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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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2022年に聴いたアルバム 独断と偏見のベスト34 +α(後編)

 2022年の感想をもうひとつ。まったく個人的な事ですが、歳をとって頑張りがきかなってるのを実感。1日に出来る事がマジで減ってしまいました。泣きたいです。
 若い頃だと、学校で6時間授業を受けて、そのあと部活をして、部活帰りに友達とジャレて、夜に家に帰って宿題をしてピアノ練習して…みたいな事をみんなやっていたわけじゃないですか、あんなの絶対無理でございます。自分の集中力が続くわずかな時間に何をやるか、これを限定していかないと何もできない事を痛感させられました。時は金なり、歳を取って欲しくなったのは元気と時間です。折れずに頑張るぞ。
 というわけで、2022年年間ベストの後半戦、行きます!!

漫画・ゲーム
 今年あったもうひとつの私的な出来事は、何を隠そう現在作られているゲームのクオリティが恐ろしく高い事を知った事でした。コロナ禍が続き、僕も奥さんも家から出る機会が減ってふたりでいる時間が増え、ゲーマーな奥さんがやっているゲームをずっと眺めていたんですよね。それで、今のゲームが子供にはとても難しくてできないほど大人向けに作られている事を知りました(単に奥さんがそういうのを好んでいるだけかも^^;)。見ているだけで楽しかったです。

コミック『いつでも夢を』 原秀則
漫画家の生活という、自分にはまったく縁もゆかりもない世界をのぞき見できた新鮮な楽しさと、こういう青春も送ってみたかったという疑似体験の素晴らしさ

Souten no siroki kami no kura蒼天の白き神の座』 PlayStation ゲーム
昔はゲーム最強はこれだと思っていた時期もあるほどにのめり込んだ雪山登山RTS

アドバンスド大戦略 -ドイツ電撃作戦-』SEGAメガドライブゲーム
これも大ハマりしたが終盤の鬼の難しさに挫折、でも面白いからまた最初から

キングスフィールドIV』 PlayStation2 ゲーム
剣と魔法のダンジョン探索なんて面白いに決まってるだろちう事でこれも徹夜連続

Project Zomboid』 PCゲーム
自分だけが生き残ったゾンビだらけの世界でのサバイバル。今のゲームってすごいと思わされた

第10位~4位
Pharoah Sanders Thembi第10位:『Pharoah Sanders / Thembi
破壊的フリージャズから涙が出そうになるほどのスピリチャル・ジャズまで。コルトレーン亡きあとのジャズが何を目指したのかはこのアルバムで知った

第9位:『小比類巻かほる / So Real
敢えて言おう、80年代最高のJポップであると

第8位:『John Coltrane / "Live" at the Village Vanguard 11-03 & 05-1961
いやいやいやいやこれが発掘音源とかありえないだろ。元々リリ-スされていた「Live at the Village Vanguard」は聴かなくていいからこれを聴いて欲しい

JSBach_OrganSakuhinshuu_Richter_Archive.jpg第7位:『J.S.バッハ / オルガン作品集 カール・リヒター(org)』 グラモフォン/アルヒーフ録音盤
16~17世紀のヨーロッパの作曲家って天才揃いじゃないかと思うよマジで

第6位:『フェルドマン:コプトの光 ティルソン・トーマス指揮、ニュー・ワールド・シンフォニー
人間には宗教が必要、こんなものを聴かされたらそれが分かってしまう

第5位:『藤圭子 / 艶・怨・演歌
FujiKeiko_En En Enka戦後最高の日本人シンガーは誰かと訊かれたら、僕なら即答でこの人を挙げる

第4位:『ベルク:歌劇《ルル》3幕版全曲 ブレーズ指揮、パリ・オペラ管弦楽団
凄すぎ。こういうのを体験してしまうといまだにドミナントでしか音楽を書けない作曲家が馬鹿に見えてくる

書籍
Doubutsunitotte Shakaitoha Nanika_Hidaka 今年はあまり本を読めませんでした。文字数は例年からそれほど落ちたわけじゃないと思うんですが、読んだ本にページ数の多いものが多く(『ワクチン いかに決断するか』とか『枕草子』とか)、冊数が減ってしまった感じ。それでも知りたい事はたくさんあるので、なんとか時間を見つけて読書は続けたいものです。

動物にとって社会とはなにか』日高敏隆
動物学や昆虫学の本は大好き。動物の事を知りたいわけじゃなくて、生命とは何か、人間とは何かを相対化して教えてくれるから

方丈記』鴨長明
もし独り身ならこういう生き方を選びたい

第3位~1位
Astor Piazzolla_Tango En Hi-Fi 今年聴いたレコードのベスト3です!ここまであげた31枚だって500枚ぐらいの中から選ばれた31枚なので(その500枚だって数あるレコードの中から僕が手元に残しておいた選りすぐり)、どれも大おススメなんです。でもこの3枚はさらに別格、音楽が好きという人がまだこれらを聴いていないようでしたら、死ぬまでにぜひ聴いて欲しい3枚です。2位の作品に関してはサウンド自体が素晴らしすぎる作品なので、ショボいオーディオやヘッドフォン聴きなんてせず、いいオーディオでいい音だして聴いて欲しいです。それではいきます、2022年私的ベスト3!

第3位: 『Astor Piazzolla Y Su Orquesta De Cuerdas / Tango En Hi-Fi
僕的にはピアソラには2回のピークがあったと思っていて、その最初の山がここ。世間的には1度目のキンテート押しが多いですが、音楽面で言えばあれはポピュラー化という妥協のあとの音楽で、妥協前のこれこそ至上。

Scoenberg_Moses und Aron_Boulez_RoyalConcertgebou第2位:『シェーンベルク:歌劇《モーゼとアロン》 ブーレーズ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ネーデルランド・オペラ合唱団
僕が読んできた音楽の教科書で、シェーンベルクの代表的な作品としてこれを選んだものはなし。ところが僕はこの作品の冒頭を聴いただけで「ああ、これが音列技法以降のシェーンベルクの最高傑作間違いなしだわ」と思わされ、シェーンベルクが生み出した音列技法の狙いが突然氷解した気がしました。

第1位:『Jeanne Lee with Ran Blake / The Newest Sound Around
初めてこの音楽を聴いた時の衝撃と言ったらもう…。
Jeanne Lee Ran Blake_Newest Sound Aroundジャズを和声法の進化という観点から見れば、ビル・エヴァンスやジョン・コルトレーン以上の重要人物。僕はこのアルバムがラン・ブレイクとの初遭遇、あの感動は一生消えない

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 今年もお世話になりました!今年はけっこうビッグネームを取りあげる機会が多かったですが、それもこれもお仕事で依頼されるミュージシャンを中心に音楽を聴く事になった功罪でして…。それこそラン・ブレイクやドン・コサックの音楽がそうですが、音楽の重要な歴史を追っていくと知名度や人気とはまったく違う音楽地図が浮かび上がってくるんですよね。本当はそっちの方が今の僕の興味の対象なんですが、もうしばらく我慢が必要かもしれません。
 来年はいい年になると良いですね。それでは皆さん良いお年を!

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2022年に聴いたアルバム 独断と偏見のベスト34 +α(前編)

 2022年は、去年に続いてのコロナ禍に加え、ウクライナ戦争首相暗殺が起き、この3つの印象がとくに強かったです。新型コロナには僕自身が感染してしまって4日ほど寝たきりのヘルプミー状態でした。ブログはアップしましたけどね(^^;)。
 戦争は、犠牲者が出ても平然と続ける人たちに腹が立つにはもちろんですが、日本の景気にまで影響しての物価高…貧乏な僕はつらいっす。世界の皆さん、戦争反対の声をあげましょう!首相暗殺は、申し訳ないですけどああいう事件が起きたとしても不思議ではないほど、この国の政治腐敗は進んでいるという実感がありました。あの人がこの10年でやった事とその犠牲者の数を思い返せば、ね…。というわけで、ここ数年は、僕が生まれてから一番ひどい時代じゃないかという感触があります。つらいっす。

 この手の悲劇にはうんざり。今年読んだ『方丈記』みたいに、何度戦争の悲劇を繰り返しても、欲や我執に取りつかれて同じ過ちを繰り返し続ける頭のわるい人たちからは離れて生きていこうという気持ちになりました。そういう人たちではまず理解できないだろう音楽はいいですね。僕が今年あげるベスト10の音楽が、人間に対してどういう機能をしているのかなんて、ああいう人たちには想像すら出来ないでしょう。すまんな。

 音楽と言えば、実は数年前から音楽の原稿をご依頼いただくようになりまして、今年はその量がえらく増えてしまいました。音楽が大好きな私なので最高にありがたい事なのですが、その依頼内容がジャズとロックに偏っていまして(いちおう僕はクラシックを修めたんですけど^^;)、その下調べに追われ、大好きなクラシックや民族音楽を聴く暇がなくなってしまいました。今年から民音の記事が激減した理由はこれです。

 というわけで、今年聴いたレコードの中で良かったもを全て振り返ります!いっぱいあるので、前後編に分けさせていただきます。それではさっそくスタート!

Murakami_5dasekiRenzokuHR20220802.jpgスポーツ
 とか言って、まずはスポーツから(^^;)。、カーリング女子日本代表のスーパーショット、村神様の5打席連続ホームランを含む日本記録更新、そしてワールドカップ・サッカーの日本代表の奇跡のような勝利!これ、ぜんぶ今年なんですよね。暗いニュースだらけの2022年でしたが、その中で喜びを与えてくれたのはスポーツでした。

2022冬季五輪 女子カーリングすばらしかった!
格上を倒して勝ち上がっていくロコ・ソラーレに連日夢中でしたぜ

千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希、13者連続奪三振を含む19奪三振、しかも完全試合!
ものすごかったけど大好きな江夏豊の記録が抜かれたのはちと寂し

KillerInoki_Blody.jpgヤクルト村上宗隆、5打席連続ホームラン!
この時には60本越えすると思うぐらいに凄かった。逃げずに勝負を挑んだ敵もまた見事

2022W杯 日本、ドイツに勝ったあああああ!!
油断して次の試合で格下相手に星を落とすところまで含めて最高!スペインを倒した試合も、クロアチアとのPK戦も凄かったけど、このW杯が数千の命を奪って強行された事を知り、こういう大会を楽しむ事に罪悪感を覚えて記事に出来ず

DVD『キラー猪木』
2022年の私的ニュース1位は猪木の逝去。子供のころの僕のヒーロー、たくさんのロマンを有難う

第34位~21位
というわけで仕切り直し、僕が2022年に聴いたアルバムのベスト34です。いきます!

