
タイトルからはいまいちピンとこなかったんですが、今でいう
イラクにある音楽です。
イラクの首都バグダッドは、アッバース朝ペルシャ帝国の時代に豪華絢爛なアラビア文化が大爆発、千一夜物語に書かれたアラビアンナイトもバグダッドを中心とした話なぐらいなので、こういうタイトルなんですね(^^)。日本のキングレコード制作ですがすべて現地録音!そしてこれが素晴らしかった!!
このCD、最初の2曲が芸術音楽、1曲が流行歌、残りが民俗音楽です。というわけで、3曲目以降がこのCDじゃないとなかなか聴けない音楽という感じ。ですが、最初のタクシームとパスタという芸術音楽が素晴らしい!!タクシームはカーヌーン(箏のような楽器)の独奏だったんですが、これがバカテク。パスタは、ここ数日取りあげてきたイラクのCDでは全部男性ヴォーカルだったんですが、これは女性ヴォーカル。どこか切なげで、エキゾチックでした。伴奏のウードの演奏がまた素晴らしい…。どちらもエコーがすごいんですが、イラクは灼熱の地で、電線に止まってるすずめが熱すぎて片足ずつ上げるなんて事もあるらしいので、きっと石造りの狭い室内での録音なんでしょうね。そのムードが伝わってきてメッチャよかった!!
3曲目は
イラキ・マカームという都会の流行歌(でも、ほかのCDだと伝承歌謡と説明されてました。昔の流行歌という事かな?)。流行歌とはいえ完成度の高さが半端じゃなくって、解説の小泉文夫さんは「芸術音楽と流行歌の中間」なんて書いてます。このCDだと、最初に
サントゥール(ツィター属の楽器)から始めるんですが、このキラキラした分散和音が美しくもエキゾチック!!この音だけで僕はやられちゃいました。イラキ・マカームを聴いたのは、僕はこのCDのこの曲と、次に紹介するキング盤『世界民族音楽大集成31 イラクの音楽』の中の1曲だけなんですが、流行歌のレベルがこれだけ高いって、やっぱり人類最初の文明の発祥地で、アラビアの中心地でもあったバグダッドの文化レベルは半端なかった。。そうそう、
イラキ・マカームはプロの演奏者による演奏で、カフェなどで演奏して人気の音楽なんだそうです。
そして、残りの8曲入っていた民俗音楽。最初に入ってた2曲は、ベドウィン(イラクに限らずアラビアのどこにでもいる遊牧民)による
ラバーブ(1弦の胡弓)伴奏の歌。歌唱にちょっとホーミーが入っていて、なるほどモンゴルの遊牧民と文化がつながってるのかも、と思わされました。あとは、
ズルナ(ダブルリードの民族楽器で、インドだとシャナイ、日本だとチャルメラが近い?)や
マトブッチ(双管のクラリネットみたいな楽器)の独奏などなど。演奏しているのが漁民や農民だったりするんですが、これしか演奏してないからなのか、みんなうまい。。マトブッチの演奏なんて、循環呼吸のノンブレス奏法に聴こえるんですが、この曲だけ演奏させたらプロだってかなわないんじゃなかろうか。民俗音楽の恐ろしさって、極端に熟練してるところですよね。。
さらに、最後にスーフィー(密教系のイスラム教のひとつ)のジクルが入ってました。スーフィーの旋回舞踊って、トルコのメヴレヴィー教団のものしか知らず、そんなわけでスーフィーもてっきりトルコだけにあるのかと思ってましたが、イラクにもあるんですね。
純邦楽というと三味線と尺八と箏だけを想像してしまいがちなように、イラクの音楽というとマカームとパスタだけを想像してしまう僕でしたが、実際には色んな音楽があるんですね。イラクの音楽と言って最初にこのCDを聴くと、あまりに多様で逆に分からなくなっちゃうかもしれませんが、でもマカームやパスタ、あるいはカーヌーンやウードやナイの演奏に慣れた人には、次に聴くのはこういうCDがいいのかも。だいたい、ワールドミュージックを聴くという時点で、色んなものに触れたい、みたいな欲求は聴く人みんなが持っているでしょうからね(^^)。
芸術音楽以外のアラビアの音楽を知ることが出来た、実にいいCDでした!
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