
「
フォーレの歌曲は伴奏に徹しすぎてカウンターラインもなにも作ってなさすぎ」な~んて書いた事がありましたが、もちろんフランス国立高等音楽院で作曲の先生だったフォーレ先生にそういう能力がないなんて事はあり得ないわけで、それはフォーレ先生の室内楽曲を聴けばすぐわかります。というわけで、これはフォーレが書いた2曲のヴァイオリン・ソナタを含んだ、フォーレのヴァイオリンとピアノのための作品全集!ついでに、
ヴァイオリンはパガニーニ賞優勝のピエール・アモワイヤルだ!ピアノはパスカル・ロジェだ!こんなの買わない方がおかしいじゃないか、これを聴かないクラシック・ファンなんてファンとは呼べない…というわけで、めずらしく発売時に新譜で飛びついた1枚です。
このCD、1992年でロンドンのとあるホールでの録音でしたが、
音がメチャクチャいい!音像が大きすぎる気がするけど、それってマイクを近づけたからで、これぐらい近づけないとここまでエッジの立ったキラキラした音には出来ないんでしょうね。あ、マイクが近いからだと思いますが、ヴァイオリンのハイがきつく聴こえる所も少しだけありました。
演奏はかなりキラキラ、溌剌としてました。アモワイヤルさんが突っ走りそうになるところを大人なロジェさんが抑えているように聴こえる所もあるほど。これは相性のいいデュオだと感じました、性格もあってるんじゃないかなあ。まあそんな具合なので、2つのソナタみたいにガシガシ行く曲は嵌まりまくってすごいんですが、「ロマンス」や「子守歌」みたいなたっぷり歌う曲は早漏ぎみかな(^^;)。でも、素晴らしい演奏だと思いました。
そして、フォーレの曲。収録されていたのは以下6曲でした。へえ、フォーレってヴァイオリンとピアノの曲を意外と書いてないんですね。長いこと音大で学長を務めていた人なので、なかなか作曲に時間を割けなかったのかも。音楽家が音楽教師をやるのって良し悪しですよね。
・ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調、Op.13
・ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ホ短調、Op.108
・初見視奏曲
・アンダンテ、Op.75
・ロマンス、Op.28
・子守歌、Op.16
やっぱり聴きどころはふたつのヴァイオリン・ソナタじゃないかと。フォーレというと、僕的には何より先に「レクイエム」が思い浮かび、次に「シシリエンヌ」や「ロマンス」を思い浮かべてしまうので、憂いのある音楽を想像してしまうんですが、
2つのヴァイオリン・ソナタはどちらもロマン派的で、しかも夏の太陽のようにキラキラ輝いてました。ヴァイオリンとピアノが競うようなスコアで、まるでデュオ版の協奏曲のよう、部分的には技巧的ですらありました。ピアノ大活躍だよ、これを自分で演奏するのは大変だろうなぁ(^^)。
ちなみに、
ソナタ1番はフォーレの出世作で、1877年初演でフォーレ31歳の時の作品。対して2番は1917年初演なので72歳の時の作品です。しかし40年の開きがあるとは思えないほど作風が近かったです。作曲技法はさておいて、精神が前向き系のロマン派的…あいかわらずなに言ってるのか分からないコメントでごめんなさい。。いずれにしてもこの2つのヴァイオリン・ソナタは名曲、名演、名録音だと思いました。
作曲面で僕の心に響いたのは、「アンダンテ」Op.75 でした。この曲は
R.シュトラウス「変容」のホリゾンタルなプログレッションと
フランクの後期作品のヴァーティカルな和音を混ぜたような曲で、小曲ながら実に素晴らしかったです!いやあ、フォーレって
ドビュッシー登場以前の人ってイメージがあったんですが、時代的には被っているので、作曲がこういう所まで進んだ時代をリアルタイムで生きてるんですよね。
これはなかなか素晴らしいCDでした。買った時は「なんかキラキラしすぎてるな、演奏も突っ走りすぎだし」と思ったもんですが、90年代以降、クラシックって全体的にそういう演奏に向かっていましたよね。
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