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心に残った音楽♪

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『Badfinger』

Badfinger.jpg 1974年発表、アップルからワーナーに移籍したバッドフィンガー、通算5作目のアルバムです。アップル最終作となる前作『Ass』が73年11月発表で、本作『Badfinger』は74年2月発表。ほとんど間があいてません。国によっては発売順が逆になった所もあるらしいです。『Ass』がヒットしたわけでもないのに矢継ぎ早のリリースとはこれいかに…どうも契約上の事みたいです。

 ところが、『Ass』がアレンジのほとんどされてないデモテープのような出来だったのに対して、このアルバムはいいアレンジで、演奏や録音もなかなかで、けっこうな完成度でした。あれですかね、ゴタゴタの繰り返しで去る事になったレーベルに残すレコードと、多額の契約金をもらって迎えてくれた新たな巨大資本レーベルの船出となるレコードでは、意気込みが違うんですかね(^^)。

 でも…このアルバム、僕は学生時代にビートルズのファンの友人から借りて、当たり前のように聴いていましたが、それは日本だったからみたいで、英米でのCD化はかなり遅れたらしいです。というのも、リリース時はアメリカではバッドフィンガーのアルバム史上最低の売れ行きだったそうで…あ~もともと売れなかったのに、再プレスする気にはなれないのは分かる気がします(^^;)。もともと売れなかったのだって、完成度がお世辞にも高いとは言えなかったアルバムを出した数か月後に出されたら、買い控えたとしても普通だろうから、アルバムの完成度ではない所に理由があった気がするんですけどね。。

 というわけで、振るわなかったセールスとは別に、なかなかの佳作と思いました。このアルバムを高く評価している友人が、僕のまわりには何人かいましたが、それも分かる、みたいな。でもここからまた矢継ぎ早に次のアルバムを出す事になり、そこに悲劇が…その話はまた次回!


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You Tube チャンネル 【ポップロック・ファン必聴!バッドフィンガーについて語る動画】 アップしました

Badfinger_Thumb Nail 私がバッドフィンガーの音楽を初めて聴いたのは、ビートルズの大ファンだった友人から、デビュー・アルバム【マジック・クリスチャン・ミュージック】を聴かせてもらった時。時は80年代で、私はまだ中学生でしたが、ビートルズのポップな側面を凝縮したようなキラキラした音楽に、「なんてポップなロックなんだろう」と、胸をときめかせたのを覚えています。

 でも当時、アップルからリリースされていたバッドフィンガーのアルバムって、完全にカタログから消されていて入手困難。中古でLPを見つけても、高くてとても買えるものではありませんでした。

 ポスト・ビートルズ筆頭ながら、悲運に見舞われ続けた伝説のポップロック・バンドが、バッドフィンガーです。ビートルズやポップロックが好きな人だったら、きっと気に入るだろうバッドフィンガーの音楽の紹介をさせていただこうと思います。

 思いつくがままにのんびり話していますので、コーヒーでも飲みながらゆっくりしていってくださいね。そしてもし気に入っていただけたようでしたら、チャンネル登録や高評価をいただければ有り難いです♪

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(バッドフィンガー動画)https://youtu.be/cvW-xq8t6nM


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『Badfinger / Ass』

Badfinger Ass 1973年リリース、バッドフィンガー4枚目のアルバムです。バッドフィンガーはアップルに4枚のアルバムを残していますが、これはその最終作。バッド・フィンガーはマネージメントやレコード会社との軋轢に巻き込まれたかわいそうなバンドでしたが、このアルバムもその煽りを受けて、なかなかの難産だったみたいです。

 殆どの曲が純粋なバンド・サウンドだからか、実にシンプルなロック~ポップ・ロックに聴こえました。大雑把に言うと、キーボードやアコギはコードを押さえるのに毛が生えた程度で、オブリはエレキ・ギターがいれば彼が担う事もある程度のもの。ベースやドラムは完全にリズム・セクション。というわけで、『Magic Christian Music』や『No Dice』の頃みたいなキャッチで心地よいアレンジがないんですよね…。あ、でも、ボーナストラックに入っていた「Do You Mind」という曲のコーラス・アレンジはすごく好きでした(^^)。

 このアルバム、最初はトッド・ラングレンをプロデューサーに立てたものの、またしても金銭トラブルが起き、トッドはすぐに降りたそうです。以降バンドは一度はセルフ・プロデュースでアルバムを完成させたそうですが、アップルはこれを拒否。完成したアルバムはそこからさらに手が入ったものだそうですが、それでもこのあがりを聴くと、アップルの判断もあながち間違いではなかったような…。

 しかしバッドフィンガーってつくづく不運です。トッド・ラングレンの解任だってバンドのせいじゃないだろうし、このアルバムは事務所がこざかしい真似をして法廷闘争に入って発売が延期され…。これだけごたごたしていて、音楽制作に背因縁できるとは思えないんですよね。普通ならこれで終わりかと思いきや、このアルバムを最後に、バンドはワーナーに移籍。そこで作ったアルバムがなかなかの名作で…その話はまた次回!


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『Badfinger / Straight Up』

Badfinger Straight Up ニルソンが歌ってヒットした「Without You」は、バッドフィンガーのメンバーだったピート・ハムとトム・エヴァンスが書いた曲です。70年代のポップロックバンドでは、僕はバッドフィンガーとブレッドが特に好きで、このふたつはビートルズから学び、そしてある面ではビートルズと肩を並べたバンドだとすら思っています。これはバッドフィンガーが発表した3枚目のアルバムで、1971年発表。ちなみにこのアルバム、ジョージ・ハリソンとトッド・ラングレンがプロデュースしています。

 バッドフィンガーのファースト『Magic Christian Music』とセカンド『No Dice』については過去に書いたことがありますが、どちらもポップでいい曲が満載の、素晴らしいアルバムです。そしてこのサードですが、相変わらずいい曲が多いだけでなく、明らかに歌や演奏がうまくなってました!ああ、これはいい…。あくまでバンドサウンドが中心でポップでロック。このアルバムに入っている「Name Of The Game」なんて、バンドサウンドなロックでありつつもポップなミッドバラード、こういうのって出来走で出来ないんですよね。これが出来るって、実はかなり練り込まれてるんじゃないのか…見事というほかないです。なるほど、バッドフィンガーがパワーポップのルーツのひとつと言われるのは、この曲を聴くとたしかに納得できるものがありました。

 なんでこれだけいいバンドで、しかも天下のビートルズから手厚いサポートを受け、宣伝も充分に受けながら、そこまで知られないまま消えちゃったんでしょうね。もしかして、ビートルズ系のポップロックが飽きられていた時代だったのかな。70年代のポップロックって、ブレッドもバッドフィンガーも、そしてカーペンターズもエルトン・ジョンも本当に素晴らしいと思うんだけどな。。こういういいバンドは、レコード会社の宣伝費や思惑とまったく関係ない、こういうブログが口コミで伝えていくしかないですね(^^)。


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『Harry Nilsson / Nilsson Schmilsson』

Harry Nilsson Nilsson Schmilsson モンキーズに楽曲を提供するなど、アメリカのポップス系シンガーソングライターとして高い評価を受けているニルソンが1971年に発表したアルバムです。そんな素晴らしいソング・ライターでありながら、最大のヒットがオリジナル曲ではなく、バッドフィンガーのカバー「Without You」だというのは、なんという皮肉でしょうか。その曲が入っているのがこのアルバムですが、たしかに素晴らしい出来なんですよね。。

 このアルバムを聴いた頃、まだ僕は若くて、音楽とはチャート音楽の事だと思ってました。だから、いい曲なだけでなく、分かりやすくもある「Without You」みたいな音楽を求めて、このアルバムを買ったんだと思うんですよね。それがいざ聴いてみると、けっこうひねりのきいた渋い音楽だったもんで、若い僕には理解できず(^^;)。それほど聴きこむこともなく、放置してしまったアルバムでした。ボサノヴァとかも、若いころに聴いたときは「なんかぼんやりしてつまらない音楽だな」と思いましたしね。まだそういう年齢だったんだと思います。
 ところが何十年ぶりかに引っ張り出して聴いてみたところ、玄人好みかも知れませんが細部のクオリティの高さに息をのんでしまいました。「The Moonbeam song」なんて、フィフティーズの名バラードをモダン化したような幻想性で、ヴァン・ダイク・パークスあたりの音楽に感じる心地よさ、痺れました。そしてその曲が終わると、あのピアノの4分音符のコードプレスが…「Without You」だああああ!やっぱりこの曲は見事です、バッドフィンガーのオリジナルも素晴らしいけど、ニルソンさんのフォーリズム&管弦のアレンジは見事。この時代のこれ系のポップスのバラードって、レオン・ラッセルさんの「ソング・フォー・ユー」とか、エルトン・ジョンさんの「Your Song」とか、めっちゃくちゃいいものが多いです。ギターバンドでなく、グランドピアノをメインに曲を作る状況が整ってきたのかも。

 全体的に、アメリカのレイドバックしたアーリー・ミュージックの匂いのある、ピアノで書いたポップスという感じ。録音も良くて、さすが70年代と感じました。音楽内容的にやや玄人向けのポップスと感じましたが、それだけに30代を過ぎてから聴くと味わいが分かるアルバムかも…な~んて、自分が若い時に理解できなかっただけなんですけどね。。


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『The Monkees / The Birds, The Bees, and The Monkees』

Monkees The Birds The Bees and The Monkees ビートルズの大ヒットを参考にして、アメリカで作為的に作られたポップス・バンドがモンキーズです。これは1968年に発表した5枚目のアルバムで、邦題は『小鳥と蜂とモンキーズ』。モンキーズで一番有名な曲「デイドリーム・ビリーバー」は、このアルバムに入ってます

 ビートルズの二番煎じかと思いきや、演奏がうまい、アレンジなんて完全にプロの仕事でした!これは素晴らしい。それでいて、アカペラで30秒ほどで終わる曲が入っていたり、電子オルガンを使った即興セッションが入っていたりと、けっこうサイケ色も感じました。これってどういう事なんでしょう…プロダクション主導で製作が進んで、スタジオ側のクリエイターがやりたい放題やって作ったものの気がしました。クリエイターの好きにさせると、ニッチになったりまとまりに欠ける危険は出てきますが、クオリティは間違いなく上がるんですよね。ただ、いいと感じた曲が少なかったのが惜しかったです。演奏とアレンジとアルバムコンセプトは素晴らしかったんだけどなあ。
 そして、もうひとつ感じたのは、モンキーズではなく実際のクリエイターやプロダクションばかりに耳が行ってしまったもんで、感情移入できなかった事(^^;)。仮に下手でも、自分で作ったほうがいいですね。。

 68年というと、ビートルズで言えば『サージェント・ペパーズ』やホワイト・アルバムストーンズでいえば『サタニック・マジェスティーズ』や『Begger’s Banquet』あたりの時代です。なるほど英米の違いはあれど、若干サイケで、ビートバンドのポップスに管や弦をオーバーダビングして作るところは、ビートルズやストーンズと同じ時代の空気感。日本で言うと、70年安保間際の時代なので、グループサウンズ全盛期ぐらいでしょうか。そういう時代の匂いを感じられたところが、特によかったです!


