
いやあ、ミンガスのレビューをし始めたら止まりそうにありません。。うちにあるミンガスのLPやらCDやらを数えたら…ざっと見ただけでも30枚以上あるじゃないですか!!もしかして、メシアンのレコードより多いかも。う~ん、確かに大好きだったんですが、貧乏な学生時代にここまで小遣いを注ぎ込んでいたとは、とんでもなくハマっていたんだなあ。
で、これは『THE CROWN』よりも更に古く、1956年の録音。邦題は『直立猿人』で、ミンガスのレコードでは1番有名なんじゃないかと。メンバーもNY周辺のバップ系の黒人ミュージシャンを中心に編成されていて、例えばアルトサックスがジャッキー・マクリーンで、ピアノがマル・ウォルドロン。…もう、演奏の傾向というのはこれだけで大体分かるかと思うんですが、多分想像通りの演奏です。ちょっと重めなんですよね。しかし、マクリーンとテナーのJ.R.モンテローズの相性が凄く良くって、アーティキュレーションがバッチリ合ってます。ああ、これで演奏に切れさえあれば…。
うーん、もしかすると、50年代の時点で、ジャズ・ミュージシャンにこのアレンジを演奏し切る事に無理があったのかも。タイトル曲の「直立猿人」にしても、恐らく車のクラクションや救急車の音といったNYの喧騒をアンサンブルに持ち込んだ「FOGGY DAY」にしても、これは固定メンバーのバンドでけっこう長い事活動しないと、音楽を物にするのは難しいかも。そのぐらいに、ジャズとしては練り込まれたアレンジなんですよ。初見で演奏しろと言われたらちょっと手こずるだろうし、バッパーならなおさらの事なんじゃないかと。56年の時点で、ミンガスのアレンジャーとしての才能は既に全開です。しかし…プレイヤーが追い付かない。僕の印象としては、ミンガスが自分の音楽性を掴んだ最初の一歩かとは思うのですが、これがミンガス音楽の最高峰とは思いません。まるでミンガスの代表作のように扱われていますし、確かに素晴らしい音楽なのですが、ミンガスに初めて触れるのであれば、ドルフィー参加後の脅威のミンガス・コンボの音楽を先に聴いた方がいいと思います。…いや、だいすきなんですけどね、いかんせん演奏がデザインを表現しきれていない。。あ、そうそう、1曲目の「直立猿人」があまりに有名ですが、アルバムのラスト曲「LOVE CHANT」は、曲想の美しさと、プレイヤーの自由度に配慮した緩いアレンジが相まって、実に素晴らしい音楽だと思います。
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