
日本の現代音楽レーベルのフォンテックがリリースした、伊福部昭作品のベスト盤的なセットです。2枚組で、「日本狂詩曲」や「交響譚詩」という伊福部さんの代表作といわれている作品がギッチリ詰まっているので、ゴジラなどの劇伴作曲家ではなく、芸術音楽作曲家としての伊福部昭さんを知るならこういうのが手っ取り早いんじゃないかと思って手にしたのでした。収録曲は、以下の通りです。
・日本狂詩曲(1935)
・土俗的三連画(1937)
・交響譚詩(1943)
・タプカーラ交響曲(1954/79)
・ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ(1961)
・ヴァイオリン協奏曲 第2番(1978)
・オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ(1979)
1曲目に入っていた
「日本狂詩曲」に、心を鷲づかみにされてしまいました。日本の祭囃子のようなメロディと拍子を用いて楽曲を作り、それを独特な西洋の楽器編成で演奏します。アヴァンギャルドではなく、国民楽派の日本版みたいな感じ。
夢の中で祭囃子が浮遊しているような独特の感覚、これはぜひ音を聴いてみて欲しいです、素晴らしい…。この曲、
ルーセルやオネゲルが審査員だったチェレプニン賞で首席を取ったそうですが、これでとれなければ嘘だろうというほどの大名曲。国民楽派的な音楽で感動した事は、僕はこの曲が初めてかも。
ただ、それ以降の曲が、僕的にはイマイチでした。「土俗的三連画」「交響譚詩」は、どちらも伊福部さんの代表曲に挙げられる曲。「日本狂詩曲」と違って管弦楽法を教えてもらった後の曲ですが、これは西洋音楽的に整序され過ぎた感じで、「日本狂詩曲」のあの感動には届きませんでした。この傾向は後の時代になるほど顕著になっていって、調音楽でシンプルな曲でオスティナートの使用が多く、それらに日本的な叙情(民謡の音階とか祭囃子のリズムとか、日本の音楽から直接題材を取るものも多かった)を絡めている感じ。シンプルさは単純な西洋追従に聴こえてしまい、オスティナートは良いと思って使っているのではなくスタイルに固執、国民楽派的な作風は、最初は独創力あるものでしたが次第に西洋音楽の中に日本の旋法やリズムを組み入れただけのもののようにきこえはじめてしまいました。でもその中では、「オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ」が良かったです。ただ、これは曲ではなくて安倍圭子さんのマリンバ演奏が良かったのかも。
「日本狂詩曲」は本当に素晴らしい音楽でした。この素晴らしい曲と演奏聴けただけでも、このディスクを買った甲斐がありました。ちなみに、初期の管弦楽の演奏は、山田一雄指揮、新星日本交響楽団。新生日本管弦楽団は昔日本にあった自主運営のプロオーケストラでしたが、財政難で2001年に東京フィルハーモニー交響楽団と合併して消滅。いやあ、これだけいい演奏をしていたのに、オーケストラの自主運営はどの世界でも厳しいんですね…。「日本狂詩曲」以外の曲は僕にはイマイチしっくりこなかったし、最初は伊福部さんの音楽はこのCDだけで間に合わせようという軽い考えだったのに、「日本狂詩曲」を聴いたがために、僕はしばらく伊福部さんの音楽を追いかける事になったのでした(^^)。
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