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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Astor Piazzolla, Horacio Ferrer / Maria De Buenos Aires ブエノスアイレスのマリア』

Astor Piazzolla Horacio Ferrer Maria De Buenos Aires 1968年リリース、音楽をアストル・ピアソラ、詩をオラシオ・フェレールが担当したタンゴによるオペラ(スペイン語では「オペリータ」というみたい)のピアソラ自作自演盤、CD2枚組です。ピアソラ生涯きっての大作として名前だけは知っていたのですが、とにもかくにも幻のレコードという事で、昔はまったく聴く事が叶いませんでした。ところがある時にタワレコのエサ箱を眺めていると…おおお、CD化されているのか?!というわけで、迷う事なく買ったのは今から30年近く前の事。そうそう、気をつけないといけないのは、このオペラは何度かCD化されていますが、ピアソラ本人の実演でないものが色々とあるので、最初に聴くときはピアソラ自作自演のこのジャケットのものがおすすめです!好き嫌いや、ピアソラ自作自演のものがベストであったかはともかく、まずは本人のものから聴かないとね(^^)。

 最初に聴いた時の感想を言うと、音楽以前に録音がショボくて聴く気になれませんでした_| ̄|○。50~60年代のピアソラのレコードで良い音のものなんてほぼないので、ある程度は覚悟していたのですが、それにしたってこれはショボすぎ、きつかったです。うう。
 音楽の方も、良くも悪くもピアソラの音楽だな、みたいな(^^;)。長調か短調しかなくて(あ、これはパッと聞きなので間違ってるかも)、リズムはタンゴ的なものが多くて、なんといえばいいのか…ポピュラー音楽なんですよね。。

 作曲面で唯一面白かったのは、レクイエムのように響かせる所から徐々にアッチェルしていく部分までの終曲「Tangus dei」ぐらいでした。そうそう、齊藤徹さんの『Tetsu plays Piazzolla』ではじめて知った曲「Fuga y misterio」がブエノスアイレスのマリアの中の1曲だった事は、久々に聴いて初めて思い出しました(^^;)。聴いて思い出す事って意外とありますが、人間の記憶って面白いです。聴くまで完全に忘れてる上に、聴くと思い出すんですから。

 面白かったのは、オラシオ・フェレールの詩でした。スペイン語の音楽詩劇となれば、なんとなくカルメンっぽい悲劇的な庶民の物語かと思いきや、けっこう象徴的な詩なんですよね。マリアという女性がブエノスアイレスという町全体の事のような。たとえば、さっきあげた終曲「Tangus dei」の歌い出しはこんな感じ。

Tres campanadas:
trás los misales, pican moteles las derrotadas
y alegres nalgas de las matronas: Laurel con ajo.
3 つの鐘 ミサを食してモテットをつつくのは、夫人の尻の幸福、ニンニクと月桂樹。

Hoy es Domingo, y las brujas se espiran, porque asomados
del tuco les tiran soles los chicos y los payasos.
この日曜、魔女は死に、ミートソースから足の裏を投げる少年たちとピエロ

 僕のひどい訳なのであまり信じないで欲しいんが(^^;)>、これは面白かったです。ブエノスアイレスという南米の港湾都市の歴史自体がドラマチックなものじゃないですか。しかも当時のアルゼンチンって軍事政権時代なので、もしかすると間接的な表現にせざるを得なかったのかも知れません。他にも、19-20世紀の南米文学ってけっこうアヴァンギャルドなので、そのへんの色もあったのかも。いずれにしても詩の部分では、いい年してもまだ「君のこと守りたい」とか言い続けるような白雉化した大衆文化としての西側ポピュラー音楽と隔絶した素晴らしさ。あ、そうそう、このCDのブックレットには、詩は書いてありませんでした。僕はクレーメルが同曲を録音したCDのブックレットで読みました。

 というわけで、ピアソラといえばこれを最高傑作に挙げる人もいる「ブエノスアイレスのマリア」ですが、僕的には、少なくともこの録音では音楽を面白いとは思えず、詩に面白さを感じた作品でした。でも、心のどこかで「録音さえ良ければ面白かったのかも」とずっと思っていたんですよね。で、ヴァイオリニストのギドン・クレーメルがこの作品を全曲録音した時に、またしても飛びついてしまったという。。その感想は…この話は、またいつかしようと思います(^^)。


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EP『King Crimson / Cat Food w/Groon』

King Crimson_CatFood_Groon 1970年に発表されたキング・クリムゾンのアルバム『ポセイドンのめざめ』リリース時に、クリムゾンは何とシングルをリリースしています。珍しい…。それが、よりにもよってキース・ティペットが荒れ狂った「キャット・フード」というのが…メンバーの大量離脱でご乱心だったんでしょうか(^^;)。
 キャット・フードは、アルバムとはダビングを含めたミックス違いなのですが、そのB面に入っている「グルーン」って曲が、69年のファースト・ラインナップがやっていたジャズ色の強い音楽の特徴をよくあらわした演奏で、僕は好きでした。とはいえ、当時はとうてい手に入れる事ができず、僕は『A Young Person’s Guiode To King Crimson』というベスト盤をレンタルしてきて、そこで聴きました。

 正確なデータがないので分からないんですが、70年録音という時期や演奏からして、恐らく「Groon」の演奏は、ジャイルズ・ジャイルズ&フリップの3人。ギター、ベース、ドラムのトリオでのインストで、テーマ部分の匂いは思いっきりニュージャズ。このテーマ部分がクソカッコよくて悶絶でした。ただし、オープンになるとエフェクターに頼った演出をしたり、フリップ先生がシャバラバだったり、ニュージャズというよりモダンジャズみたいになっちゃうんですが、雰囲気がクソカッコいいのでそんなことは問題じゃありません。

 でもって、昔は、69年のファースト・ラインナップの頃のクリムゾンのライヴ演奏って、あれだけジャジーでカッコ良かったにもかかわらず、公式盤ではまったく聴けなかったんですよね。その雰囲気を唯一聴く事が出来たのが「Groon」で、僕は思いっきり魅せられてしまいました。以降、69年のクリムゾンのブー〇音源を漁る事に(^^;)。。

 ファーストラインナップのクリムゾンのライヴを聴くと、仮にこの「グルーン」をアリとすると、もうセカンド・アルバムを作れるだけの曲は揃っていたと思います。もしクリムゾンがメンバーの離脱を起こさないまま70年を迎えていたら、セカンド・アルバムって、この「グルーン」系の、モダンからニュージャズ寄りだった音楽が中心になったんじゃないかと思うんですよね。もしそうなっていたら、クリムゾンのクラシック・サイドがファーストになって、ジャズ・サイドがセカンドになっていたわけです。クリムゾンはロック史に残る音楽を完成させたバンドだと僕は思っていますが、もしこの実現しなかった方のストーリーを歩んでいたら、更にすごい事になってたんじゃないか…見果てぬ夢ではありますが、僕は「グルーン」を聴くたびに、この事を想像しないわけには行かないんです。それぐらい、「グルーン」はワクワクする曲と演奏でした。


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『King Crimson / In the Wake of Poseidon』

King Crimson In the Wake of Poseidon キング・クリムゾンのセカンド・アルバム、1970年発表です。デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』がビートルズのアビィロードを蹴落とすほどの爆発的なヒットを飛ばしたので、「待望の」という感じだったんじゃないかと。ところがバンドの内情は、ファーストを発表した数か月後にメンバーが大量離脱。残ったのはギターのロバート・フリップと作詞のピート・シンフィールドだけという状態に。新日本プロレスの選手大量離脱事件なみの窮地です。ロバート・フリップさんは気が気じゃなかったと思うんですが、ここから『太陽と戦慄』や『RED』というアルバムや、とんでもない爆発力のライブを生んだんですから、災い転じて福となすとはこの事。それだってこの危機を頑張り抜いたロバート・フリップあってこそ。フリップさんのこの時期の頑張りには大拍手です!

 前作が空前の大ヒットとなったからなのか、それともメンバー大量脱退のために準備に時間を割けなかったからなのか、色々とファースト・アルバムにそっくりです(^^;)。アルバムタイトル曲「In The Wake Of Poseidon」なんて、何もかもファーストの「クリムゾン・キングの宮殿」と同じだし。しかもファーストの方が出来がいいという(^^;)。というわけで、クリムゾン・ファンじゃなかったら特に聴く必要はない…と言いたいところですが、ホルストの惑星をやっていたり、ブリティッシュ・ジャズのキース・ティペットが参加してクラシカルかと思われたクリムゾンをインプロヴィゼーションの方向に引っ張ったりと、色々と面白い事が起きているアルバムでもあるんですよね。もう、当時のバンドの中ではミュージシャンのレベルも、やろうとしている事も段違い。

 聴きどころはB面。ここで、以降のキング・クリムゾンの方向性がはっきりしたんじゃないかと。大曲「The Devil's Triangle」はホルストの惑星組曲のアレンジですが、70年代までのクリムゾンって、特に初期はオリジナルだと古風なクラシック音楽色が濃いですが、いざ実際のクラシックの楽曲となると、近現代をカバーするんですよね。これは、徐々に70年代クリムゾンの色のひとつとして大きな位置を占めるようになっていったように感じます。
 もうひとつは、先鋭的なブリティッシュ・ジャズのピアニストだったキース・ティペットの参加した「Cat Food」。インプロヴィゼーション色を強めていったのも70年代のクリムゾンの色のひとつでしたが、それが機能和声内でのアドリブではなく、前衛色の強いものになったのは、ここが原典だったのではないかと思っています。ファースト・ラインナップのクリムゾンのライブもジャズ色が強いんですが、もっとモダン・ジャズよりなんですよね。

 最初の解散までのクリムゾンのスタジオ・アルバムではいちばん地味な作品だと思いますが、クリムゾンの中ではちょっと劣るというだけで、他のバンドだったらぶっちぎりの代表作レベル。久々に聴いたら、意外と面白い発見が色々とあって楽しかったです (^^)。。


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『King Crimson / In The Court Of The Crimson King』に追記しました

KingCrimson_CrimsonKing.jpg ただいま、夏から始めたYou Tube チャンネルで、60~70年代のキング・クリムゾンをふり返る動画を作らせていただいています。青春時代に胸を熱くさせた大好きなバンドだったので、一度まとめておきたかったんですよね。でもって、動画制作にあたり久々に聴き直してみると、まあ色々と思う事が出るわ出るわ…。前回このアルバムについて書いたのは、グレッグ・レイクさんが亡くなった2016年。このロックの大名盤をもう7年も聴いていなかったんですね。

