
ギターヴォーカルのリック・オケイセックがリーダーを務めていたニューウェイヴロックバンド・カーズのセカンドアルバムです。1979年発表…って、まだ80年代じゃなかったのか、てっきり80年代のアルバムかと思っていました。僕が聴いた事のあるカーズのアルバムはこれだけです。しかも、中学生の時に友達に貸してもらって聴いた1回きり。その友達はTレックスが好きだったので、なるほどそれならこういうのも好きだろうな、と妙に納得したものでした。
パブリック・イメージを聴く前の僕にとってのニューウェイヴは、ピコピコしたデジタル音やエフェクターを使って、アンディ・ウォーホールあたりのポップアートを音楽にしたようなものと思ってました。XTC やロキシー・ミュージックやカーズはその典型で、ギターに変なフランジャーがかかって、中低域がスッカスカで、ヴォーカルにダブルがかってたりドラムにゲートかけてあったり…みたいな。ただ、オケイセックさんの歌い方が
ルー・リードそっくりだったので、そのへんが産業ロック一辺倒じゃなくてメッセージ性もあるのかも、とも思ったんですが、そこまで深入りする前に友達にLPを返し、いつしか忘れてしまったのでした。ニューウェーヴのバンドってたいがいヘタクソなんだけど、ちょっと変な事をしている所に何か主張があるんだろうな、みたいな印象だったんです、中坊だった僕にとっては。でも、それが何なのかを考える前に卒業しちゃいました。詞を聴くとか、もう少し深入りしたら、もうちょっと色々と感じるものがあったのかも。
それにしても、産業音楽に片足を突っ込んでいて、音楽や音が安っぽいのは紛れもない事実だったのです。落書きにしか見えない絵を見せられて「実は深い絵なんだ」と言われても、中学生ではまだ判断がつかない、みたいなもので、「下手なのは確かなんだから、そんなこと言い出したら言ったもん勝ちじゃねえか」みたいに思ったんですよね。同じぐらいの時期のスタジオで作り込んだアルバムでも、イーグルスやスティーリーダンや
スティーヴィー・ワンダー、あるいはHR/HM系の音楽は、プレイも音もすごくいいと思ったんです。でも、カーズやXTCは…。
でも今となっては、こういう音こそMTVやらマイアミ・バイスやらで聴ける80年代周辺のアメリアン・チャート・ミュージックの質感で、時代の音だったんだなと感じます。昔、尊敬していた先輩が「流行は追うな、流行は少しすると古くさいものに感じるから。普遍的なものを信じたほうがいい」と言っていた事があるんです。その言葉に少なからず影響を受けた僕は、そういう考えを持っていたんですが、今思うと、流行を追って古くさくなったものは、良くも悪くもある時代を象徴している面もあるんじゃないかと。良し悪しやダサいダサくないじゃなくて、その時代だけにあったもの、みたいな。カーズの音楽は、音楽自体はなんでもないポップロックですが、この「80年代前後にしかありえなかったニューウェーヴな音」というのが、僕の中では記憶の奥にずっと残り続けています。そして、それは決して悪いものじゃないんですよ。何もかも懐かしい…みたいな。
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