モロッコのCDでは、グナワのCDも聴いた事があります。このCDを聴いモロッコという国の文化の折り重なりを見た気がしました。
預言者であり神がかりであり占い師である集団グナワの儀礼音楽です。
グナワはモロッコやアルジェリアに住んでいる旅回りの音楽/儀礼集団。肌の色から察するに、アフリカ黒人、ベルベル人、それに白人(多分スペイン系)も混じっている感じ。
グナワ共同体はもともとサァディー朝(モロッコのかつての王朝)に連れてこられた奴隷たちの居住地が発祥らしいです。宗教はこの地に元々あった多神教に色んな宗教が融合して成立した独特なもので、かなり呪術色が強いみたい。主な役割は旅回り先で祝福をしたり、治療をしたり占いをしたりして報酬を受け取っていて、例えば治療というのが音楽を奏でて香をたいて踊って…みたいな治療なので、呪術的というわけです。その呪術色の強さはこのCDを聴くだけでも一目瞭然、まさに呪術音楽なのでした(^^)。
グナワの集団によって違うのかも知れませんが、このCDに入っていた集団の音楽(といっても儀礼の一部に音楽が使われていて、この音楽に合わせて踊ったり呪術的な治療や儀式をやってる)は、小さな合わせシンバルが数人、コントラバスみたいな音の楽器、あとは集団での合唱(というか、呪文の朗誦のよう)、というのが基本編成。音楽的にはコントラバスみたいな音の楽器がなかなか重要な役割をしてまして、例えればアフリカのチャールズ・ミンガス的(^^)。そうそう、序盤になかなかうまいギター(みたいな音の楽器)の演奏もありました。録音が悪くて、合わせシンバルの音がすごい近くにいるんですが、合唱が10メートル先みたいに聴こえたり(^^;)。でもこれ、儀礼の録音なので、ベストポジションにマイクを置くとか出来なかったんでしょうね、「特別に見せてやるが、端っこにいろよ」みたいな(^^)。
そして、
同じ音楽をくりかえす音楽は、もの凄いトランス系でした。
なんちゃってではないマジの呪術音楽ですからね、そりゃすごいわけです(^^)。前に
チベット仏教の強烈なマントラを唱える音楽のCDの感想を書いた事がありましたが、もうあれぐらいにヤバい感じ。
モロッコのCDをけっこうたくさん聴いてきましたが(といっても5枚ぐらい?)、大きく感じるのは、第1にアル・アンダルース音楽、第2にマカームといった古典音楽、さらにもう少し俗な、街でやっているようなへび使いとかが奏でていそうな音楽。いずれもアラビア文化を感じるものだったんですが、でもこのCDはそこにリアル・ブラックなアフリカ音楽が入り込んで、他の音楽には形容できないような独特なものが生まれている感じでした。モロッコよりちょっと南下するとアフリカの吟遊詩人グリオたちの活動圏ですし、さらに南下して奴隷海岸まで抜けたらタムタムの神技やら黒い人たちのコール&レスポンスな集団合唱が聴けたりしますもんね(^^)。呪術の時代ってとんでもない昔かと思いきや、ヨーロッパだってアドニス神話やいけにえの儀礼がつい最近まで残っていたりしたし、アフリカや中南米やオセアニアではまだリアルタイムで生きていたりするし、自分の文化だけを基準にものを考えちゃいけないですね(^^)。
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