マリの西、大西洋に面するモーリタニアもグリオが活動している国だそうです。このCDの解説を信じるなら、
モーリタニアの音楽はグリオによるものと思ってもいいぐらいだそうです。これはOCORA原盤のモーリタニアの音楽のCDです。録音は1965年…伝統音楽や民族音楽って、世界の西洋中心主義で少しずつ滅んでいっているので、こういう古い音源は本当に貴重ですよね(^^)。ただ、あんまり売れないみたいで、どんどん廃盤になってしまって、なかなか入手できなくなっているのは実に残念な事です。みなさん、民族音楽をもっと聴こう!
CDの前に、このCDのタイトルに疑問点が。「Maure」って何でしょう。マグリブあたりの主要民族にマウリ族がいますが、それ?それともモーリタニアの主要民族ムーア人のフランス語表記?ついでに、もしかするとマウリ族とムーア人って同じ?今思い出しましたが、アルチュール・ランボーの詩に「ムーア人」って出てきましたよね、なるほど昔はこのへんはフランス領だったのかな…。というわけで、「Maure」が分からなかったんですが、ムーア人という事にして話を進める事にします(^^)。

最初にビックリしたのが、
グリオの音楽といってもマリやセネガルのグリオの歌とはかなり違う事。マリのグリオもセネガルのグリオも、音は綺麗だし癒し系的な弾き語り音楽といった風だったのに、このCDに入っていた
モーリタニアのグリオの音楽は、かなりプリミティブ。コラとは名前が違いましたが、やっぱり竪琴系の楽器を使うんですが(男性が使うものはティディニト、女性が使うものはアルディンというそうで)、それをマリのようにギターのように弾くのではなく、まるでカリンバのように弾くのです。
歌唱もぜんぜん違くて、高い音域で絞り出すように絶叫するものもあって、これはスペインか
アル・アンダルース系と、
アラビア音楽系のもので、いずれもマリやセネガルのグリオとはぜんぜん違いました。なるほど、モーリタニアの国教はスンニー派イスラム教だし、公用語はアラビア語だし、文化的には少なからずアラビア文化なんですね。

さらに、演奏も、ひとりか2人程度の弾き語りとは限らず、5~6人の集団のものもありました(4曲中2曲がそう)。こうなってくると、
グリオの音楽といってもレイドバックした心地よい弾き語りなんてものじゃなくて、強烈な呪術音楽のような様相。集団で手拍子も入って、ついでに音階もエキゾチックで、リズムが強烈で…イメージだけを伝えれば、
フラメンコをものすごくプリミティブにしたような音楽。打楽器が呪術的に鳴り響き続ける曲に至っては呪術的でもありました。
いや~これもなかなか強烈、自分では想像も出来なかったような音を体験できるのが民族音楽を聴く時の悦楽のひとつですよね、すごかったです!でも、このCDもアマゾンでは発見できず。民族音楽系のCDは文化遺産レベルで素晴らしいものの宝庫なのに、産業音楽の押し売りの波に押されて、一般の人の耳に届かなくなってるのでしょうか。悲しいなあ。。
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