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『Charles Lloyd / The Water Is Wide』

Charles Lloyd Water Is Wide 「Hyperion with Higgins」の1年前、2000年にチャールズ・ロイドさんが発表したアルバムです。メンバーは「Hyperion ~」とまったく同じ。ジャケットも白黒反転させただけなので、兄弟アルバムといったところでしょうか。音も音楽性もそっくりなので、恐らく同じセッションの分売なんでしょうね。

 「The Water Is Wide」に対し、こちらはミディアムからスローナンバーだけで固めています。1曲目が「Georgia」ですし、デューク・エリントンやビリー・ストレイホーンのナンバーなんかもやってるので、ジャズ名バラード集的。あんまり難しい事や新しい挑戦もしてないし、ロイドさんは「歌いまわしこそ音楽の表現というものだ!」と思っているのかも。でも、その歌い回しが深い所まで行くかというと、やっぱりブレーキがかかって、無難なところでまとめてる感じ。そこはもっとゆっくり…もっと挑戦的な音を…もっと泣きじゃくるように…と思う所で、ぜんぶその一歩手前でとめて、ほどほどにする感じ。深い所まで行くのを避けているという意味で、少しだけソウルフルなテイストがあるものの基本BGM志向のシャンパンジャズ…って感じでした。
 あと、若いころは演奏も作曲もジョン・コルトレーン完コピみたいな人でしたが、かつてほどでないにせよ、このアルバムでもそういう匂いは残っていました。M8なんて、コルトレーンってバラードでよくこういう借用和音使ってたよな、みたいな(^^)。

 90年代以降のジャズって、ポップス以上にBGMだな、と思うものが増えたように思うんですが、これも夜に大人が高いお酒でも飲みながら聴くBGMみたいに感じました。デートかなにかのBGMとしてムードだけを楽しむなら、スローな曲ばかりだし、いいCDだと思います…が、僕はあんまり心が動かなかった(^^;)。。


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『Charles Lloyd / Hyperion with Higgins』

Charles Lloyd Hyperion with Higgins 2001年発表というわけで、「Forest Flower」から35年後の、チャールズ・ロイドさんのアルバムです。メンバーはガラッと変わって、ブラッド・メルドー(p)、ジョン・アバークロンビー(g)、Larry Grenadier (bass…ごめんなさい、この人知らないけどうまい)、そしてビリー・ヒギンス(dr)。半分はECMお気に入りのミュージシャンで固めた感じ。アルバムタイトル通り、これはこの後に他界するビリー・ヒギンスの追悼盤(・_・、)。

 パッと聴き、気持ちいいです。おお~オーセンティックなコンテンポラリー・ジャズだ!サイドマンの違いからか、録音がECMだからなのか、全体的には35年前よりコンテンポラリーなサウンドになってます。でも、BGM として聴くにはちょっとジャズで、アドリブに主張あり。ところがそのアドリブを楽しもうとすると、突き抜けてこないで安全圏で演奏している感じ。つまりですね…なんとなく流し聴きしてるとアーティストものっぽいけど、いざ本気で聴くと何もない(^^;)。体裁だけ整えてないでもっと自分の言葉で話してくれ…みたいな。

 問題は、技術や表現以前に、なにを良しとするかという主張にある気がします。これを良しとする背後にあるのは何なんでしょうね。80年代以降のジャズって、大体このぐらいでブレーキがかかって、突き抜けないんですよね。さながら、本音で話すのが禁じられている演説のよう。誰かを感動させる音楽を作ろうとしてるんじゃなくて、誰にも怒られない音楽を作ろうとしているかのようです。バークレー・メソッドが確立されて以降、メソッドの範囲内でやってるジャズって、大量生産モードに入っちゃったコンビニエントな音楽、仕事モードでこなしている産業ジャズ、牙の抜かれた張り子の虎みたいな音楽に聴こえてしまう時があります。気持ちいいんですけど、飼い慣らされた感がハンパないです。「こういう綺麗なのがありがたいんでしょ」みたいに、聴衆が軽く見られている感すらします。音はいいし、聴きやすいし、ジャズ的な面白さもあって、悪い音楽ではないとは思うんですが…。


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『バルトーク:《管弦楽のための協奏曲》 《中国の不思議な役人》 小澤征爾指揮、ボストン響、タングルウッド祝祭合唱団』

Bartok_Kangengaku no tameno kyousoukyoku_Chuugoku no_OzawaSeiji 同じくアメリカのオーケストラを使ったバルトーク、今度は小澤征爾さん指揮のものです。僕はこのCDを「中国の不思議な役人」目当てで買いました。この曲、元々はパントマイムのための音楽なんですが、演奏会用に短縮されたバージョンがありまして、CDとなると短縮版が収録される事が多いのです。でも、このCDの「中国の不思議な役人」はフルバージョンなのです(^^)。まあ、フルバージョンの方がいいかどうかはまた別ですけどね。

 そしてこのCD、「管弦楽のための協奏曲」がブレーズ/シカゴ響の録音とダブってました。こっちは94年録音で新しいんですがライブ録音だし、レーベルもフィリップスでグラモフォンより格下だし、音楽人としてもブーレーズの方がかなり上なので、「管弦楽のための協奏曲」はまったく期待してなかったんですが…うおお~オケがすげえ躍動してます、音もこっちの方が全然いい!そして…前回あんまりいい事を書かなかったこの曲ですが、これだけいい音と演奏で聴かされると、とんでもなく素晴らしい曲に聴こえてしまいました(^_^)イイカゲンダナ。
ちなみに、バルトークがアメリカ亡命後に作曲したこの曲、初演はこのボストン交響楽団だったんだそうです。「この曲で他のオケに負けるわけにはいかねえ」みたいな危害があったのかも(^^)。また、僕は無意識のうちに小澤さんを軽く見てたフシがあるんですが、考えてみると小澤さん指揮のものでつまらないと思ったものは今まで一度もないです。それどころか「これはすごい」と思わされることは何度もありました。小澤さん、やっぱり超がつくほどすごい指揮者なのかも知れません…な~んて、そんなのは世界中の人がとっくにそう思ってるか(^^)。

 そして、注目の「中国の不思議な役人」。この曲の演奏は、以前にショルティ指揮シカゴ響のCDを紹介した事がありましたが、そこにも入ってます。あちらも素晴らしいんですが、ちょっと録音が古い感じでオケの分離が悪い感じなんですが、こっちは文句なし!!
ところでこの音楽、けっこう不穏。それはパントマイムの内容にあります。まずしい3人の悪党が、金品を奪おうと少女に客引きを強要し、東洋系の役人を誘惑して部屋に招き入れます。そしてやってきた役人から金品を巻き上げ、さらに殺してしまうというもの。なんちゅうシナリオだ、そりゃ音楽も不気味なものになるわな( ̄ii ̄)。

 あんまり注目されてない1枚ですが、録音も演奏も文句なしの超一流、しかも「中国の不思議な役人」はフルバージョンですので、ロマン派に近い時期のバルトークが好きな人は見逃せない1枚じゃないかと!


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『バルトーク:4つの小品、管弦楽のための協奏曲 ブーレーズ指揮、シカゴ交響楽団』

Bartok_KangengakuNoTamenoKyousoukyoku_$tunoshouhin_Boulez.jpg 西洋の近現代のクラシック/芸術音楽がメチャクチャ好きです。特に近代は、独創性も強いし感覚的にもモーレツに感動するし、本当にいい音楽がひしめいてます。シェーンベルクストラヴィンスキードビュッシーバルトークが同時代の同じシーンにいるって、すごくないですか?
 これだけべた褒めしておきながら、僕はバルトークのすべてが好きなわけじゃなかったりして(^^;)。バルトークって、元々はベートーヴェンブラームスR.シュトラウスといったドイツ/オーストリア音楽に影響されまくったところから始まって、途中でハンガリーの民謡を採集・研究しつつシェーンベルクとかの当時の前衛音楽も吸収した人です。僕はこの先鋭化した時のバルトークの音楽が好きで、6曲ある弦楽四重奏曲はどれも見事、特に3番以降は天才的です。「弦チェレ」も、フィボナッチ数列(!)を用いて、楽器ごとに配分された12音と複雑なカノンが一点を目指して上昇していく第1楽章は神技。弦カル3番が1927年、弦チェレが1936年ですから、27年以降の10年ちょっとぐらいの作品が強烈、という事になります。
 でも、バルトークがそのまま最先端を突っ走ったかというとそうではなく、第2次世界大戦で東ヨーロッパの雲行きが怪しくなってからはアメリカに亡命。ここから先鋭的な作風が影をひそめて、すこし前のクラシック音楽の作風に戻ってます。

