さて、このCDに収められてる「管弦楽のための協奏曲 Concerto for Orchestra」は、「弦チェレ」と並んで上演機会の多い作品。書かれたのはアメリカ亡命後、死ぬ2年前となる1943年。というわけで、作風は従来のクラシックに近いところに戻ってます。さすがに近現代屈指の作曲家の晩年の作品だけあって見事なオーケストレーションです…が、アメリカで評価されなかったもんだからちょっと日和ったような気がしなくもない(゚ω゚*)。バルトークほどの人でも、評価されなくなっちゃうと「アメリカの人に受け入れられるものを」とか思っちゃうんでしょうか。弦楽四重奏や弦チェレを知っていると、これはちょっと物足りない…。もしこれがバルトークの作品じゃなかったら絶賛ものだと思うんですが、バルトークの作品だけに、神がかった数列や最先端の技法を突き進んで欲しかった。って、こんなに見事なオーケストレーションを聴かせて貰っておきながら、贅沢ですね。
というわけで、僕がこのCDで驚いたのは、ついでについてきた「4つの小品 作品12 Four Orchestral Pieces (Sz51)」の方で、これが凄かった!作風こそロマン派の和声組織を用いつつようやく独特な音楽を創りはじめた、いかにもR.シュトラウスとかスクリャービンが出始めた時代の音楽ですが、独創性がすごい…。作曲は1912年、オーケストレーションを作ったのは21年、ドイツ/オーストリア音楽に影響されまくった初期バルトーク作品の総括のような音楽でした。僕は先鋭化する前のバルトークというと、唯一のオペラ「青髭公の城」とかバレエ音楽「かかし王子」「中国の不思議な役人」とかの有名作しか知らないんですが、それらの曲の着想がみんな入ってる気がします。特に第2曲「スケルツォ」は、この曲だけちょっと崩れたソナタ形式っぽくて(他はABA3部形式に近いかな?)、雰囲気も独特のヤバみがあって、素晴らしい。