極東組曲』に手を出したら、これまたエンターテイメント(>_<)。娯楽音楽だと割り切って聴けばオールドジャズ特有の気持ちいい音楽だし、もうエリントンにヴォイシングとかのビッグバンドライティングの技術以外のものを求めるのはあきらめよう…と思った時に出会ったのが、このレコードでした。59年から72年にかけて録音された作品で、邦題は『女王組曲』。これが起死回生の満塁ホームラン!ゾクッと来るほど素晴らしかったです!!このアルバムには、3つの組曲が入っています。「女王組曲」(全6曲)、「グーテラス組曲」(全6曲)、「ユーウィス組曲」(全2曲)です。

 白眉は何といっても女王組曲。この組曲はエリントンとビリー・ストレイホーン(エリントンとずっと一緒に仕事をした作曲家アレンジャーで、エリントンの懐刀とも言われてます。実は、本当にすごかったのはストレイホーンだったなんて言う伝説があるほど)が作曲とアレンジを担当していますが、まさかビッグバンド・ジャズを聴いて「美しい」と思う日が来ようとは思いませんでした。「女王組曲」は、エリントンがエリザベス女王に会った感激を音楽にしたもので、自費で1枚だけレコードを作って女王に送ったというもの。エリントン生前はエリントンが認めなかったためにリリースされませんでしたが、エリントンの死後、こうして世に出たというドラマチックな経緯があります。
 ミディアムからスローというゆったりしたナンバーが多く、その美しさとロマンチックさは鳥肌もの。20分弱に過ぎない「女王組曲」全6曲を聴いただけで、エリントンに対する僕の感想はまったく変わってしまったのでした。かなりクラシカルな要素があるので(第4曲「Northern Lights」なんて、ロマン派のクラシックピアノの歴史を知らないで書けるとはとうてい思えません)、元々はクラシックの作曲家を目指していたストレイホーンの仕事も大きかったんじゃないかなあ。エリントンやビッグバンドが苦手な方にも、「女王組曲」は間違いなく推薦できます。

 「グーテラス組曲」は、エリントンが、フランスの田舎にあるグーテラス城の修復落成式に呼ばれた時の印象を音楽にしたもの。ファンファーレ的な1分とか30秒とかの小曲が並ぶ中、中核になってるのは郷愁ただよう第4曲「Something」でした。フルートをはじめとしたクラシック木管とピアノが交互に演奏し、それが合流したところで美しくヴォイシングされたジャズホーンが全体を支えます。これも良かった(^^)。

 エリントンはアレンジの達人であったけど、同じぐらいの重さで職業音楽家だったんでしょうね。自分の好きな音楽をやる以前に、音楽でメシを喰う事が先行する人、みたいな。そもそもジャズって、立ち上がりからして職業音楽でしたし、まして黒人という社会的マイノリティで、バンドマスターでもあったエリントンにとって、金を稼ぐ事は何にも優先する事だったんじゃないかと。「女王組曲」だけがなんで他のエリントンのビッグバンド曲と違って美的かというと、女王ひとりのために作る音楽だったから、大衆受けをまったく考えなくて良かった唯一の作品だったからじゃないかなあ。

 セールスや大衆受けを考えず、音楽だけににこだわったエリントンの音楽は、本当に見事でした。アーリータイムジャズの雰囲気と美的感覚と芸術性の3つが同居した素晴らしい音楽。僕にとってのエリントン最高傑作は、間違いなく「女王組曲」です。


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『Duke Ellington / The Far East Suite』

Duke Ellington Far East Suite デューク・エリントンのビッグバンドは、世間的な代表曲が「A列車で行こう」だったりするので、僕的にはエンターテイメントで古いジャズという印象を持ってました。実際、『アット・ニューポート』『ポピュラー・エリントン』も、あるいは戦前の録音も、そういう傾向の強い音楽ではあって、若いころに聴いた時にはつまらないと思ってしまったのです(^^;)>。ところが、「エリントンは別格」「芸術性が高い」なんて言う人が結構いるのです。その言葉をきいて、活動期間が長いから芸術性の高い時代もあったのかな、と私は考えたわけです。ホーンの4コースのアレンジの技術は確かにジャズの歴史に大きな奇跡を残したものだったし、これだけの技術があれば、やろうと思えばアーティスティックな事も普通に出来るんだろうな、とは思いましたしね。このアルバムは、芸術性が高いという触れ込みで、期待して買った1枚でした。邦題「極東組曲」、1966年発表です。

