
これもギリシャ全土の民俗音楽を収録したCDですが、1973年録音で
TOPIC盤よりちょっと新しいです。
監修が日本の民族音楽研究の第一人者の小泉文夫さんなので、解説がしっかりしていてすごくよかった!あ、誤解を受けないように言うと、Topic盤も素晴らしい解説でした。このCDも音楽が地域別にまとめられていましたが、Topic盤より細かく7地域に分類されていました。
クレタ島の音楽。クレタ島というと、エーゲ海の真珠的な古風なヨーロッパ文明的な音楽が聴けるのかと思いきや
、ジプシーバンドがアラビア音楽をやったような演奏でびっくりした(^^;)。Topic版でもそう思ったんですが、僕のギリシャ音楽の第一印象はジプシーバンド、クレズマーバンド、アラビア民俗音楽の共存です(^^)。4曲目「ヒトラーよ奢るな」なんて、マカーム使ってるんじゃないかなあ。。
マケドニアの音楽。マケドニアはギリシ北部にあって、そこにあるアレキサンドリア村の音楽は、
ダウールというバレルドラムが鳴り響いて、その前でズルナ(ダブルリード楽器)がピロピロいっているので、
まるでトルコの軍楽みたいでした。
マケドニアのテッサロニキ市の音楽は、
フィドルと掛け声によるもので、ジプシー系の舞踊音楽に聴こえました。実際、ステップの音とか入ってるしね。
フラメンコにかなり近い舞踊音楽でしたが、ヨーロッパを移動して歩いた遊芸民が持っている音楽なので、実際につながってるんでしょうね。これはカッコよかった!
カト・パナイア地方の音楽は、打弦楽器と(恐らく復弦の)撥弦楽器の合奏で、ムードは
まるでポルトガルのファドのよう。マジでギリシャの音楽はいろんなものが混在していて訳が分からない…でもどれもいい音楽という所がすごいです。。
エピルス地方の音楽は、
クラリネット中心のバンド音楽で、ユダヤのクレズマーとパキスタンの大衆音楽が融合したような音楽でした。
ルメリ地方と
メガラ地方の音楽。ルメリ地方の音楽は、TOPIC盤にも記録されてましたが、このキング盤に入っていたのは
ギリシャを代表する踊りだというツァコニコスという5/4拍子の舞踊音楽。舞踊音楽と言ってもマケドニアのフラメンコのようなものではなくて、インドやアラビアの宮廷音楽のような雰囲気でした。この雰囲気はメガラ地方も同じでしたが、これはハープ属の音楽がそういう雰囲気を出しているだけなのかも(^^;)。
モレアス地方の音楽はフュージョンしていて、ギリシャ的なギターフォーク音楽(僕はシャンソンのムスタキを聴いて以来、ギリシャにはギターフォークが結構根付いていた時期があると勝手に思い込んでます^^)、トルコ系の打楽器、ルメリやメカラの宮廷風音楽、そしてクレズマー系の音楽がちゃんぽん、みたいな。
ギリシャの民俗音楽全般を扱ったTOPIC盤とこのキング盤を聴いて思うのは、
今のギリシャの伝統音楽というのは、古代ギリシャの音楽とはまったく違うんですね。ギリシャって、哲学でも音楽でも演劇でもヨーロッパの重要な震源地だったと思うのですが、その伝統が一度ぶっ壊されて引き継がれず、まったく違う文化が入ってきたという事を聴いたことがありますが、それが事実だという事を身を持って体験できたCDでした。そして、音楽だけで判断すると、
ギリシャって素朴な市民文化(東欧的な民謡)の上に、トルコやアラビア文化が覆いかぶさり、ユダヤ人も食い込み、ジプシーが通り過ぎていき…みたいな国なのかも。西欧の音楽をあまり感じなかったので、人の流れは西欧からギリシャに来ることはなくて、ギリシャから西へと流れるのかも…ギリシャやバルカン半島にもあるジプシー系の音楽がインド~イランの流れである事からするとそんな気がします。というわけで、なんだか今のギリシャ事情を音楽で知ることが出来たような、CDでした。バラエティに富んでいて楽しかったです!
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