
邦題は「神話」、1966年11月録音(67年リリース)、強烈なブローを聴かせるテナー・サックス奏者
ファラオ・サンダースのセカンド・アルバムです。編成はワンホーンのセクステットで、フロントはファラオ・サンダース(t.sax, a.sax, piccolo, vo)、バックはデイヴ・バレル(p)、ソニー・シャーロック(g)、ヘンリー・グライムス(cb)、ロジャー・ブランク(dr)、ナット・べティス(perc)。ESPからリリースされた1作目『Pharoah』が上質ながら小さくまとまった(ジャズの固定観念に縛られた?)印象を覚えたのに対し、こちらはスケールが大きく、独特な音楽を生み出していると感じました!
収録は3曲、15分超えの大曲ふたつと、その間に挟まれた3分半ほどの曲がひとつという構成。
まず、1曲目「Upper Egypt & Lower Egypt」の劇的構成が見事。ピアノの分散和音を中心にしたイントロ(これだけで5分以上?)が雄大な世界観を作り、それが終わるとファラオがピッコロで民俗音楽のような土着的な音楽を奏でます。ああ、なるほどエジプトか…。それが終わるといよいよイン・テンポになだれ込み、溜めに溜めた後でいよいよファラオがテーマを奏でた瞬間の快感と言ったら…。インテンポ以降はクライマックスを目指す音楽ではなく、ひたすらグルーヴする、ある意味で言えばクラブ・ミュージックのようでした。
B面の「Aum」「Venus」「Capricorn Rising」の3曲メドレー、これも壮絶でした。1曲目はスピードもパワーも強烈なフリージャズ、これはクソカッコいいわ。イントロでピチカートで切り込んでくるヘンリー・グライムスが見事、スピード感と同時に瞬間瞬間の緊張感を与え続ける打楽器軍も見事、そしてファラオ・サンダースとソニー・シャーロックのフロントが強力。これが美しく雄大な「Venus」(「Capricorn Rising」か?)にシームレスで繋がった時の見事さも、言葉にならなかったです。
ファラオ・サンダースって
強烈なブローの印象が強い人ですが、いざ聴くといつも「サックスがメッチャうまいな」と思わされてしまいます。出音もリズム感もアーティキュレーションも、そしてアドリブまで見事なんですよね。特に出音の素晴らしさは例えようがないもので、同じテナーサックスの
ソニー・ロリンズや
ジョン・コルトレーンを上回るレベルではないかと。それに加え、アメリカン・ソングフォームの曲の上でアドリブを取るばかりのジャズでも、まして行き当たりばったりのフリーでもなく、
大楽節を成立させる見事な構成力が素晴らしかったです。
ファラオ・サンダースって名アルバムをたくさん残していますが、
フリー・ジャズ色の強いリーダー・アルバムではこれが最高傑作と思います。
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