 このアルバム、エリントンが西アジア、インド、日本を演奏力した時の、それぞれの国の印象を曲にして組曲化した一種のコンセプト・アルバムでした。1曲目は、たしかにアラビア音楽のマカームみたいな旋法を使ってるしね。最後のニッポンも、それっぽい旋律をクラが奏でるしね(^^)。
 僕的にいいなと思ったのはそこじゃなくて、アレンジの仕方がけっこうモダンだったところでした。カウント・ベイシー楽団にも言える事ですが、全員でトゥッティかましてドッカンバッカンやってばかりのビッグバンドなんて、60年代にはほとんどいなくなってたのかも。スモールコンボでの演奏を核にして、ここぞという時だけ綺麗にアンサンブルされたホーンセクションがオーケストレーションを作る、みたいな。このへんの時代になると、ギル・エヴァンスジョージ・ラッセルのビッグバンドもデビューしていたので、若い世代からの影響もあったのかも知れませんね。

 ただ、技法の洗練はともかく、やってる事自体はやっぱりエンターテイメントに聴こえました。表面的に色んな音楽の要素を取り入れてるけど、それって旋法を取り込んだとかそういうレベルの話なのでね(^^;)。でもだから悪いというんじゃなくって、ジャズ風味なエキゾティカぐらいの感覚で聴けばかなり楽しかったです。ただ、これで僕の中で「エリントンはあくまでエンターテイメント音楽なんだ」という事になって、そういう音楽をあんまり求めてなかった若いころの僕の心はエリントンからほぼ離れてしまったのでした。そんな状況で起死回生のホームランが生まれまして…その話は次回に(^^)。


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『Duke Ellington / The Popular Duke Ellington』

Duke Ellington Popular Duke Ellington 50年代のエリントン・ビッグバンド代表作といわれているのが『エリントン・アット・ニューポート』なら、60年代の代表作としてはこれが取り上げられる事が多いみたいです。60年代のエリントン・ビッグバンドは、異色作やちょっとアーティスティックなものもあるんですが、これは1920年代からのエリントンのヒット曲のオンパレードという感じ。エリントン晩年なので、総決算のつもりで作った1枚なのかもしれません。

 最初に驚いたのは、録音のうまさです。マイクが思いっきりオンで、ライブ感や迫力がある録音じゃないんですが、すべてのセクションがものくっきり聴こえて、エリントンのアレンジやアンサンブルがものすごくよく分かります。古いビッグバンドの録音って、音がグチャッとしていてヴォイシングがよく分からないものもあるんですが、これはすごくよく聴こえます。ブラバンやビッグバンドやってる人で、エリントン楽団の参考音源を聴きたいという方がいらっしゃいましたら、選曲も含めてこのレコードはおすすめです(^^)。

 次に、やっぱりアレンジに耳が行きました。エリントンの音楽を「芸術性が高い」なんていうジャズファンの方がいますが、でも「ニューポート」やこれみたいに、いかにもデューク・エリントン楽団の音楽っていうのはあくまでエンターテイメントじゃないかと。ただ、たしかにビッグバンド・アレンジの技術は高いと思いました。たとえば、「Mood Indigo」。アレンジどころかメンバーの息がぴったり合っているもんで、ビッグバンドではなくまるでコンボのように聴こえるアンサンブルに、要所でクラを含んだ木管だけでヴォイシングを施し、セカンドテーマでこれに金管を加え、サビで一気に盛り上げたかと思うと、先ほどのキーとなっていたクラがカウンターからいつの間にやら主旋律…こういうアンサンブルの妙はやっぱりさすがだなあ、みたいな。要所だけでセクションを活用する音楽性の高いアレンジは、このアルバム全体に生きていると感じました。1曲目の「A列車で行こう」だけはトゥッティ全快のエンターテイメントですけどね(^^;)。