IsikawaSayuri_20seikinoMeikyokutachi 8第34位:『石川さゆり / 二十世紀の名曲たち 第8集
若草恵のアレンジとチェコ・フィルの演奏にゾクゾク

第33位:『Savoy Brown / Live in Central Park
よもやいまだ現役とはやるなロックじじい

第32位:『Calypso - The Best Of Trinidad 1912-1952
歳を取ればとるほど中南米の音楽の明るさが生まれた喜びのように感じられる

第31位:『Judas Priest / British Steel
私的ヘビメタ最高峰の1枚、でもジャケットは痛そうで見てられない

jACKS_jACKS NO SEKAI第30位:『ジャックス / ジャックスの世界
若い頃に心震わせた音楽が霞んで見える切なさよ(でもランクイン)

第29位:『ブルース・クリエイション / LIVE! 白熱のブルース・クリエイション
黎明期の日本ロックはギタリストのエグさが素敵

第28位:『Duke Ellington & John Coltrane
アーリータイムを生きぬいたジャズマンの音楽性は傾聴に値する

第27位:『Ohio Players / Skin Tight
レアグルーヴの気持ち良さを知ったらドラッグなんて必要ないと田代さんに伝えたい

Hopkinson-Smith-A-portrait.jpg第26位:『Hopkinson Smith / Album
なんでこんなにたくさん弦がある楽器を弾けるんだすげえ

第25位:『Billie Holiday / The Complete Original American Decca Recordings
ビリー・ホリデイの良さは「奇妙な果実」ではない、この暖かさだよおっかさん

第24位:『杉山清貴&オメガトライブ / THE OMEGA TRIBE
Lonnie Liston Smith_Expansions林哲司の作曲センスすげえ。日本のAOR最高峰じゃなかろうか

第23位:『Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes / Expansions
「ジャズもレアグルーヴも取りこんだブラコン」という自分の説明下手にがっかりだよ

第22位:『Neil Young / Tonight's the Night
ブロ友さんから「酷評された1枚」と聴いて、評論家の無能をまたしても知ってしまった

Jefferson Airplane Bless Its Pointed Little Head第21位:『Jefferson Airplane / Bless Its Pointed Little Head
ジェファーソン・エアプレイン最高傑作間違いなし!なぜそれが分からないのじゃ

映画・TVドラマ
なにせ今年は忙しいこと風の如しだったもんで、映画やテレビはほとんど見ることが出来ませんでした。そして驚くのは、ここにあげる映画&TVドラマのすべてが小学生の時に観たもの。つまり僕って、子供の頃しかTVドラマや映画を観ていなかったのかも。。

TVドラマ『熱中時代』ファースト・シリーズ
首相が殺され戦争も終わらない現代に必要なのは北野先生の優しさ温かさだ

UltraSeven_BluRay1.jpgTVドラマ『ウルトラセブン
人生で何周観ただろう、物心ついてから死ぬまで見る事決定だなこりゃ

映画『じゃりン子チエ 劇場版』 はるき悦巳原作、高畑勲監督
鉄板に鼻水が落ちて湯気が出るシーン、これですよ

映画『大魔神
シン・ウルトラマンよりこっちの方が映像がすげえと思うのは俺だけじゃないはず

第20位~11位
こうやって見ると、今年は本当にワールド・ミュージックや純邦楽を聴かなかったんですねぇ。大好きな音楽も聴けない生活、来年は何とか改善したいです。

FREE Tons of Sobs第20位:『FREE / Tons of Sobs
「All Right Now」をフリーと思っているうちは2流ですぜ。フリーはこれを聴ないと始まらない

第19位:『ベルク:歌劇《ヴォツェック》全曲 バレンボイム指揮、ベルリン・シュターツカペレ
だんだん「やっぱりベルクよりシェーンベルクの方が凄いんじゃね?」と思い始めた時にこれを聴いてやっぱりベルクだな、と

第18位:『Duke Ellington / The Ellington Suites
音楽面から見たエリントン全盛期は、エンターテイメントから解放された最晩年だと僕は思っちょりますが、それを証明する大名盤

HotTuna.jpg第17位:『Hot Tuna
ジェファーソン・エアプレイのメンバーが演奏した、ジェファーソンの数段上を行くレイドバック・ミュージック。しかも馬鹿テク

第16位:『The Don Cossacks Of Rostov / Cossack Folk Songs
コサックが持っていた音楽…こういうのを聴くだけで時間も場所もワープできちゃうから音楽はすごい。ついでに言うと、こういうものに触れてさえいれば、ロシアが悪いとかウクライナが悪いとかいうアホみたいに単純な二元論を無責任に発言する馬鹿が減るはず

第15位:『マーラー:交響曲第2番《復活》 ショルティ指揮シカゴ響
死の恐怖にどう克つか、それを追い続けたのが西洋の19世紀だったのでは

第14位:『Omara Portuondo / Buena vista social club presents Omara Portuondo
レイドバック・ミュージックを聴くならやっぱり中南米ですよ奥さん

Wien Modern 3第13位:『ヴィーン・モデルンⅢ』 アバド指揮、グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団
リアルタイムに現音を追っていた時代にしびれた1枚。今でも素晴らしいと思う

第12位:『Mercedes Sosa / Serenata para la tierra de uno
もうね、この人のアルバムはぜんぶランクインさせたいですよ(しないけど)

第11位:『John Mayall / The Blues Alone
John Mayall_Blues Aloneいぶし銀のカッコよさはジョン・メイオールと木戸修から学んだ

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 素晴らしいものを選外にする必要はないと思って、いつも今年聴いたアルバムの中で心にビンビン来たものはぜんぶランクインさせてるんですが、それだけに僕の中に深く刻まれた音楽は、聴かずともぜんぶ音が脳内再生できてしまいます。素晴らしい音楽です。20位でも30位でも、ここにあげたものはすべて超おススメ、これらの音楽を僕は一生聴き続けるんだろうなあ。というわけで、20位から1位までは、また明日!!

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『八神純子 / ゴールデン☆ベスト』

YagamiJyunko_GoldenBest.jpg 1978年に本格的なデビューをした女性シンガー・ソングライターの八神純子さんのベスト盤です。「みずいろの雨」は耳にしてましたが、僕が八神さんをはっきりと意識したのは「パープル・タウン」。小学生のころ、八神さんが「パープル・タウン」を弾き語りしているのを聴いて、人も曲もとんでもなくカッコよく感じたんですよね。次にヒットした「ミスター・ブルー」も同じで、この2曲で八神さんは子供時代の僕にとって特別な存在となったのでした。

 バンドの演奏は1980年当時の日本の最先端レベル。クロスオーヴァーなサウンド・メイクが抜群だったんですね。このベスト盤にはミュージシャンのクレジットがありませんでしたが、松原正樹さんや後藤次利さんあたりがこぞって参加してたんじゃないかなあ。八神さん本人の発声も素晴らしいし、曲も自分で書いてるし、いい事だらけ。

 ところがいま聴くと面白く感じられませんでした(^^;)。なんでだろう…そうか、曲が面白くないんですね。子供のころに僕がシビレた「パープル・タウン」や「ミスター・ブルー」は、サビがキャッチーだっただけで、曲全体を聴いてしまうと面白くない事が判明。しかし、何回聴いても「パープル・タウン」って平歌とさびがまるでつながって聴こえないなあ。
 曲やアレンジ(ついでに歌唱)の弱点は同じで、一部分を切り取るとよく出来てるのに、全体を通して聴くとドラマが無いんですね。これを日本昔話に例えれば、曲やアレンジって「じいさんがやられた!→仇討ちに鬼が島に向かうも道中で苦戦→ついに鬼ヶ島を発見、死闘の末鬼を切り伏せた!」みたいに、押し引きをはっきりさせるもんだと思うんです。でも八神さんの曲は「山で芝刈りした→川で洗濯した→畑に芋植えた」…こんな感じで順番に並列に並べるばかりで、序破急や起承転結が曖昧でした。いつぞや紹介させていただいたトッホ『旋律学』に倣って言えば、曲で一番高い音は、盛り上げる時に一度だけしか出さない、長い音符が続いたら短い所も作らないと間延びする…こういうセオリーを守らないとどうなるかの見本のようなんですよね。同じことが歌唱にも言えて、発声はいいのに平歌でも頑張って張っちゃうから、曲に抑揚がなくなって平べったくなっちゃう、みたいな。

 とはいえ、子供のころの感動は今もどこかで覚えていました。八神さんの音楽が当時の日本文化の何かと映しているとは思わないんですが、でもアメリカ丸パクリを是としたあの空気感を日本というのであれば、それだって日本文化の反映なのかも。日本の歌謡曲を年代別に並べて聴くと、僕は1979年か80年を境に歌謡曲をたくさん聴くようになったようなのですが、その頃というと、泥臭い歌謡曲の中に洗練されたサウンドを持ったニューミュージックが入り込んできたころ。良くも悪くも日本の歌謡曲が次のステップに踏み込んだ瞬間を、僕は八神さんを通して見ていたのだと思います。


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『渡辺真知子 / 2000 BEST』

WatanabeMachiko_2000Best.jpg  1977年にデビューした女性シンガー・ソングライター渡辺真知子さんのベスト盤です!子供のころ、「ハ~ア~バ~ア~ライトが~」ってメロディがテレビから流れてくるだけで、「いい曲だなぁ」って思って聴いてました。あの曲アタマ、本当に素晴らしいと今でも思います。他にも、「た~と~え~ば~、たとえばたとえばたと~え~ば~」とか、「唇よ~あつく君をかた~れ~」とか、実にキャッチーで好きな曲がいっぱいありました。あの頃ぼくは小学校低学年…外で遊びまくって、夕方以降はテレビばかり見てました(^^;)。

 デビュー曲「迷い道」が77年、以降78年「かもめが翔んだ日」、79年「たとえば…たとえば」、80年「唇よ、熱く君を語れ」。70年代末から80年代にかけてコンスタントにヒットを飛ばしていましたが、この時代ってニューミュージックの波が来た頃でもあって、歌番組を観ていても、新しいものと古いものが混在していました。というわけで、だんだん番組が用意したビッグバンドだけでは通じなくなってきていたんですよね。オケだけでなくアレンジ、サウンドメイク、発声や声を含めた歌い方の傾向、日本の歌謡曲の内容自体が変わっていった時期だったのかも知れません。

 こうした時代のはざまに立った渡辺真知子さんがどっち側の人だったかというと、80年代型じゃなくて70年代型の人なのかも。これはいま聴いての感想ですが、同時期の荒井由実さんや八神純子さんが持っていた感覚とは対照的に感じます。
 70年代型と80年代型なんてのは好みの問題、どっちがいいというもんでもないですが、聴く時期によって僕の感想は変わるみたいです。リアルタイムで聴いていた子供時代は、むしろ新しいと思っていたし、とにかくキャッチーで大好きでした。歌手ではなく自分で作曲している点も「ミュージシャン」って感じで、格好良く感じました。それが80~90年代になってから聴くと、古臭く感じました。声がおばさんっぽいし、アレンジも70年代っぽい、詞が「アイアイ哀愁」とか「迷い道クネクネ」とか、ちょいとダサいぞ…みたいな。さっきべた褒めした「かもめが翔んだ日」のイントロも、その直後のオケは信じられないぐらいダサいアレンジですしね(^^;)。
 それが、リアルタイムから40年以上たってから聴くと、またしても感想が逆転。吉田拓郎中村雅俊が歌った4畳半住まいの大学生のささやかな幸せ的な世界観、あるいは『傷だらけの天使』や『探偵物語』みたいなテレビドラマに写り込んだあの時代の日本を感じて、たまらなくなりました。

 こうなってくると、70年代的な感性をその時々でどう感じるかという事であって、単純な音楽の良し悪しじゃないですね、この音楽には70年代から80年代に移っていくあの時代の日本の何かが痕跡として残っている、という事なのでしょう。渡辺真知子さんを聴くと当時の日本の風景が思い浮かぶんですが、洋楽丸パクリの八神純子さんを聴いても思い浮かばないんですよね。基本的にアメリカ音楽のフォルムではあるけど、その中に何か70年代の日本的なものが音に入ってる音楽と感じます。それにしても懐かしかったです、あの頃は楽しかったな…。


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『尾崎亜美 / ゴールデン☆ベスト』

OzakiAmi_GoldenBest.jpg 70年後半の女性シンガーソングライターのブームが過ぎると、残念ながら突き抜けきれなかった尾崎亜美さんは東芝と契約解除。時の流れは厳しいっす。そんな尾崎さんでしたが心機一転してレコード会社を移籍、、80年代から90年代なかばまでポニーキャニオンに在籍。これは尾崎さんポニキャ時代のベスト盤です!
 この時期の尾崎さんって、ソロ・アーティストとして活動してたのかどうか、僕は知りません。知っているのは、アイドルに楽曲提供する作家仕事で、僕が尾崎亜美さんを知ったのは、尾崎さんが松田聖子さんに提供した「ボーイの季節」の作家としてでした。なんと素晴らしい曲と詞なんだ…感動して何度も聴いたんですよね。それは、同じく松田聖子さんに提供した曲「天使のウインク」も同じ。というわけで、尾崎さん本人が歌っているこれらの曲を聴いてみたいと思い、このアルバムにたどり着いたのでした。

 久々に聴いて思ったのは…おお~東芝時代の尾崎さんに比べると鼻声が直ってる!曲も単なるメロディの羅列ではなくクオリティが段違いの完成度になってる!これは素晴らしいぞ…と思いきや、今度は見事だったはずのオケがスッカスカだ(^^;)。ついでに、ミックスがものすごいやっつけ仕事だ!なるほど、ここが東芝とポニキャの差か…。
 シンセでざっと打ち込み作って、メロコード譜だけ持ってスタジオに入って、フォーリズムでざっと合わせてオシマイ、というプロダクションで作られた音楽でした。これをやっちゃうと、曲のどこを聴いても同じデュナーミクで同じテンポになってしまうし、アクセントもスイングもどんどん消えちゃうので、音楽がぜんぜん歌わなくなっちゃうんですよね。打ちこみばかりで作られた音楽を聴くたびに、プロの生演奏の表現力の高さを分かっていない制作陣が多すぎると思ってしまいます。だってもし分かっていたら、仮に予算が少なくても重要な部分だけは生演奏を混ぜるでしょうから。

