fc2ブログ

心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『The Modern Jazz Quartet & Guests / Third Stream Music』

Modern Jazz Quartet Third Stream Music ジャズの歴史に残る意欲作にして超傑作、アルバムタイトルがそのままジャズの潮流の名前になってしまった大名盤です!1960年発表。クラシックでもジャズでもなく、クラシックとジャズを融合しての「第3の波」という流れの中から生まれたアルバムです。

 MJQ が真ん中にいる音楽であることは確かですが、どの曲もMJQだけで演奏(あるいはアレンジ)されているわけではなく、3つのセッションからなっています。2曲はMJQとジミー・ジュフリー・トリオの共演、1曲はガンサー・シュラー指揮で、MJQ と6人の室内楽器によるアンサンブル作品、2曲はMJQとボーザール弦楽四重奏団の共演作品です。もう、こう書いただけで音楽的に面白そうじゃないですか。実際に素晴らしいんですよ、これが。。

 「サード・ストリーム・ミュージックだ」という言葉を聴くと、ちょっと難しい音楽なのかと身構えてしまいそうですが、見事なアンサンブルでありながらレイドバックして心地よい音楽という特徴は、MJQ そのものでした。後半に進むにしたがってちょっとずつ高度な音楽になっていくんですが、MJQ らしさを失わないところが良かったです。もっとシリアスで芸術方面に進んでも面白そうでしたが、あくまでMJQ なんですね。しいて言えば、最後に入っていたボーザール弦Qとの共演だけが少し現代曲風の雰囲気ですが、それでも「これはザ・現代音楽だな」という所まではいっておらず、なるほどたしかにジャズでもクラシックでもないというコンセプトをしっかりとらえた音楽なのだと思いました

 MJQ の中で、音楽的に一番硬派なアルバムだと思います。月並みなものより独創的なものが好きな僕はもちろん大好きなアルバムですが、決して難しい音楽ではないので、もっとたくさんの人に聴かれていいアルバムだと思っています。だって、似たようなものばかり聴いてたって、面白くないじゃないですか。。


スポンサーサイト



Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『The Modern Jazz Quartet / Pyramid』

Modern Jazz Quartet Pyramid モダンジャズの中でアンサンブル重視の音楽を作るグループって極端なほどに少ないですが、モダン・ジャズ・カルテットは数少ないアンサンブル型のグループです。その音楽は、時としてジャズに入れていいのか迷うほど上品。高度な事をやったとしても難解な方にはいかないサロン・ミュージック的な匂いを感じるものが多いです。そんなわけで、ものによってはホテルで流れるBGMみたいになってしまう事もあるんですが、このアルバムはアンサンブルの妙と上品さのバランスがすごくよかったです!MJQ のアルバムの中で、僕的にはかなり上位に入るアルバムです。1959年発表。

 なんといっても、カノンで始まる1曲目「VENDOME」がクールでメッチャかっこいい!こういう事をやるジャズアンサンブルって少ないだけに唯一無比、MJQ じゃないと聴けない音楽だなあと、しみじみ聴き入ってしまいました。2曲目はまるでゴスペルのような音楽、3曲目は実に小洒落たカデンツァの組みこみ方をしたモダンジャズ的な音楽。途中でいきなり拍を倍に細かく刻んだり、やる事がいちいち粋です(^^)。サウンドがあまりに心地よいので、その心地よさだけに浸ってしまいそうになりますが、実際はこういう工夫が随所にあって、アンサンブルの妙にほれぼれしてしまいました。そして5曲目「HOW HIGH THE MOON」、バス+ヴィブラフォンのイントロ部からアンサンブルに入り、その途中から登場したピアノがヴィブラフォンの追奏…う~んめっちゃカッコいい。

 ハイドンの弦楽四重奏曲みたいなもので、雰囲気だけ聴いてしまうとBGMのように聴こえてしまうかも知れませんが、アンサンブルを追うと実に見事な音楽でした。MJQ ってたまに聞きたくなるんですが、聴くといつもため息が出てしまいます(^^)。このアルバム、超おススメです(^^)。。


Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『The Modern Jazz Quartet / No Sun in Venice』

ModernJazzQuinter_NoSunInVenice.jpg 邦題は「たそがれのヴェニス」、MJQが1957年に発表したアルバムで、MJQ のピアニストであるジョン・ルイスが映画『大運河』に書き下ろしたスコアを使っています。これ、中3か高1ぐらいの頃の僕が最初に買ったモダン・ジャズ・カルテットのレコードでした。ジャズの名盤ガイドで「MJQ 最高傑作」とべた褒めされていて、期待しまくって買いました。

 しかし、当時の僕はガックシ。外したと思いました。大人しすぎて、面白く感じなかったんですよね。このアルバムで面白いとしたら、映画の登場人物3人になぞらえた旋律があって、これを組み合わせたフーガがあったり、それぞれの旋律を使った曲があったりするところだと思うんですが、それ以前に音楽が鳴ってないので、楽しむより先に飽きてしまいます…。これを「フーガが」とか「メロディの転用が」なんて言うのはジャズファンだけであって、だったらバッハやバロックのあの壮麗なフーガやフガートの曲を聴いたうえで、このアルバムを「すごい」「いい」と言えるのかと質問してみたくなります。

 どうやら僕はこのアルバム自体より、このアルバムに対する「最高傑作」とか「MJQ の中でも特に素晴らしい」と言った評に反論したくなるみたいです。MJQ 大好きな僕は、このほかのアルバムで「素晴らしすぎる」と思うMJQのアルバムをいくつも持ってるから。「最後の曲がフーガになっててすごい」…フーガでいいならこの世に1000曲ぐらいあるんじゃない?悪いという気もないけど、カノン系の音楽としてそんなに出来のいいもんでもないぞ。「MJQ の良さであるアンサンブルが一番見事なアルバムだ」…それ、「ピラミッド」や「ポギーとベス」や「スペース」をちゃんと聴いた人だったら、口が裂けても言えないひと言じゃないかい?スコアだって悪いとは言わないけど持ち上げるほどのものじゃない、これが最高傑作なら、「ピラミッド」や「スペース」や「ポギーとべス」みたいな素晴らしいスコアの立つ瀬がない。じゃ、演奏は?それこそMJQの中では褒められたものでない状態で、アンサンブルを気にして互いが相手を待つので間が持たず、アドリブも制限されてまともに演奏できない感じ。ここからリハを重ねて、問題点を修復して…と詰めていけば、いい音楽にしていけそうな気もしますが、どう聞いたってそんな所まで行ってる演奏ではなく、初見のようなたどたどしさです。これを「素晴らしいアンサンブル」という人は、たぶんMJQのほかのアルバムをあんまり聴いていないか、アンサンブルというものを聴いた事が無い人なんじゃないか…そう思ってしまうみたいなのです。

この1枚で僕は、MJQ という素晴らしいグループのレコードをしばらく買わなくなってしまったのでした(= =)。僕はMJQのレコードを10枚ぐらい持っていて、それぞれに色んな印象を持ってますが、好きなアルバムが多い中で「残念」という感想を持っているアルバムの筆頭がこれなんですよね。あ、これはあくまで個人の感想、いいと思う人も悪いと思う人もいていいと思います。ただ、このアルバムのレビューをネットで検索すると、べた褒めのものばかりで、気持ち悪かったんです。更に「これがMJQ最高傑作」と言われると、具体的な欠点がこれだけあるアルバムにべた褒めの評しかないって、相当に気持ち悪いと感じてしまいました。恐らくレコード会社の太鼓持ち評論家の絶賛に吊られてそういう評が多くなったのんじゃないかと思っています、日本人って同調圧力に弱いですからね…。僕的には、MJQ 聴きたいならこのアルバムは最後でいい、それぐらいの感じです。


Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『The Modern Jazz Quartet / Fontessa』

Modern Jazz Quartet Fontessa あ~やばい、気持ちよすぎる、なんと心地よい室内楽ジャズなんだ。。1956年発表、MJQ がアトランティック移籍後に発表した初アルバムです。中古盤屋でMJQ のレコードを見つけるたびに買いあさっていた若いころの僕って、今考えるとオッサンのような青年でしたが(^^;)、でもこんなにいい音楽を聴きたくなるのは当たり前じゃないか!いや~気持ちいい。。

 1曲目「ヴェルサイユ」はフーガっぽい作り、2曲目「エンジェル・アイズ」はヴィブラフォンでペダル。かようにしてアレンジのアイデアの視野が広く、それでいて難しい音楽にしてしまわずに心地よい響きを保ってしまうのがMJQ の素晴らしさだと思います。

 MJQ の音楽をジャンル分けすると、大きく見れば室内楽的なアンサンブルに優れたものと、レイドバックしたリラクゼーション・ミュージックのふたつ。後者だけになってしまうとかなりつまらなくて(^^;)、前者だけの場合は僕は大好きですけど苦手な人も結構いるみたいです。このアルバムは両者の中間で、これぐらいがいちばんおいしいところじゃないかと。これと同傾向のアルバムには『コンコルド』、『シェリフ』、『ピラミッド』などがありますが、いずれ素晴らしい音楽。その中で僕が1枚だけ推薦するなら『ピラミッド』ですが、これもやっぱり素晴らしいです。MJQ 未体験の方は、こんな気持ち良い聴かずに人生終るなんて勿体ないので、ぜひとも一度お聴きになる事をお薦めしたいです(^^)。。


Category: アート・本・映画 etc. > 映画   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

映画『風と共に去りぬ Gone With The Wind』 ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル主演

KazetotomoniSarinu.jpg 中学生までは、映画といえばハリウッドの娯楽映画と日本のやくざ映画ばかりに夢中になってましたが、大学生になった頃には白黒時代の日本映画やアート映画、アングラ映画、そして古典と言われる名画に夢中になりました。古典名画は退屈に感じてしまうものもあったんですが、「風と共に去りぬ」は文芸作とはいえ良い意味でエンターテイメント性が強く、しかもセットから音楽まで別格の力の入れようだったすさまじい映画でした。クオリティの高さは1939年制作の映画だなんてとうてい信じられないレベル。この時代の大作ってほんとケタ違いですよね。。

 マーガレット・ミッチェルの小説の映画化で、音楽も大傑作なら撮影も3年半を要するという、生まれるべくして生まれた大作です。南北戦争とそのすぐ後の合衆国が舞台で、激動の時代を強く生きた女性と、その女性を愛した将校の物語です。
 芯の強い主役女性スカーレットに心を奪われました。今みたいに線が細くて男性に媚びて自己中で…なんて女性像ではまったくなく、生きていく強さと、清廉と生きていく気高さ。ドレスもボロボロになりながら、自分を愛した将校に弱みを見せまいと気丈に振る舞う姿にグッと来てしまいました。また、スカートのすそを見てそれを見抜きながら多くを語らない不良っ気たっぷりの将校がまたカッコいい!これも今流行の細くて弱々しいアイドルみたいな男性像とはまったく違い、激動の時代を酸いも甘いも受け入れて図太く生きていく男の中の男という感じ。
 これってある意味で言うと、たんにこの映画のキャラクターと言うだけではなくて、新大陸アメリカの価値観の反映というかメタファーなんでしょうね。南北戦争から第1次大戦あたりまでの時代で言うと、文化がいくところまで行って退廃に差し掛かっていたヨーロッパと違って、合衆国はまったく洗練されてないけどこれからの国だった頃。変なスノッヴさよりも強さやバイタリティが正義だったんでしょうね。この事自体がアメリカ合衆国の文化風土の反映なのだろうと感じました。

 俳優がまた素晴らしかったです。スカーレット役のヴィヴィアン・リーはまさに当たり役、よくぞここまで役柄にあった人を探したもんだと思いました。キャスティングの勝利じゃないかと思います。相手役のクラーク・ゲーブルも素晴らしかったなあ。
 そして深い時代考証のもとに、予算カットなんてせこい事をせず町ごと作られたセットも、それを燃やし尽くす火災シーンも、ここまで徹底して「金なら何とかする、とにかくすごい映画を作るんだ!」という大作って、長い映画の歴史の中でも20本ぐらいしかないんじゃないかなあ。

 この映画、アメリカ史を勉強してない段階で観ても面白さがまったく分からないと思うので、やっぱり高校卒業してからぐらいの年齢で観たのが良かったんでしょうね(^^)。戦前までのアメリカ合衆国にあった価値観をいちばん的確に表現できた映画をひとつだけ選べと言われたらこれじゃないでしょうか。戦前戦中のハリウッド映画をひとつ選べと言われたらこれでしょう、映画史に残る大傑作だと思います!