 「A列車で行こう」「ソフィスケイテッド・レディ」「I got it bad」「Perdido」「ソリチュード」「ムード・インディゴ」などなど、ジャズが好きな人ならみんな知ってるエリントン・ナンバーがずらっと並んでるので、エリントンのレコードを1枚だけ買うというなら、これから入るのがいいかも知れません。ただ、僕は不幸なことに、マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンどころか、もうフリージャズもサードストリームも聴いたあとでエリントンを聴いたもんだから、エンターテイメントなビッグバンド・ジャズのよさは、最初は分かりにくかったです。今なんてもっとそういう人は多いと思うんですが、そういう人でも、ヴォイシングやセクションアレンジの技術の高さに耳を傾ければ、アメリカン・エンターテイメントなこの音楽を楽しめるかもしれません。そうしているうちに、オールドジャズ特有の「夕焼けを見ているときのような心地よさ」に気づいていったりして…それが僕なんですけどね(^^)。


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『機動戦士ガンダム PERFECT ONE YEAR WAR』PlayStationゲーム

KidousensiGundam_Perfect1yearWar.jpg プレステには、戦略シミュレーションのガンダムのゲームがもうひとつありました。それがこれ、『機動戦士ガンダム PERFECT ONE YEAR WAR』です!大戦略システムを採用した『ギレンの野望』が面白すぎたもんで、あれと比較するとどうにも分が悪いですが、このゲームにもいいところがありました。斜め見下ろしの俯瞰視点のゲーム画像、これが子供のころに怪獣の人形を集めたり、ガンプラのジオラマに憧れた僕のハートをわしづかみ(^^)。とか言って、ブックオフで100円で買ったんですけどね。それは『ジオンの系譜』もそうなんですが。

 ジオラマ的なゲーム画像はガンプラに夢中になった世代としてはメッチャ興味を惹かれるし、表示されるミニチュアのモビルスーツやホワイトベースは、自分が参謀になった気分になれました(^^)。戦略シミュレーション・ゲームなので、将棋やオセロのようにすべて記号だけで表現してもゲーム自体は成立できるんですよね。でもそれだと感情移入が出来ない、ここにグラフィックの重要性があると思うんですが、グラフィックの点でいえば、このジオラマ的なこちらのゲームの方が、ギレンの野望より上と思いました。見ていて楽しいんです。

KidousensiGundam_Perfect1yearWar_pic1.jpg でも、このゲームが面白かったかというと微妙…。頭を使う所も特になく、普通に進めてればクリアできる、みたいな。ついでに、戦闘になるといちいち戦闘シーンが表示されるんですが、毎度同じ映像が流れ、またその時間がけっこう長いのでダレました。戦闘シーンを飛ばす事も出来るけど、戦闘シーンがないとそれはそれで味気ないので、サクッと表示されるぐらいにしてほしかったです。

 そうそう、もうひとつ覚えていることが。僕の記憶が間違ってなければ、このゲームは戦死した人は復活しません。当たり前に思われるかも知れませんが、『ギレンの野望』ではパイロットの乗ったモビルスーツを破壊してもパイロットは死んだことにはならずに負傷か何かの扱いで、しばらく経つとまた復活するんです。だから、アムロやシャアといったエース・パイロットが死ぬ事はないです。ところがこっちのゲームは、シャアやランバ・ラルですら死んだら本当に死んでしまいます。だから、終盤までシャアやラルを生かしておくとやっかい、はやいうちに叩いてしまえ…もしかして、僕にとってヌルゲーだったのって、シャアを序盤で叩いてしまったからなのかな(^^;)。


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『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオンの系譜』PlayStationゲーム

KidousensiGundam_GirennoYabouGeon no Keifu ゲームのマス目が正6角形をした戦略シミュレーションゲームの元祖が何なのか僕は知りませんが(子供の頃、金持ちの友人がそういうボードゲームを持ってたなぁ)、コンピュータゲームとしてそれを洗練させたのは大戦略だと思っています。相手と重なると戦闘状態になり、兵器自体の強さや相性を計算に入れてAIが自動判定、とかね。こういう大戦略型のシステムはたしかによく出来ていて、以降の戦争ものシミュレーションゲームの定番システムになりました。
 このシステムで、僕が大戦略以外に夢中になったゲームがありまして、それがガンダムの戦略シミュレーションゲームでした。ほとんど大戦略をガンダムに移し替えただけなんですが、完成度の高いシステムを用いているので、ゲームバランスさえ調性できていればそりゃ面白くないわけがないですよね(^^)。

