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TVアニメ『ルパン三世 TV第1シリーズ』

Lupin3rd_1stTvSriesDVDBox.jpg モンキー・パンチの描いたルパン三世の世界観にいちばん近いアニメーションは、テレビ第1シリーズ前半と、映画『ルパンVS複製人間』のふたつと思います。でも、僕が面白いと思っているものは少しずれていて、テレビ第1シリーズのすべてと宮崎駿さんが関わったもの(映画『カリオストロの城』と、第2シリーズのいくつかの話)です。原作コミックが大好きなくせに、アニメは原作に忠実かどうかは重要視してない自分がいるんですから、面白いものです。つまりアニメのルパンって、原作から離れてひとり歩きして、独自の魅力を持つようになったもの、という事なのかも知れません。中でも1971~72年に制作されたテレビの第1シリーズはDVDボックスを持っているぐらいの個人的大フェイバリット。本当なら、全話をすべて個別にレビューしたいぐらいに好きな作品なのです。

 第1シリーズはアニメとは思えないほどに深く面白い話の多い作品ですが、初回放送時は低視聴率にあえいだというのだから人間は分かりません。人間って習慣の生き物だと言いますが、それだけにたいがいの人は自分で善悪を判断してると思っていながら、実は習慣として受け入れているもの以外はみんな拒絶する傾向にあるのかも。そうなると、パイオニア的なものや個性的なもの、あらたなものというのは割を食いやすくて、アニメといえば子供が観るものという時代にとって、ルパン第1シリーズはアダルトすぎたのかも知れません。そのためか、番組の前半と後半で作風がかなり変わります。

Rupin3rd_TV1st.jpg 番組前半は、アダルトでハードボイルド。子どものころは、この前半が衝撃でした。第2話「魔術師と呼ばれた男」では、女が絡んでの魔術師と怪盗の対決、最後に魔術師は火に焼かれながら滝の中に落ちていきます。女は男に殺しをさせ、男はそれをさせる女を愛している…『暗くなるまでこの恋を』というフランス映画がありますが、それぐらいアダルトな作品です。
 第9話「殺し屋はブルースを歌う」では、かつては恋人同士で犯罪のパートナーでもあった殺し屋を、女が撃つ羽目にあうというもの。そうなった経緯が実にハードボイルドで、ジャン・ギャバン主演のフレンチ・ノワールを観ているようでした。第6話「雨の午後はヤバいぜ」は、セリフ回し自体がハードボイルド。次元がずぶぬれで帰ってきたルパンに言うセリフ「どうした、ふられたのか?」は、「雨に降られたのか」と「女に振られたのか」のダブルミーニングでしょう。その後の「行ってやりなよ」「いいのか?」「行くなと言わせたいのか?」…このハードボイルドなセリフのやり取り、とてもアニメとは思えません。こうしたハードボイルドなせりふ回しは、6話「雨の午後はヤバいぜ」にも登場します。うしろから不二子に銃口を向けられたルパンが言うセリフは、「よしなよ冗談は。ブローニングは背中に感じやすいんだ」
 というわけで、殺しあり、女あり、裏切りありのクールな前半は、フレンチノワールそのものと言っていいほどのハードボイルド作品でした。そうそう、日本のセックスシンボルのひとつと言ってもいいだろう名キャラクター・峰不二子ですが、キャラクター性も作画も声もすべてひっくるめて、このファーストTVシリーズの不二子が絶品です。70年代初頭にして、白のニーハイブーツ履いてバイクに乗りまわして、男をセックスアピールで手玉に取る悪女で…時代の最先端を行っていた女性像だったんじゃないでしょうか。だって、この頃ってまだ見合い結婚が普通だった時代ですよ、信じられません。

MineFujiko_1stSeries.jpg うって変わって後半は、笑いあり大どんでん返しありの痛快な娯楽作品。番組後半は宮崎駿さんが手がけたそうですが、これはこれで最高の楽しさでした。前半のルパンは、高級車を乗りまわして、厭世観から逃れるために泥棒をやっているようなクールさがですが、後半のルパンはミニクーペに乗って必死に生きている熱さがあります。それでいて下世話ではなく、美学を持っている所がいいです。第14話「エメラルドの秘密」のラストシーンが秀逸で、苦労して手に入れたダイアを森にばらまいて落してしまい、ひとつだけ残ったダイヤモンドを「こんなのを盗ったとあっちゃぁ、ルパンの名折れさ」と捨てます。これはカッコいい。。そういえば前半でも、隠した現金がダイナマイトで吹っ飛び、それを観て時限と一緒にタバコを吸って大笑いするシーンがありましたが、こういう美学を感じるところがファーストTVシリーズの質の高さじゃないかと。これは製作者側の教養や品格の高さであって、これって教養や品格のある人でないと描けない部分だと思います。

 医師免許を持っていた手塚治虫さんもそうですが、昔のコミックやアニメーションのクリエイターさんって、教養ある文化人だったのだろうと思います。モンキー・パンチさんはもちろんの事、このTVシリーズに関わった宮崎駿さんや大隅正秋さんなど、当時は人口比でごく一部でしかなかった大学に行くレベルの知的エリートだったでしょうから、専門馬鹿ではなく、教養に溢れていたのでしょうね。どう考えたって、80年代以降の低能なTVドラマなど比較にならないほどのドラマ性と品格を持った伝説のテレビアニメーションだったと思います。

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Comments
マイナーな存在であって欲しい 
相変わらずのスピード記事アップで、コメントが間に合いませんでした。
自分でもいつから「ルパン3世」を見始めたのか、覚えてないのですが、
多分、見始めたのは第1シリーズの途中。
ものすごく大人っぽいアニメだと驚いた記憶があります。
第2シリーズになった時、不二子の顔が変わってがっかりしたのを強く覚えています。
でも、そのうち第2シリーズと『カリオストロの城』が記憶の中心に。
TVの再放送の回数が第1と第2では全然違うのが原因だと思います。

大人になって、第1シリーズ前半を見て、ああ、これは再放送されないよなと納得。
香辛料たっぷりの料理みたいで、子供じゃ無理でしょう。
もちろん今は、第1シリーズと『ルパンVS複製人間』のダークでハードボイルドなテイストこそがルパン3世の原点だ思っています。
自分の好きな部分は、むしろいつまでもマイナーな存在であって欲しい。

あれ?なんだかピンクフロイドの感想みたいになってしまいました。
Re: マイナーな存在であって欲しい 
AKISSH さん、書き込みありがとうございます!すみません、1日1記事ペースで行かないと、死ぬまでに自分が持ってるCDやビデオの感想が書ききれませんので、ハイペースになってしまっています(^^;)。

第2シリーズの不二子はがっくりでしたよね、1stではあんなにイケてる女だったのに、おばさんになってるし。僕的には2nd不二子は声も駄目でした。でも、音楽だけでいえばAKISSH さん好みなのは、大野雄二さんのセカンドではないですか?

『カリオストロの城』が記憶に残るのは当然ですよね、面白すぎますもんね(^^)。
ルパン第1シリーズとカリオストロの城は、この後も数年に一回ペースで見続ける気がします。

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Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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