 さて、このCDに収められてる「管弦楽のための協奏曲 Concerto for Orchestra」は、「弦チェレ」と並んで上演機会の多い作品。書かれたのはアメリカ亡命後、死ぬ2年前となる1943年。というわけで、作風は従来のクラシックに近いところに戻ってます。さすがに近現代屈指の作曲家の晩年の作品だけあって見事なオーケストレーションです…が、アメリカで評価されなかったもんだからちょっと日和ったような気がしなくもない(゚ω゚*)。バルトークほどの人でも、評価されなくなっちゃうと「アメリカの人に受け入れられるものを」とか思っちゃうんでしょうか。弦楽四重奏や弦チェレを知っていると、これはちょっと物足りない…。もしこれがバルトークの作品じゃなかったら絶賛ものだと思うんですが、バルトークの作品だけに、神がかった数列や最先端の技法を突き進んで欲しかった。って、こんなに見事なオーケストレーションを聴かせて貰っておきながら、贅沢ですね。

 というわけで、僕がこのCDで驚いたのは、ついでについてきた「4つの小品 作品12 Four Orchestral Pieces (Sz51)」の方で、これが凄かった!作風こそロマン派の和声組織を用いつつようやく独特な音楽を創りはじめた、いかにもR.シュトラウスとかスクリャービンが出始めた時代の音楽ですが、独創性がすごい…。作曲は1912年、オーケストレーションを作ったのは21年、ドイツ/オーストリア音楽に影響されまくった初期バルトーク作品の総括のような音楽でした。僕は先鋭化する前のバルトークというと、唯一のオペラ「青髭公の城」とかバレエ音楽「かかし王子」「中国の不思議な役人」とかの有名作しか知らないんですが、それらの曲の着想がみんな入ってる気がします。特に第2曲「スケルツォ」は、この曲だけちょっと崩れたソナタ形式っぽくて(他はABA3部形式に近いかな?)、雰囲気も独特のヤバみがあって、素晴らしい

 僕は貧乏音大生だったもんで、他のオケとの聴き比べなんて出来てないので、他のオケや指揮者の録音との比較は出来ないんですが、ブーレーズの指揮シカゴ響の演奏は、聴いていて不満なんてひとつも感じない素晴らしい演奏でした!先鋭化以前と以降のバルトークの作品ふたつを聴けるCDでしたが、デビュー時期のバルトークをこんなに素晴らしいと思ったのは初めて、素晴らしい体験でした。あんまり有名じゃないですが、「4つの小品」は聴いて損はない見事な作品だと思いました!


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You Tube チャンネル 【エリック・ドルフィー 初期リーダー・アルバムについてダラダラと語る動画】 アップしました

Eric Dolphy_Early Leader Albums_Thumbnail エリック・ドルフィーが好きというジャズ・ファンって、すごく多いのではないでしょうか。私もそのひとりです!

 生前に発表されたドルフィーのリーダー・アルバムは、ブッカー・リトルとの双頭バンドを含めたとしても6作しかありませんが、死後に発表されたものを含めると…えっと…30タイトルぐらい?とにかく大量にあります。ゲスト参加作まで含めると、80は超えるんじゃないかと。そのうちのいくつかは、ほとんど主役級のフロントマンを務めていますし、好きであってもなかなか整理して聴くのは大変なんじゃないかと。

 というわけで、ドルフィーのバイオグラフィーをザックリとお話させていただいた前回に続き、今回はドルフィーの初期リーダー・アルバムについて、それぞれのアルバムの性格を整理しつつ、思うがままにダラダラとお話させていただければと思います。最後までお楽しみいただければ幸いです。もしよろしければ、ちゃんねをお気に入り登録していただけると有り難いです♪

動画リンク
(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(エリック・ドルフィー初期アルバム) https://youtu.be/pjGfueCgfRc


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『The Sextet Of Orchestra U.S.A. / Mack The Knife And Other Berlin Theatre Songs Of Kurt Weill』

Sextet Of Orchestra USA_Mack The Knife 1964年録音(65年リリース)、ジョン・ルイスが中心となって結成されたオーケストラUSA のスモールコンボ版が創ったアルバムで、クルト・ワイル作品集です。編成は3管にギターまたはピアノ、ベース、ドラム。サイドAはドルフィーが参加していますが、サイドBに参加してないのって、もしかしてドルフィーの急死によるものでしょうか…。そうそう、個人的に大好きなギタリストのジミー・レイニーがサイドBに参加していたのも、聴きたい欲を駆られた理由になりましたねぇ。。

 クルト・ヴァイルの曲をやや室内楽的なアレンジのジャズで演奏、というぐらいの音楽でした。これは編成違いのMJQ ですね。ブレヒトと組んで戯曲作曲を大量にしたヴァイルでしたが、その中でも明るい曲の選曲が多かったです。アレンジも曲に合わせて明るめ…なんか、大昔の芝居小屋の雰囲気でいいなあ。。
 僕はこのアルバムをドルフィー目当てで買いましたが、すごいと思ったのはむしろサイドBでサックスを吹いていたジェローム・リチャードソンの演奏。「Mac The Knife」での火の出るようなアドリブなんて、すごすぎて悶絶でした。

 とはいえ、まあ普通のクルト・ワイル作品集以上のものには僕には思えず、金欠になった時に手放してしまったのでした。僕が思うに、オーケストラUSA って、創設の意気込みは良かったんだけど、それに見合うだけの音楽を生み出しきれないまま空中分解したっプロジェクトだったのではないかと僕は思っています…知らんけど。。


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『Orchestra U.S.A. / Debut』

OrchestraUSA_Debut.jpg 1963年1~2月録音(63年リリース)、これぞサード・ストリーム・ミュージックの典型ともいうべきジャズとクラシック・オケを混ぜたような楽団・オーケストラUSA のアルバムです。音楽監督はモダン・ジャズ・カルテットのジョン・ルイス、指揮はガンサー・シュラー…完全にサード・ストリーム・ミュージックやジャズ・アブストラクションですね。
 でも僕はこのアルバム、サード・ストリーム・ミュージックの流れではまったく行きつく事がなくて、有名なシモスコ&テッパーマン著『エリック・ドルフィー』を読んで、ドルフィーの参加レコードを漁っていた時に見つけたのでした。いやあ、こんなすごい事をやっていそうなオケやレコードが、ぜんぜん知られてないんだなあ、と思ったものでした。

 曲は7曲で、うち1曲が組曲。作曲は、ジョン・ルイスが4曲、ゲイリー・マクファーランドが2曲、アメリカ国歌1曲(アレンジはガンサー・シュラー)でした。編成は、2つの弦楽四重奏、ジャズ・ビッグバンドとクラシック・オケのあいの子のような管チーム、ギターとピアノを含むジャズのリズム・セクション、というもの。いやあ、この編成のスコアを書くだけですごいと僕は思ってしまうなあ。。そして、ソリストを立てた曲が3曲あって、2曲はジョン・ルイス(ピアノ)、1曲がエリック・ドルフィー(アルト・サックス)でした。

 ただ…サード・ストリーム・ミュージックって、少しだけ前衛的な部分があったりしたじゃないですか。でもこのアルバムの場合、古いアメリカの映画音楽をジャズとクラシックをチャンポンにしたオケが演奏した、ぐらいの音楽に聴こえてしまいました。スマヌス。なんというのかな、それこそ、MJQ がジャズと古いクラシックの室内楽を混ぜたような音楽をやる時ってあるじゃないですか。あれの大編成版、みたいな。その中でもいちばんレベルが高い作編曲と思えた曲は「Grand Encounter」ですが、それだってせいぜい『ウエストサイド・ストーリー』ぐらいのレベルだし、そもそもこの曲はジョン・ルイスではなくマクファーランド作曲なんですよね。。

 先述した本『エリック・ドルフィー』によると、オーケストラUSA って、単にサード・ストリーム・ミュージックを目指しただけでなく、現代音楽作品や作曲された新しいジャズ作品など、幅広いこれからの音楽を目指したオケだったそうです。実際に、コンサートではアイヴズの作品なども演奏していたようですしね。そのコンセプトたるや実に見事だと思うのですが、いかんせん作品がコンセプトについてきてない…と思ってしまったのは、きっと僕だけじゃないんでしょう。だって、もしそれを本当に生み出せていたら、売れているにせよいないにせよ、少なくとも一定レベル以上の音楽家から評価を得られていたと思うんですよね。


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『Eric Dolphy with Booker Little / Far Cry』

Eric Dolphy Far Cry 1960年12月21日録音(62年リリース)、エリック・ドルフィー3作目のリーダー・アルバムです。ドルフィーの最初の3つのアルバムは、すべてNew Jazz というレーベル(プレスティッジの子会社というか、内部レーベルみたいなものだったそうです)からのリリース。60年、61年、62年と毎年1枚のペースでのリリースでしたが、録音は3作とも1960年なんですね。初期3つのアルバムの共通項は、常にサブ・リーダー級の有力な共演者がいる事。1作目『Outward Bound』ではフレディ・ハバード、2作目『Out There』はロン・カーター、そしてこの3作目はブッカー・リトルです。ご存じの通り、ブッカー・リトルとドルフィーは、翌71年に双頭バンドを結成してアルバムも残したぐらいなので、馬があったんでしょうね。メンバーは、ドルフィー (a.sax, b-cl, fl)、ブッカー・リトル (tp)、ジャキ・バイアード (p)、ロン・カーター (b)、ロイ・ヘインズ (dr)。