 アドバンスド大戦略との違いは、ステージ制で時系列に進行していくのではなく、すべての戦場を前提に100ターンぐらいを戦っていく所。アドバンスド大戦略だったらカリフォルニア戦線→オデッサ→サイド6…みたいに、ひとつのステージごとに進んでいく所が、このゲームだとカリフォルニア戦線(戦闘中)/オデッサ(戦闘中)/サイド6(非戦闘地域)みたいに、ぜんぶ並列で進むのです。というわけで、各地域制圧も重要なのですが、どの地域を軍事制圧していくのか、どの地域に兵力を集めるのか、そういう大局観を持った進行手順も重要でした。
KidousensiGundam_GirennoYabouGeon no Keifu_pic1 あと、アドバンスド大戦略より進化している所がもうひとつあって、それは指揮官やパイロットという概念がある事です。たとえば、その戦場の部隊をレビル将軍が指揮するとちょっと強くなるとか、ただでさえ強いガンダムをアムロに任せるとえらい事になるとかね(^^)。ただ、僕は連邦軍で遊んでばかりいたからか、このへんはあまり気にしなくてもクリアできました。ジオン側でやると、このへんもシビアになるのかな?
 そんな連邦サイドに立ってのプレイでも厳しいところはあって、ガンダムが開発終了するまでの苦しさといったら(^^;)。逆に、ガンダムさえ生産できてしまえば、戦局は一気にひっくり返ります。このへんは原作をうまく表現できているなあ、と。あと、ガン・キャノンなどの長距離砲を持っている兵器は、離れた所からでも砲撃できるので、これも戦術的に有利で、こういうのを考えるのも面白かったです。

 原作との絡みも面白かったです。このゲーム、ちょくちょくオリジナルのムービーが入るんですが、これがファースト・ガンダム放映時には語られていなかった部分を穴埋めしていたりして。なるほどこうやってファーストガンダムの世界は深みを増していって、安彦良和さんが書いたファースト・ガンダムの決定版『THE ORIGIN』につながったのか、みたいな。

 ところで、このゲームは1部と2部に分かれていたんですが、僕は何回遊んでも1部しかやりませんでした。というのは、ファースト・ガンダムが1部に相当して、2部はそれ以降のガンダムなもんで、ファースト・ガンダムしか観なかった僕には2部以降は興味がなかったのでした(^^;)。僕みたいに、ガンダムは1年戦争までで良いという人ってけっこういると思うので、そのあたりも配慮してくれればなおよかったかな?でも、これもすごく面白い戦略シミュレーションゲームでした。


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『アドバンスド大戦略 -ドイツ電撃作戦- SEGA AGES 2500』 PlayStation2ゲーム

AdvancedDaisenryaku_PS2.jpg 学生時代に夢中になったメガドライブ版のアドバンスド大戦略でしたが、そういえばメガドライブのバージョンで都市名って表示されてたっけ、最初のブリーフィングでは都市名は出てた気がするけど、ゲーム画面で表示されていたかどうかは怪しいぞ。じゃなんで僕はウクライナの都市名を知ってるんだろ…と思い返してみたところ、それってプレステ2で再発された方で覚えたのかも知れません。というわけで、なんとプレステ2でリメイクされたアドバンスド大戦略です!このゲームを買った理由は、終盤で鬼のように長かった待ち時間が短縮されたと聞いたからでした。まあ、AIのターンになってから風呂入ってメシ食ってもまだ自分のターンになってなかったりしたからなあ(^^)。実際に思考時間は短くなってました。

 でもって、このプレステ2移植版では、都市名を表示できるようになってたんですよね。歴史的なものを題材にしたゲームにとって、そういうところって重要じゃないかと。こうして僕はまたしてもこのゲームに鬼のように時間を食われたという(^^;)。でも大丈夫、昔プレイした時のノートが残ってるから、今度こそクリアしてやるという意気込みで遊んだのでした。
 そして、ついに僕はアドバンスド大戦略を勝利で終える事が出来たのです。ただし、変な理由で…プレステ2版のAIはちょっと間抜けで、あるステージでの敵軍がこっちに攻めて来ないで上の方に固まってしまう、みたいな事があったのです。いやあ、これじゃクリアできたとしてもぜんぜん面白くないよ(^^;)。

