2023年3月2日、ジャズのソプラノ/テナー・サクソフォニストのウェイン・ショーターが逝去しました。享年89歳。
ジャズ・メッセンジャーズ参加時のハード・バップから始まって、ブルーノート契約初期や
マイルス・デイヴィスのバンドへ参加した時のモード、そして僕がショーターのキャリア・ハイと確信している和声(ものによっては簡単なプログレッションも)つけられた上で、単なるアドリブではなくドラマも即興で構成してしまうインプロヴァイズド・ミュージック、そしてウェザー・リポート参加と、ジャズが大きく変化していった60年代から70年代、そのへんかにすべて対応していったプレーヤーでした。
僕はショーターさんの音楽を時系列順には経験していなくて、初体験はたぶんマイルス・デイヴィス『
AT PLUGGED NICKEL, CHICAGO』。コンボの一体感がとんでもない異次元の即興演奏で、即興中の曲の途中でいきなりガラッと変わるわ、トニー・ウィリアムスのドラミングは異次元だわで、これでショーターの名前が焼きつきました。でも、いま聴くと凄かったのはトニー・ウィリアムスと
ハービー・ハンコック、そして御大マイルスがすごかったのかも。
次に経験したのは、たぶんブルーノートと契約して出された初期の作品。『Juju』や『Speak No Evil』あたりです。でもこれがよく分からなくて、しばらく敬遠する事になっちゃったんですよね。。

そして時間を空けてから『
Odyssey Of Iska』と出会ったのですが、この衝撃と言ったら。。その後僕はマジメに音楽を学ぶことになったので、今ならどうすればこういう音楽を作ることが出来るかを言う事はなんとか出来るかもしれませんが(できるとは口が裂けても言えない^^;)、当時は本当にマジック。また、頭だけじゃなくて演奏能力という身体や、即興の中で音を音楽的に公正して鳴らすという音楽能力もここでピークを迎えたように感じました。ほぼ同時期のセッション『Super Nova』や『Moto Grosso Feio』もそれに準じる凄さでした。
その後ウェイン・ショーターが参加したウェザー・リポートは、フュージョンのグループ。このグループで僕が好きなアルバムはファースト『
Weather Report』だけですが、これはショーターではなく鍵盤のエレクトリック・サウンドのサイケデリック加減が好きだったのかも知れません。
最後に聴いたのが、ジャズ・メッセンジャーズ時代。いや、もっと前に聴いてはいたんですが、ブログ友だちさん(その方、今はブログの更新をやめてしまっています…残念)からメッセンジャーズ時代の良さを教えていただき、そういうものかと思って聴き直しました。なるほど、演奏より作編曲の意識の高さが先にあった人なんだと思い、なんだかすべての謎が解けた思いがしました。『
Free For All』は確かに素晴らしかったです!
こうして振り返ると、モダン・ジャズ以降のジャズの歴史のすべてを通過、しかも枝ではなく中心グループに常に在籍していたのですね。僕はショーターさんの関わった音楽すべてが好きだったわけではありませんが、音楽面のピークだっただろう『Odyssey Of Iska』や『Moto Grosso Feio』は、本当にすごい音楽だったと思います。60年代後半という時期にショーターさんが生み出したあの混沌としつつ、ロックなどではとうてい及びもつかないハードな音楽は、チック・コリア在籍時のエレクトリック・マイルスの音楽などと相まって、時代の音だったと言えると思っています。どうぞ、天国ではフュージョンやオーセンティックなジャズではなく、あのやばい音楽をその先を作ってください。合掌。