
世界でもっとも売れた
ジョアン・ジルベルトのレコードなら
『ゲッツ/ジルベルト』なんでしょうが、あれはジャズとのコラボレーション。純然たるボサノヴァでジョアン・ジルベルトのCDをひとつだけ選べと言われれば、このCDという事になるんじゃないかと。
このCDは1958年から61年までのジョアン・ジルベルトのデビュー期の録音を集めたもので、日本盤タイトルは『ジョアン・ジルベルトの伝説』、全38曲入り。CD1枚に38曲入るのもすごいな。。デビュー曲「想いあふれて」以下、デサフィナード、ワン・ノート・サンバ、ビン・ボン、コルコヴァード、メディテーション、黒いオルフェ…
今でもボサノヴァの大スタンダードとして歌われ続けている曲がぎっしり詰まってます。そういう意味でいうと、ジョアン・ジルベルトうんぬんを抜きにしても
、ボサノヴァを聴くなら絶対にはずせない1枚かも。自作曲もありますが、ジョビンなど、他の人の曲もけっこうやってたんですね。
すごいと思うのが、アレンジがすでに完成されてる事でした。ほら、ロックンロールでもジャズでもクラシックでも、最初はかなりやぼったかったりするじゃないですか。それが徐々に洗練されていって、長い年月かかってようやく洗練されたものに辿りついた、みたいな。ところがジョアン・ジルベルトの音楽は、デビュー当時でいきなり完成形なのがすごいです。基本はボサノヴァのあのギターとヴォーカルに、振りもの打楽器のリズム伴奏。その上にピアノやストリングスや管楽器が重なる形ですが、このアレンジがすでに完成形です。古く感じたとしたら、そのほとんどはアレンジではなく録音なんじゃないかというほど。これは本当にすごいです。
また、和声も素晴らしいです。ボサノヴァで驚くのは和声で、いきなりナインスやサーティーンスが満載なところ。
イギリスや合衆国のトラッドやロックやフォークの弾き語り音楽だと、時代が経過してもシンプルな4和音なものが多いじゃないですか。ところがボサノヴァはいきなりテンションだらけで、成立当初からいきなり7音音階の調和性のゴール。これはすごいとしか言いようがないです。ボサノヴァの心地よさの少なからずは、この滲むように響く和音の心地よさだと思うんですよね。
とはいえ、録音が古いのは確かで、後のボサノヴァの素晴らしい録音のものと比べると、古いコロンビアやキューバの音楽の録音みたい。そこがまた古き良き南米音楽っぽくていい所でもあるんですけど、プレスリーや美空ひばりを古いと感じてしまう人は古いと思っちゃうかも…実際に古い録音なんですけどね(^^)。そこを差し引いても、
ジョアン・ジルベルトで1枚だけ買うならこれじゃないかと。久々に聴きましたが、思いのほか音楽が最初から完成形でビックリしました。大洋のまぶしい国の海岸でこんな音楽を聴いていたら、この瞬間こそ天国だと感じるんじゃなかろうか。。出来れば梅雨があけてから海辺で聴きたかったなあ、ひと月後ぐらいにもう一回聴こう。。そうそう、日本盤は全曲訳詞がついていたので、ポルトガル語が分からない方は日本盤がオススメです(^^)。
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