 このアルバム、自分のルーツとなった40~50年代のジャズや、先達となったジャズ・ミュージシャンへのリスペクトを込めて作られたものなのかも知れない、と感じました。アルバムの最初の2曲(どちらもバイアードさん作曲)は、どちらの曲もタイトルにチャーリー・パーカーの名前が入ってます。サイドB の先頭は、マル・ウォルドロンがビリー・ホリデイのために書き下ろした「レフト・アローン」です。アルバム全体も、同じレーベルのニュー・ジャズから出した『アウトワード・バウンド』や『アウト・ゼア』ほどの先鋭的な雰囲気のあるものは少なく、むしろ「古き良きジャズ」的な音楽の方が目立ってました。ドルフィー自身が作曲した「Serene」ですら、「古き良き」って感じなんですよね(^^)。若い頃の僕は、ドルフィーの音楽や演奏に、独特な芸術性を感じていたもので、あんまりオーソドックスなジャズを演奏する時のドルフィーって好みではなかったんですが、いやいやドルフィー自身がジャズに対する愛に溢れていた人だったんでしょうね。

 とはいえ、たとえばこのアルバムが懐古主義一辺倒だとか、ドルフィーがバードの完全なフォロワーかというと、それだけで終わるタマではもちろんありませんでした。テーマにしてもアドリブにしても、とんでもないスピード感なだけでなく、ドルフィー的なエキセントリックな部分もかなり見えたり。1曲目"Mrs. Parker of K.C. (Bird's Mother)" も、アルバムタイトルになった”Far Cry” も、ちょっとグロテスクなテーマを持ったハードバップなんですよね。このへんは、バップ系の音楽でありつつ、そのなかで創造力を発揮していくという、60年代のドルフィーの音楽と感じました。しかしドルフィーもリトルも、アドリブがすごすぎるんですけど…。

 個人的に、このアルバムで強烈な感銘を受けたのが、スタンダード・ナンバー「テンダリー」の、アルト・サックス無伴奏アドリブ。ドルフィーの音楽がここからどう発展していくのかが、あらわれていたと思います。ドルフィーの演奏で私の一番好きな、アルバム【アザー・アスペクツ】に入っていた無伴奏フルートと同じリハーモニゼーションのアイデアを使ってるんですよね。実際にどういうハーモニゼーションを選択するかの違いはあれど、やり口自体は確かにチャーリー・パーカー的。こういう演奏だから、短音の旋律楽器を吹いているというのに、和声を強く感じます。

そして…今回、学生の頃に大熱狂して買いまくりすぎたエリック・ドルフィーの録音を整理するために、持っているレコードをすべて書きだして、それを発売順ではなく録音日順に並べ直してみたんです。驚いた事に、このレコードって、録音日がオーネット・コールマン『Free Jazz』と同じ日なんですよ!ドルフィーって、オーネット・コールマンのあのセッションにも参加していたじゃないですか。スタジオ・ミュージシャンのツープロは普通にある事ですが、リーダー作の録音日に他の録音も一緒にやるって…いやあ、ここまで働き詰めだったのがドルフィーの死期をはやめてしまったんじゃないのかなあ…。

 ドルフィーが生前にリリースしたリーダー・アルバムは、ブッカー・リトルとの双頭コンボも含めて6作。うち5作がニュー・ジャズ、またはその親会社のプレスティッジからのリリースで、どれもかなりバップ寄りの音楽。僕がドルフィーに対して感じているイメージは、これらの音楽とはちょっと違うんですが、でもメインストリームなジャズの愛好家さんからすれば、先鋭化した頃の音楽より、これぐらいの音楽の方が親しみやすいのかも知れません。だって、1960年といえば、コルトレーンばまだ『My Favorite Things』、マイルスは『Kind Of Blue』の翌年という時期。それを考えると、ドルフィーにとっては保守な時期だったかも知れないけど、ジャズという視点で見れば充分に先鋭的な音楽だったのかも。


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『Eric Dolphy / Out There』

Eric Dolphy Out There 1960年8月15日録音(61年リリース)、エリック・ドルフィーのリーダー・アルバム第2弾です!ファースト・アルバムの4か月後の録音…当時のジャズって、行けると思ったミュージシャンの録音って矢継ぎ早なんですよね。編成はファーストの2管クインテットからワンホーンのピアノレス・カルテットに変更!メンバーはファースト・アルバムと同じなのはドラマーだけで、ドルフィー(a.sax, fl, b-cl, B-flat cl)、ロン・カーター (cello)、ジョージ・ダヴァイヴァー (b)、ロイ・ヘインズ (dr)。

 ワンホーンとはいえ、ほとんどの曲でロン・カーターのチェロがドルフィーのカウンターラインを作っているので、構造的には2管ピアノレスみたいなものでした。それにしてもロン・カーターってピッチが悪い(^^;)…まあそれは置いておいて、ジャズ・バンドでチェロを使ったもんで、耳新しかったです。
 ロン・カーターノチェロってすごいゴリゴリと弾いていて、アドリブなんてファズをかませたハードロックのギターみたいなノイズ感で実にジャズ、カッコよかったです。ほら、低音域の擦弦楽器のアルコって、実際に生で聴くと「え、こんなにノイズだらけの音だったっけ?」と思うぐらい、ノイズ成分の多い音じゃないですか。あれを奇麗に鳴らすのがクラシックであり擦弦楽器の肝だと思うんですが、ロン・カーターはノイズ自体を迫力ある音として利用しちゃう、みたいな。まあ、そこを目指したというより、そうなってしまうから、それを有効に活用した、みたいな感じだったとは思います。

 弦で言えば、チャールズ・ミンガス作曲の「Eclipse」では、チェロとコンバスがどちらもアルコを使い、ドルフィーのB♭クラリネットと合わせて三重奏となるアンサンブルを作るんですが、こういう事を出来るのがジャズ馬鹿でないというか、音楽的な視野が広いと感じました。恐らくこの曲がピアノレスにした理由で、このアルバムの真の狙いは、スリーコースのアンサンブルを作りたかったんじゃないかと。ちょうどこのアルバムを作っていた頃、ドルフィーってミンガスのバンドにも参加していましたしね。

 ファースト・アルバム『アウトワード・バウンド』に次いで、これも概ねバップの範囲で創り出した先鋭的な音楽でした。尖ってはいるけどあくまでモダン・ジャズの範囲内、みたいな。スティーヴ・レイシーセシル・テイラーもそうですが、若い頃の僕は、ニュー・ジャズ方面はモダン・ジャズの先を行って以降のものが好きでしたが、モダン・ジャズも楽しく感じるようになったいま聴くと、これはこれですごく面白いですね。モダン・ジャズの中から芸術音楽を創れる人の駒が徐々に揃い始めた瞬間の記録、と感じました。


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『Eric Dolphy Quintet / Outward Bound』

Eric Dolphy Quintet Outward Bound 1960年4月1日録音、エリック・ドルフィー初のリーダー・アルバムです!エリック・ドルフィーは、モダン・ジャズ最高のアルト・サックス奏者だと僕が思っているミュージシャン…いや、この人はアーティストと言って良いと思います。。メンバーは、ドルフィー(a.sax, fl, b-cl)、フレディ・ハバード (tp)、ジャキ・バイアード (p)、ジョージ・タッカー (b)、ロイ・ヘインズ (dr)。あれ?ハバードって、ニューヨークでドルフィーとルームメイトだった事があったんでしたっけ?ちょっと記憶があいまい…間章さんが日本語訳した『エリック・ドルフィー』を読み返さないと(^^;)。

 6曲中3曲がドルフィーの作曲。曲はバップの範疇でしたが、それでもバップのルールの中で独創性を発揮していて、セロニアス・モンクのようなある種のねじれ感やある種グロテスクな感覚がありました。「On Green Dolphin Street」のアレンジなんてその最たるもので、主メロの裏にあてたバスクラのレペティションのヤバさと言ったら(^^;)…さすがドルフィー、デビューした瞬間から個性爆発です!

 とはいえ、『ラスト・デイト』やミンガスのバンドでの演奏に感銘を受けてドルフィーに入った僕にしてみれば、このぐらいの曲はまだまだぬるくて、本当にヤバいと思ったのは作編曲以上に演奏でした!とくにアドリブの凄さは初リーダー作にしてとんでもない次元…。1曲目のオープンに入ったトップバッターはドルフィーのアルトですが、そのとんでもないスピード感と言ったら…それが過ぎたと思ったら切れ目なく跳躍フレーズの連発。3曲目「Les」のソロも同様の強烈な演奏、こんなの度肝を抜かれるって…。。

 「速い」という事に関して言うと、実際の速度と感覚上のスピード感というのはかなり違うもので、たとえばギターを弱くタッピングしての速さみたいなのって、「タタタタ…」みたいな感じで、本当はひとつのものを均等分割しているだけみたいに感じて、速さを感じないんですよね。ただ、それを強くタッピングするとアタックが出て「ダンダンダンダン…」みたいになってくると、かなりスピードを感じます。強さの裏で多少演奏が暴れるのは、恐らく強く吹いてるからなんでしょうね。スピードだけを追うなら脱力した方がいいに決まってますが、サウンドさせる意識があるからこうなると思うので、音の表情というかサウンドの強さというか、その説得力自体がもう強烈。こういう所がクラシックじゃなくてジャズ、カッコいいです(クラシックがダメとは言ってないですヨ^^)。
 また、速いと言っても単に速いだけでなくて、えらく独創的なラインを組み立てていて、ここが凄いです、聴いていてのけぞってしまいました。単にスケールを上下するだけみたいなラインを作る人っているじゃないですか、あれだったら誰だって速く吹けると思うんですが、こういう聴き手の耳を惹きつけつつ、全体としてはドラマも作っていくラインを、アドリブで、しかも高速で吹くって、尋常じゃないです。指や舌より、脳からの演奏指令の速さに感動します。
 そのあまりに独創的なアドリブは、ドルフィーとソロ交換する相手の達人ハバードですら押されまくってました…。とはいえ、「245」でのハバードのペットソロあたりは、本当に見事でした。共演者もさすがは一線級揃い、見事でした…が、ハバード以外はけっこうバックバンドという意識でやってるかな?