 アレンジの雑さ、ろくにリハーサルもせずスタジオに入って初見で終わらせたような仕事の雑さ、そして製作費をケチったポニーキャ〇オン、これらが敗因ではないかと。中島みゆきさんあたりもそうですけど、作家のセルフカバー・アルバムって、たぶんレコード会社が予算をつけてくれないんでしょうね。このへんのケチった感が残念。このベスト盤にしたって、シロウトだって今どきこんな雑な画像処理はしねえよと思うようなひどいジャケットとか、愛が感じられないですものね。
 僕は90年代に尾崎さんの歌を生で聴いた事がありますが、うまいし表現力もすばらしくて、歌手としての技量に感激したことがあります。こんなもんじゃないです。モノづくりをする人は、お金出してくれる人の言いなりになりすぎてはいけない、いいモノを作るために妥協しちゃいけない所は妥協しちゃ駄目、録音はずっと残るものだから、良いものを作るためにはレコード会社との衝突を避けてばかりじゃダメ、戦う所は戦わないと…そんな事を学ばされたCDでした。それにしても、曲が素晴らしかった事は、最後にもう一度書いておきたいです。


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『尾崎亜美 / アーリー・尾崎亜美』

OzakiAmi_EarlyOzakiAmi.jpg 1976年にデビューした女性シンガーソングライター尾崎亜美さん、初期のベスト盤です。なんで「アーリー」なのか…尾崎亜美さんはもともと東芝に所属していましたがその後ポニーキャニオンに移籍、のちにまた東芝に復帰したから…かな?つまり尾崎亜美さんには東芝時代が2回あるわけで、このCDは移籍前の東芝に残した音源からのセレクトでした。

 素晴らしいのは、作詞作曲だけでなく、編曲もほぼ全部自分でやっている事です。1曲だけ松任谷正隆さんが編曲した曲がありましたが、あとは編曲もぜんぶ自分。ストリングスやコーラスの入ってる曲が多いんですが、これを自分でアレンジしたという事ですよね。ブラボー!

 僕がポップスのソングライターで「それはないだろ」といつも思うのは、メロディとコードだけ作る事を作曲と呼ぶ人が多い事です。バスを1度か5度にして、上声部を4度と6度と9度にして、カウンターラインを加えて、楽器間のシンコペーションを作って…みたいな事すべて含めて作曲だと思うんです。ドビュッシープーランクの歌曲を、歌メロとコードだけで表現して「いい曲だ」と思うなんてありえないじゃないですか。だから、コードとメロディ作って「作曲」というのは僕的にはナシ。その点、尾崎さんはそういう作編曲すべてちゃんと自分でやっているので、正真正銘の作曲家と言えると思っています。
 ブームだった事もあり、70年代にデビューした女性シンガーソングライターさんは多いですが、ちゃんとアレンジまで自分でやる人はかなり少ないです。竹〇ま○やさんあたりは言うに及ばずですが、荒井由実さんですらアレンジは自分でしませんからね。極端に言えば、作曲はアマチュアでも出来ますが、編曲はプロでないと難しいです。その意味で言うと、山下達郎さん、林田健司さん、来生たかおさんなど、男性シンガーソングライターにはそれなりに編曲も出来る人がいるのですが、女性は稀なんですよね。というわけで、尾崎亜美さんはJポップスの女性作曲家陣の中でも「本物」と言える人だと思います!

 これだけ褒めておいてなんですが、このベスト盤に収録されていた音楽は、曲に面白みがないし、ヴォーカルが鼻声でちょっとアレでした(゚∀゚*)エヘヘ。。というわけで、技術は職人技だけどセンス足りない裏方向きな努力家タイプなのかな…と思いきや、尾崎さんはこれで終わるような器の人ではありませんでした。続きは次回!


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『ドヴォルザーク:《交響曲第7番》 《8番》 《9番》 《交響詩野ばと》etc. クーベリック指揮 ベルリンフィル』

Dvorak_Syn7-9_Kubelik.jpg 「ドヴォルザークって『チェロ協奏曲』と『新世界より』ばかり聴いてきたけど、そういえば他の管弦楽曲を聴いた記憶がないな」な~んて思ったのは、仕事の打ち合わせの帰りに寄ったクラシック中古盤屋さんでこんなCDを見つけたからでした。で、気がついたら買っていました(^^;)。CDを整理するって言ってるのに、減るペースと増えるペースが釣り合ってきている今日この頃です(^^;)。
 ドヴォルザークのシンフォニーは7番から9番がとくに評判がよく、このCDはクーベリック&ベルリン・フィルの演奏でその3つを聴けてしまうようにした編集盤です。録音は7番が71年、8番66年、9番72年。さらに、それだと尺が余ってしまうからか(それとも元のLPがそういう選曲だった?)、クーベリック&バイエルン放送交響楽団の演奏で交響詩《野ばと》op.110 と、クーベリック&ボストン響でスメタナの交響詩《モルダウ》も収録されていました。

 交響曲第9番《新世界より》。ジュリーニ&ボストン響の演奏をこの前聴いたばかりなので、こっちの方がステレオ感が強い録音だとかダイナミックレンジの広い演奏だとか、比較して色々と言う事は出来るんですが、まあおおむね似たような感想で、どちらかを聴いていればそれで十分じゃないかと…いい加減ですみません(^^;)。でもわざわざ両方買って聴き比べるほどのもんでもないと思ってしまったのでした。というわけで、9番の感想はジュリーニ&ボストン響の方をご参照くださいませ。

 交響曲7番ニ短調 op.70なんだこの素晴らしさは…9番《新世界より》を聴いてきて「ドヴォルザークは素晴らしいメロディメーカーだけど作曲能力は如何なものか」なんて思っていた事をお許し下さいという程に見事なシンフォニーでした。
 けっこう民族色が強かったです。舞曲だけがそうなんじゃなくて、1楽章から相当にエキゾチック。でも後期ロマン派シンフォニーの洗練された書法も見事に反映されていて、これは一流作曲家だわ、と思ってしまいました…手のひらクルクルですみません(^^;)>。3楽章の舞曲はいかにも東欧風(しかもエキゾチックでカッコいい)、なるほどドヴォルザークが国民楽派と呼ばれている事を思い出しました。その手の民族色を感じたのは第4楽章もそうで、昔聴いたチェコの民俗音楽のCDの事を思い返したりしながら聴いていました。

 交響曲8番ト長調 op.88。第1楽章の印象だけで言えば颯爽とした明るい曲。2楽章はパウゼの使い方も楽式も独創的で見事、短調から長調に開けていく感じ。3楽章は舞曲で、これも国民楽派らしくどこかエキゾチック、でも暗くないです。4楽章もやはり長調、目まぐるしくムードの変わる変奏曲で、グランド・フィナーレって感じの音楽でした。
 つまり明るいんですよね。この明るさが実に清々しくて、チェコって実際に行ったらどういう国なんだろうな、って思ったりしました。

 指揮者のクーベリックはチェコ出身。なるほど、ドヴォルザークがチェコ出身なので起用されたんでしょうね。そう言えば同じくチェコの作曲家ヤナーチェクの曲も棒を振ってたなあ。他にもマーラー「千人の交響曲」の指揮も聴いた事がありましたが、どれも良い印象ばかり。社会主義化したチェコから亡命した後にバイエルン放送楽団の常任指揮者をしていましたが、日本でいう小澤征爾のチェコ版みたいな位置づけの人なのかも。

 ドヴォルザークのシンフォニー、9番は確かにメロディがよくて印象に残るけど、完成度は7番8番の方がだんぜん上と思ってしまいました。しかし一部屋ぎっしりCDとレコードという状態なのに、こんなに有名で見事な音楽ですら聴いてない(覚えてない?)んだから、死ぬまでにいい音楽を全部聴いてやろうなんて無理な夢なのかも知れません。それにしても、これは衝動買いして買ってよかったCDでした!


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『ドヴォルザーク《交響曲第9番 新世界より》 シューベルト《交響曲第8番 未完成》 ジュリーニ指揮 シカゴ交響楽団』

Dvorak_Shinsekai_Schubert_mikansei_Giulini_Chicago.jpg ドヴォルザークと言えばやっぱり交響曲第9番「新世界より」でしょう!子供のころから何度聴いて来たか分からない曲で、僕の母は2楽章の「家路」のメロディが大好きだったんですよね。でもあまりに有名で何度も耳にしてきたものだから、自分でCDを買ったのは20代後半になってからでした。仕事で必要になり、あわてて近所のレコード屋に走って指揮者もオケも選ぶ余地もないまま廉価盤を手にしたのでした。それがこのCD だったのですが、これが予想以上の素晴らしさで、ジュリーニ&シカゴ響は素晴らしかったです(^^)。1977‐78年録音という事は、シカゴ響は常任指揮者にショルティを迎えた全盛期。さすがでした。

 ドヴォルザーク『交響曲第9番 新世界より』。ドヴォルザークはチェコのボヘミア出身ですが、3年ほど院長としてニューヨークにある音楽院に呼ばれたことがあって、その時に感じたアメリカの印象を交響曲化したのがこの交響曲だと言われています。たしかに大有名な第2楽章(のちに一部が歌曲化されて「家路」になりました)なんて、広大なアメリカの大地と夕焼けを見ているような気分に本気でなれます。あ~気持ちいい。。最後の4楽章の分かりやすくドッカーンと爆発する感じも、アメリカ的と言えばそうかも(^^)。こういう「雄大さ、レイドバック感、シンプルかつ派手」という作風って、意外とのちのアメリカ音楽に影響を与えたのかも知れませんね。そうそう、この曲の1楽章って、聴いているとチャイコフスキー6番『悲愴』と錯覚する時があります。なんでだろ?
Dvorak_Shinsekai_Schubert_mikansei_Giulini_Chicago_2.jpg でもそれだけではない気もしました。たとえば3楽章はロングフェローの詩に登場するネイティヴ・アメリカンの宴から霊感を得たと言われているそうですが、むしろチェコの舞曲みたいな気がしました。シンフォニーの3楽章に舞曲を置くのは普通ですが、アメリカというのだったら北軍時代のダンスパーティーの音楽をモチーフにしたって良いわけで、どこかにチェコへの思いもあったのかも知れません。
 ただ…「新世界より」って、仕事をしながらBGMとして聴いている分には良いんですが、いい曲だと思ってちょっと集中して楽式なり何なりをアナリーゼしようとすると、テーマやメロディの反復が嫌になるほどしつこくて、作曲の技術としてはどうかなと思ってしまいます。スマヌス。

 シューベルト「交響曲第8番 未完成」。ドヴォルザーク「新世界より」のあとに聴くと、作編曲の面で洗練されて感じました。ドヴォルザークを聴いていると、「第1主題作って、第2主題作って、これをあっちに貼って…」みたいな創作過程でのパズル作業を感じたんですが、シューベルトに未完成はすごく自然に音楽が流れて展開していく感じ。楽器の重ね方や抜き方もうまいから、管弦楽法的な意味でも聴いているだけですごく勉強になるっす。でも僕、大学生の頃にシューベルトをちょっと真面目に分析した頃は、「シューベルトって編曲があまりうまくないな」なんて思ったんですよね(^^;)。これはどういう事なんでしょうか。

 演奏は、同じ曲の演奏家違いや録音違いをたくさん聴いているクラシック・マニアの人は色々と言いたい事がありそうな演奏とも思いましたが、僕にはこの演奏と録音に慣れてきたし、不満に思う点はなく和弦も綺麗だったので、すごく気に入っています。ただし録音のSNがちょっと悪いので、スピーカーで聴く分には問題は感じませんでしたがヘッドフォンで聴くとノイズが気になるかも。
 そして最近、ドヴォルザークのシンフォニーの7番と8番を聴こうと思って、クーベリック&ベルリン・フィルのCDを聴きまして…その話はまた次回!