Category: CD・レコード > サントラ etc.   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『風と共に去りぬ オリジナル・サウンドトラック Gone With the Wind oroginal motionpicture soundtrack』 マックス・スタイナー作曲

KazetotomoniSarinu_SoundTrack_1.jpg コープランドあたりから連なる大衆性の強いアメリカの管弦楽曲は、映画音楽やミュージカルなどにも連なっていきますが、僕がアメリカ映画音楽の管弦楽曲最高峰と思っているのが、マックス・スタイナー作曲の「風と共に去りぬ」のサウンドトラックです。超有名なあのメインテーマなんて、誰が聴いたって絶賛じゃないですかね、それぐらいの完成度です。僕は、最初の鐘の音から、主題がグワ~って出てくるあたりですでに悶絶してます(^^)。

 「風と共に去りぬ」は映画も素晴らしいですが、ある意味でオペラ的な映画なので、音楽が芝居と同等なぐらい重要な映画でした。最初から大作として構想された文芸映画でしたし、プロデューサーのセルズニックは音楽が映画の成功を左右すると作曲家にこだわってマックス・スタイナーに作曲を依頼したんだそうです。
 マックス・スタイナーはハリウッド全盛期の劇伴作曲家の代表的な作曲家のひとりですが、その中でも「カサブランカ」と「風と共に去りぬ」の2つは大傑作スタイナーはウィーン生まれで、音楽院でマーラーに師事した人。「風と共に去りぬ」は39年の映画で、さすがに当時のアメリカのレベルではここまで管弦を書ける劇伴作曲家はいなかったでしょう。そんなレベルの作曲家が戦争を逃れてアメリカに亡命して、ハリウッド音楽の素地を作ってしまうんだから、両大戦はヨーロッパから文化まで損失させ、逆にアメリカは経済だけでなくヨーロッパから文化まで得てしまうという漁夫の利を得たことになったんじゃないかと。

 メインテーマ「タラのテーマ」のほか、インターミッションの曲、映画前半のあの象徴的なシーンでかかるスワニー河を変奏したような曲、南北戦争時のアメリカの舞踏会でかかるダンス音楽などなど、もうサントラなんて言ってられない、アメリカの歴史を音で感じる錯覚に陥るほどの大傑作だと思います。いやあ、このレコードも今まで何回聴いたか分かりませんが一生手放さないだろうなあ、ジャケットの絵がまた素晴らしいじゃありませんか…。


Category: CD・レコード > サントラ etc.   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『エデンの東・理由なき反抗 ―ジェームス・ディーンに捧ぐ― Trivbute to James Dean Music from Giant, East of Eden, Rebel without a cause』

Tribute to James Dean 古き良きアメリカの映画音楽というと、僕は真っ先に「風と共に去りぬ」と、この「エデンの東」を思い浮かべます。このCD、ジャケットに大きく「GIANT」と書いてあるくせに、日本タイトルはジャイアンツ無視(^^;)。日本の大手レコード会社のこういう雑な仕事っぷりは一周回ってあっぱれですが、要するにこのCDはジェームス・ディーンが主演した3本の映画「エデンの東」「理由なき反抗」「ジャイアンツ」のサントラ盤です(でもジャイアンツはオリジナル音源じゃないみたい)。エデンの東のテーマ曲って映画音楽史上に残る名曲だと思うんですが、単独のサントラが出てないので(今は出てるのかな?LP時代は無かった気が💦)、買うならこの手のオムニバスしか選択肢がありませんでした。ジェームス・ディーンって、伝説的な存在なのに若死にしたので主演映画はこの3本しかないんですよね。それをすべて収録した良いコンピレーションだと思います。

 ただ、このCDには思いっきり問題がありまして…「エデンの東」のメインテーマって、誰もが真っ先に思い浮かべる曲があると思うんですが、このアルバムにはそれが入ってないんです。もしかしてあの曲、安田成美の歌った「風の谷のナウシカ」みたいなもんで、映画では使われてなかったりするのかなあ。映画は観たはずだけどおぼえてないや。。そんなわけで、入ってるのは実際に映画で使われたテーマモチーフを使ったヴァリエーションばかり。これはハンバーガーを買ったのに肉が挟まってないようなもので、僕はこのCDを買って若干ガックシ。。

 音楽に関していえば、「理由なき反抗」と「エデンの東」の作曲がレナード・ローゼンマン。ローゼンマンって実はシェーンベルクやダラピッコラに師事したセリー音楽バリバリの人なんですよね。こういうアメリカ音楽っぽい作品は意外と珍しいのかも。
 一方「ジャイアンツ」の作曲はディミトリ・ティオムキン。1次大戦後にロシアからアメリカに移住(亡命ではないみたい)、ハリウッド映画音楽の巨匠として名を知られてます。メロディと伴奏というアメリカ映画の管弦楽のスタイルで、第1ヴァイオリンと歌がユニゾンとか、カウボーイソング的な2拍子を使うとか、こういう作風なので僕は西部劇の名曲を大量に書いた作曲家という印象を持ってます。「アラモ」「OK牧場の決闘」「赤い河」「ハイ・ヌーン」「リオ・ブラボー」と、ティオムキンさんの曲で思い出すのは全部西部劇の音楽だし。こういうサウンドって西部開拓時代~1次大戦までのアメリカ管弦楽という印象を持ってるんですが、実際には「西部開拓時代から1次大戦前までのアメリカを描いたハリウッド映画音楽」なんでしょうね。そんな僕はジャイアンツの陽気なメインテーマが大好きで、「エデンの東」の重要なメインテーマが入ってないのにこのCDを手放せないのは、「ジャイアンツ」の音楽が入ってるからなのでした。

 というわけで、色々と問題もある1枚ですが、でもアメリカ映画音楽、またアメリカ管弦楽のおいしい部分を聴く事が出来る1枚であることも確か。「エデンの東」の一番有名なあれが入ってないので人には薦めませんが、ぼくはこのCDを手放す事はないんだろうなあ。
 

Category: CD・レコード > サントラ etc.   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『ウエスト・サイド物語 オリジナル・サウンドトラック  West Side Story Original Soundtrack Recording』

WestSideStory_soundtrack.jpg 前回、「アメリカの大衆的なクラシック作曲家というと、ルーツはガーシュウィンコープランドやバーンスタインかな」みたいなことを書きましたが、考えてみたら僕はバーンスタインの曲って、ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の音楽しかまともに聴いた記憶がありません。しかも、有名な指パッチンの曲と「トゥナイト」しか覚えてないし(^^;)。というわけで、久々に映画版ウエスト・サイド・ストーリーのサントラを聴いてみよう、そうしよう。

 おお~ジャズ風のドラムやら色々入ってます。そして軽快!さすがアメリカの生んだミュージカル、アメリカ色が出てるなあ。映画「ウエスト・サイド物語」はテレビ放送で観て、不良がみんなで足を高く上げて踊ってるのを見て吹き出してしまい、「ミュージカルは俺には合わないな」と思い、それ以来観てないんです。そんな僕にとっては、ミュージカルはCDで音だけ聴く方が合ってるのかも。そうそうこのCD、歌もの以外でも、ストーリー進行上重要なセリフが収録されているので、音楽だけというより、踊りなし短縮版ウエスト・サイド・ストーリーを楽しめる作りでした。

 あと、聴いていて思ったのは、もしかして「トゥナイト」ってリディアンなのかな?ウエスト・サイド・ストーリーって映画公開は61年ですが、ミュージカルは57年制作。その頃というとジョージ・ラッセルが『The Jazz Workshop』を発表したころだし、モード・ジャズが大流行した頃でもあるので、そのへんも絡んでたりするのかな?「トゥナイト」に限らず、けっこうジャズっぽい色の曲が多いですしね。リディアンってスケール単独ではよく使われるけど、モードとして使われるって珍しい気がします。

 アメリカの音楽って、現代に近づけば近づくほど、産業との関係が密接なものが目立つようになっていくんだな、みたいな。それとは別に、ロシアの悲観主義の反対にあるアメリカ楽観主義があらわれた音楽のようでもあり、なかなか楽しかったです!さすがコーラとハンバーガーの国だけあるなあ。


Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『コープランド:作品集(自作自演) The Copland Collection: Orchestral & Ballet Works, 1936-1948』

Copeland_sakuhinshuu_jisakujien.jpg アメリカの作曲家というと、僕の中で最初に思い浮かぶのはガーシュウィンですが、その次となると…現代音楽系ならアイヴズ、カーター、ケージあたり。大衆系ならスティーヴン・フォスターとか「ウエストサイドストーリー」のバーンスタインあたりでしょうか。コープランドは両者の中間で、現代音楽寄りの作品と、大衆寄りの作品にくっきり分かれる作曲家です。ブーランジェに師事して、最初は硬派な曲を書いていたのですが、「音楽は聴かれてなんぼじゃ」といって、大衆的な作品を書き始めたんだそうで。そういう生き方を選ぶあたり、とってもアメリカ人っぽいです(^^;)。このCDは、コープランドの自作自演集で、すべて大衆路線の作品でした。

