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心に残った音楽♪

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『シェーンベルク:歌劇《モーゼとアロン》 ブーレーズ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ネーデルランド・オペラ合唱団』

Scoenberg_Moses und Aron_Boulez_RoyalConcertgebou 聴きはじめて1分で「これは超傑作だ」と感じ、聴いている2時間のあいだ圧倒されっぱなしでした。終わったらまた最初から全部聴き、翌日も聴き…何回繰り返したでしょうか、はじめて聴いた時の戦慄は今も消えません。若いころ、はじめてジョン・コルトレーン『ライブ・イン・ジャパン』を聴いた時にふっとばされて、何日も何日もひたすら聴きつづけていたことがありましたが、そういう経験って決して多いものじゃないんですよね。シェーンベルクが死の寸前まで着手していながら遂に完成させられなかった未完の大作、「モーゼとアロン」です。

 旧約聖書の「出エジプト記」に沿ったオペラですが、物語と音楽の絡みがただ事ではありません。ここも色々と感じたことがあるのですが、それより先に吹っ飛ばされたのは音楽。このオペラ、音だけを取り出してもすごいの一言、作曲家になりたいのでもなければ、音だけだってお釣りがくるほど。でも、音圧や勢いやアヴァンな音の羅列だけで2時間も聴いてられるほど音楽の緊張感が続くなんてありえないという事はノイズミュージックやフリージャズで経験済み。
 この魔術の一端は、1分にも満たない冒頭の序章の中にもすでにあります。明らかな音列技法で、ド#、レ、ソ#、ファ#、ソ、ファ、シ、ラ、ラ#、ド、レ#、ミ、という音列とその反行。そして、このセリーとのひもづけが物語全般に張り巡らされています。そのすべてに僕が気づけたとはとうてい思えませんが、3回も4回も聴いているうちに、「ああ、なんで統一感を感じるかって、ここが移調した上で音列の開始音が変わるからモードを変わってるように感じるからなのか」とか、色々と見えてくるところがあって、魔法の一端が聴くたびに少しずつわかってくるような気がして、その都度ためいき。
 横のつながりだけでなく、縦の悦楽も見事で、無調時代から初期の12音列技法のシェーンベルクの作品にある、構図重視で色彩感覚に乏しいという特徴は既にありません。なにせ、序章の最初に鳴る音が四度堆積和音から、バスは半音上に変化、トップはメロディ的には2度上ですが、和声的には半音下への動きがあるので、これ自体がドミナントモーションでないにもかかわらずプログレッションに感じ、しかもサウンドのカラーが見事。

 シェーンベルクは完全にオートメーションでこれを作曲したわけではなく、色々と融通をきかせたような気がします。というのは、自分でアナリーゼしてみたんですけど、どうやったって綺麗な音列に出来ないんですよね…僕のアナリーゼに問題があったのかも知れませんが(^^;)。これは和音の響きを鑑みて音を入れ替えたりしてるんじゃないかな、とは思いました。でも、それでいいですよね。システムではなく作品が大事なんですから。というわけで、シェーンベルクの音列技法は、それ以降の人に比べるとかなり自由度が高いですが、それだけにセンスが問われるというか、音感が極度にすぐれていたんじゃなかろうかと思わされます。さらにこの形を移調して対位法的に重ね…1分に満たない序章だけで、もう語り尽くせません。

 こうやって指摘できる凄さもあるのですが、何をすごいと感じているのか自分でも分からないところがあって、魅入られたような気持ち。シェーンベルクといってこれを代表作にあげる人も少ないかも知れませんが、機能和声法から離れて以降では、ピアノ曲と同等かそれ以上の作品。個人的にはバッハのマタイ受難曲に匹敵する大傑作と感じます…いや、それ以上かも。


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『松崎しげる / TWIN BEST』

MatsuzakiShigeru_TWIN BEST 声を張って朗々と歌う戦後昭和歌謡の男性ヴォーカリスト、4人目は松崎しげるさんです…黒いな(顔が)。僕が松崎さんをはじめて知ったのは、子どもの頃に観たコメディタッチの刑事ものテレビ番組『噂の刑事トミーとマツ』でした。小学2年生でしたが、クラスの友達と「あれ、面白いよね」な~んて話していたのが昨日のことのよう。普段は弱々しいけど、いざとなると豹変して強くなるトミー(国広富之)の真似をしてゲラゲラ笑ってました…懐かしくて涙が出るよ。国広さん、なんであんなことに…。
 そんな楽しいドラマを見てひと通り笑ったあと、エンディング・テーマとして流れていたちょっとシリアスな曲「マイ・ラブ」に感激してました。中古盤でこのCDを見かけたときは、「あの曲入ってるかな?」と探すと…おお~入ってた!というわけで即買いでした(^^)。

 先にダメな点を書くと…このCD、マスターテープが安定しなくてピッチがふらつくところがけっこうありました(覚えている所では「おもいで」「ガール・ガール・ガール」「愛の静けさ」)。これはいかんでしょ(= =*)。

 音楽は歌謡曲で(たまにフォークや演歌調、そして何故かディスコっぽい曲もあり)、バラード調で朗々と愛を歌い上げる曲が多いので、バニー・マニロウやフランク・シナトラあたりを意識してるのかな、と思ったり。
 曲はすべて長調か短調の典型的な昭和歌謡なので、転調などの作曲面での仕掛けや工夫をさがして聴いている自分がいました。そういう視点で言うと、39曲入っている中で工夫があったのは5曲。C.Jenkins-C.Barrtt「想い出の砂浜」、レノン-マッカートニー「This Boy」、三浦徳子・林哲司「雨の微笑」(出だしの詞「少しやせたよね、はじめての頃より」の詞にもシビれました)、S.Gibb-B.Fassman「愛を信じて」、そして山上路夫・都倉俊一「マイ・ラブ」。松崎しげるさんって、なんとなくおじさんやおばちゃん趣味なダサい感じがするじゃないですか。たしかにそうなんですが、それでもこのへんの曲はいいと思いました。

 70~80年代の歌謡曲って、リアルタイムで聴いていた頃は感じなかったけど、時がたってから聴くと、色々と時代の色を感じられていいですね。数年前に紅白歌合戦を見た時、今の人の作曲とレベルが昔より段違いに良くて感心したんですが、でも技巧のための技巧とも感じたんですよね。同時に、詩はえらくガキくさくなったな…みたいな。それって音楽をやる人は音楽だけしかしない状況になって、音楽自体のクオリティは上がったけど専門馬鹿になった、みたいなところなのかも。80年代の歌謡曲は、クオリティは今より低いけど技巧が情緒を生み出すために使われていて、どっちがいいというものでもないけど、そこに時代の差を感じました。そして、「マイ・ラブ」と「雨の微笑」はやっぱりいいなあ(^^)。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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