SAVOY原盤、1954~55年と、ミンガスとしてはかなり古い録音です。ところでこのレコード、クレジットが「Charles」じゃなくて「Charlie」なんですね。そういえば、アルバム『メキシコの想い出』もチャーリー表記だった気がします。ジャケットがダサく感じたし、
『直立猿人』 より前の作品なので、習作期だろうと推測して敬遠していたアルバムだったんですが、同じバンドでサックスを吹いていた先輩のアパートで
このレコードを聴かせてもらって超感激、ぶっ飛んだ!鳥肌が立つほどでした。 あまりの感激に、僕が「仕事とはいえ、テーマやってアドリブなんてジャズばかりじゃなくて、こういうしっかりしたコンポジションものも出来るといいですね」と言うと、先輩は「そうしたいならお前がリーダーになるしかないだろ」。そうだよな、演奏でお金貰ってるプロミュージシャンなんだから、好きな事やりたいなら自分でやるしかないよな、みたいな。サックスの先輩には
チャーリー・パーカー の名盤を教えてもらったり、とにかく色々とお世話になりました。ジャズ演奏のあれこれを教えてもらって、聴くべきレコードを教えてくれて、バンドで辛い思いをしていた僕の精神的な救いにもなってくれて、いまだに感謝してます。
このアルバム、カルテットのジャズ演奏と、ワークショップの実験が半々ぐらいのレコードです。そして、
ワークショップ方面の実験的な3曲がすごい!! 「Gregorian Chant」なんて、名前から均等分割の7音音階のモードのどれかを使った曲なのかな…と思ったら、メロディック・マイナーの第4モードじゃないかい?しかも、ベースのアルコから始まるし、なんと独特なんだろう、素晴らしい。。「Eulogy for Rudy Williams」は、ピアノが音列技法を基にした和声音楽の外にある無調のうえで、2本の管楽器が平行してアドリブ演奏しながら徐々にジャズ和声に近づいていくという曲。こんな素晴らしいレコードがあるでしょうか。僕個人としては、普通のジャズ演奏をやった半分はいらないから、アルバム全部をこっち方面で進めて欲しかった。。
ジャズという作編曲がもの凄くいい加減な音楽で、立派な作曲と即興を両立しているのがミンガスの音楽の素晴らしさ だと思います。聴いてない方にはなかなか伝えるのが難しいですが、ミンガスの音楽に触れた衝撃は、僕の中に今も残っています。「フォーバス知事」「
So long, Eric 」「直立猿人」「
Haitian Fight Song 」などなど、どれも今まで聴いた事もないようなコンポジションやアレンジに感激したものでした。そのミンガスの作曲やアレンジの原点が分かったようなレコードが、これでした。このジャズ・ワークショップというバンド、もとはハーモニーの勉強会から始まったらしく、このCDに参加している人だと、テオ・マセロ(tsax, bsax) が12音音楽の研究をしていたそっち方面の先生役で、ジョン・ラポータ(asax, cl) がトリスターノ門下生でそっち方面の先生。ミンガスは、なんといっても
チャーリー・パーカー のバンドに起用されたほどの人ですから、
エリントン からビバップまでの王道ジャズの先生だったんでしょう。これほどの人なのに、食えなくて郵便局でバイトをしていたというのだから、合衆国で民間が芸術音楽をやるというのがどれだけ大変だったのか分かるというもんです。それが成立しないのって、音楽を「癒し」とか「娯楽」としか捉えていない聴く側の動向にも左右されちゃうんでしょうね。2,3,9曲目は超クリエイティブ、必聴と思います!
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