 このCD、バレエ音楽や映画音楽が多く、「エデンの東」とか「風と共に去りぬ」とか、ああいう古めのアメリカ名画の映画音楽の作風にそっくり。ジョン・ウェイン主演の西部劇の映画音楽って、「タララ、タララ、タラタラ…」みたいなフレーズが同じ音程で弦が疾走するフレーズがよく出てきますが、ここに入ってるコープランドの代表作「組曲ビリー・ザ・キッド」や「エル・サロン・メヒコ」は、まさにそれ。それってカウボーイソングから来てるのかも知れませんが、雄大な平原をカウボーイが駆け抜ける姿や、遠くにあるロッキー山脈の光景が目に浮かぶようで、壮大で爽快で僕は大好き (^^)。
 そして、コープランドのバレエ音楽最高傑作「アパラチアの春。音楽も素晴らしいですが、このバレエのストーリーがまた感涙もの。アメリカの開拓農民同士の結婚で、新居での結婚式に集まった人たちがふたりを祝福し、そしてみんなが帰った後にふたりが残される。それだけの話なんですが、集まった人それぞれにスポットが当たり、ふたりを祝福し…美しく、そして希望に満ち溢れています。ロシアでこういうバレエは生まれないでしょうね(^^;)。
 ディスク3は、純音楽的な作品が集められていました。「リンカーンの肖像」は、その中では異色ですが、これもすごく面白いです。第2次大戦中に、偉大なアメリカ人を描く交響曲を書いて欲しいと委嘱を受けたコープランドは、リンカーンの有名な一節をナレーションに使った交響曲を書きます。「私は奴隷になりたくないから、奴隷の持ち主にもなりたくない」などの、リンカーンの有名な演説が入ります。なんという理想と希望に満ちた演説…大統領選というと、今では対立候補のスキャンダルの暴きあいや、資本主義の走狗の側面ばかりが目立ってしまうようになってしまいましたが、かつては民主主義精神の代表国でもあったんですよね。これは見事な作品、永代に聴きつがれるべき1曲じゃないでしょうか。
 交響曲第3番、アメリカ風ロマン派音楽とでもいうべき作品で、これも見事。ただ、最終楽章はちょっとくどいかな?クラリネット協奏曲は、ジャズの名クラリネット奏者ベニー・グッドマンに捧げられた曲。ところでベニー・グッドマンって、かなりクラシックの勉強をした形跡がありますよね。有名なカーネギー・ホールのコンサートを聴いても、正式な教育を受けた人だろうと思ってしまいますし、コープランドとのつながりが気になります。20世紀初頭のアメリカ音楽を語るのに、ジャズは外せないんでしょう。それにしてもコープランド、素晴らしい作曲家です。

 大衆路線にいった時のコープランドの音楽と、40年代以降のアメリカ映画音楽には、共通するアメリカ音楽のモチーフがあるんでしょうか。名画時代のハリウッド映画の音楽って、たしかにアメリカ民謡的な牧歌的な素朴さと優雅さがあるので、その辺をもとに、当時の作曲家が、アメリカ的な管弦楽を作りだしたのかなあ。もしそうだとしたら、コープランドやジョージ・ガーシュウィンあたりが最初の世代になるだろうから、彼らが以降のスター・ウォーズまで続くアメリカ映画の管弦楽曲の基礎を作ったといえるかも知れませんね。難解きわまる複雑な方面に進んだ20世紀のドイツ現代音楽も大好きですが、それと正反対に進んだアメリカの音楽も好き。両極があって現代の管弦楽曲のバランスが保たれた面もあったかも知れません。古き良きアメリカの大衆路線の壮大な管弦楽曲を味わう事の出来る素晴らしいCDでした。これはおすすめ!


Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『ガーシュウィン:歌劇《ポーギーとベス》全曲 シャーウィン・M・ゴールドマン演出、ヒューストン・グランド・オペラ』

Gershwin_Porgy and Bess_HoustongRandOpera ジョージ・ガーシュウィンと言えばこれでしょう、ミュージカルの先駆と言われる歌劇『ポーギーとベス』です!初演は1935年ですがこれは1976年録音、シャーウィン・M・ゴールドマン演出、ヒューストン・グランド・オペラ演奏の3枚組CDです。

 貧しい男ポーギーと給仕女ベスは惹かれあうが、ベスには内縁の夫クラウンがいる。クラウンが人を殺して逃亡した事で、ポーギーとベスは一緒に暮らすようになり、ベスは内縁の夫のことを打ち明け、ポーギーに愛を誓う。その後いろいろあってポーギーはクラウンを殺してしまい、警察に拘留されるも証拠が見つからずに釈放される。しかし拘留されている間に、ベスは麻薬の売人とニューヨークへ行ってしまっていたのだった。

 ストーリー自体は19世紀オペラのヴェリズモそのままと感じましたが、独創的だったのは音楽。何が素晴らしいと言って、戦前のアメリカ合衆国の雰囲気がこれでもかというほど音楽ににじみ出ていた事でした。思いっきり教会ゴスペル調の曲も入っているし、アメリカ黒人音楽を筆頭にアメリカ大陸の色んな人種が持っていた音楽をヨーロッパ音楽で統合したような作品。このこと自体が20世紀初頭のアメリカ大陸の匂いと感じました。ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ」とか、楽園時代のキューバ音楽とか、ああいう匂いを感じました。
 冒頭に「チェッチェッコリッ」みたいなあれにそっくりな曲が出てきましたが、これなんて「19世紀から20世紀にかけての混血のアメリカ大陸の大衆音楽」感がすごいじゃないですか。もう、これだけで僕は魅せられてしまいました。これから未来へ向かっていく若い文化が持っている躍動感、みたいな。
 こうした雰囲気の中に、ある時期から僕がアメリカ合衆国のアーリー・ミュージックに感じるようになった、「大陸的な雄大さ」「楽観主義」「レイドバック感」というもののすべてが入っていると感じられました。これらが冒頭から10分ほどの間にギッチリ詰まっていて、「あ、これは素晴らしいスコアだわ」と、僕は完全にノックアウト。これはいいものだ。。

 全3幕、合計3時間弱という長いオペラでしたが、軸となっている音楽は3つと感じました。うち2つはとても有名な歌曲で、「サマータイム」と「A Woman is a sometimes thing」。前者は私の母が大好きだった曲で、僕がようやくピアノが弾けるようなったころ、母にこの曲をせがまれてよく演奏したものでした。下手くそでしたが、すごく喜んでくれたんですよね。。いっぽう「A Woman is a sometimes thing」は子供のころに父がよく聴いていた西部劇のテープで聴いたことがありました。なんという映画だったのかは覚えてませんが、素朴で陽気な田舎風の音楽をバンジョーで弾いているようなカウボーイソング的な曲で、とにもかくにもなつかしい…。
 そしてもう一曲は、タイトルは分からないのですが歌曲ではなく、このスコアのメインテーマのような曲。変奏を含むこの曲のアレンジなんて、以降のミュージカルやアメリカのハリウッド映画に出てきそうな音楽の要素が満載でしたが、本当にアメリカの劇音楽の管弦アレンジの伝統ってこのへんがスタートだったのかも知れません。

 歌劇の全曲入り名盤として有名な「ポーギーとベス」はこれとマゼール&クリーヴランド管のものが有名で、よりリアルなミュージカルに近いのがこのヒューストン・グランド・オペラ版だと言われてるらしいです。とはいえっても、僕はマゼール&クリーヴランド管の方を聴いてないので、実際のところは分からないんですが(^^;)。でもさすがにそう言われるだけのことはあって、単なる作品と言うだけでなく、当時のアメリカ大陸の混血文化の匂いがこれでもかというほどににじみ出た、素晴らしく文化的な作品と思いました。僕はミュージカルが苦手ですが、これは例外でもあり別格でもあるんじゃないかと。『ポーギーとベス』と『ウエストサイド物語』は、ミュージカルが好きじゃない人でも楽しめる素晴らしい作品と思います。超おススメ!


Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Manuel Gottsching, Ash Ra Tempel, Ash Ra / The Private Tapes vol.3』

Manuel Gottsching, Ash Ra Tempel, Ash Ra The Private Tapes vol3 ジャーマン・ロックの雄アシュラ/アシュラ・テンペルを含むマニュエル・ゲッチング未発表音源集の第3弾です!今回は73年のマニュエル・ゲッチングのソロ、74年のアシュラ、そしてお待ちかね71年のシュルツェ在籍時の炎のアシュラ・テンペルのライブ録音の3本立てでした!割合としては4:5:6ぐらい。

 マニュエル・ゲッチングのソロは3曲。ライン録りみたいな音をしたエレキギターを2本重ねたもの、みたいな感じのものもあったので、本当にデモテープなのかも。1曲目「Whoopee」は既視感を覚えた音楽で、これってゴングだったかホークウインドだったか…いずれにしてもああいうループの上にアドリブ演奏を重ねていく音楽でした。デモなので音がショボかったですが、けっこう面白かったです。これ、ちゃんと作ったらさらに面白くなるんでしょうね。この3曲をきちんと録音したアルバムがあるのかも。

 74年アシュラは27分一本勝負、アンビエントなシンセ音楽でした。でもその傾向が美しいとか幻想的とかではなく、霧の中で迷子になってさまよっているような不安を感じる雰囲気、みたいな。実に70年代のジャーマンロックですね(^^)。

 そしてお待ちかねの71年アシュ・ラ・テンペルは32分一本勝負!録音日は5月19日…あれ?と言う事は第2集と同じ日のライブだな、こういうのは分けないで欲しいなあ。。今回は曲の最初からテンション高め、でもファーストや第6集にはかなわないかな…なんて思ってたんですが忘我の境地で弾き狂うクライマックスは圧巻!なんでも中間部分はテープの劣化がひどくてカットされているそうですが、そのためかちょっと面白いになっていて、それも良かったのかも知れません。災い転じて福となす、というやつですね。
 ところで、ひとつのコードで、ループ中心の音楽で、ベースは「ボンボンボンボン…」と8分音符でバスをずっと演奏してギターはアドリブで…というとホークウインドあたりと似たような音楽のはずなのに、なんでホークウインドは退屈に感じてアシュラはカッコよく感じるんでしょう…やっぱりドラムの爆発力とか構成力とか、細かいところの差が色々と重なって、トータルするとそれがけっこう大きな差になっちゃうのかも。

 第3集は、ゲッチングさんのソロは悪くないけど買って聴くほどではないデモテープ、アシュラはクラウト・ロック風の味付けのアンビエントが好きな人なら悪くない、71年テンペルはファーストほどじゃないけどハードでかっこいいのでアシュラ・テンペルのファンなら必聴、ぐらいに感じました。


Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Manuel Gottsching, Ash Ra Tempel, Ash Ra / The Private Tapes vol.2』

Manuel Gottsching, Ash Ra Tempel, Ash Ra The Private Tapes vol2 アシュラ・テンペルをはじめとしたマニュエル・ゲッチング関連の未発表録音集の第2弾です。僕はクラウス・シュルツェが在籍した初期アシュラ・テンペルに熱狂した人間なので、やっぱりお目あては71年の録音。というわけで、このシリーズは71年録音が入っている2、3、6集だけを選んで買いました。最強はファーストアルバムさえ凌ぐ白熱の演奏が収録された第6集と思いますが、他もけっこう良かった記憶…でも忘れちゃったので聴き直してみよう、そうしよう。

 このアルバム、2/3はマニュエル・ゲッチングの76~79年のソロ、1/3が71年アシュ・ラ・テンペルのライブ録音、5月19日ベルリンでの演奏でした。
 マニュエル・ゲッチングのソロは、アンビエントというか今でいうトランス・テクノというか、そういう音楽でした。白熱で狂乱の初期アシュ・ラ・テンペルに熱狂していた若い頃の僕は「やっぱりアシュラ・テンペル以外は面白くないな」と思ったもんですが、いま聴くとなかなかどうして、これはこれで実に面白い音楽でした。そもそもトランステクノという音楽自体が都会的なイケてる気持ち良い音楽じゃないですか。同じビートを繰り返しながら音色を電子変調させていったりミニマルに音を重ねていったりするああいう音楽は、誰が作っても一定以上の面白さになる魔法の音楽だと思います。このアルバムに入っていたものは宅録みたいで音が若干ショボかったですけどね。でも面白い!
 