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『ドヴォルザーク《チェロ協奏曲》 《森の静けさ》 ジャクリーヌ・デュ・プレ(cello)、バレンボイム指揮、シカゴ交響楽団』

Dvorak_CelloConcerto_JacquelineDuPre.jpg ドヴォルザークのチェロ協奏曲、こちらは100年にひとりと言われた女流チェロ奏者ジャクリーヌ・デュ・プレの演奏です。デュ・プレさんはこのCDで指揮をしている世界的指揮者のバレンボイムと結婚。音楽の神に愛されたかのような天賦の才に恵まれた人でしたが、多発性硬化症という難病に侵されて42歳で他界してしまいました(・_・、)。無情にも天は二物を与えず…。

 これはデュ・プレ25歳の時の1970年の録音なのですが、まるで50年代の録音かというほど音が良くないです。大きい音になると歪むし、オーケストラよりチェロの方が音量も音像も巨大(^^;)。これは録音機材の問題じゃなくって、たんに録音エンジニアが下手くそなんじゃ…オケ以外にチェロの前に別のマイクを立ててますが、こんなバランスありえない、絶対にクラシックどころか音楽を知らないエンジニアだよ。これだからメジャーレコード会社の勤め人エンジニアは嫌なんだよな…昔のEMIって、録音がひどいものが多くて残念、今まで何枚録音のまずいものを掴まされてきたか(- -*)。

 デュ・プレさんの演奏、最初に耳につくのは、ピッチがめっちゃくちゃ良くてやばいです!擦弦楽器の人って表現過多になっちゃう事が多々ありますが、デュ・プレさんはそういう過度の表現を避けるためか、ヴィブラートも少なめでしっかり弾く感じ。フレットレスの楽器で、これだけノンヴィブで音程が良いって驚きでした。また、表現過多になり過ぎないからなのか、メロディがすごく綺麗に聴こえます。そして、弓を強く押し当てて演奏してるのが意外。ほら、うまい人って、どの楽器でも力が抜けてるじゃないですか。弓を使う楽器だと、弦の上に弓を置いている程度にしか触れてないというイメージだったんですが、マエストロがこんなにしっかり弾くということに驚き。なるほどこれでいいのか、なんか勉強になりました。

 というわけで、夭折の女流チェリストの演奏はなかなか素晴らしそうなんですが、チェロばかり聴こえてオケが全然聞こえてきません。かえすがえすもこれはいい録音で聴いてみたかった。。


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『エルガー《チェロ協奏曲》 ドヴォルザーク《チェロ協奏曲》 ミッシャ・マイスキー(cello)』

Dvorak_Elgar_Cello Concerto_MischaMaisky 僕がエルガーの曲で知ってるのは、有名な「威風堂々」、ひとつ前の日記で書いたエニグマ変奏曲、そしてこのチェロ協奏曲です。僕はドヴォルザークとエルガーのチェロ協奏曲をカップリングしたCDを他にも持ってまして、それはカザルスの演奏。チェリストと言ったらまず名前があがるだろう超一流ですが、録音が悪すぎて管弦が全然聴こえなかったのでした(>_<)。。というわけで、この2曲は(恐らく)2度目のトライ。ドヴォルザークのチェロ協奏曲が、バーンスタイン指揮イスラエルフィルとの、エルガーがシノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団との共演でした。

 ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」ひと言でいうと雄大でした。ドヴォルザークは元々チェコの作曲家ですが、一時期アメリカの音楽学校に招かれてアメリカに滞在していた事があります。ドヴォルザークの作品でいちばん有名な交響曲「新世界にて」もそうですが、なんだか地平線まで見通せるような荒野で夕日を眺めてるような雄大さを感じるんですよね。この雰囲気って、コープランドやハリウッド映画の劇伴なんかのアメリカの管弦楽に受け継がれているように感じます…実際にはドヴォルザークはいい作曲家を育てられなかったらしいですが(^^;)。
 ところで…いつか聴いたカザルスの演奏はチェロしか聴こえませんでしたが、こっちのCDはその逆で、チェロの音が小さい_| ̄|○。ドヴォルザークのチェロ協奏曲って、チェロ協奏曲の中でも屈指の傑作なんて言われてますが、こんなにチェロが控え目な曲なのかなあ。音量が小さいからそう感じてしまうだけな気もするんですが、なかなかうまくいかないもんですね。。

 エルガー「チェロ協奏曲」、こっちはドヴォルザークと違ってチェロがガッツリ前に出てました!でもなんというのかな…マイスキーって、一音一音かみしめるように演奏するんですね。それはいいんですが、木を見て森を見ずというか、常に力んで演奏していて、でも全体の押し引きがなくって、ずっと同じように演奏してるように聴こえてしまいました。サラッと通過するところ、表現を犠牲にしてでも突っ走るところ、このCDみたいにたっぷり演奏するところと、色々駆使してドラマを作って欲しい…な~んてエラそうな事を思ってしまいました(*゚∀゚*)アハハ。若い頃のカラヤンみたいに行く所でガツンと行く人か、レヴァインみたいにコントラストをはっきりつける指揮者と組んだら、いい演奏になったかもしれません。こういうのっって相性あるんでしょうね。

 チェロのミッシャ・マイスキーは、現在活躍しているチェリストの中でもトップクラスに評価が高い人だと思うんですが、このCDだとオケと競争しているというよりも、オケの上に乗っかってるようで、自分で音楽をグイグイ作っているように聴こえませんでした。常に同じ表現で、細かく見るとたっぷりですが、大きく見るとドラマがなくて平べったい音楽になっちゃってます。う~ん、僕は傑作と言われているドヴォルザークとエルガーのチェロ協奏曲にはどうも縁がないみたいです(^^;)。。


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『エルガー《エニグマ変奏曲》 コダーイ《ハンガリー民謡「孔雀」による変奏曲》 ブラッヒャー《パガニーニの主題による変奏曲》 ショルティ指揮ウィーンフィル』

Elgar_Enigma_Solti.jpg 指揮者ショルティがおじいちゃんになってから録音した近現代の管弦楽変奏曲集です。う~ん目のつけどころが面白いです。僕的なお目当てはエルガーのエニグマ変奏曲。有名な曲だけどちゃんと聴いた事がなかったのでね(^^)。

 とかいいつつ、1曲目のコダーイ『ハンガリー民謡「朱雀」による変奏曲』にやられました!いや~、この曲ってデュトワ&モントリオール響の演奏で聴いたことあったんですが、こんなにいい曲とは感じていなかったもんで驚きました。音楽にとって解釈や演奏や録音ってものすごく大事なんですよね。。東欧の国民楽派らしくエキゾチック感3割と、後期ロマン派独特の匂いたつような官能性7割のブレンド具合が絶品でした!そしてこのCD、音がいいです。音がいいもんだから、少し変わったサウンドが弦でブワーッと鳴ると、「うわああああ気持ちいいい!!」ってなっちゃいます。そして、22分あたりのクライマックスの劇的な和声進行、これはグッと来てしまうではあ~りませんか。善き哉。

 ブラッハー「パガニーニの主題による変奏曲」。聴いた途端に「あ、この曲知ってる」と思ってしまいましたが、僕が知っているのはパガニーニの24のカプリースのオリジナルの方でした。最初以外、僕にはぜんぜん変奏に聴こえないし(^^;)。ブラッハー、僕的には現代音楽の印象が強いんですが、ブラッハーでいちばん有名なこの曲はまだバルトークっぽいというかストラヴィンスキーっぽいというか、けっこう新古典な感じです。これはもういいや…スマヌス。

 そしてお目当てのエルガー「エニグマ変奏曲」。エルガーというと、「威風堂々」とこの曲が有名。あと、個人的にはチェロ協奏曲が好き…それぐらいの知識しかありません。すみません。1分半ほどの主題のあと、14変奏まで変奏されていって、それぞれの変奏がエルガーの友人のスケッチ、という事です。ところがこれが強烈に保守的な作風。今のハリウッド映画の管弦楽BGMみたいで、僕の肌には合いませんでした。うう。

 近現代のイギリスの作曲家というと、僕はブリテンとエルガーぐらいしか聴いてないかも。ティペットも聴いたけど、よく覚えてないです、保守的だなと思ってそれまで。そういう意味でいうと、イギリスの作曲家って、他の国に比べてかなり保守な傾向にあると感じます。というわけで、エルガーを聴こうとしたらコダーイに感動してしまったCDでした(゚∀゚*)エヘヘ。


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『Savoy Brown / Witchy Feelin'』

Savoy Brown Witchy Feelin レコード屋で見つけてビックリ、驚きのあまり間違えて買ってしまったサヴォイ・ブラウン2017年発表のアルバムです。サヴォイ・ブラウンって現役だったのか。だって、ジョン・メイオールヤードバーズと同じ時期のバンドだよな…調べてみたら、再結成じゃなく、ずっと活動を続けていたみたいです。すげえ。

 でもこれが衝動買いしてよかったと思える良作でした!なんとギター、ベース、ドラムだけのスリーピースで、不良老人どもが悪そうで図太いブルース・ロックをズドーンと演奏してました。ドラムもギターも野太い音をしていて、これはかっこいい。
 ヘヴィーなリフを基調にブルース・ロックを演奏するところは昔と同じ。一時期、箸にも棒にもひっかからないような産業ロックな事をやってるのとか、ウエストコーストみたいなサウンドメイクをしている曲とかを聴いたことがあって、「サヴォイ・ブラウンも終わったな」と思った事があったんです。でも骨太なブルース・ロックをやらせたらさすがにカッコいいですね。つぶやくように歌う所なんかで、ちょっとだけダイアー・ストレイツを思い出したりして。

 若い頃の僕はロックの中で、ブルースロック周辺が一番好きだった気がします。ジミヘンフリークリームも、みんなそう。夢中になったサイケだってベースはブルースロックのバンドが多かったですしね。そういう意味で、いちばん自分の中にある音楽というか、ペンタトニックでスリーコードのワンパターンにさえ陥らなければ落ち着くのかも。2000年代のローリング・ストーンズのアルバムもチラッと聴いた時に「あら?昔よりチャンとブルースロックしていてかっこいいんじゃないの?」と思った事があるし、不良爺さんたちのバンドは侮れないっす。70歳になってもこういう音楽を演奏し続ける人生って、なんか憧れるなあ。これは推薦です!


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『Savoy Brown / Live in Central Park』

Savoy Brown Live in Central Park 1972年、サヴォイ・ブラウンからフォガット勢が大量離脱した直後に行われたライブです。サヴォイ・ブラウンって、フォガット勢が抜けた後の71~2年にスタジオアルバムを3枚出していますが、その中の曲を中心に演奏していました。世間的にはノーマークのアルバムかも知れませんが、僕的にはデビュー直後の2枚のアルバムに並ぶサヴォイ・ブラウン最高傑作と思っています。僕はフォガットが大好きですが、サヴォイ・ブラウンに関してはフォガット勢が絡んでいない時の方が好きなんですよね(^^)。。

 リーダー以外は総入れ替えという時期に、ここまでカッコいいライブを出来ちゃうところがすごいです。ギターソロになるとペンタトニックになる等々、要所にブルースの匂いは残ってますが、このロック魂あふれる音楽を聴いてブルースと感じる人はあまりいないと思います。エレピがこのバンドの泥くささをいい意味で緩和していて、これがいい隠し味。
 骨太な演奏もいいですが、それ以上にリフと歌メロのノリが最高な曲が最高でした!この頃のキム・シモンズさんはマーク・ボランやトニー・アイオミに並ぶリフ作りの名人じゃなかろうか、な~んて思ったりするほど。「Let It Rock」と「Tell Mama」は僕的には永遠の名曲です(^^)。

 自分以外のメンバーが全員抜けちゃう過酷な状態からバンドを立て直したキム・シモンズはすごいです、えらいです、タフガイです。僕だったら、そんなことあったら人間不信でもうバンドなんて二度と出来なくなっちゃいそう。そんなわけで、キム・シモンズさんからは逆境をチャンスに変える事を…あれ?なんの話でしたっけ?まあいいや、大好きなアルバムです!