 やっぱりジャズであれ何であれ、一定以上のレベルの人のアドリブって、見事に起承転結を作ってくるのが素晴らしいですね。この見事さを堪能できるもんだから、ジャズって同じような曲のはずなのに、飽きずに聴き続けてしまいます。。
 音楽は個性的とはいえあくまでバップのルール上にあるので、のちのドルフィーの凄さを知っていると、まだ習作期という感じでしたが、いやいや1960年のジャズとして見ると、これは尖ってます。それより演奏…わけてもアドリブがヤバいです!メインストリームなジャズが好きな人なら、むしろデビューした頃のドルフィーの方が好ましく聴こえるかも知れません。なにせとんでもないアドリブですから!


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『The Latin Jazz Quintet + Eric Dolphy / Caribé』

Latin Jazz Quintet Caribe 1960年8月19日録音(1961年リリース)、ラテン・ジャズ・クインテットとエリック・ドルフィーの共演アルバムです。僕がこのアルバムを買ったのは、完全にドルフィー狙いでした。高校生と大学生の頃はドルフィーに狂っていて、ドルフィーの名前があるレコードは、中古レコード屋で見つけると片っ端から買っていたんです(^^)。でもって、ラテン・ジャズ・クインテットというバンドですが、僕はこのアルバム以外にまったく知らず…。でも、ピアニストもヴィブラフォン奏者も打楽器チームも巧くて、いいバンドでした!ちなみに編成は、管楽器(ドルフィーです)、ピアノ、ヴィブラフォン、ベース。ドラム/ティンバレス、コンガ。

 ラテン系はラテン系なのでしょうが、ルンバやサルサのような元気いっぱいのいラテンではなく、落ち着いた優雅な音楽が多かったです。ゲッツ&ジルベルトのようなブラジルとジャズのコラボともまた違うんですが、レイドバック感だけで言えばあんな感じ。なんとも気持ちよいリゾート気分満載な音楽で、本当に楽園気分。。

 とか言って、そんな楽園ムードを乱すものがひとり…ドルフィーです(^^)。。きっと、チコ・ハミルトン楽団での、ドルフィーの室内楽ジャズ的なアンサンブル能力とアドリブ能力の両方を聴いて、オファーしたんでしょうね。。とはいえ、ドルフィーも空気を読んでいないわけではなくて、テーマなどのアンサンブルする場面では、音色を含め、バンドに寄せているのがすごく分かります。ドルフィーって、めっちゃくちゃ性格良い人だったらしいですしね。でもアドリブになると…BGM風の演奏なんて、ドルフィーに求める方が無理です(^^;)。なんだろ、バックが違うからなのか、この録音でのドルフィーのアルト・サックスの音って、中域が抜けたよう音でした。音楽に合わせてマウスピースを取り替えたとか、なんかあるんですかね?

 リラックス方面に振り切った時のモダン・ジャズ・カルテットとか、ああいうシャンパンなジャズってあるじゃないですか。これはそういう所を狙ったラテン・ジャズ・クインテットの音楽であって、ドルフィーの音楽ではないのでしょう。ラテン・ジャズ・クインテットというバンドのレコードどころかプロフィールですら見つけるのが難しい今、このアルバムを聴く人のほとんどはドルフィー目当てになってくると思うんですけど(なにせ若い頃の僕がそうでした^^;)、ミンガスのバンドに入った時や、晩年のドルフィーの強烈な音楽は期待しない方がいいかも。でも悪い音楽かというとそんなことは全くなくて、実に爽やかで心地よいリゾート・ミュージックでした!


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You Tube チャンネル 【寺沢武一追悼:"コブラ"の面白さを知って欲しいと願う動画】 アップしました

Cobra_Thumb Nail 2023年9月8日、漫画家の寺沢武一先生が旅立ってしまいました。悲しい…。

 寺沢先生と言えば、私が小学生時代から、新卒の社会人になっても夢中になって読み続けた漫画【コブラ】の生みの親。コブラを読んでいると、漫画自体の面白さだけでなく、あの漫画を読んでいた頃の友達の顔とか、当時のキラキラと輝いて見えた時代を思い出してしまうんですよね。

 音楽をメインに語っていこうと思って作ったYou Tubeチャンネル「心に残った音楽♪」ですが、寺沢先生とあっては追悼動画を作らないわけには行かないと、急遽コブラをふり返る動画を作ってしまいました。内容は拙ブログにむかし書いたものがベースになっているので何とかなりましたが、音楽だけは時間がなくて、パパっとコードとメロディだけとって、えらくアバウトに演奏するので精一杯でした。ごめんなさい。。

 ダラダラと思うがままにのんびり話していますので、コーヒーでも飲みながらゆっくりしていってくださいね。そしてもし気に入っていただけたら、チャンネル登録や高評価をいただければ有り難いです。

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(コブラ/寺沢武一 追悼動画) https://youtu.be/LpU6fVkw5PI


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漫画「コブラ」の生みの親、寺沢武一さん逝去

Cobra_New1.jpg ああ…2023年9月8日、漫画家の寺沢武一先生が旅立ってしまいました。これは悲しいです。

 僕が寺沢先生の「コブラ」を読み始めたのは、小学4年生ごろ。少年ジャンプに連載が始まってから何年もたってからでしたが、映画化もされ、テレビアニメ化も決まって、いよいよコブラに注目が集まった頃でした。でも僕がコブラを知ったのって、アニメーションではなくて、ラーメン屋でふと手に取った週刊漫画雑誌でのことだったんですよね。最初は、絵の綺麗さにびっくり。そしてスケールの大きな話に驚きでした。以降、中学生ぐらいまではずっと夢中でした。
 色んなもので似たようなことが起きるんですが、コブラを見ると、コブラを観ていた頃の友人を思い出すんですよね。小学校の時に、僕と一緒にコブラを読んでいたI君は、高校生になった時にバイク事故で死んじゃったんです…。

 もうひとり覚えている人がいます。僕、高校になると、忙しくてコブラをあまり読まなくなったんです。もしかすると、コブラもいったん連載が終わっていたのかも。それが、大学の卒業式の日に、帰りに軽く食事でも取ろうかと立ち寄った喫茶店に、コブラの続編が置いてあったんです。で、この喫茶店である人と会いまして…
 大学に入ってすぐの頃に、僕に声をかけてくれた女の子がいました。けっこういい感じだったんだけど、僕は音楽ばかりやって、彼女は別のサークルに入って、ひと月もしたら全然会わなくなっちゃったんです。明らかにイケてる美人だったし、けっこういい感じの関係だと思っていたから、ちょっと残念でした。
 それが、大学生活の最後の最後で、喫茶店で再会したわけです。でも何となくばつが悪くて、僕は気づかないふりしてたんだけど、むこうが気づいて、飛び切りの笑顔でうれしそうな顔をして話しかけてくれたんですよ。4年も同じ学校に通ってて、ほとんど違う生活を送ってたのに、最初と最後だけは彼女と一緒だったんですよ。久々に会ってもやっぱりイケてる美人だったし、なにせ気が合うんですよね。何を話しても言葉に詰まる事がなくて、話が弾んで…彼女は今も元気なのかなあ。。

 コブラ以外にも、寺沢先生の漫画はよく読みました。壮大なスケールの話で、絵も抜群だったんですが、決して難解にならずに爽快な読後感なものが多かったです。近未来世界を描いた、極上のエンターテイメントだったなあ。。

 ロックや映画やスポーツ観戦もそうですが、漫画も若いころの僕にとっては極上のエンターテイメントでした。あの楽しさって、大人になったらもう味わえないのかも。ずいぶんと楽しい時間を過ごさせてもらいました。寺沢先生、ご冥福をお祈りします。


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『キング&バルーン』 アーケードゲーム

King and Baloon 1980年発表、ナムコ製のアーケードゲームです。80年ごろのナムコのゲームは似たものが多くて、自機が左右にしか動けないインベーダー式のシューティング・ゲームとしてはギャラクシアン、ギャラガ、そしてこのキング&バルーンがありました。

 こうした固定画面シューティングというインベーダー式ゲームは、少しの工夫で差別化してありました。インベーダーとギャラクシアンの違いは敵が飛んでくるようになった事、ぐらいのわずかな差なんですけどね(^^)。キング&バルーンの特徴は、自機は何機死んでも良いという所。インベーダーの敵にあたるのが気球で、気球は自機である砲台の下をウロウロしている王様をさらいに飛んできます。で、自機は死んでもいいんですが、王様が気球に攫われ、画面の上部まで連れていかれるとロスト。王様を3人ロストしたらゲームーバーといった具合です。王様が3人いるのかよとか、王様が増えるのかよよいった所は、突っ込んではいけません。

 この「自機は何機死んでもいい」というルールに、子どもだった僕たちは色めき立ちました。なにせお金のない子供時代ですから、ゲームの面白さよりも1プレイでどれだけ長く遊べるかの方が重要だったのです。それが「いくら死んでもいい」なら長く遊べるじゃん!そう思ったんですよね。
 ところがそうはいきませんでした。大量に飛んでくる気球を追い払うので精一杯、自機が死のうものなら、次の自機が出てくるまでの間に王様は簡単に連れていかれてしまうのでした。仮に死ななくても、とんでもない数をばらまく敵の弾幕に阻まれて、王様を救うどころじゃありません。こどもだった僕たちは、例によって人がやっているプレイをうしろから覗き見して、あれこれと攻略法を考え、イメージトレーニングまでして挑んだものでしたが、相当にうまくプレイしても5面も持てばいい方。これだったらギャラクシアンやギャラガの方が長く遊べるよな…そう言って僕たちはこのゲームで遊ばなくなっていったのでした(^^)。


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『ムーンクレスタ』 アーケードゲーム

MoonCresta.jpg 1980年に日本物産が制作したアーケードゲームです。ジャンルでいえば固定画面のシューティングですが、自機が3機合体するシステムが独特。僕は小学3年の時に、3人で一緒にゲーセンによく行く仲間がいたんですが、その3人で一緒に遊んだ回数の一番多かったゲームがこれでした。

