
子供の頃に夢中になって読んだ漫画『コブラ』もいよいよ佳境!最初に発行された単行本『コブラ』は18巻が最後になりますが、最後まで最高に面白かったです!というわけで、13巻から18巻までで、僕が面白いと思った話をセレクトしてご紹介!
■マンドラド(13巻) 人の顔型を花を咲かせるマンドラド。その顔の歯がダイヤモンドである事を知った女が、コブラの恋人シークレットを人質にとって、コブラにその花の親木を捜させます。ついにその親木を見つけたコブラでしたが、マンドラドは人に寄生して花を咲かせる植物で、棋聖相手の人の顔をした花を咲かせるのでした。 「異次元レース」「黒竜王」「黄金の扉」「神の瞳」と大作が続いたコブラは、ここからしばらく短編が続きます。寺沢さん、ちょっとお疲れかな?でもこの短編が
ラブクラフトの怪奇短編小説レベルの完成度で面白かったです!マンドラドは、人面の花という不気味さをどこまで絵で表現できるかが話の面白さを左右すると思うんですが(ラストシーンでショックを覚えるかどうかで話の価値が変わりそう)、この絵が実に不気味。こういう表現は小説では無理、漫画ならではと思いました。しっかし寺沢さんは絵がうまいなあ。
■「カゲロウ山」登り(14巻) 信じる人には存在し、信じない人には見えないカゲロウ山。大量の金塊を積んだ飛行機がその頂上に墜落したという情報を聞きつけ、何人もの盗賊がこの山を目指して集まります。険しい山を登るため、盗賊たちは協力して登りますが、山の存在を信じきれなかった盗賊の目の前から山は消え、墜落死が続出。そしてコブラは… 「マンドラド」に続いて面白い短編でした!20世紀前半まで、こういう内容の話って幻想文学として小説で書かれていたんでしょうね。漫画だと、目の前から山が消える、みたいなイリュージョンを絵で見ることが出来るのがいいです。それも、寺沢さんの画力あってのことですね。
■六人の勇士(14~16巻) コブラの宿敵クリスタルボーイが、アーリマン(暗黒神)の力を秘めたブラック・ストーンを手に入れます。アーリマンと対立するアフラ・マズダ(光明神)はコブラの夢にあらわれ、「六人の勇士を集め、アーリマンが取り付いた男を倒せ」と伝えます。勇士を見分けるには、手を握った時に光った相手が勇士である、と。 この話はどう考えても里美八犬伝 (^^;)。六人の勇士を集めるひとり一人がひとつの物語になっているので、実際にはいくつもの話から出来ていました。面白かったのは、竜が人型の幻影を作り出して働かせている世界の話。幻影はマスターである竜が死ぬと消えてしまうんです。で、その幻影のひとりが勇士の一人で…よくもまあこういう面白い設定を思いつけるものです(^^)。
海底に潜む悪魔が人に取り付く幽霊船の話も面白かったです。読んでいて、栗本薫さんの書いた
小説『幽霊船』を思い出しました。クラ-ケンが出たり、幽霊船が出たりする海洋小説って、子供の頃から妙に空想を書きたてられて大好きなんですよね(^^)。
そうそう、この話のアーリマンとアフラ・マズダって、ゾロアスター教の神概念ですよね?光と影の二元論もゾロアスター教の基本理念で、これがキリスト教やヒンズーにも影響していったと本で読んだことがありますが、僕が人生ではじめて拝火教の知識を得たのって、実はこの話でした。僕、漫画が知識を得るきっかけになった経験がけっこうあります。手塚治虫『ブラック・ジャック』では火であぶる消毒法を学びましたし、浦沢直樹『
マスター・キートン』では色んな考古学の知識を、弘兼憲史『課長島耕作』ではインサイダー取引を、さいとう・たかを『
ゴルゴ13』では現代史の裏側を…みたいな。漫画って、意外と子供の知育に良いと思うんです。僕は漫画ばかり読んでましたが、勉強もせずに国語はそれなりの進学校でもずっと5でしたから(^^)。
■地獄の十字軍(16~18巻) 宝石を盗むために豪華客船に乗り込んだコブラですが、運悪く宇宙の傭兵部隊ヘル・クルセイダースが船を急襲、コブラは撃たれます。コブラの体に食い込んだ弾丸は時限爆弾となっており、解除方法を知っているのは撃った人間のみ。コブラは狙撃手を捜すために、みずからヘル・クルセイダースに入隊します。 「傑作」を連呼していると有りがた味がなくなってしまいますが、この話も傑作!コブラの胸に時限爆弾を打ち込んだ少佐から解除番号を聞きだすトリックが、
映画『スティング』なみの見事さでした!さらに、ヘル・クルセイダースの残虐性と強さの描写や、首をすげ替えて蘇生するメデューサという
クリーチャーの絵画表現も見事!手塚治虫『火の鳥』や
梶原一騎『巨人の星』を小説で表現することは出来そうですが、
コブラの面白さを小説で表現するのは無理でしょう。そういう意味で、漫画ならではの表現に達した作品なのだと思います。
少年ジャンプに連載されたコブラは「地獄の十字軍」回の単行本18巻でひと区切り。でも話に落ちがついたわけでもなく、この後スーパージャンプに誌面を移して掲載された「聖なる騎士伝説」という話が、「黒竜王」と並ぶ大傑作、コブラはまだまだ続くのでした(^^)。
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