
ジンジャー・ベイカーさんのドラムでいちばん驚いたのは、このライブビデオでした。音だけ聴いても強烈でしたが、実際の演奏をこうやって見せつけられてしまったら、ドラミングもろくに知らないガキだった僕がぶっ飛んだのも当然の事だったんじゃないかと。1968年11月26日、スーパー・グループのクリーム解散コンサートとなったロイヤル・アルバート・ホールでのライブの映像です。
クリームのライブでのジンジャー・ベイカーさんはどれもみんな凄いんですが、やっぱり叩いている姿を目で見た衝撃は大きかったです。
わざとカメラを揺らしたり、サイケな映像を重ねたりと、とにかく映像が落ち着かないんですが、これってサイケな映像表現というだけでなく、少ないカメラの台数をどうにかするための苦肉の策だったのかも。しかしそれを補って余りあるものすごい演奏!なんといっても、
動くジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーのプレイが凄すぎる!死んだから言うわけじゃなく、特にジンジャー・ベイカーのドラミングがすごくて、まだジャズをちゃんと聴いたことのなかった僕にとって、「うわあすげえ、俺が今まで聴いてきたロックのドラムとぜんぜん違う…」と、呆気にとられ、魅了されたのがまるで昨日の事のようです。
そうそう、僕が観たのはVHS版だったんですが(はじめてこれを観た時、DVDなんてまだなかった^^;)、VHSにはメンバーそれぞれのインタビューが間に挟まっていて、ベイカーがドラムの叩き方をレクチャーしていたんですが、それがまた圧巻。フラム・トリッパーの実演なんて、凄すぎて呆気にとられてしまいました。はじめて観た時、自分の膝をタム代わりにして手足を動かして真似してみましたが、全く歯が立ちませんでした。。そうそう、当時は「ジャズだ!」と思ってましたが、今見るとこういうコンビネーション・ショットは常にポリリズムにしてパターン化されているので、西アフリカの打楽器音楽のようにも聴こえました。
ジャズ的なアドリブのシステムにせよポリリズミックなパターンにせよ、僕が今までに聴いてきたロック・ドラマーの中ではジンジャー・ベイカーさんがナンバーワンですが、久々に見ても、基礎からして「
この人は音大の打楽器科を出た上にジャズやアフリカの打楽器音楽をマスターした人なんじゃないか」と思ってしまうレベル。また、それを綺麗に叩くんじゃなくて、
忘我の境地かというほどに自分の限界のところで打ちまくる姿勢がロックで素晴らしい!ショーやコンサートとして人に聴かせて金を取っているタイプのクラシックやシャンパン・ジャズが忘れたものが、全部ここにありました。
ロックのライブ・ビデオってそんなにたくさん観たわけではないんですが、これは鮮烈に記憶に残っている1本。いや~60年代後半からしばらくのロックって、やっぱりすごいものがひしめいていたんだなあ。
この頃のロックって、「飼いならされた大人と違って、若いヤツの方がすごいことをやる」ぐらいの力があったと感じます。80年代以降のロックでは、「まだ若いから、下手でも馬鹿でも幼稚でも、まして自分が社会に飼いならされている事に気づいていなくても、まあ仕方ないよね」ぐらいに感じちゃうものが大半ですからね(^^;)。ロックが好きでこれを観てないようではニワカ認定レベルの伝説的パフォーマンスだと思います。
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