 そして、クラウス・シュルツェがドラマーとして在籍していた71年5月のライブ、24分一本勝負の演奏です。これが残っているアシュラのライブ録音で一番古いものだそうです。最初の7~8分はエレキギター独奏でリズムを刻んだループミュージック。ここにドラムとベースが入ってきて、あとは初期アシュラ・テンペルの強烈なジャム。もちろんカッコよかったですが、ファーストアルバムやこのシリーズの第6集ほどの凄さはなかったかな?それにしてもクラウス・シュルツェはドラムがメッチャうまいし激しい、ロックのドラムのことはよく分からないけど、ボンゾイアン・ペイスみたいなロックの名ドラマーより数段うまいんじゃないでしょうか。

 ゲッチングのソロも、アシュラ・テンペルのライブも、どちらもすごく良かったです。ただ、あまりに方向性が違う音楽なので、ちょっと戸惑うCDでもあるかも。どのみち、シュルツェ在籍時のアシュラはロック史に残るほどのすごい音楽をやってるのにレコードは1枚だけなので、こういうライブ音源を漁る以外に道はないんですよね。良かったですが、Vol.6の方が優先順位は高いかも。


Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Timothy Leary & Ash Ra Tempel / Seven Up』

Timothy Leary Ash Ra Tempel Seven Up_jacket1 これも1972年発表、アメリカの心理学者でハーバード大学でのLSD研究の権威でもあったティモシー・リアリー教授とアシュラの共演作です。

 音楽の前に、ティモシー・リアリーという人が実に変わった人である事に注目。コンピュータを使って脳を再プログラミングするとか、女子寮に忍び込んで退学とか、不倫を起こして妻が自殺とか、人類宇宙移住計画とか、武勇伝がすごすぎです。マジでLSDの研究で自分がヘロヘロになって脳が飛んじゃった人なんじゃないかなぁ(^^;)。で、そういうLSDの申し子みたいな人が音楽を作ったらどうなるのか、という所に僕の興味のすべてがありました。スベってもアシュラが共演なら何とかしてくれるだろ、みたいな。

 結果は…A面は、アシュラがまさかのブルースセッション。その間をシンセサイザーでグニャグニャと変調させて繋ぐ形で、あまりに安直に感じて残念でした。金返せ。
 でもここで聴くのをやめちゃダメ、B面が素晴らしかったです!といってもB面はいつものアシュラなんですが、このいつものアシュラというのが本当にすばらしい。シンセサイザーのうしろにうっすらとスキャットが浮遊したように漂うシーン、ループが徐々に高揚していくシーン、変調させられた演奏がせめぎあうシーンなどなど、安易に流れる事が絶対にないシーンの作り方が見事。そしてそれを大楽式の音楽として構成していく能力が高いと感じました。ロックって、リート形式から脱出するだけでもかなりレベルが上がる音楽だと思ってしまうなあ。
 
 どんな理屈があろうと、音楽を形にするなら音楽的な知識や技巧は不可欠という事でしょうね。このアルバム、清涼飲料水の7upにLSDをぶち込んでトリップ状態で制作したそうですが、それでもアシュラの制作パートは音楽の文法できちんと成り立ってるし、ダビングもされた以上は作為的に作りにも行ってるんだから、チャンスオペレーション的な所作で何とかなるほど音楽は甘いもんじゃないという事じゃないかと。というわけで、僕にとっては前半は外れ、後半は当たりのアルバムでした。


Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Ash Ra Tempel / Schwingungen』

Ash Ra Tempel Schwingungen 1972年発表、ジャーマンロック・バンドのアシュラ・テンペルのセカンドアルバムです。昔はそんな用語なかったと思うんですが、今ではアシュラやアモン・デュールみたいな70年代初期のドイツの前衛色の強いロックバンドのことを「クラウト・ロック」と呼ぶみたいですね。どういう意味かと思ったら「素キャベツのロック」、つまり「ドイツのロック」という事みたい。だったらジャーマンロックのままでいい気もしますが、ドイツのロックはハードロック系やシンフォニックなものも有名だし、そういうのは別にドイツ特有のものでもないので、あのドイツにしかないヤバさと高度さと実験色の強かったあれをわざわざ「ドイツのロック」と区分けして呼んだのかも。

 衝撃のファーストアルバムで強烈なドラム(!)を叩いたクラウス・シュルツェが抜け、不安いっぱい胸いっぱいでしたが、さすがゲッチングです、カッコよかった! 音楽はファーストみたいに狂気じみたクライマックスへと昇り詰めていくものと、ファーストにはなかった静かで幻想的なものが対照的に配置されていました。アシュラって、ファーストのあの狂乱のパフォーマンスより、だんだん静かな幻想性やループミュージックっぽい音楽を強めていったんですよね。どちらにしても不安をあおる緊張感と漂うような浮遊感が同居したあの音楽性は健在で、静かな曲であってもなんかゾワーッと来ました。やっぱりロックでは何歳になってもドイツが一番好きだなあ。

 グレイトフル・デッドみたいな「アハハ~空に魚が泳いで気持ちいい~」みたいなアメリカのお花畑なドラッグ・ミュージックと違って、ドイツのドラッグミュージックはバッドトリップ気味で、「ファウストの影から新しい俺の不安が目を開く」みないにやばくて深い感じですごく好き。狙ってそうしているのではなく、自然とそうなっているように感じるところがまたいいです。すべてが長尺曲なのにだらだらやっている感覚がまったくなく、構成力が高いのはドイツ民族自体の音楽力の高さでしょう。僕がアシュラを人に薦めるなら、まずはデビューアルバム『Ash Ra Tempel』とフォースアルバム『Join Inn』の2枚ですが、その間にあるアルバムも、他のバンドであったら代表作になっていてもおかしくない素晴らしさ。20年ぶりぐらいで聴きましたがやっぱりカッコよかったです!


Category: CD・レコード > 日本のロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『スピード・グルー&シンキ』

Speed Gru and Shinki 1972年リリース、スピード・グルー&シンキのセカンド・アルバムにして最終作です。僕はファーストよりこちらを先に聴いたんですが、その理由は、レコードコレクターズのレビューか何かで「日本の過激なサイケデリック(アヴァンギャルドだったかな?)ロック」「大名盤」みたいに書かれていた事と、チャーさんと一緒にやっていたルイズルイス加部さんが参加していた事。当時はゴールデン・カップスのメンバーとしてではなく、チャーさんのパートナーと認識してたんですよね。たしか、「10分越えのすごいアヴァンギャルドでサイケデリックな曲もある」みたいな情報もあって、再発された虎ジャケットのCDを中古で安く見つけた時に飛びついて買ったのでした。

 もしファーストを先に聴いていたなら、また印象は違っていたのかも知れませんが、なにせこのアルバムを最初に聴いたものだから、サイケでもアヴァンギャルドでもない、ただのペンタトニックでスリーコードなブルース・ロックのジャム・セッションに聴こえてしまったんですよね。曲がファーストに比べるとアップテンポなものが多く、その分軽く聴こえたのも痛かったかも知れません。ところがいま聴くと、演奏とサウンドの重心が相当に低くて、相当にヘヴィ。あ~このヘヴィさはたしかにカッコイイかも。
 そして、最後の方でようやく例の凄いと評判のサイケ曲が。シンバルをマレットでたたいて、爆撃機の音がSEで重ねてあって…いや~こんなのアイデア勝負なだけじゃないか、これがいちばん面白くなかったのでした(^^;)。。

 これ、ブルース・ロックやサイケに嵌まっていた若い頃に聴いていたら、もう少し聴こえ方が違ったのかも知れません。本や映画や音楽って、年相応のものってあるじゃないですか。スパイダーマンは面白い映画かも知れないけど、40歳になってあれを映画館まで観ていたらちょっとアレじゃないですか。出会いってタイミングが大事だぞ、と。


Category: CD・レコード > 日本のロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『スピード・グルー&シンキ / 前夜』

Speed guru and Shinki_zenya eve フード・ブレインに参加した陳信輝さんと加部正義さんと言えば、こんなアルバムも聴いた事があります。スピード・グルー&シンキ、陳信輝 (g)、加部正義 (b)、ジョーイ・スミス (dr, vo) というスリーピース・バンドです!2枚のアルバムをリリースして消えましたが、これは1971年にリリースされた1枚目。

 このアルバムの音楽は、ヘヴィーなブルース・ロックでした。そのヘヴィーさたるや強烈で、すでにブルー・チアー初期レッド・ツェッペリンぐらいのところまで来ている感じ。技術はともかくヘヴィーさだけで言えばそれ以上かもしれません。演奏とサウンドの重心が低くて、それほど速い曲もなければトリオの演奏でもあるというのに、音に隙間がなくて骨太、ヘヴィなんですよ!英米のこれ系のバンドというと、こだわりが出るのか、どうしてもブルースに寄っていく印象を受けるバンドが多くて、その分だけヘヴィさよりもいなたさが出てしまうように感じますが、このバンドはブルースに思い入れがないのか、その分だけロック。これって黎明期の日本ロックのブルース系バンド全般に言える事かも知れませんね。いや~これはカッコイイ。。

 ところで、スピード・グルー&シンキって日本のバンドという事になっていますが、メンバー全員の国籍的な意味で言うと…ちょっと言葉を濁して言うと、20世紀のアジア史的。こういう歴史の痕跡が戦後日本でロックと結びついたところで、独特の文化的様相があらわれたように感じます。不良どころでは済まないヤバさを感じるんですよね。これもJロックを聴くなら避けては通れない1枚、おすすめのアルバムです!


Category: CD・レコード > 日本のロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『陳信輝 / SHINKI CHEN』

ChinShinki SHINKI CHEN 1971年発表、パワー・ハウスやフード・ブレイン、のちにはスピード・グルー&シンキで活動したギタリスト陳信輝さんのアルバムです。メンバーは、陳信輝 (eg, eb, pf, dr)、柳ジョージ (vo, eb)、柳田ヒロ (key)、野木信一 (dr)。というわけで、ほぼパワーハウスのメンバーで作られた音楽でした。

 基本は、アドリブ満載のヘヴィーなブルース・ロックでした。これがいい味を出していて、メインにあるのはファズをかましたエレキ・ベース。歪みまくってるけど音が痩せていなくて、もうドラムとベースだけで音楽のほとんどが完成しているといってもいいほど。このハードロック登場前のヘヴィなブルース・ロックの雰囲気、たまらないです。
 この路線の極めつけが、10分以上あるラスト・ナンバー「Farewell To Hypocrites」でした。ホルスト「惑星」のメロから始まっていましたが、テーマが終わったらすぐにギターを中心としたインプロヴィゼーションなので、きっとホルストじゃなくて、フランク・ザッパの孫カバーでしょう(^^)。でもそのままでは終わらず、次々に別の曲に繋がっていました。後半はほとんどギターのアドリブが中心でしたが、これがまたサイケでヘヴィなブルース・ロックな雰囲気、最高です!いや~、黎明期の日本のロックって、この骨太さがいいです。。

 そして、若い頃の僕にとっての衝撃は、強烈なバッド・トリップ感漂うサイケ・ナンバーの1曲目「The Dark Sea Dream」でした。エレキ・ギターのフィードバックを逆再生、その上を這いずるアリス・コルトレーンのように散打されるピアノ…これが僕にとっての陳信輝さんのすべてといっても過言ではありません。雰囲気一発といえばそれまでですが、その雰囲気を捉える感性も才能。ダークでサイケでヤバくてカッコイイです!

