1964年録音、
コルトレーン がスタジオで吹き込んだアルバムです。
全5曲すべてコルトレーンの書きおろした新曲で、「Crescent」「Wish One」「Lonnie's Lament」と言った名曲が入っているのはこのアルバム です。さっきからこのアルバムを何周も聴いてるんですけど、昔は「おとなしい曲が多いし演奏も弱い、冴えないアルバムだな」と思っていたのが信じられないほど、聴けば聴くほど味が出て痺れています…。
「Crescent」はテーマが実に美しい曲で、僕は『Live In Japan』でものすごいフリーのあとにこの曲のテーマが現れた時に泣いてしまった記憶が。。この曲って構成が面白くて、ルバート部分のイントロがついて、そこからテーマに繋がるんですが、このテーマが転調しているものだからサビみたいに聴こえます。それが終わるとテンポをあげたビートが出て生きてアドリブ、みたいな。いやあ、これは曲自体が素晴らしいです。
ただ、この録音でのコルトレーンの演奏がぶっきらぼうというか冴えない…と思ったら、アドリブの後半からがすごかったです。もう、マッコイ・タイナーは伴奏をやめちゃってましたけどね。。
「Lonnie's Lament」は「Crescent」のバリエーションのような曲で、マイナーバラード調のテーマをルバートで演奏し終わると、ブローイング・コーラスはインテンポと、大まかな構成が同じ。違いと言えば、アドリブを持つのがコルトレーンじゃなくてマッコイとジミー・ギャリソンみたいな。ふたりの演奏を聴かせるようにしたんですね。
「Wish One」、哀愁あふれるメッチャいい曲なんですけど…あ、これ、
劇場版銀河鉄道999で使ってた音楽 はこれのパクリか。。憂愁のヘッドだけでなく、それを受けたアドリブ・パートの構成力が見事。コルトレーンをはじめ、バップの流れを受けた50~60年代のジャズ・ミュージシャンって、アドリブになった途端にテーマとは関係ない事を演奏したりしますが、これは曲を見事に形にした素晴らしい演奏でした。
「The Drum Thing」はエルヴィン・ジョーンズ大フィーチャーの曲ですが、ベースがずっとペダルしているのと、テーマ部分が実に味があっていいです!
このアルバム、全体的にコルトレーンの演奏にちょっと元気がないです。テーマなんてどの曲もメゾピアノぐらいで、アクセントもアーティキュレーションも判然としないほど。というか、テナーの出音自体はコルトレーンよりファラオ・サンダースやアーチー・シェップの方がいい音だしますよね。。ところがアドリブに入ると切れも構成力もあるのが不思議。なんだろ…体調は悪いんだけどハートがある音楽、みたいな。
そんな次第で、
私にとってのこのアルバムは、コルトレーンの書いた新曲とそれをモノにする構成力の演奏を堪能するもの 。何だろ…このへんのコルトレーンの音楽って、曲がどうこうじゃなくて、その人すべてを音という形にしているようで、聴いていて痺れてしまいます。渋めだけど、いいアルバムだと思います。
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