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『Savoy Brown / Looking in』

Savoy Brown Looking in サヴォイ・ブラウン1970年のアルバムです。メンバーは、リーダー&ギター&ピアノのキム・シモンズ以外は全員フォガット勢。ところがフォガット勢はこのアルバムを最後に全員脱退( ;∀;)。キム・シモンズが首にしたのか、メンバーが造反離脱したのか…契約切れだったんでしょうね。フォガット結成は大成功だったし、サヴォイ・ブラウンもメンバー総入れ替えでいい音楽になったので、結果的にはお互いに良かったのでしょうが、キム・シモンズさんは精神的にも実務的にもきつかっただろうなあ。自分が育てた弟子や後輩に突き上げ喰らったアントニオ猪木や前田日明あたりの気持ちがよく分かるってもんです。

 演奏どころか曲自体がもうスリーコードばかりじゃなく、音楽のメインもバンド・ブルースではなくなってました。ブルース曲もありましたが、それですらロック色が先行してる感じ。しかしそれが音楽的には…う~ん、僕はブルースもロックも好きなので、どっちのスタイルだから好きとか嫌いという事はないんですが、ブルース・バンドのロックへの転身ってうまくいかない事が多いですね。。でもちょっと面白かったのは、僕が大好きなフォガットのデビュー・アルバムでやってた「Leavin' Again」を、このアルバムでもうやってる事。でも、フォガットの方がアレンジが面白くて、こっちはちょいと退屈(^^;)。誰がフォガットのアレンジをやったか分かりませんが、あれは見事だったなあ。

 サヴォイ・ブラウンは英国3大ブルースロック・バンドの中でも果敢にブルースじゃない方向を模索したバンドでした。その挑戦は良かったのでしょうが、いい出口が見つからずに迷走、ついでにメンバーの大量脱退まで起こしてしまいました。これでサヴォイ・ブラウンも終わり…かと思いきや、この後にサヴォイ・ブラウンの最高傑作ではなかろうかというロックでブルースなライブ・アルバムを出すのだから、キム・シモンズは男です。えらい!その話はまた次回!


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『Savoy Brown / Blue Matter』

Savoy Brown Blue Matter サヴォイ・ブラウンのサード・アルバム、1969年発表です。このアルバムからトニー・スティーヴンス(b) が加わって、メンバー的にはさらにフォガット色増し増し。僕はフォガットから遡る形でサヴォイ・ブラウンをきいたもんで、このアルバムは完全にフォガットのメンバー目当てで聴いたアルバムでした。

 渋い、渋すぎる…将来ある若者がこんな渋い音楽やってていいんでしょうか、20代の若者が、人生の酸いも甘いも経験したような音出してます(^^;)。個人的には、何曲か入ってるピアノ入りのスロー・ブルースが好きで、特に2曲目のピアノ入りスロー・ブルース「Tolling Bells」はしびれました。
 一方のバンドブルースは、オーバードライブがかったギターがすごくロックで、かっこいいブルースロックって感じ。ついでに、基本的にリフを基調とした曲作りになってるもんで、演奏がうまくなりつつ魔女が出てこない初期ブラックサバスみたいな感じでした。

 このアルバムはブルースだけにならない工夫が色々とされたアルバムと感じましたが、それでもこの辺までは「ブルースロック・バンド」という肩書きの似合うバンドだったんじゃないかと。ただ、1曲が長く、セッションっぽい曲がそれなりにあって、そういう演奏はだるく感じちゃいました。手を変え品を変えの工夫は悪くないけど、ど直球で来たファーストやセカンドのほうが強烈なインパクトを感じました。フリーやフリートウッド・マックもそうでしたが、ブルースロック・バンドって最初はいいけど、途中でワンパターン解消を狙うも苦労するバンドがとっても多いと感じます…スマヌス。


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『Savoy Brown / Getting To The Point』

Savoy Brown Getting To The Point サヴォイ・ブラウンがバズったきっかけになったセカンド・アルバム、1968年発表です。ここからバンド名が「サヴォイ・ブラウン・ブルース・バンド」から「サヴォイ・ブラウン」になりました。でも音楽は逆で、ファーストの方がロック色が強いブルースで、セカンド・アルバムの方が純粋なバンド・ブルースに近いと感じました。ファーストアルバムから残ったメンバーは、リーダーのキム・シモンズとピアノのボブ・ホールだけで、あとは一新。このアルバムからデイヴ・ぺヴァレット(g, vo) とロジャー・アール(dr) という、後にフォガットを形成するメンバーが参加していました。

 買う気が失せるほどカッコ悪いジャケットですが、音楽は素晴らしい!うーんこれはカッコいい、1曲目からTボーンウォーカー張りのシティ・ブルースじゃないですか!以降、シャッフルのドラムの切れ味が凄い曲、ギターがバトルする曲、もろにシカゴ・ブルースな曲、インスト曲までありと、プレイで聴かせてしまう曲がめじろ押し。うまいというのじゃないのだけれど、バンドブルースのツボを押さえた演奏ですね、これは(^^)。ギターのキム・シモンズさんは、心の底からブルースが好きな感じがギターの音色や演奏に出ている感じ。自分が本当に好きな音楽をやると、そういうものが音にあらわれるのかも知れませんね。

 このアルバムを聴いて連想するのは、エリック・クラプトンが参加したジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズのアルバム。というわけで、僕が聴いたことのあるサヴォイ・ブラウンのアルバムでは、これがいちばんシカゴ・ブルースに近くて、ファースト同様大好きなアルバムです。ジャケットさえカッコよければ、名盤認定されていたんじゃないかなあ。


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『Savoy Brown Blues Band / Shake Down』

Savoy Brown Blues Band Shake Down 60年代後半にイギリスで大量に発生したブルースバンドのひとつが、サヴォイ・ブラウン。これはそのデビュー作、1967年発表です。僕、50年代のシカゴの本物の黒人バンド・ブルースも好きですが、それ以上に60年代のイギリスのブルース・バンドが好きなんです(^^)。リフとかヴォーカルとかバンドの一体感にちょっとだけロックな匂いがするところがポイントかも。そうそう、ヴォーカルのブライス・ポルティウスという人がアフリカ系のミュージシャンなんですが、ブリティッシュ・ロックのバンドでブラック・ミュージシャンがメンバーになったのは彼が最初だとか。ビートルズがもてはやされた60年代イギリスで、フロントに黒人を据えるって、そのセンス自体がたしかにカッコいいです。

 この若干ロックなバンドブルース、メッチャかっこいいです!デビュー作からこのレベルか、すばらしいじゃありませんか。サヴォイ・ブラウンの中心はキム・シモンズというギタリストなんですが、これも最高。というか、もう一人いるギターもカッコいい。。オーバードライブがかったギターが不良っぽくていい!
 また、50年代の黒人バンド・ブルースに比べるとドラムが芸達者なので、あそこまで単調になりません。ギターはリフをかなり強調していて曲が個性化しやすくなっているし、ついでにギターソロが聴かせどころになっていたりして、音楽としてもシカゴ・ブルースより進化してるように感じました。インスト曲も何曲か入ってましたが、インスト曲で聴かせてしまう所ひとつをとっても、白人のブルースが音楽だけでも聴かせられるレベルにまで来ていたという事なんでしょうね。実力あるブルース・ロック・バンドの出現で、60年代のイギリスのビート・ミュージックがアイドルバンドのブームで終わらず、ロックとして進化する土台になっていったんじゃないか、なんて思ってみたり。

 やっぱり60年代イギリスのバンドブルースは最高です!ブルース・ブレイカーズもチキン・シャックもサヴォイ・ブラウンもフリートウッド・マックも全部カッコいい、みんな好き。サヴォイ・ブラウンは日本だとイマイチ知名度がありませんが、他のバンドにまったく引けを取らないすばらしいブリティッシュ・ブルース・ロック・バンド。このファースト、間違いなく名作と思います!


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『Bing Crosby, Fred Astaire / Holiday Inn』

Bing Crosby, Fred Astaire Holiday Inn ヴィンス・ガラルディの「Christmas Time Is Here」を知る前までの僕にとっては、クリスマス・ソングといえば「きよしこの夜」と「ホワイト・クリスマス」でした。特に後者は何となく新しく感じて、子供のころから「いい曲だなあ」と思ってました。山下達郎さんのア・カペラ・アルバム『On The Street Corner 2』でも感動しましたしね。
 ところが「ホワイト・クリスマス」って、クリスマス・ソングではあるけどクリスマス・キャロルではないんですよね。ではあれが何の曲だったのか、僕は最近まで知りませんでした。それがある仕事中のMC でヴォーカリストさんが曲の由来を話してくれて、はじめてどういう曲だったのかを知りました。「ホワイト・クリスマス」はミュージカル映画の中の劇中歌で、映画は1942年制作『Holiday Inn』。主演はビング・クロスビーとフレッド・アステア、音楽監督はアーヴィング・バーリン。アーヴィング・バーリンは有名なアメリカ人作曲家で、「ホワイト・クリスマス」以外では、「ショウほど素敵な商売はない」(『アニーよ銃を取れ』劇中歌)や「イースター・パレード」(このアルバムに収録)あたりも有名です。

 音楽は管弦伴奏にコーラス入りで男性ヴォーカルという、いかにもミュージカル音楽といった作りでした。男性ヴォーカルは、ビング・クロスビー8割強でフレッド・アステア2割弱ぐらい。プレスリー登場前のアメリカ白人のエンターテイメント音楽って、オッサンが低音を効かせて歌うヴォーカル率高いですよね。全員ポマードで髪を撫でつけた73分け、みたいな(^^;)。。大きい声じゃ言えませんが、僕はあれがどうしても苦手で、このアルバムもミュージカル調のアレンジやオッサンくさい男声ヴォーカルに拒絶反応を起こしてしまって、音楽自体は楽しめませんでした。ホワイト・クリスマスも油ギトギトな中年男に歌われてもなあ、みたいな…スマヌス。

 でもいいと思った所もあって、特に驚いたのは録音の良さ。42年って、日本で言えば「リンゴの唄」や「東京ブギウギ」より古い時代ですが、その時代にモノラルで管弦もヴォーカルもこれだけ綺麗に聴こえるって、いったいどういう録音技術なのでしょうか。アメリカのイメージって遅れてきたヨーロッパであって、ある時代までの文化は良くも悪くもヨーロッパの周縁地域みたいでしたが、ふたつの大戦の間に優秀な人材がヨーロッパからアメリカに亡命してきたことで、色んな技術や文化が飛躍的に発展したのかも知れません。アーヴィング・バーリンもベラルーシ出身だといいますし、クラシック作曲家の超大物もどんどんアメリカに移住してましたし。

 僕はチャーリー・パーカーエルヴィス・プレスリー登場以前のアメリカ白人のエンターテイメント音楽をあまり聴けていないもので、そのあたりの良さをまだ理解できていないのだと思います。ただ、ミュージカルとも相性が良くないし、あの低音男性ヴォーカルも好きではないので、このあたりの美感にチャンネルが合う日は死ぬまでないかも。最後の望みは、ハリウッドの戦前の名画かな…男声ヴォーカルさえ入ってなければ、戦前のアメリカのエンターテイメント音楽も好きなんですよね。。


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TVアニメスペシャル『スヌーピーのメリークリスマス A Charlie Brown Christmas』

Snoopy no Merry ChristMas ブログ友だちのAKISSH さんに紹介いただいて知った曲「Christmas Time Is Here」を初めて聴いたのは、動画サイトでの事でした。その動画が素晴らしくて、スヌーピーを含めたアメコミ『ピーナッツ』の2頭身半のキャラクターたちが、凍りついた湖でスケートを楽しんでいたのでした。たくさんの子どもたちがバラバラな角度でスケートを滑るというそのアニメーションの見事さに一瞬で心をわしづかみにされ、思わず元となったアニメを観てしまいました。それが1965年にTVスペシャル用に作られた24分ほどのアニメ『A Charlie Brown Christmas』で、これがコミック『ピーナッツ』の初アニメ化だったそうです。

 子どもたちは凍りついた湖でスケートを楽しんだり、サンタさんにプレゼントをねだる手紙を書いたりしている。チャーリー・ブラウン少年はそういうクリスマスにどこか違和感を覚えるが、おかしいのは自分の方だと思い、精神科に相談する。その精神科の医者というのが女友達のルーシーで、ルーシーはチャーリーからお金を貰えたと喜ぶばかりで、ろくな診察もしない。そんな時、チャーリーは学校でのクリスマス芝居の監督を務める事になり、クリスマスは何の日なのかという疑問をさらに募らせるが、それに答えたのは…

