
日本語タイトル『タンゴの歴史第1集 グアルディア・ピエハ』、1967年リリース、
ピアソラがタンゴの名曲に挑んだアルバムです。高校時代に聴いたこのCDが僕のピアソラ初体験で、その
日本盤CDのタイトルは『アストル・ピアソラ・ベスト』で、第1集を全曲と第2集の中の4曲を合わせたものでした。というわけで、ピアソラの曲は1曲も演奏されていなかったんですが、これでタンゴとピアソラを初体験した僕は、この音楽に猛烈に感激したんですよ!「え、タンゴってジャズで言う
デューク・エリントンぐらいの古色蒼然とした音楽だと思ってたのに、こんなにカッコいいの?!すげえええ」みたいな。まあ、時代は確かに感じるんですけどね(^^;)。
若い頃に聴いて思ったのは、「タンゴって、曲中で長調だったら短調に、短調なら長調になってシーンを変えるんだな」という事。いま聴いて真っ先に感じたのは、キンテートと弦のバランスとアレンジが素晴らしい事。そして、かなり西洋音楽の教養を感じるというか、曲の中でいちばん盛り上がる場所が演奏でしっかり表現されていました。ロックやジャズだと、楽曲のピークを作っていない演奏って意外と多いんですよね。

これらをひっくるめて言うと、
タンゴってポピュラーではあるけど非常に劇的な構造を持った音楽なんですよね。ロックもジャズもそうですが、若い頃は英米発のリート形式の曲ばかり聴いていたものだから、こういう劇的構造や編曲を施したポピュラー音楽があるという事自体が鮮烈でした。しかも、クラシックと違って1曲がコンパクトなので、良さ分かりやすかったのも大きかったです。
編曲や演奏も込みとして、曲で衝撃を受けたのは、タンゴの大名曲「El Choclo」はもちろん、フランシスコ・カナロ作曲「Sentimiento Gaucho(ガウチョの嘆き)」、あとは…やっぱり書くのをやめます、みんないいので(^^)。で、その
良さの大半がアレンジで、途中で転調は入れるわ、元のメロ自体に手が入るわで、かなり大胆。これは単なる名曲集じゃないですね、ピアソラのアレンジで生まれ変わった面もあったんじゃないでしょうか。
僕のタンゴ初体験がこのアルバムで本当に良かったと今でも思っています。もし初体験がもっと古典寄りの
カルロス・ガルデルとか、逆にもっと現代よりのモサリーニだったら、タンゴにのめり込むのはもっと遅くなっていたと思います。
古すぎず新しすぎず、簡単すぎず難しすぎず、楚歌もタンゴの名曲がいっぱい聴けるという、タンゴ初心者が聴くにはまさにドンピシャのレコードでした。そして久々に聴いた今でも、聴くと「ああ、これはいいわ…」とジ~ンと来てしまいました。これはマジでいいです、企画盤だと侮るなかれ、素晴らしいタンゴのレコードだと思います!
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