 というわけで、「あれも書いとかないと」、「これも言っておきたい」というのがあれこれ出てきたものの、以前の感想は、その時に感じたものとして残しておきたい気もしたので、You Tube で語らせていただいたものとほぼ同内容のものを、追記として足させていただきました。以前書かせていただいたものとダブる箇所が多くあるものの、それはそれとして、残させていただこうと思います。

 もっと簡潔にまとめられそうな気がして、我ながら本当に駄文と思うので、読んでくれとは言いにくいのですが、もし興味を持っていただける心優しい人がいましたら、ぜひ。。

http://cdcollector.blog.fc2.com/blog-entry-536.html

P.S. ほぼ同じ内容をYou Tube で話させていただいています。読むのが面倒な方は、動画の方もどうぞよろしくお願いします。

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You Tube チャンネル 【1970年のキング・クリムゾン 1 “ポセイドンのめざめ”】 アップしました

King Crimson 1970-1_ThumbNail キング・クリムゾンの動画も3回目ですが、今回はメンバーの大量離脱でバンドが崩壊寸前になった1970年の前半です。

 キング・クリムゾンは70年に【ポセイドンのめざめ】と【リザード】というアルバムを作りますが、69年末に突然崩壊寸前になり、メンバーすらろくに揃わない状況から、よくもまあ1年でアルバムを2つも作れたものだと思います。しかも【リザード】は大傑作ですし。音楽面では、ひとりでバンドを建て直したフリップ先生の努力には本当に頭が下がります。この時フリップ先生が頑張ってくれなかったら、【太陽と戦慄】も【レッド】も生まれなかったんですものね。。

 正直に言うと、最初の解散までのクリムゾンが作ったスタジオ・アルバムの中で、セカンドアルバム【ポセイドンのめざめ】はワンランク下がる音楽だと、個人的には思っています。でも久々に聴き返したところ、名盤の誉れ高いファースト【クリムゾンキングの宮殿】ではやっておらず、しかも以降のクリムゾンのアイデンティティになっていくような素晴らしい挑戦がここで始まっている事に気づかされました。そのあたりを、話が小難しくならないよう、マッタリと話していけたらと思います。
 そして、もし楽しんでいただけましたら、チャンネルを登録していただけると有り難いです♪

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(1970年のキング・クリムゾン1【ポセイドンの目覚め】) https://youtu.be/KDLKxeNuHTM


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『来生たかお / TAKAO GRAFFITI』

KisugiTakao_TAKAO GRAFFITI なんで僕は来生たかおさんのレコードを、ベスト盤みたいなのばかり何枚も持ってるんでしょうか。きっと、「あの曲が入ってない」「この曲が入ってない」みたいに買い足していった結果なんでしょうね(゚∀゚*)エヘヘ。そんでもって、僕が来生たかおさんの自作自演で好きな曲を書きだしてみると…「夢の途中」「無口な夜」「マイ・ラグジュアリー・ナイト」「セカンド・ラブ」「シルエット・ロマンス」の5曲。問題は、この5曲が、他の人への提供曲と、来生さんの持ち歌が混ざってる事なんです。だからカバー曲を優先したアルバムを買うと「無口な夜」あたりが入ってなくて、オリジナルを優先するとセルフカバー曲が漏れる (^^;)。そんな中、僕にとって外せないこの5曲が全部入っているベスト盤をとうとう見つけました。それがこれ!というわけで、他のベスト盤はここでお役御免です。

 来生さんについては何度も書いてきたので、もう言う事がなくなってきたぞ…そうそう、選んだ5曲の中でいちばん有名じゃないのは「無口な夜」という曲だと思うんですが、有名じゃないと言っても、大ヒットした「積木くずし」というテレビドラマのエンディング曲として使われていたので、他の作曲家と比べれば十分有名かも。このドラマの原作本は俳優の穂積隆信が書いたノンフィクションで、不良になった娘との葛藤を描いてるんですが、壮絶な家庭内暴力やら反抗やら家庭崩壊なドラマだったので、子どもながらに見ていて胃が痛くなりそうでした。そんなドラマの最後に、こんなに美しい曲が流れるもんだから、最後だけホッとしたもんです。ちょっと渋いこの曲、番組の最後に繰り返し聴いているうちに、ストリングス・アレンジやピアノ弾き語りの良さがじわじわ伝わって、しびれてしまったのです。良いアレンジだなあ。。

 来生さんの曲を連続で聴いていて思ったのは、一歩間違えると演歌の弦アレンジ直前まで行ってしまう事で、そこまで行っちゃうとムード一発になっちゃってダメ。でも、なんでも腐る一歩前が一番うまいというもんで、その寸前で踏みとどまっている曲が素晴らしい。いずれにしても、日本の昭和歌謡に欠かせない、めずらしくクラシックの素養のある素晴らしいソングライターだと思います。これはおすすめ!


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『来生たかお / VISITOR』

KisugiTakao Visitor 日本の80年代歌謡曲の作曲家で、僕がいちばん好きなのが来生たかおさんです。作曲もアレンジも段違いで素晴らしく、ついでに作詞を来生えつこさんが書くことが多いから、大人の世界になるのです(^^)。中森明菜「セカンド・ラブ」の詞「抱き上げて、時間ごと体ごと、私をさらってほしい」とか、しばたはつみ「マイ・ラグジュアリー・ナイト」の「午前零時、寄り添う街路樹、町の中、夜の中、ひとめぐり」とか、もう大人すぎて社会に出た事もない10代の小娘に歌えるような詞じゃないですよね。。このアルバムは、来生さんが誰かに提供した曲のセルフカバー集。めっちゃくちゃいいです!!

 いちばん素晴らしかったのは、「マイ・ラグジュアリー・ナイト」の曲、詞、アレンジ。アレンジは、冒頭はストリングスのみ、最初の平歌はピアノのみ…こんなのしびれるって。他にすごく良かったのは、大橋純子「シルエット・ロマンス」のセルフカバー。これも素晴らしい、文句なしです!
 中森明菜さんに提供した曲のセルフカバー「セカンド・ラブ」「スローモーション」「トワイライト」は、なにせ耳なじみある曲だし、曲自体がすごくいいので、イントロが流れた瞬間は「おおっ!」とは思うんですが、聴いていると男が歌うとおかしい詞だし、アレンジも、3曲とも中森明菜さんのバージョンの方がいいので、ちょっと残念。アレンジを変えて出そうという事なんだろうけど、そのアレンジが間に合わなかったと見た(^^;)。

 以前に来生たかおさんの『バラードセレクション』というベストCDを紹介した事がありましたが、曲が被っているとはいえ、どちらも手放したくないぐらい良い音楽でした。80年代以降の日本の歌謡曲でいいと思うものって多くないですが、80年代はまだスレスレでいい作品もあった、みたいな。これは素晴らしい、ため息が出てしまいました。。


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『大橋純子 / Essential Best』

OohashiJyunko_EssentialBest.jpg もんたよしのりさんとのデュオが、僕にとっては鮮烈な印象。70年代半ばから80年代にかけて活躍したJポップ・シンガー大橋純子さんのベスト盤です。収録曲は15曲で、1976年から83年までに発表された曲からのセレクトでした。
 
 音も曲もコーラスグループのサーカスっぽいというか、クロスオーヴァーなものが多かったですが、なるほどサーカスにも楽曲を提供していた佐藤健さんが書いた曲が多いんですね。ちなみに佐藤健さんと大橋純子さんは夫婦なんだそうな。やっぱり作曲家とプレーヤーってくっついちゃいますよね。僕もそうですが、あんな濃密に接してたらそうなってしまうわな(^^;)。

 このアルバムに入っている僕の好きな曲は、来生たかおさんの「シルエット・ロマンス」と、筒美京平さんの「たそがれマイ・ラブ」、そしてもんたよしのりさんとのデュエット曲「夏女ソニア」、この3曲です。意外にも、すべて佐藤健さんの曲じゃない…大橋さんの歌った曲に限って言えば、僕はクロスオーヴァーより、歌謡曲的なキャッチ―なものが好きなのかも。でも、「シルエット・ロマンス」は来生たかおさんがセルフカバーしたバージョンの方がアレンジも歌も好き、「夏女ソニア」はもんたさんの歌が好き。というわけで、僕にとっての大橋純子さんは「たそがれマイ・ラブ」の人なのかも。「たそがれマイ・ラブ」のサビってすごく良いと思いません?あの曲、平歌は同じ音型が徐々に上がっていって、サビは反対に徐々に下がっていくんですよね。あの構造が美しいです。

 大橋さんが活躍していた頃、僕は小学生。当時は久保田早紀さん、八神純子さん、吉田美奈子さんなどの女性シンガーソングライターが大活躍していた時代でした。共通項は、歌謡曲とは違ったアレンジ。大橋さんの場合はクロスオーヴァー調の音使いで、70年代後半特有なサウンドなもんだから、聴くとタイムトラベルした気分、最高でした!大橋純子さんはソングライターではないですが、大橋さんさサーカスや久保田早紀さんといった女性シンガーは、アイドルとはぜんぜん違って聴こえていて、子どもの頃にはあこがれていました。いや~懐かしかったです!


