
前の記事で書いた、ピンク・フロイド最強のレコードのもうひとつが、これ。「ウマグマ」と発音するみたいです。2枚組で、1枚目がライブ録音。そしてこのライブのパフォーマンスがもの凄い!特に「ユージン、斧を取れ」という曲が、パフォーマンスと曲の両方がもの凄い!
前の記事でも書きましたが、サイケデリック・ロックというものを、こと音楽的な側面から定義しようとすると、大変に困難な事になると思うのです。サイケデリックの定義自体が、既にサウンド面以外のものを含んでしまっているし、だからそれは当たり前のことだと思うんですが。しかしそれでも、サイケデリックを音で表現して、しかもそれを音のコラージュとか、そういう安易なところで終わらせようとせずに、もっと音楽的なところに置換しようとすれば、このアルバムこそがサイケデリック・ミュージックの最高峰なんじゃないかと個人的には思います。もう、そのぐらいにこのアルバムの1枚目は大好きで、何度聴いたか分かりません。
僕は、ロックというのは、高校の頃に卒業してしまったんですが、いやいやその意味が分かりますね。それは、ロックが子供の音楽であるというわけではなくって、僕が高校を卒業するぐらいの頃にリアルタイムだったロックというものは、既に子供相手の音楽になっていたり、純粋な表現としての音楽ではなく、商品として製造された音楽であったりというものばかりになっていました。それは、音楽を掘り下げていけば卒業せざるを得ないですよね(悲)。ピンク・フロイドだって、メンバーが40歳になったら、その音楽を40歳なりの大人な音楽にまで発展出来たら、充分に大人の鑑賞に耐える音楽家で居続けられたと思うんですよ。しかし、自分が40になっても50になっても若い音楽をいつまでもやっているから、それは子供の音楽になってしまいますよね。これが返す返すも残念。若い頃はアーティストであったのに、大人になるにつれて職業ミュージシャンになってしまうロック・ミュージシャンというのが多すぎて、個人的にはそれがとても残念に思います。
いま聴くと、シド・バレット脱退後、「ATOM HEART MOTHER」前までのピンク・フロイドは、純粋に音楽が好きだった若者が、純粋な音楽的理想だけを追求して作り上げた、正真正銘のアートであったんじゃないかと思います。芸術家が大人になった時に芸術を続けるには、社会枠から見た芸術の位置というものを測ることが出来ないと無理なのかな、と思ってしまいます。そうでないと、単なる変わり者になってしまうというか。で、この「ウマグマ」は、芸術を目指していたピンク・フロイドの最後の到達点であって、創造性という意味ではロック史のみならず音楽史に残る傑作であったのだと思います。
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