 5種10群いる敵が順番に出てきて、こいつらを全滅させると1周クリア。敵の動きはトリッキーで、挙動を読むには慣れが必要。自機は最初は単発でしか弾の撃てない1号機だけでスタートしますが、最高で3機合体まで出来て、攻撃力を強化できます。
 敵2種類を退けると、2号機とドッキングチャンスで、ドッキングに成功すると1+2号機という最強状態に。ドッキングは最高で1+2+3号機の3機合体になりますが、これは攻撃力の強さと引きかえに機体が巨大になるので、特攻をかけてくる敵にあたりやすくなる諸刃の剣。ドッキングはしなくてもいいですが、失敗して激突すると爆発してどちらかを失います。
 ドッキングの組み合わせは1+2、1+3、2+3、1+2+3 の4種類。さらに単機での戦いもあるので、計7種類の攻撃フォーメーションがありますが、とにかく使いにくいのが3号機。幅が広いので敵にあたりやすいうえ、弾がセンターから出ずに両翼から出るんですよ。。単機なら最強は2号機で、2発弾が出るうえに機体が小さいので敵をよけやすかったです。

 さて、いま思えば単調でそれほど面白いとも思えないこのゲームのどこに、僕たち3人は夢中になったんでしょうか。友達と遊ぶ事自体が楽しくてたまらない9歳の頃なので、恐らく僕たちはこのゲームを皆で遊ぶこと自体を楽しんでいたんじゃないかと。
 まずは遊びながらの話し合い。「目みたいな敵はある程度数を削ると分裂するから、分裂するまでは同じ目を消していった方がいいんじゃないか」とか、「とにかくトリッキーなバックアッタクを見切るのは難しいから、敵が出てきた瞬間に数を如何に削れるかが大きい。敵が出るまでの秒を数えたらどうか」とかね(^^)。もうね、この協力が楽しかったです。
 また、遊ぶ順番も思い出に残っています。なにせ小学3年生、お金がないから、ひとり10円か20円を出して、3人で50円を作って遊んでました。パックマンギャラクシアンなら1人1機でほぼ公平ですが、ムーンクレスタは機体によって性能がぜんぜん違うので、どうやって皆で遊ぶのかむずかしかったんです。順番にやって1機死ぬまでとか、いろんな方法を試したんですが、どうやったって公平になりませんでした。
 で、どういう方法に落ち着いたかというと、自機が死ぬか、その面が終わったら交代。プレイ順番は、お金を多く出した人はじゃんけんなしで好きな順番をえらべ、それ以外の場合はじゃんけんをして、勝った人は優先してプレイする順を選択できる、というものでした。このルールって、子どもにしては上出来だと思いませんか?こういう所にも子供ならではの社会性や連帯があるというか。

 というわけで、ゲーム自体よりも、小3の時の大親友だった友達との思い出が印象に残っているゲームです。


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『ディフェンダー』 アーケードゲーム

Defender_arcede1980.gif 1980年制作、これも海外製のアーケードゲームです。製作はウイリアムスというアメリカのピンボール製造メーカーで、プログラマーはユージン・ジャーヴィスという人。当時のゲームセンターですごく目立っていたゲームで、まだ小学生だった僕には憧れのゲームでした。ところが手が出せなかったんですよね…。。ゲームは左右の任意スクロールで、宇宙戦闘機を操作してビームを撃ち、インベーダーの敵機を全滅させるとステージクリア。左右の端は繋がっていてループします。

 何がすごかったって、サウンド、グラフィック、そして独創性が異次元レベルでした!当時のゲームセンターのゲームというと、ギャラクシアンでもパックマンでもムーンクレスタでも、音がビープ音に毛の生えた程度のショボさだったんです。弾を撃っても「ピュン」みたいな。ところがこのゲーム、自機がレーザーを撃つと「ジュ~~~ン!!!」ってすごい音がしたんですよ!!これがゲームセンター内に木霊していて、耳を奪われました。

 グラフィックも素晴らしかったです。自機の放つレーザーが長く、しかもただの棒ではなくて糸を引くような表現、さらに虹色に変化して飛んでいきます。もうその美しさと言ったら、当時のアーケード・ゲームの中では別格。敵の爆発パターンも素晴らしくて、日本のゲームなら爆発のアニメーションが表示されるところを、物理演算したような光の粒が飛び散っていきます。日本のゲームが手書きアニメなら、これは紛うことなきCGだったのです!

 これだけ出色のゲームだったというのに、当時の僕はこのゲームに手を出せませんでした。理由は操作が独特すぎたから。このゲーム、レバー操作は上下移動だけで、左右移動は反転ボタンと加速ボタンを使って操作。さらにショットボタン、ボム、ワープ…というボタンが…こんなの子供には無理。。やればできるようになれたのかも知れませんが、小遣いの限られた子供が遊ぶにはあまりにハードルの高いゲームだったのです。
 それでも説明書をよく読み、人のプレイを食い入るように見て操作を覚え、一度だけ遊んだことがあります。その時の気分たるや本当に宇宙戦闘機に乗って出撃するような高揚感で、あの感動は今も忘れられないです。。

 僕が子供のころによく行ったゲームセンターがふたつあったんですが、このゲームは高級なゲーセンの方にしかなくて、しかも奥の大人びたエリアに置いてあったんですよね。近くにジュークボックスやピンボール台が置いてあるコーナーで、まともに遊んだのは人生で1度きり。それなのに、今も記憶に鮮明に残っているゲームです。たぶん後年に生まれたスクランブル、グラディウス、ファンタジーゾーンといったゲームは、このゲームに影響されて作られたんじゃないかと。ゲーム・クリエイターの人にも影響を与えたプログラムだったんじゃないかなあ。


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『ミサイルコマンド』 アーケードゲーム

MissileCommand.gif 小学3年の頃からゲームセンターにちょこちょこ行くようになりましたが、70年代から80年代初頭ぐらいのアーケードゲームは、子供ではなく大学生ぐらいを対象に作られていたものが多かったように思います。特に海外のゲームはそうで、小学生ではゲームのルールを理解するのですら難しかったり、面白さが理解しにくい、さらに大人びたCG表現も多かったです。このゲームは1980年に米アタリ社が発表したアーケードゲームです。最初、このゲームがまったく理解できなかったんですよ。ただ、分かってくると、実によく出来たゲームでした。

 80年というと冷戦まっただ中、核戦争がいつ起きるかと世界が戦々恐々としている状況で、実際に世界各地で米ソの代理戦争が起きて、ミサイルや銃弾が飛び交っている状況。このゲームは、画面上部からミサイルが大量に降ってきて、それを地上から迎撃ミサイルを撃って落とすというもの…洒落にならないっす(^^;)。迎撃ミサイルの発射基地は3カ所にあり、それぞれ保有しているミサイルに限りがあります。そして、地上にある都市を敵ミサイルにすべて破壊されてしまうとゲームオーバーです。

 独特なのはグラフィックと操作。まず、グラフィックス。もし自分がゲームデザイナーだったら、ミサイルの形のキャラクターをドット絵で作り、それを動かすと思うんですよね。ところがこのゲーム、ミサイルを1本の線で表現しているんです。ドット絵は漫画やアニメという領域により近い表現だと思うのですが、直線や変化する色のグラデーションといったものは、CGに優るものがない表現。今思えば、このグラフィックのコンセプトが日本のゲームメーカーが作るゲームとは比較にならない美的センス!大人のデザインだったのです。いやあ、これは見事だわ。。
 そして、操作。なんとこのゲーム、自分が操作する迎撃ミサイルの照準をトラックボールで操作するんですよ!そんなゲーム、僕はそれまで見た事がなかったんですが、これもデザインセンスの塊。やっぱり当時のアメリカは日本の上を行っていたのだと思います。

 ところが、ビデオゲームは次第に低年齢層向けのものに支配され始め、大学生あたりが中心ターゲットだったゲームセンターは、次第に中高校生の溜まり場へと変化。理由のひとつは、日本のビデオゲームのデザインが子供向け(デパートの屋上なんかに置く事を想定していた?)だった事、またそのゲームデザイン自体が幼稚で、アメリカのクリエイターたちの作るものには遠く及ばなかったためではないかと。
 クリエイターとファンの関係って、ファンがクリエイターのレベルを超える事はまずないので、まずはクリエイターのレベルがその文化のレベルを決定する構造になるんですよね。ファンのレベルが決めてしまうのは、それが大衆化する時にファンのレベルが低いと、本当に良いものや新しいものの価値をファンが理解できずに切り落としてしまう時。要するに、クリエイターと消費者の両方のレベルが高くないと、文化としてハイレベルのものを残せないんですよね。。音楽なんてまさにそれですが、政治なんかもそうですよね。。映画や音楽や文学と言った種の日本の文化が、常に子供向けのところに推移してしまうのは、まだ賢い消費者ではない子供をターゲットにした方が良いからというだけではなく、単純にクリエイターのレベルが子供で、消費者のレベルも低いからなのではないかと思う事があります。

 というわけで、このゲームは、僕が子供の頃に体験した、大人の匂い満載の素敵なゲームでした。なにせ大人な匂いがするゲームだったので、まだ小学3年生だった僕には理解すら出来ませんでしたが、「うわあ、なんかすげえ」と魅了されたのも事実。そして、大人になってからレトロなゲーセンでこのゲームをちょっと遊んだら、その面白さにドはまりしたのですが、それだって2~3回遊んだだけ。一度じっくり遊んでみたいと思っているゲームのひとつですが、そんな日は来ないんだろうなあ(^^;)。