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『もんた&ブラザーズ / GREATEST HITS ~monta select~』

Monta and Brothers_Greatest Hits 小学3年生の頃、同じクラスにふたりの親友がいました。そのひとりがMで、彼は超体育会系、僕も体育会系だったもんで気があったんですよね。そんなMが大好きだったのがもんた&ブラザーズの「ダンシング・オールナイト」。80年に大ヒットした曲で、肌感覚としてはこの年最大のヒットってこの曲だったんじゃないかなあ。憂いのある歌謡ロックで、小3だった僕も彼も、すごくカッコよく感じてました。

 メインヴォーカルのもんたよしのりさんのハスキーな声がすごい!世良公則&ツイストやもんた&ブラザーズは、「これがロックバンドというやつか!」な~んて、小学生なりに感じていました。「ダンシング・オールナイト」ももちろん好きだったんですが、以降に出てくる「DESIRE」や「BURNING」も(どちらもこのCDに入ってます)、歌謡ロック調でサビがカッコよかったし、バンドサウンドもまだ子供だった僕はしびれました。

 音楽は、歌謡ブルースロックというのが一番近い表現でしょうか、近いバンドをあげるとすれば柳ジョージ&レイニーウッドあたり…いや、違うか(^^;)>。
 いまこのCDを聴いて思うのは…素晴らしいヴォーカリストを抱え、詞も曲も悪くないのに、アレンジがないも同然、演奏は弾いているだけでバンドの一体感も表現力もない、ミックスが下手…要するに素材は良かったのに料理がうまくなかったのかも。演奏を例にとれば、演奏する時って、曲のどこを一番盛り上げるかを考えて、曲に起伏を作ってドラマチックにするものじゃないですか。でも、もんた&ブラザーズの演奏はコードに合わせて楽器を鳴らしているだけで曲を構成できません。だから、もんたさんのヴォーカルの凄さだけで何とかしているバンド、みたいな。いやあ、これ、バンドのレベルが高かったら、もっとすごい事になってたんじゃないかと思わざるを得ません。

 それでもヴォーカルだけで弱点を補って余りある強力さだし、なんといっても僕にとっては思い出深いバンドです。アイドルとは違うちょっとお兄さんお姉さん向けの歌謡音楽との出会いが、ウルトラマンや「8時だヨ!全員集合」を見ていた幼少時だった自分を、次のステップにあげるきっかけになった気がします。もんた&ブラザーズが大好きだったMと一緒に歌ったり話したりした曲で覚えているのは、クリスタル・キング「大都会」、シャネルズ「ランナウェイ」、シーナ&ザ・ロケッツYMO「テクノポリス」、矢沢永吉のコーラのCMの曲…なるほど、ウルトラマンから卒業していくわけですね。


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もんたよしのりさん、逝去

Monta Yoshinori 数日前(2023年10月23日)、もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」で世に出た、もんたよしのりさんが逝去なさったそうです。いやぁ…
 それにしても、人が死に過ぎます。何年か前はグレン・フライさんやキース・エマーソンさんといった、ハイティーン時代に好きだったロック・ミュージシャンが次々に世を去りましたが、今度は谷村新司さんにもんたよしのりさんと、子供の頃に好きだった歌謡ロックの人が連続です。当たり前ですが、これって年齢順ですよね…今はフォークの時代が過ぎた後、ロック色の強い音楽が日本のチャートにあがってきた頃のミュージシャンがそれぐらいの年齢に差し掛かってきたという事でしょうか。別の言い方をすると、自分が小学生の時に熱狂した人が次々に世を去っています。猪木さんもそうだし…。

 もんたさんといえば、最初に知ったのは80年にヒットした「ダンシング・オールナイト」。ハスキーという言葉では足りないほどのものすごい声に、子どもだった僕は心を奪われました。もんたさんや世良公則さんのヴォーカルって、ふざけて真似をしていましたが、あれって間違いなく好きの裏返し。僕はその頃に少年野球をやっていて、再放送されて再ブレイクしていたあしたのジョーに夢中になっていて、歌謡曲もYMOやロック的なものやニューミュージックが出てきて…あの頃が、自分の人生最良の時だったのではないかと思うんですが、そのバックでもんたさんの歌は確実に流れていたなあ。。
 80年といえば、松田聖子さんや田原俊彦さんがデビューした頃で、そこから80年代アイドルの全盛時代が始まりましたが、その直前はロックにシンガー・ソングライターにニューミュージックと、日本のチャート音楽シーンでも異例中の異例というほどのミュージシャン全盛時代。80年のヒット曲といえば、もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」、久保田早紀「異邦人」、クリスタル・キング「大都会」、海援隊「贈る言葉」、谷村新司「昴」、長渕剛「順子」、八神純子「パープルタウン」、山下達郎「RIDE ONE TIME」。ミュージシャンだけでなく、ファンもそういう音楽を聴いたからこそ、こういうシンガーソングライターが売れたわけで、戦後の歌謡音楽のシーン全体がいちばんレベルの高いころだったのではないかと思います。

 売れたのかどうかは分かりませんが、もんたさんの書いた曲やパフォーマンスには大好きなものが他にもたくさんあります。「デザイアー」や「バーニン」は、歌謡ロックなんて呼んではいけないほど、ロック魂あふれる音楽。大橋純子さんとのデュオ「夏女ソニア」も大好きでした…でもあれってCMありきで作られた歌なのかな?

 もんたさんは、良い人生を送れたのかな…とにもかくにも、ご冥福を祈るばかりです。僕の人生最良の時の、素晴らしい思い出のひとつをありがとうございました。


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You Tube チャンネル 【エリック・ドルフィー 後期リーダー・アルバムの素晴らしさをダラダラと語る動画】 アップしました

Eric Dolphy_Late Leader Albums_Thumbnail モダン・ジャズからニュー・ジャズが登場するあたりの時代に活躍した天才ジャズマンのひとり、エリック・ドルフィーの素晴らしさを何とか伝えようと作ってきた動画も3回目、今回でひと区切りです。

 ドルフィーのバイオグラフィーをザックリとお話させていただいた第1回、初期リーダー・アルバムについてお話させていただいた第2回に続いて、今回はドルフィーの後期リーダー・アルバムについて、それぞれのアルバムの性格を整理しつつ、思うがままにダラダラとお話させていただきました!この時期に、私が心を震わせられたアルバムがふたつも生まれてるんですよね。

 ドルフィーの素晴らしさを知っている人には、思い出しながら楽しんでいただければ嬉しく思いますし、まだ聴いてない方や、聴いた事はあるけどピンと来なかったという人には、この動画がドルフィーをと出会うきっかけになってくれたら…最後までお楽しみいただければ幸いです。

 そして、もしよろしければ、チャンネルをお気に入り登録していただけると有り難いです♪

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(エリック・ドルフィー後期アルバム) https://youtu.be/UfpCpgYaFNs


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Eric Dolphy の記事3つをリライトしました

eric dolphy iron man You Tube 動画を作るため、僕が持っているエリック・ドルフィーのアルバムを全部聴き直したんですが、もしかすると年代順に並べて聴いたのは、人生で初かも。このブログを始めたきっかけは、自分の持っているLP やCD の整理だったんですが、そうやっていると自分の好きなレコードをぜんぜん聴けなかったりするんですよ。。それが、大好きなミュージシャンのアルバムをこうやってまとめて聴く事が出来たのは、すごくいい体験でした!

 というわけで、過去に感想文を書いたアルバムも聴き直し、この際なので思い切ってそれらのアルバムの感想をリライトしました。今も昔もアルバうを聴いての感想はけっこう似ていて、むしろそこに驚いたんですが、前回に感想を書いたのは10年以上前。とにかく文章が拙くて(^^;)…あ、いまだってひどい文章ですが、昔はそれに輪をかけてひどかったんですよね。スマヌス。

 というわけで、エリック・ドルフィーの以下4作の感想をリライトしました。もし宜しければ、ご笑覧くださいね(^^)。

【Conversations】, 【Iron Man】 http://cdcollector.blog.fc2.com/blog-entry-69.html
【Last Date】 http://cdcollector.blog.fc2.com/blog-entry-67.html
【Other Aspects】 http://cdcollector.blog.fc2.com/blog-entry-68.html

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『Bread / Manna』

Bread Manna これ以上ないほど上質なポップロックのアルバム『Baby I'm-A Want You』にしびれた僕はブレッドに入れ込み、中古でアルバムを見つけたら片っ端から聴いていきたいと思った…のですが、中古で安く出ないと買う気がなかったという事は、実際にはそこまで入れ込んでもなかったのかな(^^;)>?いやいや、学生だったからお小遣いに限度があったんですね。で、次に見つけたアルバムが、『Baby I'm-A Want You』のひとつ前に出されたサード・アルバム『Manna』でした。1971年発表です。

 あれ、ちょっとカントリーっぽいかも。ちょっと黒っぽい曲もあるな。西海岸のバンドでもあるし、もしかすると最初からポップだったわけじゃなくて、元々はカントリーの素養があったグループだったのかも知れません。このきれいなコーラスワークは、少し前だとCSN&Y とかバーズあたりのカントリー・ロック系の専売特許的な所もあったから、あながち外れじゃないかも。
 とはいえ、カントリー色やら何やらというのはアレンジやサウンド面でのことで、楽曲はさすがによく出来ていました。作曲も演奏もアレンジも、音楽好きの学生や若者が集まって作ったバンドという域を超えてるレベルで、いったいどういう出自を持っている人たちなんでしょうね、これは素晴らしいです。。
 また、ストリングスを含んだ見事なアレンジを施したポップ・ナンバーもすでに確立されていました。超有名バラード「IF」なんて、聴けば誰もが知っている70年代アメリカン・ポップス屈指の名曲。聴いているだけで心に刺さる、なんていい音楽なんだろう…。

 これだけ素晴らしいと思っていながら、僕が聴いたブレッドのアルバムはサードとフォースの2枚だけ。この2枚に入っていない曲でも「Make It with You」なんていう大名曲を知ってるし、今からでも他のアルバムを買い集めたくなってしまいました…ああ、レコードを整理しようと思って聴いているのに、これじゃ逆効果ですね。でもいいか、こんなにいい音楽を聴いていられるなんて、人生の時間の使い方としてはとても贅沢な事なんだろうし(^^)。


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『Bread / Baby I'm-A Want You』

Bread_Baby Im-A Want You 1972年発表、アメリカのポップロック・バンドのブレッド、4枚目のアルバムです。ビートルズって中期以降は見事なポップロック・バンドになりましたが、そこから解散までが速いんですよね。そんなビートルズの解散前後から、すばらしいポップロック・バンドが次々に生まれました。その中でも僕がすごく好きだったのが、バッドフィンガーナッズカーペンターズ、そしてブレッドです。
 ブレッドの中でもこのアルバムは特に好きで、このアルバムのタイトルにもなっている「Baby I'm-A Want You」、そして聴けば誰もが知っているだろう「Diary」の2曲は、後期ビートルズ以降の英米ポップスのバラードの良さがギュッと詰まった、めっちゃいい曲だと思ってます!心に響くんですよねぇ。。

 な~んて感じで「Baby I'm-A Want You」の印象が強かったものだから、カーペンターズのように管弦のアレンジのしっかりしたポップスをやるバンドという印象でしたが、いざ聴き直してみると、けっこうバンドサウンドのポップロックも演奏していました。1曲目の「Mother Freedom」なんて、バックマン・ターナー・オーバードライブあたりのハード目なバンドを連想したほど…やっぱりベースにあるはビートルズの音楽なんでしょうね(^^)。そこにちょっとだけスワンプ・ロックが入ってると感じましたが、そのへんにアメリカを感じもしました。

 このアルバム、僕が好きなポップロックの良さがギッシリ。奇麗なアコースティック・ギターのアルペジオの音、あったかいストリングス、奇麗なコーラス、ハープシコードやオルガンやピアノというアナログの鍵盤楽器の美しい音の数々、そしてよくアレンジされた曲。「Baby I'm-A Want You」、「Everything I Own」、「Diary」、「Games of Magic」、どれも名曲&名アレンジじゃないでしょうか。ポップロック・バンドが作り出したアルバムとして、バッドフィンガーの『マジック・クリスチャン・ミュージック』やナッズのサードに並ぶ名作、おすすめです!


