
70年代末~80年代初頭、シンセの音があふれてジャズ界がフュージョンだらけになった頃に、アコースティックなジャズ方面で
アーサー・ブライスや
デヴィッド・マレイと並んで注目されていたサクソフォニストがチコ・フリーマンだったそうです。これは1981年に録音された、代表作の呼び声高い1枚。90年代半ば頃だったでしょうか、東京のディスクユニオンというレコード店に平積みされていて、店員の方が思い入れたっぷりに書いたポップを読んで買ったもの。演奏旅行した時は、先輩のサクソフォニストに連れられて、中古レコードや古本屋を巡るのが楽しみだったんです(^^)。
音楽は通常のドミナントなジャズがベースにあって、部分的にフリーになったり、ジャズになったり、モードになったり、みたいな感じでした。メンバーは、Chico Freeman (bass-cl, t-sax), John Hicks (p), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (dr)。たしかにフリーでもモードでもスタンダードでもなんでもできるメンバー、鉄壁です。そして主役のチコ・フリーマンもめっちゃうまい!
デヴィッド・マレイがハッタリだらけでヘタ○ソだったのに対し(80年代初頭は、ですよ^^;)、
チコ・フリーマンは明らかにプロフェッショナル。一聴して「あ、この人はスタンダードでもモードでもフリーでもなんでも演奏出来てしまう人だな」という感じ。80年代以降だと、ジャズの人がジャズのフォームの中でフリーをやると単にスケールをパラパラやるだけの遊びになったりしてつまらなくなる事が多く感じてたんですが(多分、フレーズや旋法の上でしかフリーを考えてなくて、リズムやデュナーミクや構造は何も配慮してないからそうなっちゃうんじゃないかと。決まったフォーマットの上でアドリブを取る練習しかしてないジャズの欠点ですね^^;)、チコ・フリーマンはよかった!ついでに、ピアノのジョン・ヒックスもメッチャよかった!アンプを通したセシル・マクビーのベースもカッコよかった!ジャック・デジョネットは変にエイトビートをやる時があるので怖いなと思ったんですが、ここでの演奏はフォービートを叩いていて(でもついつい8気味になるのはフュージョン世代な彼の癖なんでしょうね^^;)、なかなか良かった!ついでに、僕の持ってるCDだと、録音がめっちゃくちゃいい!!
ただ、僕には普通のジャズっぽ過ぎたのが弱点でした。チコ・フリーマンって、シカゴのAACM出身で、ニューヨークに進出した人と聞いていたので、やっぱり
アンソニー・ブラクストンやアート・アンサンブル・オブ・シカゴみたいな凄さやヤバさや深さを期待してたんですよね。でもこれは、うまいんだけどファッションでニュージャズやってるというか、そんな印象。このレベルのメンバーが揃ったら、これぐらいは当然できるだろうけど、なぜこの音楽をやるのかという所が弱く感じるんですよね。この頃のジャズって、チャールズ・トリヴァーとかセシル・マクビーあたりだと、うまいし悪くないんだけど凄みやヤバさが足りないというか普通っぽいというか、そこが物足りなく感じていました。フリー気味になっても、
セシル・テイラーや
コルトレーンばりの楽理探究やパフォーマンスに賭ける気迫はないし、かといってアーチー・シェップやマリオン・ブラウンみたいな深さを感じる思想も感じないんですよね。スタイルの選択が音の上だけのファッション感覚というか、なんだか健全で刺激が足りない。。まあ、そんなのは聴く方のぜいたくでもあって、
これがチコ・フリーマンの代表作だったとしてもまったくうなづけるだけの完成度の1枚でした。
- 関連記事
-
スポンサーサイト