 毎度毎度書いていますが、日本のロックがいちばん面白かったのって、60年代末から70年代初頭の黎明期と僕は思っています。しかも、はっぴいえんど系の軟弱路線ではなく、ブルース・クリエーション、ストロベリー・パス、頭脳警察モップスジャックス乱魔堂(ライブに限る)、さらにこのアルバム…いやあ、どれを取っても見事にロック、ヤバさと熱気が素晴らしいです。間違いなく黎明期のJロックの大名盤のひとつと思います!!


Category: CD・レコード > 日本のロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『フード・ブレイン / 晩餐』

FoodBrain Bansan 1970年録音、パワー・ハウスでデビューしたギタリスト・陳信輝さんが参加したバンドのアルバムです。このレコードでのバンド名はフード・ブレインですが、このあたりのバンドってフード・ブレインでもスピード・グルー&シンキでもストロベリー・パスでも、みんなセッションみたいなものだし、レコードだって1~2枚出してすぐ解散なので、バンド名にたいした意味がない気がします。メンバーは陳信輝(ギター)、柳田ヒロ(キーボード)、加部正義(ベース)、つのだひろ(ドラム)。

 インストのジャムです、セッションです。コード・プログレッションはほとんどありません。でもつまらないかというとそうではなく、演奏のテンションがかなり高めで、かつ理由はどうあれヤバそうな雰囲気が漂っている事。これにノれるかどうかじゃないかと。この音楽、はじめて聴いた時には「おお~すげえ!」ってなりました。自分が若かった事もあるのでしょうが、長いジャムにサイケデリックでマジカルなものを感じたりして。この音楽の魅力はここに尽きます。
 
 でもその魅力って、信者が教祖の実力や意図を超えてどんどん神格化しちゃうようなもんで、気のせいなんでしょうね(^^;)。マジカルじゃなくてトチってるだけだったりもするわけで(^^;)。ジャム・セッションといえば聞こえはいいですけど、セッション前にみんながアンプの調節をやっている時の音まで入っていて、しかもそれがあまりにだらだら続いて、なんだったらバッハのフレーズを弾いて遊ぶやつまで出てくるもんだから、「そろそろマジメに始めようぜ」と言いたくなっちゃったりして。音楽のアクセントも、編集で作られたものだったししてましたしね。

 でも、時代も考慮しないといけなくて、70年という事は、日本にはグループ・サウンズぐらいしかロックをやるバンドがいなかった時代。ましてサイケなんてほとんど入ってきてなくて、その中でアドリブでジャムできるメンバーが集まってのロックというだけで、大きな一歩だったのではないかと。それこそゴールデン・カップスのミッキー芳野さんやモップスの星勝さんみたいな人がいない限り、こうする以外に突き抜ける道はなかったのかも知れません。黎明期Jロックの長所は本家ブルース・ロック以上にハードな事、弱点はブルース・ロックしか演奏できないぐらい和声にうとい点。昔はまた違う聴こえ方をした音楽でしょうが、いま聴くなら、弱点には目をつぶって長所を捉えに行くと、ヤバいかんじで面白く聴ける音楽じゃないかと思いました。


Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『The Chick Corea Elektric Band』

The Chick Corea Elektric Band ジュリアード音楽院を卒業してマイルス・デイヴィスのバンドに参加した頃のチック・コリアは、マイルスにエレピを弾かされるのがすごく嫌だったそうです。「こんな楽器、ピアノじゃねえ」みたいな。ところが20年もたつとエレクトリック・バンドなんて名前を冠したバンドを作っちゃうんだから人間って変わるもんです (^^;)。というわけで、これは86年にGRPから発表されて一世を風靡したアルバムです。

 フュージョンはフュージョンなんですが、アルバム『Friends』で感じたようなイージーリスニングでムードミュージックな部分はなくなって、演奏至上主義な方向の弾きまくりフュージョンでした。もしこれをジャズとロックとポップスのどれかにジャンル分けしろと言われたら、僕ならポップスに入れるかも。室内楽でも自己追及でも演奏表現でもないんですよね、大道芸的にワーッとやってお客さんを楽しませる音楽、みたいな。

 若い頃は軽いし子供っぽくてあまり趣味ではなかった音楽ですが、いま聴くと懐かしくて胸キュン。シンセベースとか、パーンとロックにスネアを鳴らすドラムのチューニングやサウンドメイクあたりに、当時トレンディだったTVドラマ『マイアミ・バイス』や映画『ビバリーヒルズ・コップ』なんかを感じたりして。ベンドさせてヴィブラートを作るシンセサイザー、コーラス系のエフェクターをかけたエレキ・ギター、16分音符の連続で作るテーマメロディ、LPじゃなくてCDで聴くデジタルなすっきりした音…このアルバムにある何もかもが、80年代なかばのあの空気感。日本も世界も活気があっていい時代だったなあ。


Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 2  Trackback: 0  

『Chick Corea / Friends』

Chick Corea_Friends_A 1978年発表、チック・コリアのアルバムです。チック・コリアとハービー・ハンコックには似たところがあって、どちらもマイルス・デイヴィスのバンドへの参加から大ブレイク。どっちもニュージャズやフリー・インプロヴィゼーションみたいに純音楽的な意味で、硬派な事をやらせれば能力高くてメッチャうまい。でも軟弱なポップスやフュージョンみたいなこともやっちゃって、むしろそっち方面で名が知られている、みたいな。このアルバムはカルテット編成で、チック・コリアはピアノとエレピの両方を弾いています。メンバーはジョー・ファレルがサックスでリズム隊は、エディ・ゴメスとスティーヴ・ガッドでした。

 3割はECM的とも言えそうなスノッブなジャズ、7割はイージーリスニング調のフュージョンでした。料理番組のBGMに流れていてもおかしくなさそうな音楽も少なからず入ってます。そしてこのお人形さんジャケット…どれもこれも若い頃には鼻持ちならないと感じていたものばかりで、自分には合わない音楽と思っていました。でも歳をとってから聴くと、これはこれで気持ちよくていいから不思議(^^;)>。僕にとってのチック・コリアのイメージって、フュージョン調なこのアルバムか、もう少しロックなリターン・トゥ・フォーエバーあたりです。本当に凄いと思うのは『Is』やサークルなんですけどね。

 純ジャズの最先端や、アンソニー・ブラクストンとかと硬派な即興演奏に取り組んでいた人がこれをやると、どうしても「軟弱」「売りに走った」と感じてしまうんですが、売るためにこういうポップスをやったんじゃなくて、実はどっちも好きだったのかも知れません。素晴らしい音楽を作ることが目的ではなく、ピアノでアドリブするのが好きな人だったとしたら、ジャズとフリー・インプロヴィゼーションとフュージョンとロックを全部受け入れる姿勢に矛盾はないですもんね。そうそう、僕が持っていたのは人形ジャケットでしたが、昔はカエル人形のジャケットもありました。たぶん、人形のライセンス許諾を得ないまま無断使用しちゃったんだろうな。。


Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Gary Burton, Chick Corea / Crystal Silence』

Gary Burton Chick Corea Crystal Silence 1972年録音、ECM からリリースされたヴィブラフォンのゲイリー・バートンとピアノのチック・コリアのデュオ・アルバムです。僕が若いころ、このデュオを信奉するプロ・ミュージシャンが多かったのが印象に残っています。本多俊之さんあたりもべた褒めしてましたしね。ベースやドラムのリズム・セクションは無し、和声楽器ふたつのデュオという事で、相当なチャレンジだったんじゃないかと。

 全9曲、チック・コリア作曲の曲が5曲、スティーヴ・スワロウ3曲、その他1曲でした。コリアの曲はややスペイン風の曲想でユニゾンが多く、当時の彼の作風があらわれていました。アドリブの伴奏パートがふたつのコードの往復だったりね(^^)。

 僕が持ってるのはLPなんですが、A面は、作曲も演奏も総じて超える事もはみ出る事もなく、「おとなしい音楽だな」というのが正直な感想でした。クラシックを習い始めて5~6年ぐらいの人の、スコアをなぞるばかりの生真面目な演奏、みたいな。
 ところがB面が素晴らしかったです!特にアルバムタイトルにもなった9分ほどの曲「Cristal Silence」がマイナー調の切ない曲想と劇的構成をとっていて(ソナタ形式ですね)、その中での表現力ある演奏が素晴らしかったです。ところでマイナーって、ドミナントの代理で♭Ⅱ-57を使ってトニックに戻すとゾクゾク来ませんか?この曲の第1部の作曲のキモはほとんどこれかも。第2部は得意のスペイン調2コード往復のインプロヴィゼーションで演奏で盛り上げ…みたいな。
 以降もカノン状に音が連なる「Falling Grace」、曲自体が素晴らしい「Feeling and Things」、レベティション使ったヘッドが素晴らしい「Children Song」など、B面は流れも曲も演奏も素晴らしかったです。

 クラシック系の音楽教育を受けた人が、モードを通過して調のパターンや和声のサウンド・パレットを増やした70年代ジャズの中で、きちんと表現しきった音楽。それがこのレコードのB面だったと思っています。チック・コリアは『IS』とサークル参加時が最強と思っていて、フュージョン時代以降のチック・コリアはいただけないと思っている僕ですが、このアルバムのB面は別。いい音楽でした!


Category: アート・本・映画 etc. > テレビ番組   Tags: ---

Response: Comment: 2  Trackback: 0  

テレビドラマ『帰ってきたウルトラマン』#3 第3クール後半~第4クール 円谷プロダクション

KaettekitaUltraman_pic3.jpg いつも思うんですが、うちにある特撮ヒーローもののビデオを見るときって、最初は「50話もあるのか」なんて思ったりするんですが、いざ見始めるとあっという間です。なぜだろう…なるほど、1話24分ほどなので、映画1本見るつもりで見ると1回で5~6話ほど見れてしまうんですね。しかも、仕事しながら垂れ流すとあっという間、みたいな(^^)。

 新マンの思い出話、最終回です。物心ついたときには、新マンとウルトラセブンはすでに記憶にありました。セブンの話は覚えているものもあったんですが(ガッツ星人回での無人の自動車が動く描写など、強烈なものが多かったですから^^)、新マンは話は第1話を除いてほとんど覚えていなくて、覚えているのは怪獣でした。サドラー、ツインテール、グロンケン…インパクトある造型が多かったんです。
 実際に話の内容をきちんと理解したのは幼少期ではなく、小学校に上がってから見た再放送でした。朝6時にウルトラマンや仮面ライダーの再放送をやっていて、それを見るためだけに頑張って早起きしたのはいい思い出です。眠い目をこすって、目覚まし時計をセットして、見終わってからもう一度寝てました。そこまでするほど夢中でした。早起きしてみたのは、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、仮面ライダー、ウルトラマンタロウ、それぐらいだったかな?でもタロウはあまりに子供だましで、途中で見るのをやめました。これは寝てる方がましだな、みたいな(^^;)。
 というわけで、第3クール後半から最終回までの中で、面白かった話をダイジェストで!

