チャールス・ミンガスの作ったDebut レーベルが発表したレコードの中で、『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』に並んで有名な一枚じゃないかと!1955年録音、ミンガス自身のリーダー・アルバムです。僕が持ってるのは日本で編集された『コンプリート・チャールス・ミンガス・アット・ザ・ボヘミア』という2枚組CDで、発売当初は未発表テイクや途中で切れていた曲の完全版などが追加されていた事もあって、ジャズ雑誌で大きく取り上げられていました。
ところが僕、このCDにはすぐには飛びつけなかったのです。ミュージシャンが、
マル・ウォルドロン(p)、ゲストにマックス・ローチ(dr) という所までは良かったのですが、他がエディ・バート(tb)、ジョージ・バーロウ(ts)、ウィリー・ジョーンズ(dr) …ぜんぜん知らないミュージシャンばかりだったのです。しかもこのちょっと後、ダニー・リッチモンドにジミー・ネッパーに
エリック・ドルフィーといった強烈なミュージシャンを揃えたジャズの歴史に燦然と輝く黄金のコンボが待ってるので、そのグループ登場前夜の佳作、みたいな印象があったのです。というわけで、中古盤屋でけっこう安く出るまでこのCDを聴かないまま時は過ぎ、ようやく聴いたのは実に40代を過ぎてからだったのでした(^^;)>。
そして聴いたら…
うおおおおおおおお~~~これはカッコいい!!大人しめな演奏が多いのでパッと聴きは渋く、あのグイグイくる
『直立猿人』、
『道化師』、それにドルフィー参加時のコンボの破壊力やコンセプトの徹底度には敵いませんが、クラシックにジャズにブルースにと、色んな音楽を渡り歩きながら音楽を追及してきた感じがとてつもなくカッコいい!!
1曲目「Jump Monk」は、大名曲「Pithecanthropus erectus」に似た構造。オスティナートを刻むベース独奏から始まって、見事にアレンジされた2管のアンサンブルが重なり、それがベースとシンコペーションを起こし…みたいな感じ。テーマをパッとやってあとはブレーキングコーラスでアドリブ…みたいな同時代のハードバップとは一線を画した音楽です。
「Percussion Discussion」、これはほとんど古楽のコントラバス(オーバーダビングしてる?2重奏になってます)
と、マックス・ローチのドラムのインプロヴィゼーションを掛け合わせたような音楽。ミンガスはジャズのど真ん中と思われがちですが、黄金のコンボを作る前から色んな音楽上の挑戦を繰り返していて、この時点で月並みなジャズなんてとっくに超えてます。
これは黒い室内楽!2管のアンサンブルは実によく出来てるし、ところどころにバロックもラフマニノフもドビュッシーも出てくるし、クラシックとブルースとジャズのハイブリッドみたいな音楽は、ジャズどうこうというよりも音楽そのものを追及した結果んじゃないかと。 それは
コントラバスでのアルコの扱いの多さや、たぶんガット弦(!)を張ってる事なんかからしても、ジャズベースというのではなくコントラバス音楽そのものを追及してきた背景があるんだろうな、と感じます。
ミンガスって「闘士」みたいなイメージが強いですが、実際にはインテリジェントな部分はすごくインテリジェントです。最初に聴くミンガスはこれじゃないと思いますが、『直立猿人』や『道化師』あたりを聴き終わったら、次はぜひこれも!あぶないあぶない、ミンガスが大好きなくせに、こんなに素晴らしい音楽を聴かずに人生を終えてしまうところだったよ。。
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