 この不具合はさすがに問題だったらしく、セガに送るとAI修正版と交換できました。不具合のあるディスクが赤で、修正が青だったかな(逆かも)。で、僕は交換してもらって遊んだんですが、なんと後になって不具合のあるディスクがプレミアつきになったという。ああ、交換しなきゃよかった。。でも相変わらずの面白さで、やっぱりこれは戦略シミュレーションゲームの大名作じゃないかと思いました。僕はあまりにハマったもんで、ヨーロッパの都市名どころか、ドイツ軍の兵器開発史(ドイツ戦車がティガーからパンツァーに進化していく過程とかね^^)、それに2次大戦時のヨーロッパ各国の兵器にまで通じたオタクになったのでした。


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『アドバンスド大戦略 -ドイツ電撃作戦-』SEGAメガドライブゲーム

AdvancedDaisenryaku_MD.jpg ロシアとウクライナの戦争が長引いています。武力行使で他国に侵入したロシア政府はもちろん悪いけど、口約束とはいえNATOをこれ以上東に広めないといったアメリカの二枚舌もたいがい。そういうエゴを相手に押しつけあってるからいつまでたっても戦争がなくならないんだと思います。人間って自滅する運命の種なんじゃないか…。

 ところで、この戦争で自分が意外とウクライナの都市名を知ってることに驚きました。キエフは社会の授業、オデッサはガンダムで知ったに違いないですが、ルガンスクとかマウリポリはどこで覚えたんだろうかと考えてみると…なんと戦争のシミュレーションゲームで覚えたのでした。そのゲームというのがこれ、セガのメガドライブというハードで発売された『アドバンスド大戦略』です!大戦略は戦争シミュレーション・ゲームを代表する作品ですが、僕が学生の頃はアドバンスド大戦略がその最高傑作と言われていたんですよね。これ、題材が仮想の戦争ではなくて、第2次世界大戦をドイツ視点で再現していて、実際に出てくる兵器、戦争の進行具合など、その再現度たるや凄まじいものがありました。実際に僕はこのゲームで第2次世界大戦のヨーロッパ戦線とアフリカ戦線を学びましたしね(^^)。制作陣の気合いの入りかたもすさまじくて、付随している冊子自体がものすごい分厚さで、この本だけで、そのへんの兵器図鑑よりすごいという(^^)。

 ゲームはステージ制で、ポーランド戦、フランスソンム戦線、イギリス戦、ウクライナ侵攻、アフリカ戦線…といった具合に各ステージを攻略、その結果によって次に進むステージが分岐していきます。攻略しながら自軍部隊を鍛え、兵器開発をし…みたいな。
 というわけで、このゲームの面白さが3つありました。ひとつは、各ステージを攻略するための戦術を練り上げる事。ひとつは、長期的に見た軍備などの戦略。もうひとつが、ステージ分岐をどのように進めていくか、です。だって、2次大戦でドイツ軍を指揮しているわけですから、普通にやったら負けルートですからね。。

AdvancedDaisenryaku_MD_pic1.jpg まずは、各ステージの戦術と戦略性。その面白さたるや、もう病みつきでした。2次大戦でドイツは電撃戦という戦い方をしていて、戦線を押したり引いたりせずに、戦車隊や航空隊を一点集中で突破して拠点を一気に制圧する戦い方をしたそうです。これがこのゲームのサブタイトルにもなっている電撃戦ですが、このゲームでも電撃戦がすごく重要。じっくり防衛ラインを押し上げてたら、最初のポーランド戦ですら手こずります。制圧したい都市を一気に囲んで占領、多少の犠牲を払ってでも敵の生産拠点を一気に囲んでて気が兵器を拡張できなくしてしまい、…みたいに、最初に立てる作戦が超がつくほど重要です。敵のレーダーに引っかからないよう、すごく大まわりさせて爆撃機を飛ばしたりね(^^)。これがずっと先のターンに効いてきたりするので、将棋のように戦略性の高い頭を使うゲームでした。1回でクリアするなんて無理なので、各ステージとも最初の1プレイはやってみて「まずは空港防衛部隊を出して、その間に占領部隊を船に乗せて沿岸に渡らせたら…」みたいに戦闘プランを作り上げて、2回目以降でそれを実施する、みたいな遊び方をしてました。
 ステージを跨ぐ兵器開発のプラニングや軍備の選択、そして部隊の練度を鍛え上げる事も超重要。このゲーム、序盤は重戦車の開発と配備に躍起になりますが、アメリカやロシアが参戦してくることになると、空軍が鬼のように重要になります。空軍は大きく分けると戦闘機、戦闘爆撃機、爆撃機、輸送機があって、もうこの開発と整備とバランスが超重要。敵も航空部隊を繰り出してくるので、高射砲を打てる部隊を整備し…みたいなことを、限られた予算の中で切り盛りしながら、長いステージを跨いで自軍を整えていく、みたいな。もうこれがクソ面白かったです(^^)。