Charlie Brown Christmas_movie1 映像のデフォルメーションの見事さ、アニメーションの見事さ、キャラクターの愛らしさ、そしてメッセージの内容、いずれも素晴らしいアニメーションでした! なるほど、合衆国でエミー賞を受賞し、クリスマスのたびに再放送されて定番化したというだけの事はあります。これはいいものだ。アメリカやヨーロッパのクリスマスって、キリストの誕生を祝うという趣旨に則って、家族と静かに過ごすのが慣習だった時期があるそうです。そういう心情や雰囲気がすべてこのアニメひとつで伝わってくるような、そういう素晴らしさでした。

 日本のアニメって、今では大人になり切れない大きな子供が制作陣を固めてしまっているようなところがあって、それだけに内容自体が子供じみて感じます。でも昔は文化人が制作陣に入っていて、「子供にもわかるようにしてあるけど内容は深い」というものがけっこうありましたよね。それは海外もそうで、そういう時代のアニメは映画的と言ってよいほどメッセージや演出がしっかりしていると感じました。
 これはいいアニメ、観ることが出来て良かったです。プレゼントをねだるばかりのメンドクサイ子供や彼女がいらっしゃる方は、ぜひこのDVD やBlu-Ray をプレゼントしてあげましょう。きっと子供も彼女も謙虚になりますよ(^^)。


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『Vince Guaraldi / A Charlie Brown Christmas スヌーピーのメリークリスマス』

Vince Guaraldi A Charlie Brown Christmas もうすぐクリスマスという事で、クリスマスにちなんだアルバムを。1965年リリース、邦題『スヌーピーのメリークリスマス』、ジャズ・ピアノ・トリオによるクリスマス・アルバムです。何年か前に、ブログ友だちのAKISSH さんから教えていただいたのが、このアルバムに収録されている子供たちのコーラス入りChristmas Time Is Here」。これが「こんなに素晴らしいクリスマス・ソングって他にあるだろうか」と思ってしまうほど素晴らしくて、とうとう買ってしまいました、しかもヴィニールのピクチャーディスク(^^;)…可愛いんですよ、子どもたちがもみの木の下に集まっている絵柄が!ジャケットも僕が買ったのは鏡面仕上げで、今年はクリスマスまでこのジャケットを部屋に飾っておこうかと思っています(^^)。そうそう、このレコードでピアノを弾いているヴィンス・ガラルディは元々ジャズミュージシャンでしたが、ピーナッツ(スヌーピーが登場するコミック/アニメのタイトル)の劇伴を担当するようになってから、劇伴作曲家として知られるようになったんだそうです。

 「Christmas Time Is Here」はコーラス入りとインストの2種が入っていて、どちらも素晴らしいのですが、やはり個人的なフェイバリットは、子どもたちの声の入ったヴォーカル版。聴いていてジ~ンと来てしまいますが、なんでこんなに胸に迫るんだろう、泣きそうです。というわけで感動の理由を自分なりに考えてみた所、ポイントは子供たち可愛いらしくも一生懸命歌っている事、ピアノが弾きすぎない事、このふたつではないかと思いました。要するに、派手に騒がず、粛としてクリスマスを祝っているかのようなんですよね。欧米には、クリスマスになると子供たちがクリスマス・キャロルを歌って近所の家々を訪問する習慣があったそうです。そういう光景が目の裏に浮かんでしまって、胸が詰まってしまうのかも。この「クリスマスを、聖者に感謝しながら家族と静かにすごす」って所は、元になったアニメーションのテーマにも繋がっています。

 もうひとつ、このアルバムで良かったところがあります。このアルバム、ガラルディのオリジナルやベートーヴェン「エリーゼのために」など、色々な曲が入っているんですが、最初の2曲が「O Tannenbaum」(もみの木)と「What Child Is This?」(グリーンスリーヴスに新たな詞を加えたもの)で、クリスマス・キャロルなんです。クリスマス・ソングとクリスマス・キャロルは少し違うもので、「キャロル」である以上は宗教的な頌歌。キャロルが讃美歌と違うのは、それが教会で歌われわけではなく、もっと民衆の中で歌われた事。クリスマス・ソングはそういう臭共生関係なしに、クリスマスの歌だったらみんなクリスマス・ソングです。最初にきちんとキャロルを持ってきたあたり、すごくいいアルバムだと思いました。いやあ、ジ~ンとくるなあ。

 このアルバム、元々は1965年にアメリカでテレビ放送されたスペシャル・アニメ『A Charlie Brown Christmas』のサウンド・トラックだったそうです。このアニメが大ヒットし、クリスマス・シーズンになると毎年のようにアメリカで再放送されているうちに、いつしかこのアニメも、ガラルディの書いた「Christmas Time Is Here」も、合衆国のクリスマスの定番になり、アルバムは合衆国だけで500万枚も売れたんだそうで。腕はあるものの強い個性や主張を持たない職人気質な売れないジャズ・ピアニストだったガラルディにとっても、大きなクリスマス・プレゼントとなったアルバムだったのかも知れませんね。どうぞ皆さんにも、良いクリスマスが訪れますように。


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『藤圭子 / 艶・怨・演歌』

FujiKeiko_En En Enka 藤圭子のスタジオ録音を集めたCD5枚組ボックスセットです!藤圭子のレコードはスタジオ・アルバムを2枚、ライブ・アルバムを数枚聴いてたところで、「やばい、すごすぎる、これは全アルバムを買わされる」と感じ、ボックスセットでケリをつける事にしたのでした(^^)。日本人ミュージシャンにありがちですが、レコードは見つかりさえすれば安いんでしょうが、そもそも見つけにくいのでコンプリートするのが難しいんですよね。というわけで、はやい段階でボックスを選択した判断は正しかった気がしています。

 ディスク1「オリジナルを歌う」は、シングルのAまたはB面になった曲。園マリ「夢は夜ひらく」や竹越ひろ子「東京流れもの」など、藤圭子が初出ではない歌も入っていましたが、詞が変わってるから一応オリジナルでいいのかも。さすがに69~70年の曲は詞と歌唱のシンクロがヤバくて格別!そして71年以降のシングルだってなかなかどうしてすばらしかったです。71年以降では、「京都から博多まで」(72年)、「はしご酒」(75年) が特に良かったです。

FujiKeiko_pic2.jpg オリジナル曲以上に素晴らしかったのが、人の持ち歌を歌ったディスク2「男の情けを歌う」ディスク3「女心を歌う」でした。こんなすごいヴォーカルに歌われたら、オリジナルが全部かすんじゃうって…。
 まず、男歌を女性が歌って形になるのかと思ったら、これが様になるからすごいです。これって藤圭子のドスの効いた歌い回しだから成立するんであって、石川さゆりみたいな女らしい人だと難しいでしょうね。水原弘「黒い花びら」、フランク永井「君恋し」、アルバム『新宿の女』の感想にも書いた「柳ケ瀬ブルース」、このへんの歌は藤圭子の歌唱を聴いてしまったらオリジナルには戻れないです。驚いたのは千昌夫「北国の春」。この歌を良いと思った事なんてなかったんですよ、僕。ところが、藤圭子が「白樺…」と歌った瞬間に、心を持っていかれてしまいました。この4文字の中にどれだけの表現が入っているか…。

 女歌も素晴らしかったですが、藤圭子に合わない曲があって、月並みな女歌では藤圭子を支えきれないなどと思ったりもして。「カスバの女」「女の意地」あたりは最高でしたが、このへんは曲自体が良いですしね。他にも黛ジュン「恋のハレルヤ」などのロック歌謡的なものがマッチしていて驚き。意外にもペドロ&カプリシャス「別れの朝」が、合いそうで合わなかったです。ちなみにこの曲を一番素晴らしい形で歌ったのは世良公則だと僕は思っています。

FujiKeiko_pic1.jpg ディスク4「人生・昭和を歌う」は、僕が思うところの典型的な演歌調の曲が多かったです。藤圭子って「演歌の女王」みたいに言われる時があるけど、僕の印象ではそんなに演歌と感じないんですよね。でも、このディスクはかなり演歌でした。そうそう、このディスクには放送禁止歌も入っていて勉強になりました。「ネリカンブルース」(練馬鑑別所ブルース)や「裏町人生」は、このCDを聴かなければ知らないまま終わってたかも。
 他には、克美しげる「さすらい」、鶴田浩二「赤と黒のブルース」という歌謡ブルース調の曲も良かったです。60年代の昭和歌謡って、アイ・ジョージ「硝子のジョニー」みたいに、ブルース調の名曲があるんですよね。このへんって掘り下げたらいろいろ出てきそう。
 演歌調では笹みどり「下町育ち」、鶴田浩二「傷だらけの人生」の詞が良くて、小唄端唄から任侠映画あたりの世界観を感じました
 北島三郎「兄弟仁義」は、昔テレビで藤圭子とサブちゃんの共演を見た事があります。藤圭子の歌のあまりの凄さに、サブちゃんが首を振ってステージを降りたんですよ!そのぐらい、発声がものすごかったです。
 
 ディスク5「ふるさと・叙情を歌う」。童謡や民謡、唱歌などを歌っていました。僕が純粋にいい詩と曲だと思う学生歌「琵琶湖周航の歌」や、大正時代の唄「ゴンドラの唄」、それから岡林信康さんの歌唱で知って感動した事がある「もずが枯木で」、仲宗根美樹「川は流れる」など、選曲は見事と思いました。でも伴奏がレコード会社の用意したやっつけ伴奏が多くて、これにはさすがにゲンナリ。。いくら藤圭子の歌が素晴らしくても、伴奏が「ズン・チャッ・ズン・チャッ」じゃ音楽にならないって。。ペテンばかりで仕事にハートがない日本の古いレコード会社に災いあれ。

 どの時代にも素晴らしい所がありましたが、作詞家の石坂まさをさんと組んでいた初期がやっぱり抜群に素晴らしかったです。引退前は、藤圭子の歌はむしろ上手くなってるんだけど迫力が薄れた感じがするのと(ポリープの手術後かな?)、、伴奏がやっつけ仕事だったり。でもその中にチョコチョコと名唱が入ってるから、結局1度は通っておかないといけなかったのかな。。

 藤圭子の聴き方って、デビュー直後の『新宿の女』『女のブルース』を聴いて、ポリープ手術前のライブ・アルバムを聴くのが王道かも。それで足りない部分はこういうベストを買うか、あるいは腹を括ってすべてのアルバムを集めに行くか、というルートがいいんじゃないかと思います。僕は他の音楽や読みたい本もたくさんあったので予算に限界があって、藤圭子コンプリートの道はあきらめましたが、そっちに進んでも後悔はなかったと思える素晴らしいヴォーカリストでした。僕にとって戦後の日本歌謡曲最大のヴォーカリストは、美空ひばりでも宇多田ヒカルでもなく、間違いなく藤圭子です。


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『藤圭子 / 藤圭子リサイタル』

FujiKeiko Recital 1971年7月5日、デビューから2年たった藤圭子が東京のサンケイホールで行ったライブの録音です。70~71年の藤圭子といえば全盛どころか社会現象レベルの勢いの頃で、ライブ・レコードもバンバン出てました。コンサート自体がそうだったのかも知れませんが、苦労して歌手になった藤圭子の苦節を表現する歌を最初に集め、次に洋楽のコピーで前半終了。後半はシングル曲をズラッと並べて、さいごに新曲の紹介、という構成でした。

 現代的な耳で聴くと、「そして歌手になった、2年たった~」みたいに、いちいちナレーションが入るのがウザくてダサく感じてしまいました。「さあ圭子ちゃん、行こう!」はないだろ(^^;)。。弦も入った贅沢なオケでしたが、リズム隊とビッグバンドの演奏やアレンジもかなり残念で、歌のカウンターが「パッパカパッパッパッパッ」はナシですよね…。これ、ギター弾き語りか、ドラムレスのスモール・コンボぐらいで聴いてみたかったです。

 これだけ痛い点がありながら、歌が凄すぎて弱点なんて全部帳消し、聞き惚れてしまいました。考えてみれば、持ち歌の「女のブルース」も「新宿の女」も、詞はいいけど曲は大したもんじゃないですよね。ただ、詞とヴォーカルの説得力が凄いもんだから、すごい曲になってしまっただけなのかも。まあ、演歌ってそうやって作られている節もありますよね、詞と歌手頼りで、曲はどうでもいい、みたいな。日付が指定されているという事は差し替えなしだと思いますが(ライブ盤は2Days分を録音していいテイクを選んだり繋いだりすることが多い)、藤圭子さん、マジで歌すごい…。

