
2019年に
マヌリさんが来日しましたね。でも、現代音楽を聴かない人だとクラシックファンですら「マヌリって誰?」状態かも。かくいう僕もそんなに聴いた事がないのですが、僕が音大に通っている頃にはとっくにすでに高く評価されていたフランスの前衛作曲家でした。当時、ビッグネームの割には日本にCDがあんまり入ってきませんで、その音楽に触れるのが困難だったんです。そんな中、ワーナー・パイオニアがフランスのERATOのリリースした現代音楽作品に日本語解説をつけて販売しはじめ、その中に入っていたのがこれです。
「時間の推移 Zeitlauf」、マヌリさんの代表作と言われています。 ゲオルグ・ヴェーベルンの詩を用いた声楽で、これに管楽器、そして電子音や電子操作(声を電子的に変質させる、とか)が加わっていました。フランスのIRCAMで行なったプロジェクト「音楽構成要素間の相互関係の原理」の研究成果として作曲したものだそうです。
マヌリはスペクトル楽派と言われる人のひとりで、簡単にいえば電子音楽というか、コンピュータ音楽というか。音をスペクトル解析して、その倍音列とか周波数を構築するとか、倍音のずれを利用して作曲に生かすとか、そんな感じです。でも、僕が聴いた作品は、
電子音だけのものはなくて、どれも人間の声や楽器と電子音のミックスでした。僕が知っているスペクトル楽派系の作曲家というと
グリゼーや
トリスタン・ミュライユですが、僕はそういう電子音的な理論は全然ついていけず(あ、理屈が分からないだけで、音は好きです^^)、このマヌリの作品の作曲技法は部分的にセリーっぽく部分的にコンピューターの自動作曲なり自動生成の電子音みたいでした。でも、セリーじゃないんだろうな。。
声楽部分や楽器部分が独特の和声感覚を生んでいて、そこがすごく好きでした。合唱や生楽器部分だけ言うと、普通に主題展開していたりするので、
奇抜なのは音の素材だけで、構造はじつは伝統的な西洋音楽だな、みたいに感じました。
電子音部分。ここで、普通の楽器では制御できないスペクトル解析を元にした事をやってるんでしょうが、僕はそういう事は聴いていて分かりませんで(^^;)、単に音の質感が新鮮でした。伝統的な楽器は音色がいつも同じなので、違う素材を用いるだけでも耳が歓ぶというロックな理由だと思うんですが(^^;)、それでも効果があるんだから仕方ない。。でも、この電子音の質感が、新鮮ではあるけれどちょっとチープに感じました。例えて言えばDX7の巣の音みたいなもので、ぜんぜん音楽的な音まで来てないんですよ(^^;)。細いというか。。電子音楽は、構造は頭で考えてもいいけど音の質感はもっとよく聴いて作り込まないとダメと思うものが結構あるんですよね。電子音楽はむしろ古いアナログ時代の方がいい音のものが多いと感じています。
けっこう音楽的で良かった!電子音はもう少し何とかならなかっただろうかと思わなくもないですが、それって作曲じゃなくて録音部分だったりするかもしれませんよね。構造部分と生演奏部分はやっぱり見事。この曲、構造だけでも真面目に分析して自分の作曲に活用したらかなり面白いんだろうなあ、な~んて思いました。
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