 このゲーム、将棋のように自分とAIが交互に進める仕様なんですが、後半になってくるとAIの思考時間が長い長い(^^)。30分とか平気で使ってくるんですよね。でも僕的にはこれは悪い事じゃなくて、AIのターンになったら勉強したり作曲したりして、切りのいいところまで来て「どうなったかな?」と覗くと自分の番になってる、みたいな。僕は勉強が苦手だったもんで、こういう戦略シミュレーションみたいなゲームっ便利だったんです、それをしていれば机に向かっている動機になってくれる、みたいな(^^)。

 終盤は鬼の難しさ。そりゃ第2次世界大戦のドイツでプレイするんだから、そりゃそうですよね。僕はかなり長いことこのゲームを遊びましたが(なんと今でも当時遊んだ時の作戦ノートが残ってます^^)、とうとう勝利ルートにはたどり着けず。今でも仕事のお供に遊び直してみたいと思う…けど、そんな時間はもうないでしょうね。あるとしたら、老後かな?でも老後の年金生活なんて、人類がいつまでも戦争を続けてるようではとても望めたものじゃないかも。


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千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希、13者連続奪三振を含む19奪三振、しかも完全試合!

SasakiRouki_20220410.jpg マジか、これって長い長い日本プロ野球史上でもナンバーワンのピッチングですよね…。完全試合ですらあり得ないほどの大記録なのに、それが霞んで見える19奪三振。さらに13者連続奪三振って、僕は江夏豊の9者連続奪三振が抜かれる日が来るとは思ってなかったよ…。

 どんなジャンルでも、天才は黎明期に生まれやすいものだと僕は思っています。だって、プレーヤーも揃ってないしメソッドも確立されていないので、才能に差がつきやすいだろうから、ずば抜けた人物が生まれやすいんだろうな、みたいな。実際に、日本ジャズの守安祥太郎、将棋の大山康晴、日本プロ野球の沢村栄治、日本のクラシック・ギターの山下和仁なんて人は、この条件にハマるんじゃないかと思うんですよね。
 ところがプロ野球や将棋って、定期的に天才的な人が出るのが凄いです。将棋だと大山さんの次に7冠をひとりで独占する羽生さんが出て、こんな人は二度と登場しないんだろうなと思ったら、藤井聡太くんが出ましたし。プロ野球でも、王に長嶋に江夏で打ち止めかと思いきや、落合、野茂、イチロー、大魔神、二刀流の大谷と、定期的にずば抜けた人が生まれるのが凄いです。日本のミュージシャンにそういう人が出にくいのは、コツコツと技術を磨くのは得意だけど独創力は認めるのではなく叩く傾向の文化を持っているとか、だからすごいのが出てもすごいと認めないとか、そもそも音楽を高く評価していない文化だとか、そんな所なのかも知れませんね。

 こういうのって人生でそうそう体験できない一大イベントだと思いますが、日本シリーズや世界大会などの大舞台ではなかったもので、当然のように見逃してしまいました(^^;)>。今日の夜はスポーツニュース見まくろう、そうしよう。。


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『ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1、2番 ピリス(p)、デュメイ(vn)、ワン(cello)』

Brahms_PianoTrio 1 2_Pires_Dumay_Wang ブラームスのピアノ三重奏曲1番1楽章の牧歌的で郷愁を誘うようなムード、たまらない。。もうこれだけで必聴の名作だと思います。そんなブラームスのピアノ三重奏曲の1~2番をピリスが演奏したCDがこれです。僕はどうしてもピアノ中心に聴いちゃうんですよね(^^;ゞ。そうそう、ブラームスはピアノ三重奏曲を3曲書いてます。

