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『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集 ケンプ(p)、ケンペン指揮、ベルリンフィル』

Beethoven_PianoConcertos_Kempff_Kempen BerlinPhil ベートーヴェンのピアノ協奏曲き比べ特集、最後はこれ、ウィルヘルム・ケンプのピアノと、ケンペン&ベルリンフィルの共演です。録音が1953年という事で、ろくに聴こえない楽器がある古いクラシックの録音に何度も煮え湯を飲まされてきた僕は、このCDを手にしたのはポリーニグールドより後でした。モノラル録音ですしね。しかし、悩みに悩んだ末、ケンプの演奏を聴く事を避けているようではピアニスト失格だと思って、思い切って購入!すると…うおおおおお、これはすげえええ!!ケンプだけじゃないです、オケも躍動、録音はモノラルだけどすっごい臨場感!

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲でいちばん有名な第5番「皇帝」でいうと、フォルテのところは鍵盤をたたきつけるような激しさ、トリルはこれ以上ないほどの軽やかさと舞うような歌い回し、カデンツァは自分の内側から今この瞬間に生まれ出たかのようにほとばしる感じ。いやあ、楽譜を再現している音楽だなんて思えない、まるで今この瞬間に生まれている即興演奏のような音楽、そして表現のためには解釈だの時代考証なんて関係ないと言わんばかりの強烈な表現です。これはいい子ちゃんの優等生なピアノではありません。乗った時のケンプとホロヴィッツは本当にすごい。これぞザ・ピアニスト、ロックよりもジャズよりも過激で野性的です。そして…ものすごい爆発力で迫ってきた後の第2楽章のアダージョ、最初のピアノの切ないタッチが出てきた瞬間に、思わず涙が出てしまいました。ああ、なんという演奏だ…。
 ケンプばかり褒めてしまいましたが、呼応するケンペン指揮のベルリンフィルもものすごい表現力。50年代のベルリンフィルで驚異的な演奏を聴かされたことが何度もあるので、実はベルリンフィルのいちばんすごかった時って1950年代だったんじゃないかと僕は思っています。全員で襲い掛かってくる爆発力がとんでもなくすごいんですよ。
 録音の臨場感もすごかったです。音がブワ~ンって広がっていく!録音はベルリンのイエス・キリスト教会、ここで録音されたCDを今までも何枚か聴いた事がありますが、この録音は別格です。

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲に関していうと、1~2番はハイドンの後を追っていて、それが変わってくるのは3番からと感じました。3番の第1楽章は、いかにも「運命」を書いた作曲家の協奏曲という感じでガッツリ、そして第2楽章は、いかにも月光ソナタを作曲した作曲家が書いたという感じです(^^)。イタリアほど洗練されておらず、フランスほど貴族文化が洗練されていないドイツが見出した武骨な詩情を感じる、これぞベートーヴェンという音楽です。そして続く第4番と5番は独創的です。ピアノ協奏曲でも交響曲でも、ベートーヴェンの時代は「古典派」と呼ばれる時代で、典型的な形式を踏襲しているんですが、ベートーヴェンは形式の持つ構造の見事さを壊さないまま独創性を見せます。4番の第1楽章なんていきなりピアノソロで始まるし、それを受けたオーケストラが主題をなぞるだけでなくそのまま主題部のほとんどを作ってしまうし、かなり挑戦的。そしてこの独創性が5番でさく裂!…ちょっと大ざっぱなベートーヴェンのピアノ協奏曲の総括でした (^^;)。

 曲以上に演奏に圧倒されたCDでした。それでいて、これこそベートーヴェンと感じたところが凄かったです。僕的には、ベートーヴェンのピアノ協奏曲のCDをひとつだけ手元に残すなら、間違いなくこれ。指が動くとか楽譜に正確だとかそういう事じゃない、特に第5番はピアノもオケも胸が張り裂けるほどの表現で襲いかかってくる大名演、この圧倒的迫力と胸が裂けるような切なさ…こういう音楽があってくれれば、他には何もいらないです。ご飯を抜いてでも買うべき大名盤と思います。

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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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