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You Tube チャンネル 【谷村新司追悼:アリスはカッコよかった】 アップしました

Alice_Thumb nail 2023年10月8日、ミュージシャンの谷村新司さんが亡くなりました。享年74歳。ああ…アリスが流行していたのって、ついこの間のように感じるんですが、時は流れているんですね。。

 私が特に好きなアリスの曲は、「遠くで汽笛を聞きながら」と「チャンピオン」。月並みで申し訳ないですが、それだけ普遍的な良さを持った曲なのだと思っています。そして、アリスの活躍した時代とドンピシャとはいかなかったものの、ギリギリでリアルタイム体験できたのは僥倖。自分にとっての、日本の歌謡音楽とのファースト・コンタクトぐらいの音楽のひとつなので、間違いなく影響を受けました。

 今回は、谷村新司さんへの追悼の意を込めて、アリスの動画を作ってみました。深い分析などではなく、アリスと、アリスが活躍した時代をのんびりふり返ってみようと思います。思うがままにのんびり話していますので、コーヒーでも飲みながらゆっくりしていってくださいね。そしてもし気に入っていただけたら、チャンネル登録いただければ有り難いです。そして、谷村新司さんのご冥福をお祈り致します。

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(アリス/谷村新司 追悼動画) https://youtu.be/7MVAAYmoKHY


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『Nazz / III』

Nazz_3.jpg 1971年発表、トッド・ラングレンが在籍した伝説のポップロック・バンド、ナッズのサード/ラスト・アルバムです。一聴して超がつくほどの良質なポップロックと分かる大名盤で、「これはバッドフィンガー級だわ」と感じ、あっという間にファンになった学生時代の僕でした(^^)。

 ロックって、カントリーやブルースあたりの曲を発展させた50年代までは、かなりシンプルな和声進行しかしない音楽だったじゃないですか。それがけっこう見事な和声進行をするようになったのって、ビートルズあたりがターニング・ポイントだったと思うんですが、でも音楽が好きでバンド組んだぐらいの若者たちが、そう簡単に凝った和声進行の曲を書いたり、ましてそういう曲をなかなか演奏もアレンジもできませんよね。そういう意味で言うと、少なくとも作曲面ではブルースロックのバンドよりポップロックなバンドの方が高度な知識が要求されると思うんですが、バッドフィンガー、カーペンターズ、ブレッド、そしてナッズといったグループは、間違いなくビートルズ級のポピュラー和声法を使いこなしたグループでした。ビートルズでその役割を果たしたのはポール・マッカートニーでしたが、ナッズでその役割を務めたのがトッド・ラングレン。

 このアルバム、13曲も入ってるんですが、ロックナンバーを除くと、月並みなプレグレッションをする曲がひとつもありません。曲によっては管や弦が入ったりして、そういう作りでいうとバンドの域を越えていて、ビートルズだけでなくモンキーズあたりの意識もあったのかも知れませんが、モンキーズと違って全部オリジナルですから、その実力たるや素晴らしとしか言いようがないです、すごい。
 また、作曲だけでなく、ドラマーやコーラスといった演奏もなかなかのもの。これだけのものを作って売れないんだから、産業音楽の世界は難しいです。宣伝とか流行とか、なんか色々あるんでしょうね。

 このアルバム、僕は中学生の頃に、本気でシンガーソングライターになろうとしていた友人に教えてもらったんですが、彼に教えてもらえなかったら、このアルバムどころかナッズですら知らずじまいだったでしょう。情報って大事ですよね、知らなければそれまでなんですから…。これだけ良いポップロックバンドもなかなかないと思います。久々に引っ張り出して聴きましたが、やっぱり素晴らしかったです。これはおすすめ!


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コミック『武 TAKERU』 寺沢武一

Takeru_TerasawaBuichi.jpg これもコブラを描いた寺沢武一の作品。寺沢さんの作品が好きだったもので、古本屋で見つけるたびに片っ端から買ってきて読んでましたが、ぜんぶコブラと同じでしたね(^^;)。いや、寺沢先生の場合はそれでいいと思うんですが。

 コブラって、途中からCGを取り入れた画風になったんですが、完全にあの路線でした。主人公は未来の江戸時代風な変な世界で、言葉を言うとその文字が物体化して相手を倒すという、これも漫画じゃないと意味が分からない変な能力者(^^;)。義賊っぽい感じで、その風貌も合わせて考えると、石川五右衛門がモチーフなのかも知れません。このスーパーマンが、あるきっかけで知り合った姫を助けて難敵を倒す、みたいな。

 寺沢武一さんって、女性をエッチに描くのがうまいくせに、ラブ・ロマンスを描くのがうまくないと思いませんか?Oか1か、みたいな感じな竹を割ったような性格なのかも知れませんが、どっちつかずの心の葛藤みたいなものは苦手なのかも。そんな寺沢先生の作品の中で、いちばん男と女物語が面白かったのがこの作品でした。といっても、姫の身代わりに死んでいく女と、主人公のうたかたの恋の部分であって、本当のヒロインとの物語部分じゃないんですけどね(^^;)。

 寺沢武一さんって、本当に絵がうまいと思っていたもので、CGより手書きの絵の方が僕は好きでした。ほら、そこに芸があるわけじゃないですか。だから、やっぱりこのCGな時代は、僕はあまり好きじゃないかも。あと、さっき恋愛部分の物語は褒めたけど、それでもこの物語全体はそれほど持ち上げる物じゃないというか、はっきり言うと…あ、この先は察してください(^^;)。。寺沢先生がお亡くなりになって、懐かしくなって思い出しましたが、やっぱり『コブラ』と『ゴクウ』がどれ程優れた作品だったのかを再認識させられる結果に終わったのでした。スマヌス。


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コミック『ゴクウ』 寺沢武一

Gokuu.jpg 寺沢武一先生の書いた漫画はコブラでほとんどですが、『バット』とか『カブト』とか、少しだけ他の作品も書いてます。でも、学生の時にパラパラと立ち読みした限りでいうと、どれもコブラと酷似(^^;)。そんな寺沢先生の作品群の中で、僕が唯一コブラ以外で面白いと思った作品が、1987年から数年にわたって書き続けられた『ゴクウ』でした。

 未来世界で探偵業をしているゴクウは、ふとしたことからコンピュータのデータを自分の頭の中で照合できるようになり、また自在に伸縮可能な武器・如意棒も手に入れます。この超人的な能力を手に入れた男が、様々な事件の謎に迫ります。

 話はコブラより少しだけハードボイルド。さすがは寺沢さんの作品なので、近未来を想定した斬新なストーリーのアイデアは、面白く感じるものが色々とありました。超人的な能力を持た男が、実は30日前に生まれたクローン人間で、妹と思っていた女が実は母だったとか、当時の漫画の域を超えてると思いました。さすが手塚治虫の流れにある日本人漫画家は違いますね(^^)。
 超能力を受け継いだ一族が、超能力だけではなく人格まで引き継いだために多重人格となり狂死する。しかし8代目が精神転移先を人間ではなく霊廟に引き継ぐことを考え…我が子を待つも、子どもが殺された事を知ると怒りの表情を受けべ、しかしその直後に成仏し…よくもまあこんな事を考えつけるもんだと感心しきり。またそれを表現する画力が、あいかわらず凄かったです。

 そして、描かれた未来像が、他の映画やアニメと類似していると感じました。たとえば、映画『ブレードランナー』やアニメ『クラッシャー・ジョウ』、あるいはゲーム『スナッチャー』に『ポリスノーツ』あたりと、未来世界の雰囲気が似てるんですよね。こういう近未来像って、誰かが真似したというより、お互いに影響しあって徐々に大まかな匂いが完成していくのかも。そして、そのサイバーパンクな未来像に、僕は魅力を感じていました。ハイテクなんだけど路地裏は汚くて…みたいな。だから、ストーリーだけでなく、その世界に浸っているだけでも楽しく感じました。実際の未来になると、こういうのて「21世紀に描かれた荒唐無稽な世界観」とか思われたりしてね(^^;)。

 コブラもゴクウもそうですが、話が終わっていません。まあ、ひとつの話がひとつの映画みたいに、それぞれ閉じた話になっているので、終わる必要もないんでしょうが、終わってないだけに、ファンとしては続きを期待してしまったりもして。寺沢武一さん亡き今となっては、コブラもゴクウも完結しないんですよね。でも、終わらないままでいいのかも。いつまでも続いて欲しい話ではありますし、いつまでも終わらないでいられるのは物語だけですし。


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コミック『コブラ』フルカラー・フルCGコミック版 寺沢武一

Cobra_Blue Rose 小学生のころから大好きだったSFアドベンチャー物のコミック「コブラ」は、僕が社会人になった頃(調べてみたら1995年)からフルカラー化し、CGを取り入れた作画になりました。フルカラーのコブラは、旧作をカラー化しただけのものもありましたが、僕はそういうものには興味がなく、新作だけ拾って読んでました。というわけで、フルカラーのコブラの中で、僕が読んだ新作の感想なんぞを。

■ギャラクシー・ナイツ (ジャンプ・コミックスデラックスvol.4)
 10年前に滅ぼされたシバ王の城を奪回すべく、トランプのカードを使って13人の騎士が集められます。そのうちのひとりがコブラで、他には金庫破り、女戦士、記憶を失った「キング」という名の格闘家などがいます。キングの体には女の形をした痣があり、彼は悪夢にうなされています。キング以外の皆が黄金目当てでこの奪還劇に参加する中、コブラの目的は…
 古いコブラの作品にあった「聖なる騎士伝説」「ふたりの軍曹」「まぼろし山」あたりの焼き直しと感じました。女戦士の正体は完全に「ふたりの軍曹」ですしね。というわけで、大量に作品を書いていると、もういいストーリーが思い浮かばなくなっていたのかも(^^;)。とはいえ、決してつまらないわけではなく、「黒竜王」や「聖なる騎士伝説」ほどでないにせよ、なかなか楽しかったです。

