2003年発表、『
Who Else! 』、『
You Had It Coming 』に続く、ジェフ・ベックのテクノ時代3作の最終作です。全3作の中では、いちばんエレクトロニカとか、クラブミュージックとか、そういうアンダーグラウンドな色が強いアルバムでした。
バック・トラックがかっこいい!ムッチャカッコいい!! ただ、4曲目あたりに来ると飽きてきました(^^;)。。ただ、カッコ良さは最後まで続いて感じられました。かなりクラブ色が強いし、作曲のクレジットが、どの曲も連名になってるので、トラックメイカーがバックトラックを作って、ジェフ・ベックがその上でプレイしたとか、その逆とか、そういう感じなのかな?フリー・インプロヴィゼーションのアルバムなんて、どの曲もみんな参加プレーヤー全員の作曲になってたりしますもんね。
この、めっちゃくちゃカッコよく感じられるのに飽きてしまったのって、理由があった気がします。2000年前後に大流行した、こういうクラブ系の電子音楽には共通の弱点を感じてしまって…
クラブ系の音楽って、それこそ
ブッカーT の時代から基本的にループなんですよね。90年代にノイズやエレクトロニカ系の音楽が流行した時もその伝統は受け継がれていて、しかも作り手がプロのミュージシャンではなくなったんですよ。その頃にはサンプラーでもなんでも安価に買えるようになっていたので、機材オタクや音楽オタクがそういう電子音響機器を買い集めて作るようになったのが2000年頃のクラブ系の電子音楽…だと僕は思ってます。それって、良い意味でも悪い意味でもアマチュアの音楽で、2000年前後のクラブ系電子音楽やトランステクノって、音をつなぎ合わせて電子加工する事ばかり…そう思いませんか?
ここで何が起きたかというと、サウンドは音楽教育を受けてきた人ではとても思いつかないような実験性・過激さ・斬新さなんかを持つようになれた一方、偶然に頼っていたら死ぬまでたどり着けないだろう理知的な音楽手法は音楽に含む事が出来ない、みたいな。部分転調のひとつですら作れないんですよね…。この「曲がぜんぜん変化できない」が、格好いいのに4曲も聴くともう飽きてしまった原因じゃないかと。飽きずに済むかどうかは、カッコいい刺激的なサウンドに飽きずにいられるかどうか、だと思ってしまったり。
まあでもこの「変化しない」音楽には良さもあって、クラブって基本的にはみんなで酒飲みながらダラダラ話す場所で、気が向いた人は今やってるイベントに参加しても踊ってもいいし…みたいな所が多いじゃないですか。そのうしろに流してる音楽なので、ある意味では劇的に動かない方がいいだろうし、これはこれでプラスの意味がある手法とは思います。レアグルーヴなんて、僕は大好きでしたしね(^^)。ただ、それを音楽そのものに向かい合って聴く音楽にすると、事情が違ってくるというだけで。で、そういう
ループ・ミュージックを、ロックをはじめ自分がやってきた「始まって終わるというドラマを持つタイプの音楽」の側に、ジェフ・ベックがどうやって寄せたかというと…それがこのアルバムの聴きどころでは ないかと思いました。
ジェフ・ベックって、この頃かなり自分のギター・メソッドを確立していたように感じるんですよね。出来ること出来ない事あるけど、どういうものでも自分の音楽としてものにしちゃう技術がある、みたいな。さすがにループがすぎて退屈しそうな曲では、フックになるフレーズを作ってそれを発展させることで退屈さを回避するし、まあとにかくジェフ・ベック的な音楽言語がしっかりしてるなと。
この頃のジェフ・ベックのギターって、傾聴に値する …と思ってしまうのは、ちょっとひいきしすぎですかね(^^;)>。。
90年代中ごろ、こういうエレクトロニカやトランステクノ的な音楽は、チャート・ミュージック以外のところで大流行してました。僕はまさにリアルタイムだったし、音楽業界に片足を突っ込み始めていた頃だったので、スタジオにもAKAI のサンプラーが持ち込まれたり、アナログシンセが復権し始めたりしたのをよく覚えています。海外に行っても、ニューヨークでもベルリンでも、それどころかインドネシアのクラブですら、こういう音楽だらけだったんですよ。で、メジャーのレコード会社と契約していたミュージシャンが、こういうサウンドを自分たちの音楽にとりこみ始めたんですよね。プリンス『
emancipation 』とか、マドンナ『Erotica』とか、U2『POP』とか、とにかくアングラのいい所どりをしようとする人が大量発生。ジェフ・ベックもこの手のサウンドに感化されたひとりだったんでしょうね。
あとは、「プロだけどさすがに同じものの金太郎飴すぎて飽きられたもの」と「アマで弱点は色々あるけど、プロの音楽にはない刺激に溢れたなもの」のふたつを、どのぐらいの割合で混ぜるのかが、ジェフ・ベックのテクノ3部作だったんじゃないかと。3作では『
Who Else! 』がいちばんプロ寄りで、この『Jeff』がいちばんアングラ寄りと思いますが、どれが好みかは、聴く人次第なのでしょうね。個人的には、これはジェフ・ベックのアルバムというより、トラック・メイカーさん達のアルバムにゲストとしてジェフ・ベックが入った音楽に聴こえました。音楽の構図的に飽きやすいかも知れないけど、ギタープレイはいいし音はカッコイイ、なかなかのアルバムでした!
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