ルネサンス音楽初期といえばブルゴーニュ楽派の作曲家陣。そして、ルネサンス音楽&ブルゴーニュ楽派の口火を切ったのがイギリスのダンスタブルなら、代表選手はこのデュファイ!デュファイはキリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュスデイの5楽章構成によるミサ曲のスタイルを最初に作った人と言われていて、9曲ほどのミサ曲を書いたそうです。その中でデュファイが50才のころ書いたといわれている「Se la face ay pale」は、6の和音も普通に鳴ってるし、そういう意味ではロックよりもぜんぜんモダンなサウンドで、現代でも思いっきり通用しそうな音楽です(^^)。
このミサ曲は「循環ミサ曲」なんて言われていて、定旋律を5つの章のすべてに使って、楽曲全体に統一感を出そうという形式をしたミサ曲です。定旋律というのは、新たに作曲した旋律を使うのではなく、すでにある既存の音楽の旋律を使う事。このミサ曲で使われている定旋律は、デュファイ自身が書いたシャンソン(ルネサンス当時の世俗音楽のひとつ)「Se la face ay pale」からのもの。このCDは、もとになったシャンソンも入ってます。う~んなんと親切なんだ(^^)。そして、このシャンソンの方はすっごく楽しそうな家庭的な音楽に聴こえるのに、おなじメロディを使ったミサ曲はというと…うわあ、いきなり透き通るように美しい!う~んこれはハーモニーに4度5度8度だけでなく3度とかも入りこんでるからだな…。そんなわけで、ステンドグラスから木洩れ日がこぼれるようであったかい(^^)。これは死者を送り出す曲には聴こえない、まるで愛に満ちあふれたこの世の幸福を描いてるようです…って、なに言ってんだ俺(^^;)。要するに、中世のポリフォニーと決定的に違うのは和声。それまでは不協和音と言われていた3度も6度も、デュファイからは「不完全協和音程」に格上げ、おかげでいきなり線の音楽のポリフォニーに色彩感がブワッと出た、みたいな(^^)。う~んなるほど、中世のアルス・ノーヴァとルネサンス音楽の境界にあるのは、ひとつはこの和声の発展なのかも。