■タイム・ドライブ (ジャンプ・コミックスデラックスvol.6)
 コブラの相棒であるアーマロイドのレディの体が徐々に消えていきます。その謎を解くべく、コブラはレディの過去の中へ入っていきます。原因は、コブラとレディが出会った時にあったある出来事にあり…
 コブラとレディの出会いを描いた作品です。レディの体が消えるのは、かつてコブラとレディが戦っていた相手がレディに…というストーリーでなかなか面白かったです。ガンダムの『The Origin』もそうですが、あとから本ストーリーの過去を描くって、話に深みが出ていいですね。

■ブルーローズ (ジャンプ・コミックスデラックスvol.8)
 宇宙の宝ブルー・ローズの在処が記されているという「メギドの本」を巡って争奪戦が始まります。しかしこの本は、鍵がないと人を飲み込んでしまいます。またブルー・ローズが何なのかは人によって認識が違う状態で、高齢のカジノ女王はそれを不老不死の薬といい、貧困にあえいできた泥棒にとっては巨万の富といいます。鍵がないまま本を開いた銀河パトロールの女隊員シークレットはある惑星に飛ばされ、そこで戦闘兵器となった大亀に会い…
 長く生きすぎた亀が最後に臨んだ事、貧しく生きてきた泥棒が最後に夢見た事、巨万の富を得た120歳になった女が望んだ事…死に際してそれぞれの人が望んだもの、この世の素晴らしさとか、思い出の美しさとか、命のありがたさとか、そういったものにジ~ンとくる話でした。描かれてはいないですが、無敵で生き生き躍動するコブラにだって、いつかはこういう日がくると思うと…寺沢先生って、体調を崩してしまって、この後に完成させられた漫画って少ないんですよね。そういう予感もあったのかも。

 面白いんですが、どうしても手描き時代と比べるとスケールダウン感を感じてしまいました。話はネタ切れ気味なのもそうですが、、それ以上にCGがね。。どのみち虚構であるにしても、絵とCGの比較では、現時点では絵の方が作品性やアート性が高いという事なのかも。「黒竜王」や「聖なる騎士伝説」のあの恐ろしい世界を表現できたのは画力あっての事だったんですね。
 でも漫画を描くためにCGも導入していくというのはいつか誰かがテストしてみるべき事だったと思うし、こういうのって長年、何人もの人がトライして洗練された結果にクオリティが上がっていくものだと思うので、この作品だけで「マンガにCGは合わないな」と判断するのは早計なんでしょうね。実際、アニメーションはCGを要所でうまく導入することに成功しましたし、CGがどうやればアートとなりうるのかが見えてくるのは、漫画にしても映画にしてもこれからなのかも。

 そして、フルカラーCG版コブラのオリジナル・ストーリーは、上記の他に「マジックドール」というものがあるんですが、後編が発刊されずに終わりました。理由は寺沢さんの体調不良だったそうですが、もう読めないのかと思っていたら、あとになってなんと完結!寺沢先生が他界したいま、もう新作のコブラを読む事はできませんが、小学生の頃から読むたびに胸をときめかせたコブラは、ページを開けばまた体験できるんですよね。。本やレコードといった記録物って、本当にすごい発明品だと思います。思い出をそのままに閉じ込められるんですから。


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コミック『コブラ 聖なる騎士伝説』 寺沢武一

Cobra_SeinaruKishiDensetu.jpg 掲載誌を少年ジャンプからスーパージャンプに変えた漫画『コブラ』の長編作品です。コブラは後にフルカラーCGへ移行したので、手書きモノクロのコブラはこれが最後かな?僕はフルカラーCGのコブラより、手書きのコブラのほうが好きです。劇画ブーム以降の漫画って、手書き絵の技術も鑑賞対象というか、それ自体が作品の一部と思うんですよね。寺沢さんは絵がすごくうまいので、手書きのまま行ってほしかったです。

 エスカープ王国の皇女に命を救われたコブラは、王国の危機を救う手助けをすることにします。王国は狙われていて、城の中の人々は疲弊しきって発狂寸前。エスカープ王を殺し城を狙う青龍鬼、白虎鬼、玄武鬼の3人の鬼はそれぞれ軍を持っており、王国を狙って三すくみの状態。コブラはそれぞれの軍に雇われて中に入り、鬼をひとりずつ倒す事を目論見ます。

 鬼に狙われている世界の殺伐とした雰囲気が凄まじくて、これで物語に引き込まれました。緊張感がすごいんです。恐怖と狂気に満ちた世界で、例えばそれぞれの鬼の特徴ひとつとってもすごいです。青龍鬼は、雇った人間の泥人形を作って保管しています。そして雇われた人間が裏切ると、人形を串刺しに。するとその人は血を噴出して死ぬ…これはきっと恐怖小説や幻想文学に元ネタがあるんでしょうが、この幻想文学的な世界観、たまらないです。
 こうした恐怖と狂気の表現の白眉は白虎鬼でした。白虎鬼は人にうろこを生やす整形手術を施して「美しい」とか思っちゃう悪趣味な変態。彼が可愛がっているのが、裸婦を無数に張り合わせて作ったゴモルという巨大な化け物で、こいつが登場したシーンの恐怖といったらありませんでした。

 ストーリーも秀逸でした。物語終盤でエスカープ王の死と鬼たちの関係や事件の真相が明らかになるんですが、これが見事。この漫画、280ページほどでひとつの物語なんですが、ここまで来ると映画…いや、そんじょそこらの映画よりも断然面白いです!僕的には、スターウォーズやハリーポッターやパイレーツ・オブ・カリビアンより全然面白いと思うなあ(^^)。

 この漫画を読んだのは大学の卒業式の時。在学中からなんとか職業ミュージシャンになれないかと活動していたものだから、卒業する頃にはほとんど大学に行っていなくて、大学での友達と疎遠になっていたんです。そんな事もあって、卒業式が終わった後も、誰とつるむでもなく大学近くの個人経営の喫茶店に入って、ひとりでしみじみと軽食を取っていたんです。僕にとって、ここでの4年間って何だったんだろうな、みたいな。その時、喫茶店にたまたま置いてあったのがこの漫画でした。「あ、小学生の頃に読んでいたコブラってまだ続いてたんだ」みたいな。この喫茶店は駅と反対方向にあったものだから、入ったのは卒業の時が最初で最後。
 それでですね…僕、大学に入った入学式の時、最初のホームルームで間違えて違うクラスに入っちゃったんです。で、名前を呼ばれなかったから間違えに気づいて、慌てて正しいクラスに行ったんですね。それを面白く思ったのか、ある女の子が声をかけてくれたんですよね。その子はちょっとイケてる感じの子で、すごく気があったんです。雰囲気としてはファースト・テレビ・シリーズのルパン三世の峰不二子。けっこう美人で、ませた感じでね(^^)。
 でもその子はすぐテニスサークルに入って、僕はジャズを始めたもので、ひと月もしたらほとんど顔を合わす事もなくなって、ほぼそれっきり。それが、大学の最後に入った喫茶店で、バッタリ会ったんです。僕は彼女に気づいたんだけど、何となくバツが悪くて、気づかないふりをして離れた席に座って、コブラを読んでたんです。そうしたら彼女の方から声をかけてくれて、嬉しかったんですよね。それで、彼女は一緒にいた友達たちと別れて、その日は彼女とちょっとしたデートをして帰ったんですよね。分からないけど、僕も彼女の事を好きだったけど、彼女の方も好きでいてくれてたんじゃないかなあ…。大学生の時の僕は変にカッコつけなところもあったし、そのくせシャイでもあったんだけど、もし出会った頃に付き合おうって言ってたら、あんな暗くて辛い修行僧のような大学生活にはなってなかったかも…。というわけで、大学に入った最初と最後だけ、彼女と一緒だったんですよ。そんな事があったもんで、『聖なる騎士伝説』を読むたびに、人生で一回しか入った事のない喫茶店と、その彼女の事を思い出すんです…ああ、涙が出てきたよ。

 自分の話ばかりしてすみませんでした。というわけで、名作ぞろいのコブラにあって、僕的な大フェイバリットは「黒竜王」とこの「聖なる騎士伝説」。これからコブラを読もうという方がいらっしゃいましたら、このどちらかから読み始める事を推薦します!


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You Tube チャンネル 【キング・クリムゾン 凄すぎたファースト・ラインアップについてダラダラと話す動画 part 2】 アップしました

King Crimson 1969-2_Thumbnail キング・クリムゾン動画、第2回は「オリジナル・メンバーのキング・クリムゾンのライブは凄いんやで!顔面アルバムだけ聴いて安心しとったら勿体ないんやで!」と30分ほど話し続ける内容となっています。

 ただ、ライヴの熱さ凄さがバンドの命取りにもなって、ロックの歴史を変えてしまうほどの衝撃でありながら、1年と持たずにバンドが崩壊してしまう原因にも…そのへんのお話もさせていただこうと思っています。

 ファースト・ラインアップのクリムゾンのライヴの凄さは、ファンの間では昔から有名で、それこそライヴのブートが溢れかえる状態。ブートはいくら売れてもバンドにお金が入らないので、これに手を焼いたクリムゾンのロバート・フリップが、ブートを潰すために同じものを公式発表してしまう事態に。こういう状況なので、「ライヴが凄い」とだけ言われても、何から聴いていいのかさっぱり分からない方もいらっしゃると思いますので、私的な推薦盤も整理してお伝えさせていただこうと思います。

 もし楽しんでいただけましたら、チャンネルを登録していただけると有り難いです♪

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(キング・クリムゾン ファースト・ラインアップ その2) https://youtu.be/FSSDvHmd6nQ


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『Gabor Szabo / The Sorcerer』

Gabor Szabo The Sorcerer ハンガリー出身のジャズ・ギタリスト、ガボール・ザボが1967年に発表したライブアルバムです。編成は、ギターx2、ベース、ドラム、パーカッションのクインテット。僕が知っていたミュージシャンは、ザボと、セカンド・ギアーのジミー・スチュワートだけでした。ギターは、ザボがアコギにピックアップをつけたもので単旋律のアドリブ、セカンドギターはガット・ギターをボッサ風に弾いてました。