 ハイドンのピアノ三重奏曲を聴く限り、ピアノ三重奏曲って、チェロはピアノのバス声部とずっとユニゾンだったりするので、もともとはピアノ中心のアンサンブルだったように思います。ところがこのブラームスのピアノ三重奏曲になると、チェロの地位がけっこう上がってきたと感じて、アンサンブルが一層洗練されたと感じました。しかもブラームスはそのアンサンブルの緻密な構造にばかり凝らず、あくまで美しい音楽を紡ぎあげていくところがスバラシイ!
 ピアノ三重奏曲第1番は作品番号8なので若書きの作品だと思うんですが、これだけ音を自分の感情そのもののように使いこなせるってすごいです。第1番は4楽章形式ですが、全体的に牧歌的でムーディーです。う~んこれはいい。あ、そうそう、ブラームスピアノ三重奏曲1番はオリジナルと改訂版のふたつが残ってますが、このCDでは改作のスコアを使っているそうです。めっちゃいい曲なので、いつかオリジナルの方も聴いてみたいです。第2番は…僕はこの曲があんまり好きじゃないので感想は割愛(^^;)。でも、完成度の高いスコアと素晴らしいアンサンブルである事は間違いないと思います。

 ピリスさんのピアノ、僕は彼女の代名詞であるモーツァルトの演奏が大人しすぎて苦手意識があったんですが、このアンサンブルは抑制された表現が品がある感じで、美しい!いや~これは良かった、アンサンブルものって超絶系のプレイヤーじゃない方が良かった経験が何度もありますが、これもそういう演奏かも…って、ピリスさんだってすごい演奏家ですけど(^^)。素晴らしい1枚でした!


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『ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ブレンデル(p)、アバド指揮ベルリンフィル』

Brahms_PianoConcert1_Brendel_Abbad_BerlinPhil.jpg そんなわけで、僕にとってのブラームスのピアノ協奏曲1番のリファレンスは、ブレンデルとアバド&ベルリンフィルのこの1枚なのでした。これはすごい、ピアノとオーケストラの絡み方がとんでもない、鳥肌ものです。

 ある時代以降の協奏曲というのは、独奏楽器とオーケストラが競い合ってガシガシ行く音楽という大前提があって、ソリストを立てている以上はソリストの神技を堪能するところがある音楽ですが、ブラームスの2曲のピアノ・コンチェルトはちょっと違う感じがして、あくまでピアノとオーケストラが協力して作り上げるアンサンブルのようです。それだけに、ピアニストには達人的なカデンツァを聴かせるとか超絶的な指さばきを披露する事より、表現が求められているように感じます。
 そんなわけで、僕はこの曲に関してはスピード自慢な若手より、円熟期を迎えた巨匠の演奏をどうしても探してしまうんですが、さすがにブレンデルはすごかった。。アバド&ベルリン・フィルを相手にブラームスを演奏するって、死刑台にあがるほどの緊張感と恐怖があるんじゃないかと思うんですが、むしろピアノのブレンデルの方が「ブラームスのコンチェルトはこういう表現で演奏するもんだよ」とオケを諭しているかのよう。感動的な第1楽章も凄ければ、ピアノが先に仕掛けるロンド形式の3楽章も素晴らしい。この演奏をした時のブレンデルって55才ぐらいだと思うんですが、音の使い分けも表現も若手じゃ手の届かないところにいる感じがしました。コンサート・ピアニストって、華々しくデビューして名声を得た人ですら、あまりのプレッシャーに早々に引退する人が多いというのに、55でこれか…神がかりだわ。

 ブレンデルって、レパートリーはハイドンやベートーヴェンやシューベルトといったドイツ=オーストリア音楽の王道が多いし、指が強烈に速いとか、鮮烈なデビューをしたとか、そういう派手なところもないですが、いざ聴くと「これは見事な音楽だ」と思わされることが多いです。曲芸的な演奏技術を見せるのではなく、音楽を見事に鳴らす人なんでしょうね。いや~いつ聴いても素晴らしい1枚、つい爆音で聴いてしまいました(^^)。


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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