
スペクトル楽派の
マヌリの、91年作「ネプチューン」と、93~4年作「エコー」を収録したCDです。どちらも電子音やコンピュータと生楽器を組み合わせた音楽でした。こういう音楽に興味津々で、知らないながらも面白いもんだから聴きまくっていた青年期でした(^^)。ところが、色んな音楽を聴いて、他の事も若い頃よりは知るようになって、一周して久々に聴いたらけっこう聴こえ方が変わっていました。
「エコー」は、
リアルタイムの電子音響システムとソプラノの音楽。ああ~これは現代音楽というより即興の電子音楽みたい、なんかガキくさい。。だって、鍛え上げられたすごい表現力のソプラノのうしろで、「シュワー」とか「ピコピコピコ」とか鳴ってるんですよ(^^;)。6楽章の「Mon Visage」なんて、ソプラノの音を録音して、それを電子変調して、それを途中でピッチシフトしてキュインとかやってるんですけど、これは僕には遊びにしか聴こえません。少なくともこれが和声(や音色)や音価の選択として最善とはとうてい思えない。まあでも電子音楽の歴史はまだ浅いし、深さを増し、洗練されていくのはこれからなのかも知れませんね。
「ネプチューン」…タイトルの時点で中2臭ぷんぷん、頭が良い人だろうから学生のころからずっと机やコンピュータに向かって作曲ばかりしていて、他の大事なものを学べずに精神年齢が幼いまま大人になっちゃったんじゃないか…な~んてものすごい偏見ですけど、でも僕が行っていた作曲科の生徒って、ろくに文学も絵画も哲学も映画も見ないアニメオタクやアイドルオタクみたいのがそれなりにいたもんだから、そんな偏見を持ってしまうのかも。。
ところが音楽は良かった!先入観で判断しちゃいけないですね(^^;)。この曲は2台のヴィブラフォン、マリンバ、タムタムという打楽器アンサンブルとリアルタイム電子音響システムという編成でしたが、この
打楽器セクションの作曲が良い!この作曲をしているのはマヌリさんなので、スペクトルうんぬんを抜きにして、普通に作曲家として優秀なんだと思います。3楽章なんてコードプログレッションしてるし。電子音の使い方もかなり良くて面白かったです。
電子音部分もけっこう面白かったです。この曲は5つのパートが切れ目なく演奏されていましたが、最終章のピッチシフトから持続音なんてアコースティック楽器では難しい事なので、確かに電子音で挑戦する価値はあるだそうし、またその効果も抜群い発揮されていたように感じました、カッコいい!!
ただ、やっぱり電子音に弱点を感じてしまいました。電子音はリアルタイムという事ですが、その操作がシロウトくさかった。。つまみをひねってピッチをきゅっとあげるみたいな所が結構あるんですけど、これがガキくさいうえに下手なのです(^^;)。コンピュータ制御ならもうちょっと人間工学的に音を考えるとかなんかできないのかな、みたいな。もしアコースティック楽器でこんなレベルの演奏したら、オーディションで落とされるよな、みたいな(^^;)。あ、あと、リングモジュレーターを使って打楽器の音を変調してる場所があるんですが、音がくちゃくちゃチープ…。プロの演奏家が鍛え上げてようやくたどり着いた音を、ここまで無神経に汚してしまう事に嫌悪感を覚えてしまった…。このへんは、テクノロジーを含めて電子音楽の課題のひとつじゃないかと。
まあそんな具合で、これはクラシック~戦後の前衛世代の現代音楽という流れの上の音楽というより、電子音楽スタジオ~ロック系や即興音楽系のアンダーグラウンド音楽の流れの上の音楽のように聴こえました。でも、新しいものへの挑戦がなかったら音楽なんて同じものの再生産ばかりになっちゃって退屈だろうし、面白い所もいっぱいあったので、こういう挑戦が実験室での周波数の研究とか音遊びじゃなくって人間の深い所にあるテーマとつながれた時に面白くなっていくのかも。
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