 基本はラテン・ジャズ風で、ここに映画音楽が入ったり、ザボの出身地のハンガリー町の音楽が入ったりと、変化をつけてある感じ。全体的には、小難しくない、さわやかで聴いていて気もちのいい音楽でした。
 ザボ自身がガットギターを弾いているわけではなく単旋律でのアドリブなのですが、雰囲気だけで言えばチャーリー・バードの音楽みたい。でも、ちゃんと聴くとアドリブがなかなか見事なんですよね。いやあ、ジャズ・ギターのアドリブって、単旋律でペチペチやる感じなので、頭で考えると面白くなさそうなのに、実際にはきれいなラインを作られるとすごく心地よいから困ったもんです(^^)。

 個人的に好きだった曲は、変わり種ともいえる5曲目「Space」。ハンガリー音楽気味の仄暗いエキゾチックさで良かったです。でも実際に音を拾ってみると単純なEエオリアンだったので、リズムとか往復するコード進行とか、そういうところが面白いのかも。

 1曲目がよもやのクラブジャズ風だったので苦笑しかけました…8ビートだし、オルガンが入ってるうように聴こえる(でもクレジットにはオルガニストはいない…これってギターなのか?!)しね(^^;)。でもそういうのを入れとかないとあまりにオヤジくさくなっちゃうのかも。今となってはこれだって充分オヤジくさいですけどね。。
 というわけで、ハードでシリアスな音楽が好きだった僕には、自分お好みとは正反対の音楽でしたが、いま聴くと、なんとも居心地の良い音楽でした(^^;)。。


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『Wes Montgomery / California Dreamin'』

Wes Montgomery California Dreamin え、マジか、60年代に入ってもハードバップに固執していたほどモダン・ジャズ一直線だったウェス・モンゴメリーが、ママス&パパスの曲をやるのか…そう思っていた時代が僕にもありました。ところが聴いてみたらこれが見事に大人向けの最高に気持ちよい音楽で、ハートを射抜かれました!66年発表、ヴァーヴ時代のラスト・アルバムです。

 このアルバム、ジャズのカルテットにドン・セベスキー編曲の管楽器アンサンブルがついた形で、アレンジはラテン・パーカッションを加えたリズミックなラテン調のものが多かったです。でも僕がハートを射抜かれたのは、ジャズかボッサ的なニュアンスの、ゆったりとレイドバックした雰囲気をもった曲たちでした。それが「Oh You Crazy Moon」「More More Amor」などで、オクターヴ奏法を多用した落ち着いた音のギターの音色と演奏が、アンサンブルに合うんですよ(^^)。モダン・ジャズやっている事のウェスの音楽では、オクターブ奏法がどうとか思った事はないんですが、レイドバックした大人のポピュラー音楽をやり始めてからは、「ああ、ウェスのオクターブ奏法ってメッチャ気持ちいサウンドだなあ」と思うようになりました。

 60年代のアメリカ音楽って、ジャズやラテン調のの映画音楽とかジャズ・ボッサとか、大人っぽいムードのレイドバックした音楽があったじゃないですか。映画『いそしぎ』のサントラとか、それこそA&M制作のジョビンのアルバムとか。海の上にヨットを浮かべて、夕焼けみて、恋人と語って…みたいなのが様になってしまうようなあの音楽です。エルヴィス・プレスリービートルズ以降、英米の大衆音楽の多くが若者向けになってしまいましたが、60年代はまだ大人向けの音楽が残ってたんですよね。これはまさにそれ。モダン・ジャズ時代のウェスも好きだけど、アダルトないポピュラー音楽時代のウェスも好き。これは後者の代表作『A Day In The Life』前年に発表された、あの路線を決定づけた名作と思います!


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『Wes Montgomery, Wynton Kelly Trio / Smokin’ at the Half Note vol.2』

Wes Montgomery Wynton Kelly Trio_Smokin at the Half Note vol2 リバーサイドからヴァーヴにレーベルを移したウェス・モンゴメリーが発表したアルバムです。1965年にニューヨークのハーフノートで行ったライブの録音で、共演はウィントン・ケリー・トリオ。リズムセクションはポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(dr)。

なんで僕がこのCDの第2集だけを買ったかというと、ハードバップ一直線な人と思っていたウェス・モンゴメリーがジョン・コルトレーンの「インプレッションズ」というモード曲を演奏していたからでした。ウェスなんて、循環進行上でリハもを施したオルタレーションたっぷりでカッコいいアドリブが聴かせどころのギタリストなのに、モード曲をどうやって演奏するんだろう…みたいな。
 そのモード曲ですが、ウェスが意外と見事な演奏!ウェス・モンゴメリーって、オスカー・ピーターソンみたいにジャズをメシの種と把握して音楽活動をしていた人だと思いますが、もっと尖った音楽に進もうと思えば技術的には出来たんじゃないかと思ってしまいました。でも後半でアイデアが尽きたのか、同じフレーズを繰り返していましたけどね(^^;)。それでもオクターヴ奏法ですごいストロークを聴かせるので、フレージングではなくその技術を見せつけて聴かせてしまうところはさすがエンターテイナー (^^)。なるほどなあ、自分の出来る事と出来ない事を把握したうえでモード曲の良さを出したいい判断だと思いました。

 残りはいかにもモダンジャズ。ウィントン・ケリー・トリオのゲストにウェスが呼ばれたのかも知れませんが、演奏はウェス・モンゴメリーのバックバンドとしてウィントン・ケリー・トリオが呼ばれたような演奏でした。ウィントン・ケリーの伴奏は手が多すぎるのかな…いや、僕だってこれぐらい弾かないとまずいと判断するかもしれませんが、ギターのバックは思った以上に音を間引かないとぶつかって聴こえちゃうんだな、みたいな。勉強になりました。
 というわけでフロント扱いのウェスさんですが、『Boss Guitar』やモンゴメリー・ブラザーズでの演奏みたいにソロを奇麗にとるかというと、オクターヴ奏法したリして雰囲気でごまかしている曲も多くて、演奏の妙技を楽しめる曲とそうでない曲が半々ぐらいでした。

 録音はさすがヴァーヴというか、ライブだというのにリバーサイドと違って録音がいい!ウィントン・ケリーのピアノの音もジミー・コブのドラムの音も、耳で全部拾える明瞭さ(^^)。でもウェス・モンゴメリーの演奏自体はリバーサイド時代の方が弾きまくってました。というわけでそれぞれに良さがあるので、どちらも買える人は両方買っていいと思いますが、どちらかを選ぶとなると…僕なら僅差で『Boss Guitar』あたりを優先するかも(^^)。でも、ゴキゲンな楽しい音楽でした!


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『織田哲郎 / SONGS』

OdaTetsuro_Songs.jpg 平成の初め、「ビーイング系」なんて呼ばれるJポップが流行しました。ヴォーカルがスパーンと抜けた声で歌って、曲はデジタルなビートポップ調、そしてZARD、WANDS、DEEN みたいな横文字ユニット名…だいたいこんな特徴。アーティスト物っぽく作ってはありましたが、曲もアレンジもプロダクション主導で、実際には企画優先のタレント歌謡。これらビーイング系のユニットに楽曲を提供した中心人物が織田哲郎さんでした。年齢的な問題もあって、僕はビーイング系の疑似ミュージシャンさんたちが流行した頃には、もうあまりJポップを聴かなくなっていたんですが、本丸の織田哲郎さんは前から好きだったもので、織田さんが他の人に提供した楽曲のセルフカバー集であるこのCDに興味を持ちました。

 「世界中の誰よりきっと」「このまま君だけを奪い去りたい」「愛を語るより口づけをかわそう」…Jポップを聴かなくなっていた僕ですら、どこかで耳にした曲だらけ。当時はまだJASRACがえげつない徴収をしてなかったので、街中に音楽があふれていましたしね。良し悪しはともかく、JASRAC のそうした姿勢で、日本の街から音楽が消えましたよね、間違いなく。

 このアルバム、メロディがすごくキャッチーで、歌もうまかったです!でも音がスーパーで流れてるBGMみたい(^^;)。ホモフォニー過ぎる事と、音がペラッペラの宅録みたいな事、この2点が問題じゃないかと。
 ホモフォニーで一番単純に曲を作ると、メロディのうしろで和音がバーンと鳴ってるだけの恰好。大袈裟に言うと、このCDの音楽はそれでした。普通はこれだとあまりに単純で退屈しちゃうので、ここから対メロをつけたりシンコペーションを考えたりアレンジしていくと思うんですが…つまりアレンジする前の音楽だったのです。

 もうひとつの弱点は、音がペラペラな事。ペラペラになった理由のひとつはアレンジ自体でしょうが、そこに拍車をかけたのが演奏。ただ演ってるだけで、弦も4リズムも表現なんてゼロなのです。でも、クレジット見るとデヴィッド・T・ウォーカーとかすごい名前が並んで…これだけのプレイヤーを使いながらどうしてこうなったんだろう。舐められて初見でパパッと終わらされた?これって、もしかしたら日米の文化差が出てしまったのかも。
 日本のスタジオ・ミュージシャンはメロコード譜貰って、その場でヘッドアレンジして作っていくんですが、アメリカは人の仕事に口出ししないのがルール…組合がありますからね。例えばプレイヤーがスコアを渡されたら、プレイヤーがどう思おうが、スコアを書いた人の仕事を尊重して、渡された通りに演奏して文句は言わない、みたいな。そうそう、ミックスのクレジットに織田哲郎って書いてあるんですが…ああ、これがアレンジと並んで宅録みたいなチープな音になった最大の理由ですね、きっと(^^;)。

 このCDから学んだことは、餅は餅屋に任せるべき、という事。織田哲郎さん、メロディ作りとヴォーカルは、さすがは一世を風靡しただけのことはある素晴らしさですが、アレンジ能力は残念ながらアマチュア。ましてミックスに至っては…みたいな。全部自分で出来なくて当然だと思うのです。アレンジなんて主だった教本を学ぶだけで何年も修行する世界、ピアノやギターでパパッとメロコードを作ってる人が良い物を作れるほど甘い世界じゃないでしょう。録音だって専門の人がマイクの角度とか音像とかをずっと研究してる世界なんだろうし、録音された音にリバーブかけて良い物が出来るほど甘い世界じゃないと思うんですよね。
 織田哲郎さんが松任谷由実さんみたいに敏腕アレンジャーと組んでさえいれば、90年代に起きたJポップの質的凋落を止める事が出来たのかも知れないな…な~んてことを想わされたアルバムでした。自分ひとりであれこれできるようになったデジタル時代って、それが逆に質の低下を招いた面もあった気がしています。