KaettekitaUltraman_ep38.jpg■第37~38話:ウルトラマン夕陽に死す/ウルトラの星光る時 (脚本:上原正三/監督:富田義治)
 新マンには予算面でも脚本面でも制作に力を入れたように見える話がいくつかありますが、これは新マンの中で最も力を入れたであろう回で、前後編にわたる大作です。宇宙人がウルトラマンを倒し、BGM はセブンの使い回しなので、ウルトラセブン「セブン暗殺計画」の新マン版みたい。ところが「セブン暗殺計画」ほどには面白くなかったりして(^^;)。ついでに、初代ウルトラマンが登場してしまうので、この話で「ウルトラマンが帰ってきた」という設定が根底から崩れてしまいました。いやあ、超人格者の初代ウルトラマンの霊が、人間的に未熟な号に憑依するという設定のままいった方がクールだったと思うなあ。。子供の頃はウルトラマンとウルトラセブンが出てきて特別感があったんですが、大人になってから見ると、この話でウルトラマンのシリーズは幼児番組化してしまったように思えたりして…。
 でもこの回、特撮が素晴らしかったです。後半回のウルトラマン戦闘シーンで、山のこちらにマット隊員、山の向こうで巨大な怪獣とウルトラマン、この構図が「でけえ!」って感じでいいです。やっぱり怪獣特撮は怪獣大きさを表現できてこそですよね!

■第49話:宇宙戦士その名はMAT (脚本:上原正三/監督:富田義治)
 最終回まであと少し。この回から、最終回への布石が打たれます。設定が壮大で、子供の頃は胸をときめかせたものでした。
 宇宙のかなたで宇宙戦争が起きています。戦争の一方であるミステラー星人は、宇宙戦士に向いた人材を地球から連れ出し、兵士として戦争に使おうとしています。しかしミステラー星人の中には戦争を好まずに地球に亡命したものがいて、地球でひっそりと暮らしています。しかし、彼の娘が人質に取られ、彼は母星の戦闘隊長から、娘を救うためにウルトラマンと戦うように指令されます。
 ストーリーだけ聞けば、素晴らしいSF作品に思えますよね?ところが、宇宙戦争というのはセリフで語られるだけで、絵は一切出てこない…そこが寂しかったです。言葉でなく映像で表現できていたらもっと素晴らしいSF作品になったんじゃないかなあ。最終回間際で予算がなかったのかな(^^;)。でも、話はすごく面白かったです。僕的には新マンの名脚本第3位はこれです。

KaettekitaUltraman_ep51.jpg■第51話:ウルトラ5つの誓い (脚本:上原正三/監督:本多猪四郎)
 最終回です。宇宙征服をたくらむバット星人が、ウルトラマンの故郷の星と地球に同時に攻撃を仕掛けます。地球のマット基地は破壊され、郷隊員は死を覚悟して最強の宇宙怪獣ゼットンに戦いを挑みます。ゼットンを倒したウルトラマンですが、故郷の星を救うために地球を去る決意をします。そして、次郎少年の前でウルトラマンに変身し…。
 タイトルになっている「5つの誓い」がショボかったり、ゼットンの着ぐるみが初代ウルトラマンの時とは比較にならないほど貧弱なのが残念で、子供のころはショボいと思った話でした。ところがいま見ると、壮大な設定が素晴らしいと感じたりして。ミステラー星人回と同じで、宇宙戦争という設定でワクワクですが、それがセリフで語られるだけなのがやはり残念。
 新マンの終盤に出てきた「宇宙で大戦争が起きている」という設定は、昭和46年以降しばらくの円谷特撮ヒーロー番組で共有された概念。新マンの後番組となる「ウルトラマンA」や「トリプルファイター」の主題歌に「銀河連邦」なんて言葉が出てきますが、第2次ベビーブームとなる昭和46年から第2次怪獣ブームが始まって特撮ヒーロー番組が量産されたものだから、それぞれの作品の世界観を統一しておいたほうが、つじつまを合わせやすかったんでしょう。ところがこの銀河連邦という設定が活かされたのは、僕の中では新マンの終盤2作品だけだったという(^^;)。

 帰ってきたウルトラマンは、僕にとっては幼年期から少年期にかけての思い出の番組のひとつです。ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ミラーマン仮面ライダー、キカイダー、イナズマン…好きだったなあ。今回、それぞれの話についての感想をいろいろ書きましたが、大人になった今となっては、それぞれの話なんて実はどうでも良いのかも。物心ついた頃にウルトラマンを見てワクワクしたあの感触とか、小学校に入ってから新マンが大好きで「怪獣コダイゴンがね…」なんて話していた怪獣博士の友人Iと仲が良かった事とか、怪獣消しゴムやソフビ人形で友人と遊んだ事とか、大人になってしまえばそういう思い出のほうが大事なのかも。大人になって新マンを見て懐かしく感じたのは、話自体だけではなく、そういう幼年時代の感触でした。
 僕が死ぬ時に思い出すのって、物心ついてから小学校卒業あたりまで記憶の気がします。それがすべてで、ウルトラマンはその期間の思い出の重要な一部分。人生で新マンを全話見ることができるのは、あと1回あるかないかぐらいだと思うと、何とも言えない気分になりますね…。団次郎さん、僕もいずれあなたと同じ世界に行くんですよね。帰ってきたウルトラマン万歳!!


Category: アート・本・映画 etc. > テレビ番組   Tags: ---

Response: Comment: 2  Trackback: 0  

テレビドラマ『帰ってきたウルトラマン』#2 第2クール~3クール前半 円谷プロダクション

KaettekitaUltraman_pic1.jpg 帰ってきたウルトラマン、第2回です。次なる新マンの個人的な思い出は…ウルトラマンのルックスがカッコよかった!ウルトラマンのマスクで最も洗練されているものって、ゴテゴテと余計なものがついていないウルトラマンだと思うんですが、初代のウルトラマンって、時期によっては顔にしわが寄っていたり体が細かったり力道山みたいなタイツ姿に見えたりで、どこか垢抜けないと思ったんです(中終盤からのウルトラマンは素晴らしいです)。でも新マンは違いました。顔は常に美しくパンツは新日本プロレスのレスラーのような精悍なショートタイツで、子供の頃は新マンの方がカッコよく見えました。ウルトラマンの絵を書く時に、新マンはラインを2重にしなくてはいけないので面倒くさかったですけどね(^^;)。

 もうひとつの思い出は、ソフビ人形。僕が小さいころにウルトラマンのソフビ人形が大量に発売されまして、新マンとドラえもんが大好きという友人Iくんが、新マンのソフビを買ったんです。それは目の部分がゴムで出来ているソフビ人形で、特別感があってうらやましかったです。足形シールもついていてね(^^)。で、セブンが好きだった僕も目がゴムでできている人形が欲しかったんですけど、セブンは目がゴムじゃなかった(・_・、)。何でもない出来事ですが、こういう事が幼少時の思い出として、いちいち懐かしいです。
 というわけで、今回は第2クールから第3クール途中までの面白いと思った話のレビューです!

■第15話:怪獣少年の復讐 (脚本:田口成光/監督:山際永三)
 嘘つき少年がいろいろな問題行動を起こします。腹を立てた郷隊員でしたが、少年の親戚から話を聞くと、電車の運転手だった少年の父親が事故を起こして死んでから人が変わったということでした。事故を目撃した少年は怪獣が原因と訴えるも、警察もマットも話を信じず、少年の父親の運転ミスということで処理されてしまいます。さらに少年は怪獣の出現を予言し…。
 脚本が見事でした。ただ、透明怪獣の映像表現は、初代ウルトラマンのネロンガ回に遠く及ばず。ネロンガは何もいないはずの地面が足形にめり込んでましたからね。。ウルトラセブンとは反対に、新マンはヒューマンドラマが多い前半に面白い話が多いと感じます。

kAETTEKITAULTRAMAN_EP20.jpg■第20話:怪獣は宇宙の流れ星 (脚本:石堂淑朗/監督:筧正典)
 この回は怪獣の大きさを示した特撮表現が見事!渓谷にいる怪獣マグネドンと、それに近づいていく隊員たちという構図が最高でした!CGでは出せない昭和特撮のイリュージョンの素晴らしさですね(^^)。

■第31話:悪魔と天使の間に (脚本:市川森一/監督:真船禎)
 脚本は帰ってきたウルトラマン最高傑作、作品としてもツインテール回に並ぶ帰ってきたウルトラマン2大傑作と思います!
 マット新隊長の伊吹の娘が、口を聞けない少年を連れてマット基地に来ます。ハンディキャッパーと友人になる娘の優しい心を隊長は大事にしてあげたいと思いますが、この少年は宇宙人。テレパシーを通じて郷に挑戦してきます。「我々はウルトラマンを殺し、地球を侵略する。怪獣プルーマに勝ったときがウルトラマンの最期だ、覚えておけ」。この少年が宇宙人だと隊長に訴える郷隊員ですが、隊長に「私はあの子を、何かの偏見で人を疑ったり差別したりする人間に育てたくないのだ」と、取り合ってもらえません。
 少年を殺そうとしたために謹慎処分を言い渡された郷は、隊長に訴えます。「宇宙人は、明日怪獣に病院を襲わせると予言しました。もし怪獣が明日病院に登場したら、あの少年が宇宙人だという僕の話を信じてくれますか。」「ウルトラマンがピンチに陥ったら、あの少年を捕まえてください。」
 隊長の目の前で、郷の予言が次々に現実になっていきます。そしてウルトラマンが倒されそうになった時に、隊長は意を決して少年を探し、そして倒します。郷が隊長に「僕ならあの少年は外国に行ったといいますね」といったところ、隊長はこう応えます。「娘には真実を話すつもりだ。人間の子は人間の子さ。天使の夢を見させてはいかんよ。

kAETTEKITAULTRAMAN_EP31.jpg なんと素晴らしい話でしょう、見終わった後のジーンとする感覚がやばいです。僕が中学生になったあたりから、日本のテレビドラマは「トレンディドラマ」なんて言われる浅はかなものだらけになってしまったのですが、そういうものよりこの脚本の方が間違いなくハイレベル。ストーリーだけでなく、最後の隊長のセリフなんて超がつくほどの名言じゃないですか!このセリフの後、天使のように屈託のない笑顔を見せる女の子のアップでストップモーションとなって話は終わるんですが、この演出も素晴らしいです。「ウルトラマンなんて」という大人に新マンを薦めるとしたら、この話です!

