『Frank Zappa: The Mothers of Invention / FREAK OUT!』
フランク・ザッパのデビュー・アルバムです。バンドは「いたち野郎」と同じくマザーズ・オブ・インベンション。CDだと1枚らしいですが、LPの時は2枚組でした。デビューアルバムが2枚組って、すごいな。。 前々回の記事で書いたように、ザッパさんの音楽って色々な要素が混ざっているので、ひと言で説明するのが難しいです。しかし、強いて色分けすると、前々回の記事で書いた『いたち野郎』がフリージャズと現代音楽寄りのコラージュ音楽、前回に書いた『黙ってギターを弾け』がジャズロックなフュージョン風インスト音楽とすると、このアルバムは60年代のハウスバンドが演奏したサイケ色のあるリズム&ブルース、という感じでしょうか。アルバム発表が1965年ですので、ロックバンドの楽器の完成度が低くて、特にエレキギターなんかの電気楽器のサウンドが古臭いです。そんなものだから、ベンチャーズみたいな音でヘタクソに聞こえるんですが…よく聞くと、バンドのクオリティが高い!とくにギターのソロなんて、何だこりゃと思うほどにうまい!!う~ん、このテクニック、当時のポピュラー音楽産業界のセンターにいるビートルズやストーンズなんか相手にならない、それどころかクラプトンやジミーペイジよりも数段上じゃないだろうか。…しかし、音楽の肝はそこじゃなくって、R&Bが凄く気持ち悪い音楽に変形されているところにあるんじゃないかと。ヴォーカルがツインで、しかも気持ち悪い(^^;)…って、そこじゃなくって、曲自体が50年代ポップスやビートルズ系の音楽とは明らかに違って、えらく病んだような曲が混じっています。日本のロックバンド「頭脳警察」のバンド名の由来となったナンバー"Who are the brain police?" とか、テレビから流れてくるバッド・ニュースまみれのアメリカ社会を揶揄した"Trouble Everyday"…いずれも、当時のポピュラーシーンになじむものではありません。また、ドゥ―・ワップ調の曲なんかも、バカにしたような歌い方をしていたり、けっこうシニカルです。 まあそれでも、音楽としては箱バンが演奏したポピュラーと言えるかと思うんですが、問題はLPの2枚目です。…超アヴァンギャルド。声で行われるコラージュとか、とにかく見事。なるほど、LPの1枚目と2枚目が対比になっているんですね。1965年と言えば、ビートルズが『HELP!』を出した年で、ホワイトアルバムなんてまだまだ先の話。ヘンドリックスなんてデビューすらしていません。この2枚目を聞くと、ビートルズのホワイトアルバムや、ストーンズのサタニックが子供の遊びに聞こえてきます。マザーズは、ポピュラー産業の傍流だったかもしれませんが、実はサイケデリック興隆となった60年代後半のポピュラー音楽の大本流だったんじゃないかと思います。大おススメ!