
ザイール音楽のオコラのレコードとしては、伝統音楽の録音だった
『Zaire: Musiques de L'Ancien Royaume Kuba』と対になるような1枚で、こっちは都市部の音楽を集めたもの。西洋音楽とフュージョンしたような音でした。
録音が1978年なので、71年にザイールがクーデターでモブツ政権となり西洋から切り離されたあたり。ここでザイール音楽が大きく変わったのかも。そしてこの音楽がめっちゃくちゃにカッコよかった!
リンガラみたいにエレキギターやベースが入ってるわけではないだけに、ラテンアメリカのポピュラー音楽っぽさはなくて(M3のオルケストル・バンバラの演奏は、それでも比較的にリンガラとのつながりを感じるかな?)、
ザイール土着の音楽が電化して、長い歌詞がついてメッセージ色が増した感じに聴こえました。中心はヴォーカル(といっても、まくしたてるように早口なラップのようなメインヴォーカル部分が多かった)で、そのメッセージ中心な感じは、このCDに入ってる曲の演奏時間が15分、28分、10分、23分と、かなり長かった所にもあらわれてるんじゃないかと。そして、ヴォーカルがカッコいい!1曲目「オルケストル・サンカイ」のツイン・ヴォーカルの5度のハーモニーなんてムッチャクチャかっこいい!!これだけ長いと、歌詞は、もともとのアフリカ音楽みたいにある程度は即興じゃないかなあ。
演奏は、ひたすらループしていく感じが声の音楽を見事に支えてるな、みたいな。ザイールの音楽ではバントゥー系民族もピグミーも親指ピアノをたくみに使ってましたが、このCDも
よく聴くとサム・ピアノが中心。これがPAされて独特の音に変質していて、トランス系でカッコいい!この変質された音を「カッコいい!」と思っただけで作ったと思われるのが、M2のオルケストル・トゥー・ピュイッサン・リケンベ・コノノ・ナンバー1の演奏。ひたすら同じビートの上でPAで歪んだ親指ピアノ(かスティール・パンみたいな音の楽器)の演奏が続く感じ。サンバ・ホイッスルは入るし、お祭りムードなので、ブラジルか
トリニダード・トバゴのサンバを電化した音楽のようでもありました(^^)。
このへんの音楽や文化の知識は僕は全然なくって、
江波戸さんが書いた民族音楽のガイドブック
や
『音楽の原理』あたりの受け売りなんですが、74年のモハメッド・アリの世界戦でアメリカのブラック・ミュージックがザイールに伝わったり、
ボブ・マーリーの音楽が聴かれてラテンアメリカの黒人音楽が聴かれるようになったり、色々あったのかも。それにしても、これはラップや初期のカリプソとのつながりを感じる、なかなか攻撃的に感じる音楽でした。今もこういう音楽がザイールに残っているのかどうかは分かりませんが、もし残ってないんだとしたら、これは貴重なCDじゃないかと。超おススメ!
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