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『Jeff Beck / Jeff』

Jeff Beck Jeff 2003年発表、『Who Else!』、『You Had It Coming』に続く、ジェフ・ベックのテクノ時代3作の最終作です。全3作の中では、いちばんエレクトロニカとか、クラブミュージックとか、そういうアンダーグラウンドな色が強いアルバムでした。
 バック・トラックがかっこいい!ムッチャカッコいい!!ただ、4曲目あたりに来ると飽きてきました(^^;)。。ただ、カッコ良さは最後まで続いて感じられました。かなりクラブ色が強いし、作曲のクレジットが、どの曲も連名になってるので、トラックメイカーがバックトラックを作って、ジェフ・ベックがその上でプレイしたとか、その逆とか、そういう感じなのかな?フリー・インプロヴィゼーションのアルバムなんて、どの曲もみんな参加プレーヤー全員の作曲になってたりしますもんね。

 この、めっちゃくちゃカッコよく感じられるのに飽きてしまったのって、理由があった気がします。2000年前後に大流行した、こういうクラブ系の電子音楽には共通の弱点を感じてしまって…
 クラブ系の音楽って、それこそブッカーT の時代から基本的にループなんですよね。90年代にノイズやエレクトロニカ系の音楽が流行した時もその伝統は受け継がれていて、しかも作り手がプロのミュージシャンではなくなったんですよ。その頃にはサンプラーでもなんでも安価に買えるようになっていたので、機材オタクや音楽オタクがそういう電子音響機器を買い集めて作るようになったのが2000年頃のクラブ系の電子音楽…だと僕は思ってます。それって、良い意味でも悪い意味でもアマチュアの音楽で、2000年前後のクラブ系電子音楽やトランステクノって、音をつなぎ合わせて電子加工する事ばかり…そう思いませんか?
 ここで何が起きたかというと、サウンドは音楽教育を受けてきた人ではとても思いつかないような実験性・過激さ・斬新さなんかを持つようになれた一方、偶然に頼っていたら死ぬまでたどり着けないだろう理知的な音楽手法は音楽に含む事が出来ない、みたいな。部分転調のひとつですら作れないんですよね…。この「曲がぜんぜん変化できない」が、格好いいのに4曲も聴くともう飽きてしまった原因じゃないかと。飽きずに済むかどうかは、カッコいい刺激的なサウンドに飽きずにいられるかどうか、だと思ってしまったり。
 まあでもこの「変化しない」音楽には良さもあって、クラブって基本的にはみんなで酒飲みながらダラダラ話す場所で、気が向いた人は今やってるイベントに参加しても踊ってもいいし…みたいな所が多いじゃないですか。そのうしろに流してる音楽なので、ある意味では劇的に動かない方がいいだろうし、これはこれでプラスの意味がある手法とは思います。レアグルーヴなんて、僕は大好きでしたしね(^^)。ただ、それを音楽そのものに向かい合って聴く音楽にすると、事情が違ってくるというだけで。で、そういうループ・ミュージックを、ロックをはじめ自分がやってきた「始まって終わるというドラマを持つタイプの音楽」の側に、ジェフ・ベックがどうやって寄せたかというと…それがこのアルバムの聴きどころではないかと思いました。

 ジェフ・ベックって、この頃かなり自分のギター・メソッドを確立していたように感じるんですよね。出来ること出来ない事あるけど、どういうものでも自分の音楽としてものにしちゃう技術がある、みたいな。さすがにループがすぎて退屈しそうな曲では、フックになるフレーズを作ってそれを発展させることで退屈さを回避するし、まあとにかくジェフ・ベック的な音楽言語がしっかりしてるなと。この頃のジェフ・ベックのギターって、傾聴に値する…と思ってしまうのは、ちょっとひいきしすぎですかね(^^;)>。。

 90年代中ごろ、こういうエレクトロニカやトランステクノ的な音楽は、チャート・ミュージック以外のところで大流行してました。僕はまさにリアルタイムだったし、音楽業界に片足を突っ込み始めていた頃だったので、スタジオにもAKAI のサンプラーが持ち込まれたり、アナログシンセが復権し始めたりしたのをよく覚えています。海外に行っても、ニューヨークでもベルリンでも、それどころかインドネシアのクラブですら、こういう音楽だらけだったんですよ。で、メジャーのレコード会社と契約していたミュージシャンが、こういうサウンドを自分たちの音楽にとりこみ始めたんですよね。プリンス『emancipation』とか、マドンナ『Erotica』とか、U2『POP』とか、とにかくアングラのいい所どりをしようとする人が大量発生。ジェフ・ベックもこの手のサウンドに感化されたひとりだったんでしょうね。
 あとは、「プロだけどさすがに同じものの金太郎飴すぎて飽きられたもの」と「アマで弱点は色々あるけど、プロの音楽にはない刺激に溢れたなもの」のふたつを、どのぐらいの割合で混ぜるのかが、ジェフ・ベックのテクノ3部作だったんじゃないかと。3作では『Who Else!』がいちばんプロ寄りで、この『Jeff』がいちばんアングラ寄りと思いますが、どれが好みかは、聴く人次第なのでしょうね。個人的には、これはジェフ・ベックのアルバムというより、トラック・メイカーさん達のアルバムにゲストとしてジェフ・ベックが入った音楽に聴こえました。音楽の構図的に飽きやすいかも知れないけど、ギタープレイはいいし音はカッコイイ、なかなかのアルバムでした!


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『Jeff Beck / Jeff Beck's Guitar Shop』

Jeff Beck Jeff Becks Guitar Shop 1989年リリース、たまにしかアルバムを発表しなくなった時代のジェフ・ベックの、数少ないアルバムです。この前が85年の『Flash』で、このあとが99年の『Who Else!』ですから、実際にセミ・リタイア状態ではありました。

 音楽は、ジェフベック黄金期となるフュージョン時代にも共演していたトニー・ハイマスを含むトリオ編成のインスト。作曲もハイマスがしているものがおおかったので、ハイマスが影のボスと感じました。パット・メセニー・グループのライル・メイズみたいなもので、懐刀のキーボーディストが、リーダーの思っている音楽をリアライズしている張本人、みたいな。

 なんだろ…フュージョン期のジェフ・ベックが大好きだった僕ですが、これはもうひとつ面白く感じられなかったです…スマヌス。半分は流行を追ったザ・産業ロックで、もう半分は雑なジャム・セッション。トリオと言ったってオーバダビング満載だし、3人でセッションして作った雑な音楽に、あとからオーバーダブを重ねまくって上辺だけ整えた、みたいな。こういう安直なジャム・セッションで良いものが作れるほど、音楽って甘いもんじゃないって事ですよね。この手抜き加減は、「なんだよこれ」っていうダサすぎるアルバム・ジャケットにもあらわれていた気がしますネ(^^;)。

 アルバム『Flash』の影武者だったナイル・ロジャースが、自分の音楽を強く押したのだとすれば、このアルバムはハイマスさんが大御所に忖度しすぎたように聴こえました。この中間を作れれば、音楽としては良かったんでしょうけど、音楽だけを見つめるわけには行かない事情もいろいろあるんだろうし、口でいうのは簡単だけど…って事ですね。もっと「こういう音楽やりません?」ってぶつかっても良かった気がするなあ。グラミー賞ってこんなんで取れるのか…音楽どうこうより、ジェフ・ベックのカムバック賞的な意味もあったのかも知れませんね。


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『Mick Jagger / She's the Boss』

Mick Jagger Shes the Boss 1985年リリース、ローリング・ストーンズのヴォーカリストであるミック・ジャガー初のソロ・アルバムです。ローリング・ストーンズのアルバム『ダーティー・ワークス』の前年にリリース、思いっきり80年代のチャート音楽でした。

 このアルバムをはじめて聴いた時、僕は中学1年生ぐらい。ストーンズもミック・ジャガーもよく分かってませんでした。友達の兄ちゃんが持っていたストーンズの60年代のレコードを聴かせて貰った事はありましたが、それだっていまいちピンと来てませんでしたし(のちにピンと来るようになりました^^)。

 このアルバムの日本語帯に、「あのジェフ・ベックが参加!」みたいに書いてあって、僕は新日本プロレスで使われていたジェフ・ベックの「スター・サイクル」という曲に猛烈に感動した事があったもんだから、期待しまくり。で、いざ聴いてみると…どれがジェフベックだよというほど、どのギタリストも適当にしか弾いてない(^^;)。いま聴いたら分かるのかなぁ。
 他にもピート・タウンゼントとかハービー・ハンコックとかヤン・ハマーとかスライ・ダンバーとか、有名人の名前が30人ぐらいズラッと並んでましたが、みんな演奏がテキトー、ありがたがって聴くようなもんじゃありませんでした。ビバリーヒルズ・コップのBGMみたいなんですよ。
 そうそう、85年と言うと、ジェフ・ベックが『Flash』というアルバムを出した年ですが、その絡みで言うと、ナイル・ロジャースも参加していました。ナイル・ロジャースって、70年代に「Chic」という軽めのディスコ/ファンク調音楽を演っていたグループにいて、どんな音楽も軽い音でギターをカッティングして、全部ディスコ調にしちゃう人なんですよ。アイドル物のヴォーカルのアルバムのプロデュースとかだったらいい気がするけど、アーティストもののアルバムでもこれをやっちゃうのは…大きい声では言えませんが、このアルムもベックも『Flash』も、ダメにした3割ぐらいはこの人なんじ(以下自粛)。

 音楽って、ジャズでもクラシックでもロックでも、最初は右も左もわからないから、当たりもハズレも見当がつかなくって、何でもかんでも聴いちゃうじゃないですか。そんな時に掴んでしまった悲しき1枚。もう少し経験があれば、有名バンドのメンバーのソロ作なんて「やる気があるのは本人だけで、その本人だってバンドを離れてどれぐらいの能力があるかもわかったもんじゃないし、レコード会社もプレーヤーもバイトでチャチャッと終わらせたセッションなんだろうな」ぐらいの予想はできただろうに。。でも逆に言うと、その右も左も分からずに音楽を聴いていた頃が、今となってはたまらなく懐かしいです。なんだろ、今とはまったく違うウキウキした気持ちで音楽を聴いていたんですよね…。
 そうそう、このアルバムみたいに、音楽を生産ラインに乗せて流れ作業のように作っちゃうのも80年代でしたよね。