 このレコードの独自性をあげるとしたら、北原ミレイ「ざんげの値打ちもない」のカバーと、洋楽を歌った所。「ざんげの値打ちもない」は、カットとなった刑務所内の描写をしたコーラスは無し…そもそも当時は問題ありとしてカットとなったコーラスの存在も知られてなかったのかも知れません。ロック気味なバックバンドの演奏が古臭くて、これは好みじゃなかったです(^^;)。
 良かったのは洋楽のカバーで、どれも日本語に訳して歌ってました。特にアニマルズ「朝日のあたる家」は出色、こんなの藤圭子に合わないわけがないじゃないですか。1コーラスはアコースティック・ギターのアルペジオだけですが、これって本人の演奏なのかな、映像があれば見てみたいです。。

 藤圭子さんのヤバさは、この人が歌うとどんな歌も説得力を持ってしまう事。言葉を大事にして、表現力は高いけど決して音は外さず、盛り上がる所でドスを効かせて一気に持っていき、そして客に媚びずに思いを言葉に託す…書き始めたらきりがないです。ファンであれば買い、ファンでない場合は藤さんはスタジオ録音でも充分に凄いヴォーカルなのでライブ版を買う必要もないかも知れませんが、洋楽カバーに興味があれば、といった所かも。でもこのレコード、今は入手困難みたいです。昔はけっこう安く手に入ったんだけどなあ…今だと、『藤圭子劇場』という6枚組CDボックスのディスク2がこれみたいです。


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『藤圭子 / 女のブルース』

FujiKeiko_Onna no Blues 藤圭子の歌にしびれ、レコード屋に走って買ってきたデビュー・アルバム『新宿の女』にノックアウトされた僕は、ファースト・アルバムを買ってから数日も立たないうちに、このレコードを買っていました。のめり込むときって、そんなもんですよね。デビューアルバムから4か月後にリリースされたセカンド・アルバム、70年発表です。

 これも素晴らしかったです。素晴らしかったなんて軽々しく言えないぐらいの衝撃。「女ですもの恋をする、女ですもの夢を見る…」の出だしが有名な「女のブルース」や、のちの藤圭子さんの歌の軸のひとつになっていった任侠路線の走り「命預けます」は有名。もう、とにかく歌に圧倒されます。うまいと言えばうまい、すごいと言えばすごいんですが、上手いからとか凄いから良いわけじゃなくて、うまさや凄さが言葉とイコールに繋がっているところが素晴らしいです。もう、頭で考える前に言葉が刺さるというか。歌ってこういうものですよね。。

 歌と一緒に、時代背景も一緒に聴こえてきているのかも。60年安保の時代を代表する曲が西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」だったとすれば、70年安保の時代を代表する曲って、藤圭子「夢は夜ひらく」じゃないでしょうか。安全保障条約の更新は、日本の独立が実質的に出来なくなった出来事で、今も他の国の軍事基地が日本にあるという状況。終戦から25年、不平等条約にも等しい条約の延長に反対した人の挫折感や、やるせない心情たるや、想像に難くないです。その中で、「夢は夜ひらく」での「どう咲きゃいいのさ、この私」や、このアルバムに入っている「女のブルース」の「どこで生きてもいつか散る」という言葉は、他人事とは思えない重さで胸に刺さったのではないかと思います。なにせ、その時代をリアルタイムで体験していない僕ですら、ちょっと胸に来てしまいましたから‥。それぐらい、歌の説得力が圧倒的でした。

 もうひとつ、このアルバムはデビュー作と違い、カバーがなくオリジナル曲で固められていました…たぶん(^^;)。で、全曲とも作詞が石坂まさをさん。あとから知った事ですが、石坂さんが藤圭子の才能に惚れて、二人三脚で藤圭子のレコードデビューまでこぎ着け、さらにそこからのプロモーションにも並々ならぬ協力をしたのだそうです。言って見れば70年のアルバムチャート1位はすべての週で藤圭子だったという巨大な社会現象とまでなった初期の藤圭子は、藤圭子と石坂まさをのふたりで作り上げた世界だったのでしょう。1970年という戦後日本の大きなターニング・ポイントで大きな挫折を味わった国民に何を聴かせるか、ここを含めての藤圭子現象だったのではないかと思います。

 僕が藤圭子にどっぷり嵌ったのはもう何十年も前になりますが、その時は「この人のアルバムは全部聴いてみたい」と思ったほどでした。でもその頃、藤圭子さんのアルバムはCD化が進んでいないし、LPは僕の行動圏の中古レコード屋では手に入れる事自体が難しかったんですよね。というわけで、僕が買った藤圭子のオリジナル・スタジオ・アルバムはこの2枚。でも藤圭子の最初の2枚のアルバムは、日本人なら持っていて損はない名盤だと今でも思っています。


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『藤圭子 / 新宿の女』

FujiKeiko_Sinjyuku no onna 藤圭子と聞いて「宇多田ヒカルのお母さんね」なんて思う人もいるやもしれませんが、ヴォーカリストとしての表現力やフロントとしての強力さで言えば、宇多田ヒカルですらこの人と比較するのは失礼にあたるんじゃないかというほどの、ものすごいシンガーなんですよ、奥さん。演歌じゃなくて怨歌なんて言われるぐらいの迫力と表現力なんですよね(^^)。これは70年発表のデビュー・アルバムで、20週連続1位とかいうちょっと頭のおかしい記録を持っています。そして、ついにこのアルバムの連続一位を止めたのが、藤圭子のセカンド・アルバムだったという…そのぐらい、日本の70年の歌謡界は藤圭子一色だったと言える異常事態だったんでしょうね。

 このアルバムには、藤圭子が歌った歌で恐らくいちばん有名な曲「夢は夜ひらく」が入っています。僕がこのアルバムを手に取ったのも、この曲が入っていたからでした。園マリさんをはじめ何人かの歌手がヒットさせていた曲ですが、藤圭子が詞を変えて歌ったところ、まったく違った曲になってしまいました。今では、この歌は藤圭子のものと言って過言ではない状態です。有名な曲なので、僕も子供の頃からなんとなくは知っていました。ただ、「古くさいな」「しめっぽいな」みたいな、マイナス方面の印象の方が強かったんですよね。
 それが、ある居酒屋のカウンター席でこの曲をはじめてじっくり聴いた時に、耳を奪われました。歌の迫力と表現力が凄い…一緒に飲んでいたのはミュージシャン仲間だったんですが、ふたりして言葉を失い、音楽に聴き入ってしまいました。そのラジオは藤圭子特集で、その後も何曲かかかったんですが、いずれも見事。魅せられてしまいました。
 翌日すぐ、「夢は夜ひらく」の入ったオリジナルアルバムを買いに走りました。ベスト盤にしなかったのは、「この人はすごい、全部聴かなきゃだめかも知れない」と感じていたから。オリジナル曲といえるのは、藤圭子を世に出した作詞家・石坂まさをが絡んだ「新宿の女」と「生命ぎりぎり」の2曲だけで、他は誰かがヒットさせた曲のカバー。それでも、歌の表現が凄くて、取り憑かれたように聴いてしまいました。昔、ジョン・コルトレーン『ライヴ・イン・ジャパン』や、ライトニン・ホプキンスのアラジン・セッションを取り憑かれたように何度も聴いていた事がありましたが、それと同じ状態。完全に心を持って行かれたんですよね。

 「馬鹿だな、馬鹿だな、騙されちゃって」のフレーズが印象深い「新宿の女」、カバーしている人がいっぱいいるのに、これを聴いたらほかのカバーなんて聴く必要なしと思ってしまった「カスバの女」(ただしちあきなおみのカバーは捨てがたいです^^;)、素晴らしくて美川憲一のオリジナルまでさかのぼって聴く事になった「柳ケ瀬ブルース」、矢吹健のオリジナルを喰ってしまった「あなたのブルース」…言葉に自分が乗り移っているというか、これこそ歌だと思いました。聴いていて、他の事なんて考えられない状態になって歌に浸っている自分がいるんですよ。

 ジャズ/ブルースののニーナ・シモン、アルゼンチン・フォルクローレのメルセデス・ソーサのように、これこそが歌だと思わされたのが藤圭子でした。もし藤圭子のレコードを1枚だけ聴くなら、間違いなくこれを推薦します!


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「アニソンの帝王」水木一郎、逝去

Mizuki Ichiro うわあ、アニソンの帝王が逝ってしまいました。享年74歳、死因は肺ガンだそうです。アニメや特撮ヒーロー番組が大好きだった幼少時、この人の歌う歌をどれほどたくさん聴いてきた事でしょう。なにせ、好きな番組だったら放送のたびに同じ歌を聴いていたわけですから。

 そのくせ、幼少時に水木一郎さんを意識した事はありませんでした。名前すら知らなかったかも。歌は浴びるほど聴いていたんですが、それを誰が歌っているのかなんてまったく意識してなかったんですよね。幼少時にアニソン歌手として名前を知っていたのは子門真人さんとささきいさおさんぐらいでした。
 アニソン歌手を意識するようになったのは、音楽メディアがヴィニールからCDになった時でした。CD時代になって、懐かしのアニソンや特撮主題歌が、作曲家別や歌手別にまとめられる企画盤がたくさん出たんですよね。渡辺宙明菊地俊輔という作曲家を知ったのも、堀江美都子さんや水木一郎さんという歌手を知ったのも、この時でした。表に顔を出す事のなかったアニソン歌手が注目されるようになったのって、あのCD化の際の企画盤がきっかけだったのかも知れません。

 水木一郎さんと言えば「マジンガーZ」と「バビル二世」がよく取り上げられますが、僕が好きだったのは「侍ジャイアンツ」ED、「宇宙の騎士テッカマン」OP、「仮面ライダーストロンガー」ED、「大鉄人17」OP、この4曲です。ただ、この曲の歌唱が好きだったかというとそうでもなくて、曲が好きだったんですね、きっと。考えてみれば、アニソンの男性歌手で歌が上手いと思ったのはおぼたけしさんぐらいかも。それでも僕は恐らく水木一郎さんの歌った歌を20曲ぐらいは歌えるだろうし、幼少時に胸をときめかしたそれらの歌を忘れる事はないでしょう。そして、それらの歌を聴くだけで、もう戻ってこない最高だった幼少時の記憶も一緒に思い出すんです。
 だから、水木さんは自分の幼少時の記憶の一部であって、そこにはいい思い出しかありません。水木さん、どうぞ安らかに。


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『Miles Davis / A Tribute to Jack Johnson』

Miles Davis A Tribute to Jack Johnson 69年から70年のマイルスの音楽は、エレクトリックであり、とにかく長いグループ・インプロヴィゼーションという共通項を持っています。このレコードは、20世紀初頭に活躍したジャック・ジョンソンという黒人ボクサーのドキュメンタリー映画のサントラですが、実際には映画を想定して作った物ではなく、映画用のサントラをオーダーされた時にはすでに録音していたマイルスのエレクトリック・バンドの即興セッションを編集したものだそうです。録音は1970年の2月から4月…という事は、同じような作り方をされた音楽では、『In a Silent Way』や『Bitches Brew』より後、ライブの『At Fillmore』や『Black Beauty』より前のセッションという事になります。

 69~70年のマイルスのエレクトリック・バンドの長尺即興セッションの中では、すごくロックを感じるアルバムでした。だって、1曲目の「Right Off」(なんと26分超!)なんて、ドラムはエイト・ビート、ベースはシ♭をずっと「ボンボボンボ…」と演奏、マクラフリンのギターはワウを噛ませてカッティングしていて、まるでファンク。ちょっと洒落たコードやソロの取れるブッカーT&MGズ、みたいな感じ。
 ところがこれが鬼のようにカッコよくて、思わず燃えてしまいました。勝因は、このファンク調のコンセプトと、マイルスじゃなくて自分が主役と勘違いしたかのようなマクラフリンのギターにあったと思います。