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『織田哲郎 / VOICES』

OdaTetsuro_Voices.jpg 近藤真彦さんに提供した「Baby Rose」、近藤房之介さんとのデュオが強力な「Bomber Girl」と来たもんで、僕は織田哲郎さんが好きなんだな、な~んて思っていた時期がありました。中古盤で安く見かけたらもっと聴いてみたいな、みたいな。そう思ってゲットしたのが、織田哲郎さんのこのデビューアルバムでした。1983年発表。

 1曲目「SHINE THE LIGHT」が、このアルバムのを象徴しているよう。ギターが「ガッガッガッガ…」と入って、ドラムが「ズン、ダッ、ズン、ダッ」、ピアノはコードを「ジャン、ジャン、ジャン、ジャン」、歌詞は「お前の瞳の輝きだけが俺の心を照らしてくれるよ」…ロックやジャズや現代音楽を聴き、文学や哲学書を読みふけるという苦悩するアホだった僕にとって、やっちゃいけない事を片っ端からやってくれたというほどダサく感じました(^^;)。。でも、80~90年代の日本の青年像って、こういう方が普通だったんでしょうね。真剣にとことん悩んで考えつくすなんていうのは60~70年代的な価値観であって、80年代にもなったら先進国の市民は軽く悩まず…みたいな。まあ、そんなうわっついた風潮が長続きするわけもなく、あっという間に崩壊しましたけど。

 イメージでいえば、ロック的といってもそれはサウンドだけの話で、甲斐バンドとか浜田省吾みたいに、音はロックだけど内容はポップス、みたいな。健全で悩みも失恋もみんなカッコいい情景として描いちゃう青春ポップロックと感じました。


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『織田哲郎 / ENDLESS DREAM』

OdaTetsuro_EndressDream.jpg 昔、ちびまる子ちゃんのエンディング曲は「踊るポンポコリン」というシュールな曲で、途中で入るハスキーで野太い「イエ~」みたいな声が異常にカッコよかったです。あれを歌っていたのは近藤房之介さんというブルースマン…とはいえ、けっこう洒落たアーバン・ブルースよりなんですけどね。そういえば近藤さん、紅白歌合戦に出場した時に寝てたな。僕たちの仲間うちでは「近藤房之介と憂歌団はマジもん。ロバート・クレイあたりより、よほどブルース魂あるんじゃね?」な~んて評価でした。そんな近藤さんと織田哲郎さんが共演した曲が「Bomber Girl」。これが僕が織田哲郎さんに接触した2度目でした。

 「情熱の腰つきに」なんていう歌詞からすると、ボンバーガールって女のナイスバディを表現してるのかな?だとしたらアホだな(゚∀゚*)。。そしてやっぱり房之介さんのヴォーカルがカッコいい!!もちろん、織田さんのヴォーカルもいい!あれ?僕は織田さんの曲以上にヴォーカルが好きなのかも。

 僕は織田さんのアルバムを何枚か聴いた事があるんですが、アレンジはこのアルバムが一番好きです。このアルバム、プログラミングの上に生楽器を被せるスタイルで作ってあるんですが、生と電子音のバランスが良くて心地よかったです。力んで歌うから、オケは少し機械的なぐらいの方が疲れなくて済むのかも。「Bomber Girl」「Wonderful Night」「Back to The Night」あたりの曲は最高でした。90年代って日本のポップスが崩壊する直前で、最後の輝きを見せていた時代でしたねえ。


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『織田哲郎 / ナイト・ウェイヴ』

OdaTetsuro_NightWave.jpg ジャニーズの所属タレントだった近藤真彦さんのシングル曲に「Baby Rose」という曲がありまして、詞が泣けます。作家は作詞作曲ともに織田哲郎さん。いい曲なのにマッチが極端にオ〇チなもので、織田哲郎さんが自分で歌ったバージョンはないかと探して辿りついたのが、1985年発表の織田哲郎さんのサード・アルバム『ナイト・ウェイヴ』でした。レーベルはソニー…最初はBMGじゃなかったんですね。なるほど、ソニー所属だったから近藤さんへの楽曲提供になったのかも。昔のソニーはこういうところがけっこう律義で、自社のタレントや歌手に自社のソングライターを積極的に使うんですよね。ソニーが作ったアニメも、ソニーのミュージシャンばかり使ってたし、社員を愛するいい会社だなあ。

 さて、例の「Baby Rose」ですが…うおおお~歌がロック的な意味でめっちゃうまい!ふりしぼるような声で、平歌だろうがサビだろうが常にフェイクやニュアンスが入ってる歌い方ってあるじゃないですか。ジャズやクラシックではNGかもしれませんが、フォークやロックだとこういうのってソウルを感じてグッときます!
 そしてやっぱり、詞がいいです。「どうしてそんなに冷たく出来るの~足早に去っていこうとしたお前を車に押し込めて」…こんなの、大好きな人に振られた経験がある人だったら冷静に聴いてられないって。。織田さんオリジナルの「Baby Rose」を聴けるだけでもこのCDは聴く価値あり!素晴らしいです!

 さて、他の曲。まずですね…すべてが絞り出すような歌い方なもんで、素晴らしいと思う反面、すごく疲れました(^^;)。そういえば昔、吉川晃司さんで似たような経験をした事があったなあ。1~2曲は「おおっ!」ってなるのに、それが3曲4曲と続くと疲れ果ててしまいます。
 曲は、さすがはビーイング全盛期を支えた作家さんだけあって、キャッチーで良さげな曲が揃ってました。それなのにイマイチ心に響かない、なんでだろう…もしかするとプログレッションが寂しいのかも。あくまで推測ですが、この人ってピアノじゃなくてギターで作曲してるんじゃないでしょうか。和音とその進行がブロックコード的。これってギターでコード押さえてメロディ当てて…みたいにして曲を書いたんじゃないかと思えるんですよね。結果、和音進行の推進力が弱いし、響きも工夫のないドミソすぎるのかも。歌にしても曲にしても、ロック的であることの良い面と悪い面が同時に出てしまったような。

 織田さんは、元々はアーティストとしてやってたんだけどヒットしきれず、そのうちにタレントや歌手への楽曲提供がメインになっていたポップスの作曲家…なのかな?尾崎亜美さんなど、こういう道を歩んだポップスのアーティストってけっこういますが、山下達郎さんやユーミンも、もし自分が売れてなかったらこのコースだったんでしょう、実力だけでなく運もある世界ですよね…。織田さんのアルバムは何枚か聴いた事があるんですが、このアルバムがいちばん好きです。


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You Tube チャンネル 【キング・クリムゾン 凄すぎたファースト・ラインアップについてダラダラと話す動画 part 1】 アップしました

King Crimson_1969-1_Thumbnail すみません、ジェフ・ベック動画の時に「次はアレアキング・クリムゾンを」なんて言ったのに、間にバッドフィンガーを挟んでしまいました。理由は、クリムゾンの曲を演奏できるようになるまでが大変でして…ロバート・フリップって凄いんだと改めて思わされました。これをライブでやってたなんて凄すぎるぞ、みたいな。

 キング・クリムゾンは衝撃。このバンドやフランク・ザッパとの出会いがなかったら、私はここまでロックに嵌らなかっただろうし、別の言い方をすればこれで強制的にロックを卒業させられたのかも。どちらにしても、明らかにロックの特異点でした。

 ところで、なにがそこまで特別なんでしょうね。うまいのか、曲が良いのか…そういう説明は間違ってはいないとは思いますが、キング・クリムゾンの凄さを言い当てられていない気がしてしまいます。じゃあ何が素晴らしかったのか…その説明に挑戦してみようと思います。

 というわけで、今回はキング・クリムゾン結成ラインアップでの音楽について、自分が衝撃を受けた部分を中心に、思うがままにダラダラとお話させていただければと思います。最初に感動させられてからずいぶんと時間が経ったので、当時の自分がどう感じたのかを思い出すのは至難の技かと思ったのですが、いざ音楽を聴いてみると、まるで昨日の事のように思い出すことが出るわ出るわで、実に楽しい時間でした。最後までお楽しみいただければ幸いです。
 そして、もし楽しんでいただけましたら、チャンネルを登録していただけると有り難いです♪楽しんでくれている人がいないと、いつか頑張れなくなってしまうと思いますので。。

(YouTube チャンネル) https://www.youtube.com/@BachBach246
(キング・クリムゾン ファースト・ラインアップ その1) https://youtu.be/iZdtfKZmcN8


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『Bukka White / Parchman Farm』

Bukka White Parchman Farm デルタ・ブルースで印象に残っている人をもうひとり。これもミシシッピ・デルタのブルースマンで人気のひとり、ブッカ・ホワイトです!ブッカ・ホワイトは1904年生まれ、セミプロで演奏活動をしていた鉄道員の父親の影響で音楽を始め、チャーリー・パットンに憧れたブルースマンです。
 このアルバムは、1937年と40年にシカゴで行われた3つのセッションを集めた、ブッカ・ホワイトのコンピレーション盤です。実はこの37年と40年のセッションの間に、ブッカ・ホワイトは銃で男を撃ち、殺人罪で終身刑を宣告されています。このアルバムのタイトルとなっている「パーチマン・ファーム」とは、ブッカ・ホワイトが収監されたミシシッピ州刑務所の事です。
 このレコード、日本では75年にCBSソニーが日本盤LPを出し、以降CDでも何度かリイシューしてきたので、ブッカ・ホワイトといえばこのアルバムを聴いた人も多いのではないでしょうか。私もその口でしたね(^^)。

■戦前ブルースの侮れない存在…洗濯板!
 このアルバムはブッカ・ホワイトのひとり弾き語り…かと思いきや、よくこんなにカッティングしながらボトルネックを使えるものだなと思ったら、ウォッシュボード・サムが洗濯板を演奏しているものがありました。「え、これってどこにウォッシュボードが入ってるの?」と思うものもありましたが、スピーディーにガシガシと進んでいく「Special Streamline」という曲では、洗濯板の演奏が隠し味として絶妙。洗濯板…って思う方もいらっしゃるかもしれませんが、戦前ブルースで洗濯板を使うのは常套手段で、しかも七味や胡椒のように目立ちはしないけど入っているといないでは雲泥の差、みたいな。隠し味ではあるけど、ウォッシュボードが入っていると音楽がグルーヴするんですね。。
 そうそう、このアルバムで洗濯板を演奏したウォッシュボード・サムは、洗濯板の演奏では大有名人です。ちなみにブッカ・ホワイトがウォッシュボード・サムと知り合ったのは1935年の事。ピーティー・ウィートストローと一緒に、はじめてシカゴを訪れたときで、他にはビッグ・ビル・ブルーンジーともこの時に知り合ったそうです。ブルースってミシシッピ・デルタからシカゴへと主戦場を移していきましたが、そのルートは30年代にはすでに出来上がっていたんですね。