■第35話:残酷!光怪獣プリズ魔 (脚本:朱川審/監督:山際永三)
 子供の頃、絶対温度-273度というのを知ったのは、この話によってでした(^^)。あと、この話の脚本は岸田森さんだったという記憶があったのですが、今回調べてみたら違う方ですね…もしかしたら、岸田さんのペンネームだったりするのかな?それにしても、この話は子供だった僕には難しすぎました。

-----
 第2クールには、前後編と力の入ったシーゴラス&シーモンス戦とか、ウルトラセブンが助太刀に来るベムスター戦などの有名回もあるんですが、大人になってみるとまったく面白くなかったです(゚∀゚*)エヘヘ。大人になると、演出とかカメラワークとか脚本とか演技とか、そういうところに目が行くようになっちゃうのかも知れません。それにしても「悪魔と天使の間に」は本当に素晴らしい話でした。これはウルトラセブンで言う「超兵器R1号」みたいな位置づけなのかな?次回は、ウルトラマンの敗戦から最終回までのレビューです!


Category: アート・本・映画 etc. > テレビ番組   Tags: ---

Response: Comment: 2  Trackback: 0  

テレビドラマ『帰ってきたウルトラマン』#1 第1クール 円谷プロダクション

KettekitaUltraman.gif 昭和46年(1971年)は日本の特撮ヒーロー番組にとって特別な年。だって、仮面ライダーが登場して、ウルトラマンが帰ってきたんですから!60~70年代生まれの日本男子にとって、特撮ヒーロー番組は特別というレベルを通り越して一般教養となっているんじゃないでしょうか。というわけで、今回は『帰ってきたウルトラマン』の日記です。いつか書きたかったんですが、それが主役を演じた団次郎さんの追悼になろうとは…時は流れているんですよね。。

 幼少時の『帰ってきたウルトラマン』の印象がいくつかあります。まず、MATという対怪獣組織がカッコよかった!基地が海底にあるのが幼心に凄いと感じたし、マットアローやマットジャイロという戦闘機のデザインもカッコよかったです。まだ幼稚園に入る前、大人になったらこういうカッコいい職業に就きたいとあこがれていました。
MatArrow_chogokin.jpg 子供のころ、5センチほどの大きさのマットアロー1号の超合金を持っていたなあ。未塗装の銀色のもので、フォルムが美しくて宝物のように大事にしていました。ウルトラシリーズで大怪獣組織の兵器がカッコいのは、ウルトラセブンと帰ってきたウルトラマンだと思ってます。さらに、Vラインが入ったオレンジのユニフォームが見栄えが良くて大好きでした。
 こういう思い出話は徐々に書いていくとして、取り急ぎ印象に残っている話をダイジェストで紹介!まずは、第1クールからです。

■第4話:必殺!流星キック (脚本:上原正三/監督:筧正典)
 バリアで攻撃を跳ね返す怪獣キングザウルス三世に敗れるウルトラマン。郷隊員は怪獣を倒す事で頭がいっぱいで、恋人アキと一緒にいても心ここにあらず。郷が自分のことを好きではなくなったのではないかと不安になるアキでしたが、怪獣に勝つために山篭りの訓練を積んでいる郷の姿を見てアキは感動します。
KaettekitaUltraman_ep4.jpg この回、話はそれほど面白いとも思いませんが、演出と映像が見事です!一度敗れた怪獣との再戦の際に怪獣の前で構えて動かないウルトラマンと、脳裏をよぎる敗れた戦いが二重写しになる映像表現が素晴らしかったです!そして、ラストシーンでマットの隊員たちが夕焼けに照らされてアンダー気味に映し出される構図が見事。このショットが最終回のラストシーンだったとしたら、僕の新マンの評価は3割増しになっていたでしょう(^^)。というわけで、話よりもカメラマンや編集というスタッフの見事さが印象に残っている回でした。

■第5~6話:二大怪獣東京を襲撃/決戦!怪獣対マット (脚本:上原正三/監督:富田義治)
 怪獣の卵のような岩石がデパート近くの工事現場で発見されます。通報を受けて駆けつけたマットでしたが、みすみすこれを「ただの岩石」と見過ごしてしまいます。しかし岩石は巨大化、その影響でデパートの地下に郷隊員の恋人を含めた人々が地下に閉じ込められます。岩石は怪獣ツインテールの卵でしたが、ツインテールを捕食するために、怪獣グドンまで来てしまいます。    
KaettekitaUltraman_ep5.jpg グドンを東京に寄せ付けないため、防衛庁長官から卵をMM爆弾で破壊するようマットに指令が出ます。しかし、地下に人々が残されていると訴え、攻撃中止を申し出る郷隊員。マット隊長も「マットの不始末はマットでつける」と、防衛庁長官の命令を無視して、MM爆弾を使わずに出撃。しかしマットは怪獣を倒すことが出来ず、ウルトラマンも敗れます。
 防衛庁はスパイナーの使用を決断、しかしスパイナーを使えば東京は消滅します。東京に避難命令が出ますが、重症の恋人アキは病院から動く事が出来ません。アキとともに病院に残ることを決断するアキの兄の言葉を聞いて、動けないはずのアキの瞳から涙が流れ落ちます。マットは長官に麻酔弾の使用を提案、失敗したら解散と言われるも作戦に踏み切ります。そしてウルトラマンと二大怪獣の再戦となり…

 これが最終回でいいんじゃないかというほどの壮絶さ、そのへんの映画よりも感動する素晴らしいドラマでした!僕が新マンで好きな話は、ぶっちぎりでこの前後編と「悪魔と天使の間に」の2つです。ストーリーの熱さだけでなく、加藤隊長や上野隊員らの俳優陣の熱演がまた素晴らしかったなあ。大道具や特撮やカメラワークも見事で、中でも夕日をバックに怪獣2体に挟まれるウルトラマンの構図など、新マンきってのベストショットかも。高架下から狙っている構図で、怪獣やウルトラマンの巨大さが見事に表現されてるんですよね。また、怪獣の巨大さを表現した合成ショットも見事。
 怪獣の造形も見事でした。新マンは微妙なデザインの怪獣も多いんですが、グドンとツインテールはどちらも見事なフォルム。いや~、子供がこんな見事なドラマと映像と怪獣を見せられたら夢中になるのは当然じゃないかと。今回、人生で10回目ぐらいの視聴でしたが、またしても感動してしまいました。。

-----
 第1クールの新マンはヒューマンドラマが多かったです。キングザウルス三世回は失敗を乗り越える成長物語で、第2話「タッコング大逆襲」は自分の力を過信して独断でチームワークを乱した主人公が立ち直る話、第3話「恐怖の怪獣魔境」はMAT内で意見が対立してどちらの言い分も信じてやりたい隊長の葛藤の話です。あ、そうそう、第3話は、今回久々に見てそんなに面白いとは思わなかったんですが、でも僕にとっての新マンのイメージってこの話なんですよね。いや~、第2クール以降も楽しみだぞ、第2クール以降はまた次回!


Category: アート・本・映画 etc. > テレビ番組   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

さらば帰ってきたウルトラマン 団次郎、逝去

DanJirou.jpg 先月(2023年3月22日)、モデル兼俳優の団次郎さんが亡くなっていたそうです。享年74歳。もしかすると、昭和ウルトラマンの主役ではじめて天に召された人になってしまったのかも。

 物心がつくかつかないかの頃にすでに観ていた昭和ウルトラシリーズなので、最初に見たのがどれだったのかの記憶はあやふや。でも、リアルタイムだったウルトラマンレオ、再放送を見たウルトラセブン帰ってきたウルトラマン、この3つのどれかだった事は確実です。中でも帰ってきたウルトラマンの第1話とウルトラセブンの第2話「緑の恐怖」は幼心にストーリーが刻み込まれたほど強く印象に残っていて、物心がついた時にはウルトラマンはすでに特別なものになっていました。

 そんなわけで、僕にとっての団次郎さんは、ほぼマット新人隊員の郷秀樹…「帰ってきたウルトラマン」の主役としてです。でも郷秀樹って最初はあまり好きじゃなかったんです、ウルトラマンにしては軟弱な印象があって。防衛軍のような厳しい組織の隊員の割に髪は長いし、体が細く感じました。僕がウルトラマンを観始めた1970年代なかばは、ブルース・リーや藤波辰爾のブームがあったころで、筋肉に対するあこがれがあったんですよね。
 そんなふうに最初は軟弱に見えた団次郎さんですが、番組終盤になると成長した立派な大人という描写が増え、僕の団参に対する見る目は変わりました。ミステラー星人回と最終回での出で立ちとセリフは、子どもが憧れるには十分すぎるぐらいの格好良さでした。

 その後、僕が団さんを見かけたのは、「マッハバロン」(レッドバロン?)と「少年探偵団」のみ。もともとモデルさんだったそうですし、他にも色々と出演していたのでしょうが、子どもだった僕が見かけたのは子供番組の中だけでした。見かけた時はいつも「あ、新マンだ」でしたし。だから仮面ライダーV3の宮内洋さんのように、子ども時代に憧れたお兄さん、という印象がずっとあります。

 「帰ってきたウルトラマン」を見て感じるのは、その背景に映り込んでいる日本の景色が、僕の幼少期の日本の風景そのままである事。これはウルトラマンレオまで続いて、年代に直すと1971年から75年まで。日本がいざなぎ景気で成長しきって、そのあとの石油ショックや核戦争の危機を感じ始めた頃です。これがウルトラマンとセブンになると、自分が実際に見て育った景色よりも古く感じて、自分が生きた世界には思えないんですよね。だから「帰ってきたウルトラマン」を観るのは、単に番組を見ているのではなく、自分がリアルに生きてきた原風景の追体験にもなっていたりします。団次郎さんは、その記憶の中に溶け込んだ存在でした。団さんが召されていく先は光の国でしょうか…ご冥福をお祈りします。


Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『ラヴェル:歌劇《子供と魔法》 歌曲集《シェエラザード》他 デュトワ指揮、モントリオール響』

Ravel_Kodomo to Mahou イベール作品集と同じく、デュトワ指揮モントリオール響のCDをもうひとつ。2016年に指揮者の小澤征爾さんがグラミー賞を受賞した時、僕が一番驚いたのは、ラヴェルがオペラ作曲をしている事でした。というわけで、《子供と魔法》は、僕が初体験したラヴェルのオペラでした。ところが僕は小澤征爾指揮のディスクではなく、デュトワ&モントリオール響によるこのCDを買ったのでした。理由は単純、ラヴェルが書いたもうひとつのオペラ《シェエラザード》の序曲と歌曲も入っていたからでした。

・歌劇《子供と魔法》
・歌曲集《シェエラザード》
・夢幻劇《シェエラザード》序曲


 子供と魔法》…これはいい、実にエキゾチックな雰囲気の曲の並んだオペラでした。良くこれだけ多彩な曲想の響きが作れるもんだ。。最初は東洋趣味的で、途中には夢の中のような幻想的な場面があり…とにかく色彩感が豊か。西洋音楽の中でこれだけ色々なサウンドが出てきたのは、まさにフランスの印象派が隆盛してからの事。というか、印象派以上の多彩な色彩感を持った音楽って他にないかも。オペラ《子供と魔法》はその典型で、よくぞこれだけ多彩な色彩を持った曲を色々と書けたものだと思いました。ただ、ファンタジックではあるのでディズニー的にも聴こえて、この音楽の傾向が好きかどうかはまたちょっと違うかも知れませんが。

