
日本の現代音楽作曲家・
武満徹さんの室内楽全集の第2集、2枚組です。2002年、サントリー音楽財団がサントリーホールで主宰した「MUSIC TODAY 2002〈武満徹の音〉」のライブ録音です。
演奏は「アンサンブル・タケミツ」と名付けられたアンサンブル。このアンサンブル、ピアノに高橋アキや木村かをり、ギターに佐藤紀雄、クラリネットに鈴木良昭、パーカションに吉原すみれなど豪華なメンツでした。
・ロンドンデリーの歌
・失われた恋
・リタニ
・オリオン
・妖精の距離
・アントゥル=タン
・シークレット・ラヴ
・オーバー・ザ・レインボー
・遮られない休息
・ユーカリプスⅡ
・フォー・アウェイ
・ウォーター・ウェイズ
ピアノ独奏、ギター独奏にアンサンブルもの、あるいは武満さんの曲から武満編曲ものまで、作曲年代も無作為抽出のようで、ごちゃまぜです。これって、プレイヤーに選曲を丸投げしたんじゃなかろうか…。それでも僕がこのCDを買った理由は、
他のCDだとなかなか聴く事の出来ない曲が入っていたからでした。このCDでいうと、「オリオン」「妖精の距離」「アントゥル=タン」「ウォーター・ウィズ」あたりがそれです。というわけで、他のCDではなかなか聞く事が出来ないこれらの作品を感想だけを書くと…
「オリオン」。チェロとオーケストラのための「オリオンとプレアデス」は有名ですが、「オリオン」を聴いたのはこのCDが初体験でした。どちらが先に書かれたか知りませんが、どちらかのアレンジもので、こちらはチェロとピアノのデュオ。これが素晴らしい曲でした!この後、僕は堤剛さんという日本きってのチェロ奏者が演奏した「オリオン」に出会って悶絶する事になりますが、それまではこのCDが「オリオン」のリファレンスでした。
「ウォーター・ウェイズ」は8人編成のアンサンブルもの。2台のハープに2台のヴィブラフォンを含んでいる所が、「なんで2台必要なんだ?」と思いましたが…あ~なるほど、左右対称のアンサンブル配置を作って、これが少しずつ崩れていくという音楽なんだな。曲想は武満さんらしい響きの音楽といった感じで、僕が気に入っても良さそうな音の重ね方が随所に出てくるのですが、心が動かず。理由は後で書きます。
「妖精の距離」はヴァイオリンとピアノの曲ですが、まるで
メシアン「世の終わりのための四重奏曲」を聴いているよう。この曲は1951年作曲なので武満さん初期の作品ですが、なるほどメシアンから始まったのかということがよく分かります。
この曲、いいなあ。
「アントゥル=タン」は86年作で、オーボエと弦カルのための作品。さすがにこのあたりまで来ると武満サウンドが確立されてますね。休符の入れ方なんて西洋音楽にはない感覚だし、トレモロやフラジオの使い方も強烈。「
ノヴェンバー・ステップス」の弦パートみたいな鋭さ…やっぱり音の質感に心血を注いだ作曲家さんだったんじゃないかと感じました。
残念ながら
このCD、録音がよくないです。ノイズもひどいですし、音にぜんぜん色気がない(T_T)。佐藤紀雄さんのギターなんていい演奏っぽいのに、オーディエンス録音かってぐらい味気ない(;_;)。きっとマイクが遠いんですよね。逆に、「アントゥル=タン」だと弦の音がぜんぜん混じらないでヒステリックな音…今度はマイクが近いんだと思います。つまり、ホールの天井からぶら下がってる吊りマイク録音で、そのマイクの位置調整も、ミックスでの音質補正もまったくしてないんじゃないかと。
メシアンに感化されて始まった武満さんの音楽って、音色を含めた音の質感が重要だと思うんですよね。僕が大好きな「遮られない休息」も「フォー・アウェイ」も、このCDだと音が悪くてあまり心が動きません。企画ばかり先行していて、愛のないプログラムと録音だなと思ってしまいました。でも、僕が持ってるほかのCDだと聴けない曲があるので、不満がいっぱいあるのに手放せないのです。こまったもんだ。