 ジョン・マクラフリンって、マイルスの初期エレクトリック・バンドのセッション・マスターだと僕は思っています。マクラフリンの演奏で音楽のカラーが決まると言っても過言ではありません。マクラフリンが抜けた後は、その座にチック・コリアがついた感じ。どちらも「俺が仕切る」と思っていたわけじゃないと思いますが、ジャム・セッションって、うまい人や押しの強い人の色になるじゃないですか。
 この68~70年のエレクトリック・マイルスのセッションの特徴は3つあって、ひとつはマイルスが持ち込んだそれぞれのセッションの和声イメージとリズム。ふたつ目は、マクラフリンの持ち込んだロックっぽさ。3つ目が、チック・コリアの持ち込んだニュージャズ色のあるフリー・ジャズ/インプロゼーション色と僕は思っています。別の言い方をすると、音楽の作りはどれも似ているけど、セッション・リーダーによってその色がちょっと変わってくる、みたいな。このアルバムの場合は、コードを使ったバッキングにせよ弾きまくるアドリブにせよ、ディストーションで歪ませたエレキ・ギターを駆使するマクラフリンのロックな演奏の色がほとんど音楽を決めていて、ロックとしてカッコよかったです。

 ロック調のジャム・セッションな音楽って、気持ちはいいけど、ちょっとガキくさいですよね(^^;)。若い頃は燃えた音楽でしたが、歳をとったいま聴くと、正直言ってそう思います。でも、いつまでたってもウルトラマンもゲームも「ガキくせえよな」と思いつつ面白いと思ってしまう僕は、この音楽からも卒業できそうにないのでした。マクラフリン、カッコいいわ。。


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『Miles Davis / Bitches Brew』

Miles Davis Bitches Brew 1969年録音、ジャズ・トランぺッターのマイルス・デイヴィスが「エレクトリック・マイルス」なんて呼ばれる電化サウンドのフュージョンを始めたころのアルバムです。エレクトリック・マイルスでいちばん有名なレコードって、たぶんこれじゃないかと。日本だと、「ビッチェズ・ブリュー」がジャズのライブ・ハウスの名前にもなっているぐらいですしね。

 初期エレクトリック・マイルスの特徴は、チック・コリアジョー・ザヴィヌルらによるエレピとオルガンのサウンド、ジョン・マクラフリンのギター、13人の大編成、そして起承転結がなく同じビートに乗って延々と続くセッション、そして編集で音楽を構造化するレコード前提の音楽制作、このあたり。どこへ向かうでもなく、エレピやオルガンの気持ちいいで同じビートを繰り返す感じって、ブッカーTとか初期ミーターズとか、あのへんの音楽がそうですよね。ああいうのって、そのまま後のレア・グルーヴに繋がっていて、その全盛期がまさに70年に差し掛かるこのあたりから。タイミングから見ても、そういう音楽への目配りもあったのかも知れません。

 僕のお気に入りは、LP2枚目に入ってる「John Mclaughlin」。ミュージシャンの名前がそのまま曲名になってますが、エレピとオルガンとエレキギターが飛び交い、ひたすら黒いドラムがファンクなビートを刻むこの曲は、この時代のブラック・ミュージックのカッコ良さがギュッと詰まったように感じました。ブラック・ムービーなんて言うのもこの時代に流行りましたが、ああいう黒カッコよさ満載…って、マクラフリンは白い人ですけどね。。初期のエレクトリック・マイルスは、チック・コリア色が強くなるとインプロヴィゼーション色が強まって、マクラフリンが入るとロック・ビートが強まると感じますが、このアルバムはややマクラフリン色強めに感じました。

 若い頃の僕はジャズ愛が強すぎて、しかもコルトレーントニー・ウイリアムス参加時の強烈なマイルス・クインテットを知ってたもんで、「マイルスも金もうけに走ったか、それとももう苛烈なジャズをやるのはしんどくなったのか」と思ったものでしたが、芸術方面に走った60年代以降のジャズさえ意識しなければ、これはこれで気持ちのいい音楽でした。実際の時代としてはベトナム戦争も公民権運動もまっただ中なので、「黒人音楽を」という思いもあったのかもしれません。いずれにせよ、ロックが視野に入ったエレクトリック・マイルスは、『In a Silent Way』のような実験を抜け、ようやくこのアルバムから成果をあげ始めたように感じます。即興でセッションをやると、この頃のエレクトリック・マイルスをそのままはじめちゃう人がいるぐらい、好きな人にはたまらない音楽かも。


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『Miles Davis / In a Silent Way』

Miles Davis In a Silent Way 1969年録音、完全にエレクトリック・バンド化したマイルス・デイヴィスのアルバムです。エレクトリック化を進めるためでしょうか、前作から参加したデイヴ・ホランドが正式なベーシストとなり、ついにロン・カーターが脱退。マイルス/ショーター/ハンコック/トニー・ウィリアムスという基本チームはそのままに、このアルバムからエレクトリック・マイルスのキーマンのひとりとなるジョン・マクラフリンが参加、さらにエレピやオルガンといった電子鍵盤チームはハンコックとコリアに加え、ジョー・ザヴィヌルも参加。

 ここで聴かれるエレクトリック・マイルスの音楽は、ロック/ポップス方面の音楽をジャズ・ミュージシャンが演奏するタイプのものではありませんでした。近い音楽を挙げるとすれば、通常でいう所のジャズやロックやフュージョンではなく、フリップ&イーノあたりかも。
 若い頃はこの音楽からサイケデリックで呪術的な雰囲気を感じてもいたし、「難しい音楽だけど、分かってないのは僕の方なんだろうな」と考えたりもしていました。でもいま聴くとあまりに単純、目的もなくクライマックスも作れず、ただ音を出しているだけのセッションだったりして(^^;)。だって、A面なんてハットで16ビートを刻んで、その上にエレピやオルガンの音がブワーンて響いて、その上で適当にアドリブをしていくだけでお終いなんですよ。。

 それでも、今から振り返ればこの音楽って69年なんですよね。つまり、まだエレクトリック・ジャズもフュージョンも形を成していない頃で、黎明期特有の実験段階だったのかも知れません。そういう時期って成功も失敗もしないとアドヴァンスなものなんて生まれようもないし、この後マイルスは、この路線で強烈に光り輝く音楽を創りあげてしまうんですから、有意義なセッションだったと言えるのかも知れません。
 このアルバムをはじめて聴いた頃、僕はフュージョンをほとんど聴いていなかったもので気づきませんでしたが、実はマハビシュヌ・オーケストラウェザー・リポートリターン・トゥ・フォーエバーという70年代フュージョンの超重要バンドのメンバーがずらっと揃ってるんですね。歴史的な事はよく分かりませんが、もしかするとフュージョンのスタートって、このマイルス・デイヴィスのセッションだったのかも知れません。


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『Miles Davis / Filles de Kilimanjaro』

Miles Davis Filles de Kilimanjaro 1968年録音、ついにマイルス・デイヴィスが全曲エレクトリック・ジャズに踏み込んだアルバムです。編成は2次黄金時代クインテットがベースでしたが、曲によってチック・コリアとデイヴ・ホランドというバンド「サークル」のチームにメンバーが差し替えられていました。マイルスはまた横取りか、まるで読売ジャイ〇ンツみたいだね…後ろに大資本レコード会社がいるから怖いものなしですね(^^;)。

 エレクトリックであるかどうか以前に、ある和音のサウンド・イメージだけ作って、あとはアドリブでセッションを進めているように聴こえて、その印象ばかりが耳に残りました。これがダラダラとアドリブしているだけに聴こえてしまって、どの曲も音楽に起伏をつける事もクライマックスまでもっていく事も出来ず、僕的にはイマイチ。個々のプレーヤーは半音階使ったりといろいろ工夫の跡は感じるんですが、逆にそれでプレーヤーが考えながら演奏してしまっている、みたいな面もあったかも知れません。その音楽の語彙に慣れてくるまでは、インプロヴィゼーションを神聖視しすぎないほうがいいんじゃないかと思うんですよね。

 プレーヤー視点が強すぎて、楽曲全体を見渡すことが出来なくなってしまいがちというジャズ・ミュージシャンの弱点がもろに出た感じ。マイルスだからといって有難がるほどの音楽とは思えませんでした。68年というと、もうアメリカでもロックの影響が馬鹿に出来なくなった頃で、マイルスも焦ったのかも知れませんが、それにしたってこんなロックなやり方で良いものが出来るなんて思っちゃいけない、これはあかんですよ(^^;)。


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『Miles Davis / Miles In The Sky』

Miles Davis Miles In The Sky 1968年発表、マイルス・デイヴィスがはじめてエレクトリック・ジャズに踏み込んだアルバムです。とはいえ、エレクトリックでアプローチしているのは冒頭のナンバー「Stuff」のみで、あとはアコースティックでした。別の言い方をすると、マイルス最後のアコースティック・ジャズとなったのもこのアルバムという事ですね。

 メンバーは前作までと同じで、マイルスの第2期黄金クインテット。マイルス/ウェイン・ショーター/ハービー・ハンコック/ロン・カーター/トニー・ウイリアムスです。面白いのは、エレクトリックを演奏する時もメンバーが変わらない事。あ、1曲だけギターのジョージ・ベンソンがゲスト参加していましたが、これはちょっとかわいそうでした。アドリブなんてシャバラバで弾けないんですよね。でもこれはバンマスも悪くて、そのジャンルの共通言語になっているとは言えない音楽をやらせるなら、どうやればいいのかをちゃんと説明しないと(^^;)。それをいきなりリードシート渡して「弾け」と言われたって、そりゃドビュッシーラヴェルも学んできただろうビル・エヴァンスやハービー・ハンコックなら即対応もできるだろうけど、クラブ・ジャズやってきたギタリストにはちょっと酷ですって(^^;)。

 僕にとってのこのアルバムの聴きどころは、やっぱりエレクトリック・ジャズの「Stuff」でした。面白いですよね、僕はマイルスではアコースティックが好きなのに、このアルバムに関してはアコースティック・ジャズが面白く思えなかったんですから。その「Stuff」ですが、いま近くに鍵盤がないもんで詳しいアナリーゼは出来ませんが、パッと聴きでいうとハンコックのエレピがフォース・ビルドのサウンドを創っている事だけはたしかです。これがメッチャ気持ちいい…。
 クラシックで言うと、古典派やロマン派の音楽の和音は「ドミソ」と音を1個飛びにして積み上げていくんですが、印象派はこれを2個飛びにしました(すべてそうというわけじゃないです)。この曲はそれをやっていて、ここから導き出される和声構造がこの曲そのもの。コード・ネームで書くなら「D♭7#9」ぐらいの感じでしょうが、なんでわざわざ#9化するかと言えば、1・4・7…という順でビルドした際、次もフォース・ビルドしたければそこになるから。で、こういうサウンドの上でアドリブしようと思うと、基礎和音に7音音階を当てはめるよりも(管楽器ならそうするかも)、この和音をベースにその中間に入る音を導いた方が自然なので、モード的なサウンドになっていく、みたいな。
 このサウンドを気持ちよくしているのが、エレピだと思いました。ジャズやポップスでは聴き慣れないものだった音の重ね方の気持ち良さがこの曲の快感だとしたら、その状態が持続していると、気持ちい時間をより長く保つことが出来ますよね。これがエレピ導入の理由…であったかどうかは知りませんが、結果としてこの曲をさらに活かすサウンドになったように思いました
 和声ではなくリズムで導入されたのがロック。4分音符を「ダン、ダン、ダン…」と打つロック的なドラミング…これって、以降のエレクトリック・ジャズで大いに導入される事になりましたよね。こればっかりだとジャズのフォービートで培われた強烈なドラムのコンビネーションが使えないのでマイナスも多いと思いますが、たまにだと「お?!」って感じで気持ちいいです(^^)。もしかすると、エレピの導入はフォース・ビルドの持続より先に、ロックを組み込むことが狙いだったのかも知れません。

 ただ、まだリハーサル段階というか、演奏がノらない印象でした。まあこれはマイルスのスタジオ録音全体に言える事ですよね。スタジオで新しい事をやらされてメンバーが「え?え?」と何とか形を作っている段階で「はい、オッケー」となって、ようやく馴染んできた演奏が聴けるようになるのはライブから、みたいな。このへんが、大手レコードメーカーとアルバム契約をしたミュージシャンのきつさなんでしょう。良くても悪くても、完成途中であっても、アルバムを出さないといけないという(^^;)。


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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