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You Tube チャンネル 【テクノ・ロック期のジェフ・ベックを聴いてみたい人に贈る動画】 アップしました

Jeff Beck_Techno_thumbnail ジェフ・ベック特集も、気が付いてみればもう第4回。今回は、99年発表アルバム【Who Else!】から始まった、テクノ・ロック期について、ゆるゆると話してみようと思います。

 ジェフ・ベックの黄金期となったフュージョン時代からずいぶんと時間が経っていますので、黄金時代のファンの方でも聴いていない人は少なからずいるとは思いますが、これが「昔の名前で出ています」なんていうレベルのものではなく、むしろ進化したギターを聴けて驚きでした!この時代のジェフ・ベックの評価がどれぐらいのものなのかは分かりませんが、少なくとも食わず嫌いで終わらせてしまうにはあまりに勿体ない音楽ではないかと。

 のんびり話していますので、コーラでも飲みながらゆっくりしていってくださいね。そしてもし気に入っていただけたら、チャンネル登録や高評価をいただければ嬉しいです♪

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(テクノ・フュージョン期のジェフ・ベックの動画) https://youtu.be/bfAR4lLm_gY


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『John Coltrane / Crescent』

John Coltrane Crescent 1964年録音、コルトレーンがスタジオで吹き込んだアルバムです。全5曲すべてコルトレーンの書きおろした新曲で、「Crescent」「Wish One」「Lonnie's Lament」と言った名曲が入っているのはこのアルバムです。さっきからこのアルバムを何周も聴いてるんですけど、昔は「おとなしい曲が多いし演奏も弱い、冴えないアルバムだな」と思っていたのが信じられないほど、聴けば聴くほど味が出て痺れています…。

 「Crescent」はテーマが実に美しい曲で、僕は『Live In Japan』でものすごいフリーのあとにこの曲のテーマが現れた時に泣いてしまった記憶が。。この曲って構成が面白くて、ルバート部分のイントロがついて、そこからテーマに繋がるんですが、このテーマが転調しているものだからサビみたいに聴こえます。それが終わるとテンポをあげたビートが出て生きてアドリブ、みたいな。いやあ、これは曲自体が素晴らしいです。
 ただ、この録音でのコルトレーンの演奏がぶっきらぼうというか冴えない…と思ったら、アドリブの後半からがすごかったです。もう、マッコイ・タイナーは伴奏をやめちゃってましたけどね。。

 「Lonnie's Lament」は「Crescent」のバリエーションのような曲で、マイナーバラード調のテーマをルバートで演奏し終わると、ブローイング・コーラスはインテンポと、大まかな構成が同じ。違いと言えば、アドリブを持つのがコルトレーンじゃなくてマッコイとジミー・ギャリソンみたいな。ふたりの演奏を聴かせるようにしたんですね。

 「Wish One」、哀愁あふれるメッチャいい曲なんですけど…あ、これ、劇場版銀河鉄道999で使ってた音楽はこれのパクリか。。憂愁のヘッドだけでなく、それを受けたアドリブ・パートの構成力が見事。コルトレーンをはじめ、バップの流れを受けた50~60年代のジャズ・ミュージシャンって、アドリブになった途端にテーマとは関係ない事を演奏したりしますが、これは曲を見事に形にした素晴らしい演奏でした。
 「The Drum Thing」はエルヴィン・ジョーンズ大フィーチャーの曲ですが、ベースがずっとペダルしているのと、テーマ部分が実に味があっていいです!

 このアルバム、全体的にコルトレーンの演奏にちょっと元気がないです。テーマなんてどの曲もメゾピアノぐらいで、アクセントもアーティキュレーションも判然としないほど。というか、テナーの出音自体はコルトレーンよりファラオ・サンダースやアーチー・シェップの方がいい音だしますよね。。ところがアドリブに入ると切れも構成力もあるのが不思議。なんだろ…体調は悪いんだけどハートがある音楽、みたいな。
 そんな次第で、私にとってのこのアルバムは、コルトレーンの書いた新曲とそれをモノにする構成力の演奏を堪能するもの。何だろ…このへんのコルトレーンの音楽って、曲がどうこうじゃなくて、その人すべてを音という形にしているようで、聴いていて痺れてしまいます。渋めだけど、いいアルバムだと思います。



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『John Coltrane / Live at Birdland』

JohnColtrane_LiveatBirdland.jpg ジョン・コルトレーン・カルテットのライブ音源に、スタジオ録音曲を追加したアルバムです。ライブは4曲で、1963年8月8日バードランド録音、 スタジオは2曲で同年11月18日録音でした。

 僕がこのレコードを買ったのは、大好きなナンバー「Afro Blue」と「I want to talk about you」が入っていたから。特に前者はなかなかライブで演奏してくれないんですよね(^^;)。でもって、バラードの「Iwant to talk about you」や変化球「Your lady」を含め、すべてのナンバーがコード・プログレッションを単純化しての激しいインプロヴィゼーションでした。いや~これはカッコイイ、ジョン・コルトレーン以外のメンバーも、バンド全体の一体感も素晴らしかったです、これは紛う事なき名演じゃないですか。。あ、あと、「Alabama」はやっぱり名曲だと思いました(^^)。

 プレイヤーとしてすごく参考になったのは、曲を自分のプレイスタイルに引き寄せて演奏する事でした。僕が大量に持っているジョン・コルトレーンのアルバムを何度も聴き直して感じるのは、黄金のカルテット(マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズ)結成後のコルトレーンが演奏する曲の数は無数にありますが、その曲のスタイルは数パターンしかありません。このアルバムでいちばん毛色の違う「Your lady」も、大別すれば「inch worm」系ですし。だから、そのスタイルの演奏パターンさえ創り出してしまえば演奏すること自体はそんなに難しくないんですよね。技術や集中力を含めてここまで苛烈な演奏ができるかどうかはまた別…というか、ここまで絞り込んだから、演奏をここまで血肉化できたのかも知れません。もう、演奏がその人自身というレベル。すごい…。

 黄金のカルテットによるライブ・アルバムはだいたいこれと似た傾向になりますが、これは聴いていて心を持っていかれてしまった素晴らしさ、3回も繰り返して聴いてしまいました(^^;)。やっぱりジョン・コルトレーンもこのカルテットも唯一無二、素晴らしすぎました。。フリー寄りのコルトレーンが好きだった頃にはあまり聴かなかったアルバムでしたが、これは良いものだ。。



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『John Coltrane / Ballade』

JohnColtrane_Ballade.jpg 1962年録音、ジョン・コルトレーン黄金のカルテットによるバラード集です。僕が初めて手にしたジョン・コルトレーンのアルバムはこれでした。ついでに言うと、最初に手にしたジャズのアルバムのひとつでもありました。音楽誌に、「中古CD2枚と好きなCD1枚を交換」なんていう中古レコード店の広告が出ていて、それでまとめて何枚かゲットしたんですよね。のちにコルトレーンに大いにハマった僕ですが、最初に手にしたのが異色作だったという(^^;)。

 このアルバムを聴いた事のある人なら、僕と同じように感じた人も多いと思うんですが、僕は1曲目の「Say It」の最初の1小節でもうメロメロ。「ああ、なんと素晴らしいバラードに、なんていい音のする演奏なんだろう、ジャズってすごい」と思わされたのでした。
 ところが、インパルス移籍後のジョン・コルトレーンといえば思いっきりジャズの闘士で、バラードどころかハード・バップですらなく、インプロヴィゼーションの鬼。モードからフリー、そして死へと向かっていく中で熱く燃え続けていた時期です。インパルスに残された膨大なコルトレーンの録音の多くが、当時のジャズ自体をけん引していたかのような、インプロヴィゼーションによる自己表出の進化過程を記録していましたが、そんな中でこのアルバムは例外的。ところが、まだジャズをまったく知らない僕は、コルトレーンの事なんてほとんど何も知らない状態で、バラードという曲想の良さがすべて詰まったようなあの「Say It」に、完全にやられたのでした。

 もちろん、曲もアレンジも演奏も素晴らしかったと思いますが、本当に感動したのは録音だったのかも知れません。ドラムのブラシで軽くたたくスネアやシンバルの分厚く美しい音、マッコイ・タイナーのジャズならではのテンションを含んだ美しいピアノあたりに特に痺れたんですが、それってどちらもサウンドそのものじゃないですか。当時、僕は高いオーディオ・アンプとスピーカーを手に入れたんですが(でも部屋は狭かった^^;)、このアルバムの美しい音に唖然。体験してない人は分からないでしょうが、オーディオって良いものを揃えると、圧倒的に良い音がするんですよ!それは「これだけ素晴らしい体験をしたら、それだけでも生まれてきたかいがあったよ」と思ってしまうほどの悦楽。でもそれってオーディオや演奏が良いだけでは駄目で、録音も良くないといけないんですよね。ジャズのアルバムで、はじめてこういうオーディオ的な悦楽を思い知らされたのが、僕にとってはこのアルバムでした。バラード系では、マイルス・デイヴィスの『My Funny Valentine』も鳥肌ものだったなあ。。ちなみにこのアルバムの録音エンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダ―です。う~んさすがに名を成した人は、それだけの事をやってるんですね。

 普通のジャズ・ミュージシャンなら、バラード集を出したって当然中の当然ってなものでしょうが、インパルス時代のジョン・コルトレーンとしては異色作。コルトレーンって、インパルスにはこういう異色アルバムを他にも出していて、デューク・エリントンとのデュオもそのひとつですが、あれも背筋が凍りつくほど素晴らしかったです。どちらもレーベル側の企画だったのでしょうが、どちらも大当たりです。ただ、このアルバムが素晴らしかったせいで、僕はしばらくジョン・コルトレーンの事を「メロウな人なんだな」なんて勘違いしていたんですよね。ジャズを代表するほどの闘士だというのに(^^;)。。



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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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