■野太い!男くさい!豪放磊落なヴォーカルこそブッカ・ホワイト
 そして、ブッカ・ホワイトの歌を聴いて最初に印象に残ったのが、低音が響きまくる野太いヴォーカルでした!同じデルタ・ブルースでも、ロバート・ジョンソンサン・ハウスはギターの方に耳がつられた私でしたが、ブッカ・ホワイトはなによりまずヴォーカルでした。ブルースのこういう低音を響かせて声を張るヴォーカルって、B.B.キングもそうだし、マディ・ウォーターズオーティス・ラッシュもそうだし、ゴスペルやスピリチャルからの流れもあるのかも知れません。あ、そうそう、ブッカ・ホワイトは1930年にゴスペルの曲も録音していたので、これは間違いないところかも。
 このアルバムで言うと、「Aberdeen, Mississippi」でのヴォーカルは絶品でした。ちなみに「Aberdeen」は、19世紀末に鉄道の分岐点となったサウスダコタ州にある都市のことではなく、ミシシッピ州モンローにある町の事です。2020年での人口が5000人弱という町ですが、モンローの郡庁所在地。ブッカ・ホワイトは二番目の奥さんと、この場所で農場を営んでいたそうです。

■ギターはデルタにしてはシンプル…かと思いきや
 そして伴奏となるギターですが、このアルバムに収録されている曲の多くは、ジャカジャカといったコード・ストローク。デルタ・ブルースというから、それこそロバート・ジョンソンやサン・ハウスのようなひとり多重層的な演奏をイメージしてしまいましたが、コード・ストロークだけで歌うタイプのフォーク・ミュージックに近い音楽でした。「high Fever Blues」なんて、その良い例。野太い歌にシンプルな伴奏なので、「豪放磊落」が、ブッカ・ホワイトの一番強いイメージになるかも。

 ところが、さすがはチャーリー・パットンに憧れたミシシッピ・デルタのブルースマン。それだけで終わるはずがありませんでした。数は少なかったですが、ストロークとボトルネックを見事に同時演奏した曲も入っていたのでした。それが「Fixin' To Die」、「Bukka's Jitterbug Swing」、そして「Special Streamline」の3曲。演奏が潰れて録音されてしまっているチャーリー・パットンやロバジョンよりも録音が良い事もあるのでしょうが、ボトルネックのこのカッコよさはブルース以外では聴けない特別なもの。貨物列車が荷物を運んでやってきたアメリカ南部の小さな駅舎の横で、階段に腰掛けながらこういう音楽を聴かされたらたまらないでしょうね。もう、そういう光景が浮かんできそうな音楽でした。この3曲を聴けるだけでも、お釣りがくると思ってしまいました。
 ちなみに、「Fixin' To Die」は、フォークの超大物ボブ・ディランデビュー・アルバムでカバーしました。50年代に入るとロックンロールなどの流行でかき消されてしまったブッカ・ホワイトが、ボブ・ディランが「Fixin' To Die」をカバーした事で、60年代にリバイバルする事になりました。
 しかし、これだけ素晴らしい演奏が出来るのに、なぜなかなかやってくれないんでしょう。その私なりの推論はまたあとで。

Bukka White_pic1■リゾネーター・ギターの独特の響きがここに!
 ブッカ・ホワイトといえばリゾネーター・ギター。ギターのサウンド・ホールのところに鉄板を張って音量を稼げるようにしてあるアレです。ちなみに、ブルースでは鉄板をつけますが、ブルーグラスでは木の板をつけるらしいですね。ちなみに、よく言うドブロ・ギターというのは、ギター・メーカーの名前。ドブロ・ギター社の作ったリゾネーター・ギター、みたいな感じです。リゾネーター・ギターはドブロ社の専売特許ではなく、他にはナショナル・ギター社なども作っています。ブッカ・ホワイトのギターって、ヘッド部分に「ナショナル」という刻印が見えるので、もしかするとナショナル社のリゾネーター・ギターを使っていたのかも知れません。
 
 そのレゾネーター・ギターの破壊力。レゾネーター・ギターって、元々は弱音楽器であるギターの音量を稼ぐ目的で製造されたそうですが、実際にはあまり音量があがらなかったそうですね。そのかわりに、鉄板に跳ね返った音がギランギラン。よく言えばえらい派手で、悪く言えば下品な音がします。このアルバムには、正直のところレゾネーター・ギターなのかどうかよく分からないものも多く入っていましたが、1曲だけものすごくギラギラした音の演奏が入っていました。それが、アルバムのトップを飾る「Pinebluff, Arkansas」。この曲はレゾネーター・ギターだけでなくボトルネックも使っているんですが、ボトルネックで演奏した部分のサウンドが特にギラッギラでカッコよかったです!!

■典型的なブルース曲かと思いきや…
 曲について。1930年あたりに録音されたチャーリー・パットンやサン・ハウスのデルタ・ブルースと比べると、スリーコードでワンコーラス12小節というブルースの定型がかなりはっきりしてきていました。せいぜい10年ぐらいしか離れていないんですが、ラジオや録音が発明されて以降の音楽の進化って速いですよね。
 ところが、聴いていると定型のはずが「おっ?」と思わされることがしばしば。ブルースの12小節って、歌で言うと4小節で一節というものが多いですが、こうすると節と節のあいだにスペースがあって、バンド・ブルースになると、この隙間でギターやハーモニカがフレーズをバンバン叩き込んできて、歌といい掛け合いになります。でもこのレコードでのブッカ・ホワイトは独奏なので、コード・ストロークだけでは間が開いてしまいます。ではどうするか…なんと拍数自体縮めてしまうのでした。
 一番多いのは、2つ目の節の最後となる8小節目を、4拍から2拍に変えてしまう事。曲で言うと「Where Can I Change My Clothes」や「Sleepy Man Blues」でこれをやっていましたが、今まで4拍で来ていたものが2拍になるので、えらくトリッキーになり、シンプルな構成で出来ているブルースにとって、いいアクセントになっていました。
 どうしてブッカ・ホワイトはこういう事をやったんでしょう。推論のひとつは、せっかちだから。先ほど述べた、「テクニカルなストローク伴奏とボトルネックのコンビネーションを演奏できるのにしない」ことや、豪快なヴォーカルに繋がる感性の気がするんですよね。レベルの高い演奏をできるのにしないのが「面倒だから」、繊細ではなく豪放なヴォーカルとなった理由は「細かい事を気にしないから」だとしたら、ブッカ・ホワイトというブルースマンの音楽が、何となくわかる気がしませんか?

■この録音とブッカ・ホワイトの人生の関係
 このレコードに収められた曲以前のブッカ・ホワイトの録音は、1930年5月、ビクターが行ったメンフィスでの録音があります。
その次がこのレコードに収められた14曲で、その内訳は、37年2月9日録音が2曲、40年7月3日録音が6曲、40年8月3日録音が6曲、いずれもシカゴでの録音です。37年に録音されたのは、先ほど「いかにもレゾネーター・ギター」と言った「パイングラフ・アーカンソー」と「シェイク・エム・オン・ダウン」。という事は、少なくとも37年の録音ではレゾネーター・ギターが使われていたのかも知れません。
 シカゴでの録音が終わり、ミシシッピにある故郷アバディーンに戻ったホワイトは、10月に銃撃事件を起こし、11月に殺人罪で終身刑を言い渡されました。結局、37年録音がEPとしてリリースされたのは、ホワイトが刑務所に入っている最中で、皮肉にも「シェイク・エム・オン・ダウン」は大ヒット。ブルースのスタンダード・ナンバーになりました。
 アメリカでの終身刑というのがどういうものかよく分かりませんが、ホワイトは2年間服役したのちに釈放。そして録音されたのが、このレコードに入っている40年録音の12曲というわけです。なんでも、ありものの曲を録音しようと思ったら、プロデューサーから「他の人がもう録音してるから売れねえ。新曲を書け」といわれ、急いで何曲か書いたんだそうです。
 この新曲の中には、ブッカ・ホワイトが服役した刑務所での実体験を語ったものがあって、そのひとつが「パーチマン・ファーム・ブルース」というわけです。この曲、ワンコーラスが裁判の模様、セカンドコーラスが妻への思い、次が終身刑を喰らった自分からこの歌を聴いている人へのメッセージ、次に日が昇ってから沈むまで労働を強いられる刑務所生活について、という順で進んでいきます。フィクションではなく実体験の追想という所が、実にブルースです…。

■このレコードのバリエーション
 レコード『Parchman Farm』の初出は、CBSが69年にイギリスとドイツでリリースした『Bukka White』というコンピレーションです。内容は1937年から40年までの録音を集めたものでした。それが今回紹介した『Parchman Farm』というタイトルとドアップジャケットになったのは、翌70年にアメリカでコロンビアが出した時からです。さらに、85年には『Aberdeen Mississippi Blues 1937-1940』なんてタイトルのレコードもイギリスで出されました。ジャケとタイトル違いとなったこの3つのレコードですが、収録曲は曲順まで含め、どれも同じ。
 チャーリー・パットンに憧れた人の全盛期がいつだったのかを考えても、パットンの活躍時代に少し遅れた37年から40年の録音であるこのレコードは、ブッカ・ホワイトを聴きはじめるファースト・チョイスにふさわしいと思うんですよね。このコンピを気に入ったなら、その次が、歴史的な意味合いも含め、30年5月に行われたビクターでの録音。その次がボブ・ディランがブッカ・ホワイトの曲を取り上げたことをきっかけに起きた、1962年以降のリバイバル録音のどれか、という順が良いのではないでしょうか。

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 豪放磊落な中にもチラチラと本物の匂いがするブッカ・ホワイトの音楽の背景には、終身刑を宣告されるという、人生を丸ごと左右するような出来事がありました。そりゃ迫力も出ますよね…。というわけで、ブッカ・ホワイトを聴くなら、僕的なお薦め第1位はこれ。全曲がそういう曲というわけではないのですが、レゾネーター・ギターの魅力が伝わる曲と、ボトルネックの妙技を聴くことが出来る曲は必聴。ブルースが好きな方はぜひ!


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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