 《シェエラザード》。音楽のシェエラザードといえばリムスキー=コルサコフですが、これはラヴェルが学生の時に書いた自作劇用の楽曲で、これがデビュー作らしいです。オペラ自体は完成しなかったため、書き上げられた序曲と歌曲だけが残されたそうなので、このCDに収録されたものが、ラヴェル製シェエラザードのすべてみたいです。
 これもまた《子供と魔法》のように東洋趣味と印象派の融合したような音楽で、なかなかに見事でした。でもなんとなく劇伴的でもあるし、序曲なんかは《海》そっくりな事もあってドビュッシーのエピゴーネンにも感じて、作品としてはいいけどまだラヴェルの音楽になるところまでは行ってないのかな、みたいに感じました。
 
 僕は、ラヴェルと言えば《ボレロ》より《ダフニスとクロエ》な人間だし、チャイコフスキー《くるみ割り人形》のようなこういった独特な曲想を持った色彩豊かな調音楽は大好きなので、これは大当たり!こういう音楽を聴くと、音楽って本当に素晴らしいと思いますねぇ(^^)。


Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『イベール:《寄港地》 《フルート協奏曲》 《交響組曲パリ》 イベール作品集 デュトワ指揮モントリオール響』

Ibert_Dutoit.jpg フランス近代の作曲家イベールの作品では、こんなCDも聴いたことがあります。一般的にイベールと言えば「寄港地」と「交響組曲パリ」でしょうし、このCDは指揮者もオケも有名なので、日本でイベール作品の録音と言えばこれが本命かも。

・寄港地 3つの交響的絵画
・フルート協奏曲
・モーツァルトへのオマージュ
・交響組曲「パリ」
・ボストニアーナ
・モーツァルトへのオマージュ
・バッカナール
・ルイヴィル協奏曲


 僕的にはこのCDは「寄港地 3つの交響的絵画」を聴くためのものになってます。それぐらい、この曲は素晴らしい!サブタイトルににじみ出ているように、印象派の鮮やかな色彩感覚がバリバリ前面に出た作品でした。3つというのは、ローマ-パレルモ、チュニス-ネフタ、バレンシア。
 第1曲は、これから大海に漕ぎ出していく感がすごくて、最初の3分が超素晴らしいです!とくに冒頭90秒はドビュッシー「海」やラヴェル「ダフニスとクロエ」と同様の手法ですが、これは完全に僕のツボで、茫洋とした中でこれから何かが始まる感がすごいです。第1曲は途中で不穏になって激しくなってとシーンへと移っていきましたが、明確な切れ目があるわけではなく流れるように移っていくその作曲面でのテクニックに脱帽です。他のセクションに短三度が混じってきて不穏さがにじみ出してくる、とかね。
 第2曲はけっこうエキゾチック。特に場面展開はせずにこのムードだけでおしまい、みたいな。そして第3曲は第1曲と程同じ構造で、また大海原に出て、スリリングな展開になって、みたいな。

 「フルート協奏曲」も印象派的な色彩感覚のある曲でしたが、曲を構成するための語法がやや古典的でした。こちらの方が関係構造は複雑だしがっちりしているので、ロマン派や新古典が好きな人なら、「寄港地」よりこっちの萌芽より好ましいと思うかも。

 「ボストニアーナ」。ボストン響から委嘱されて着手した交響曲の第1楽章ですが、完成前にイベールは他界(´;ω;`)。かなり新古典的な作風と感じました。

 「モーツァルトへのオマージュ」「バッカナール」「ルイヴィル協奏曲」は、芸術作品というよりもプロの作曲技術を使って書いた、「こういう曲想も作れるよ」とか「聴く人の授与に合わせて書いたよ」という音楽に感じました。それだって技術的には素晴らしいんですが、内容としては僕は作曲家の肉声が聞きたいっす(^^)。。「交響組曲パリ」は前回ジャン=ワルター・オードリ器楽アンサンブルのCDで感想を書いたので、興味があるようでしたらそちらをご参照ください(^^)。

 というわけで、僕的には「寄港地」専用CDと化していたのですが、久々に他の曲を来たら、他もさすがに素晴らしかったです。イベールは同時代のフランスの作曲家としてはオネゲルやプーランクほどの知名度はありませんが、作曲のレベルは互角以上。そうかんがえると、あとは「自分は何をやるべき人間か」をいち早く自覚した人が、作曲家として残る人という事になるのかも知れませんね。いずれにしても、素晴らしい音楽でした!


Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『イベール Jaques Ibert:《オーボエと弦楽合奏のための協奏交響曲 Symphonie concertante pour hautbois》他 ダヴィッド・ワルター(oboe)、ジャン=ワルター・オードリ器楽アンサンブル』

Ibert_DavidWalter.jpg オネゲルらフランス6人組と同世代のパリ生まれの作曲家に、ジャック・イベール Jaques Ibert という人がいます。パリ音楽院卒らしいので、もしかすると作曲科でオネゲルとは同じクラスだったかも知れませんね、知らんけど。このCDはイベールの管弦楽作品集です。

・オーボエと弦楽合奏のための協奏交響曲 Symphony Concertante Pour Haubois (1948)
・カプリッチョ Capriccio
・組曲「サモス島の庭師」 Le Jardinier De Samos
・交響組曲「パリ」 La Suite Symphonique "Paris"


 作品全体の傾向は、印象派音楽の和声と新古典またはロマン派的な楽曲様式の組み合わせで、ドビュッシーやラヴェルを通過した上での折衷的な音楽と感じました。少なくともこのCDには冷たさ厳しさを感じる音楽は入っておらず、どれも温かみや洒落た作品ばかり。そういう意味ではセヴラックに近いかも…これはこっち系が好きな人は相当に嵌まる音楽ですね。。

 いちばん面白かったのは、「サモス島の庭師。2分程度の曲を5曲連ねた組曲で、どの曲もすっごくファンタジック!これって何なんでしょう、春が来て庭に妖精が飛んでるような、そういう世界観です。でもこれ、コメディのために作られた音楽らしいんですよね(^^)。。

 似たような構成だったのが「交響組曲パリ」。2分前後の曲を集めた組曲で、こちらは6曲でした。エキゾチックな雰囲気の曲なんかは、マグリブあたりのフランス領の音楽のイメージなのかも。ジャズ調の曲もあり、純音楽ではなく劇音楽のようでした。

 「カプリッチョ」は10分ほどの曲でしたが、この色彩感覚がまたすごい!ピチカートがずっとポコポコ鳴っているようなf何田ジックな曲想でしたが、イベールさんには具体的な絵が頭の中にあったんじゃなかろうか。。

 いちばんの大曲だったのが、「オーボエと弦楽合奏のための協奏交響曲」。3楽章の協奏曲で、これも色彩感覚が素晴らしかったです。うまく言えないんですが、この時代のフランス音楽の独特な質感って何なんですかね。手が込んでるけど軽妙。日本やドイツだったらこういう手の込んだことをしたら壮大にしたリ重厚にしたリしそうなもんだけど、このへんが20世紀のフランス音楽といった感じでした。。

 なるほど、フランス6人組と同世代の音楽だと思いました。それにしてもダヴィッド・ワルターのオーボエ、色っぽい音を出す上にメッチャうまいんですけど。。さすがはオーボエ奏者なら知らない人はいない凄腕、ちなみにパリ音楽院の教授でもあるそうです。


Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Roy Buchanan / Loading Zone』

Roy Buchanan Loading Zone 1977年リリース、前年にアトランティックに移籍したロイ・ブキャナンの発表したアルバムです。デビュー・アルバム『Roy Buchanan』が好きだった僕は、ロイ・ブキャナンと言えばブルースやカントリーといった、いなたいアメリカ音楽ののセッション・ミュージシャンと思っていたもんで、このアルバムを聴いた時はビックリしました。

 1曲目のインスト曲、「The Heat Of The Battle」、分厚いキーボードの上で、ディストーションでサステインの長いギターがいきなりアドリブをかましたイントロ、そこから一気にテーマに入り…なんだこれは、ジェフ・ベックやラリー・コリエルみたいじゃないか!しかもうまい。しかもクレジットを見ると、作曲はスタンリー・クラーク。というか、スタンリー・クラークはベーシストとしても参加してました。もっと言えば、デヴィッド・ガリバルディにウィル・リーにヤン・ハマーフュージョン人脈のプレーヤーだらけでした。
 
 ブッカーTアンドMGズ「Green Onion」など、ロイ・ブキャナンらしい古き良きアメリカな音楽のムード漂う音楽なども入っていましたが、アルバム全体で見ればギター・フュージョン色が強いアルバムでした。ソウルの名門アトランティックに移籍したから、更にアメリカのルーツ・ミュージックに分け入っていくのかと思いましたが、ロイ・ブキャナンさんの選んだ道はその逆でした。

 僕が聴いたロイ・ブキャナンのアルバムはこれが最後でしたが、この11年後となる1988年、ロイさんは拘留された刑務所内で首つり自殺。アルバムも毎年のようにコンスタントに発表していたというのに、なんとも残念な幕切れでした。そんなに売れなくてもいい、新しい事に挑戦しなくてもいいので、田舎でのんびりといつまでも良い音楽を演奏していて欲しかった人でした。
 

Category: CD・レコード > ロック・ポップス   Tags: ---

Response: Comment: 0  Trackback: 0  

『Roy Buchanan / In The Beginning』

Roy Buchanan In The Beginning USでは『In the beginning』、UKほかヨーロッパでのタイトルは『Rescue Me』、日本では『ギター・ルネッサンス』とタイトルがコロコロ変わるアルバムですが、ジャケットは同じ。1974年リリースのロイ・ブキャナンのアルバムです。

 音楽はこれまでとほとんど同じで、白も黒もないアメリカの田舎音楽。「レスキュー・ミー」や「CCライダー」を取り上げているぐらいですからね(^^)。でも、ホーン・セクションやソウルフルな女性コーラスが入り、ヴォーカル入りの曲も増えたもんで、流行を追ったというかポップになったというか、セッション・ミュージシャンが自分の好きな音楽を自由にやっている感が薄れ、売りに行ったように聴こえてしまいました。ロイさんダメだよ、田舎男なら頑固なぐらいじゃないと。
 ところが1曲、すごく暖かく気持ちよいオルガン入りのインスト曲が入っていて、僕はこの曲が好きです。「Country Preacher」という曲なのですが、作曲はなんとジョー・ザヴィヌル。いやあ、こういう曲もやるんですね。曲だけでなくアレンジや演奏も良かったです。

 というわけで、音楽的は相変わらずの保守系アメリカ音楽でしたが、このアルバムの聴きどころはギター。ロイ・ブキャナンは1972年から75年までポリドールに所属していましたが、その間に発表したスタジオ・アルバムの中では弾きまくり度ナンバーワンの作品でした。基本的にほぼ単旋律なので、僕的には弾いても弾いてもそれほどすごいギタリストとは感じられない人だったのですが、さすがにこれだけ弾きまくられると「おお~」と思わされるぞ、と(^^)。やっぱりカントリー/ブルース系のギター・ヒーローという売り出し方だったんでしょうね。でもって、このジョー・ザヴィヌルの絡みがよもや以降に関わってこようとは…その話はまた次回(^^)。
 

04 2023 « »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

月別アーカイブ
検索フォーム
これまでの訪問者数
最近気になってるCDとか本とか映画とか
ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
アド
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

Archive

RSS