
アリと猪木の話題になった以上、猪木vsアリ戦について触れないといけないっすよね(^^)。これはアメリカ人が書いた、
モハメッド・アリ対
アントニオ猪木のノンフィクションです。そうそう、猪木vsアリ戦というのは、プロボクシングの現役世界ヘビー級チャンピオンだったモハメッド・アリが、「誰でもいい、俺に挑戦する奴はいないのか」とファンにリップサービスした所、プロレスラーの猪木に絡まれ、しかもヤラセだと思ってのほほんと来日したらシュートマッチを仕掛けられてしまったという、今の総合格闘技の走りみたいになった戦いの事です。
昔と違い、いろんな人の丁寧な取材で猪木vsアリ戦の実態がだいたい固まっている現在なので、新しい事実とか、面白いエピソードみたいなものは書かれていませんでした。個人的に
この本でいちばん面白かったのは、この試合そのものじゃなくて、アリ対猪木以前にあった、アメリカでのグラップラー対ボクサーの試合の詳細。日本の総合格闘技の源流は猪木と新日本プロレスにあると言っていい状況なので、猪木vsアリや猪木vsペールワン以前というのを、僕は知らないんですよね。でもアメリカではそれ以前の歴史もけっこう深いみたいで、この詳細が面白かったです。ジーン・ラベールだけは名前を知っていましたが、どういう試合を戦ってきたかとか、まったく知りませんでした。他に出てくるエド・ルイスとかマーティー・バーンズなんて名前すら知りませんでした。そして、
アメリカの異種格闘技戦の歴史は「普段からリアル格闘を行なってるボクサーの方がさすがに強いだろう」という予想とに反した結果で…ここはかなりの格闘技ファンでもなかなか知らない現実だと思うので、一読に値すると思います。

もうひとつ面白かったのは、アリvs猪木のあとの総合格闘技についてでした。僕はアルティメットあたりは格闘技をあまり見なくなってしまったので、どんな感じに発展したのかがよく分かって有り難かったです。それにしても、この著者の人は日本の格闘技事情にもめっちゃ詳しくてびっくりでした。
アメリカ人の本なのでアリ寄りかボクシング寄りの本かと思いきや、猪木やグラップラーをかなり高く評価していたのが意外。変な自説や情緒は挟まず公平に評価してるのが、ノンフィクションとして優れていると思います。最後に取材相手も書いていますが、ものすごい人数!ろくに取材もせずに自分の知っている情報だけで書いてしまう似非ルポライターとはぜんぜん違います。ただ、翻訳本だからか、はたまたこの著者の処女作だからか…よく出来たルポ本とは思うんですが、文章が読ませる感じになってなくて、あんまり面白くはなかったっす(^^;)。
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