『矢沢永吉 / KISS ME PLEASE』

yazawa_kissme.jpg 90年代頭以降の矢沢永吉さんの音楽を、私は知りません。だからその辺りまでの事しか言えないのですが、そこまでの矢沢さんの音楽は、大きくふたつに分かれていると思います。ひとつは日本で制作されていた、日本のロックバンドにブラス・セクションやストリングスが重なるもの、もうひとつは、ひとつ前の記事で書いた、アメリカ西海岸のスタジオ・ミュージシャンと制作したAOR風バンドもの。後者の代表作が『E’』なら、前者の代表はこれになるんじゃないかと思います。この前後の作品『ドアを開けろ』『ゴールドラッシュ』『KISS ME PLEASE』は、コンセプトがまったく同じなので、もしどれかを気に入るようだったら、全部良いと感じると思います。順位をつける意味は、あまりないかも。

 前の記事で、『E’』が日本のニュー・ミュージックの代表作みたいな事を書きましたが、では矢沢さんのアルバムでどれが一番良いかというと…こちらのアルバムの方が好きなのです(笑)。洋楽邦楽問わず、ロックバンドにブラストストリングスを加えてアレンジする事が、これほどうまくいった音楽を、私は知らないのです。このアルバムには「冷めた肌」「ワンナイト・ショー」という曲が入っているのですが、それなどはその典型です。

 50年代以降のポピュラー音楽というのは、楽曲様式としていうと「歌謡形式」という構造になっています。1コーラス(1番)、2コーラス(2番)…みたいに、同じコーラスを何度も繰り返して歌うのです。だから、かなり考えて作らないと、歩いても歩いても同じ景色が続くような感じで、すごく退屈なものになってしまいます。ポピュラーの曲が数分で終わってしまうのは、飽きられる前に終わるという意味もあるんじゃないかと思っています。ところが、この時期の矢沢さんの音楽は、歌謡形式の問題点をブラスやストリングスのアレンジで見事に解決しています。歌のメロディと対になるメロディをストリングスが作り、それが対立し、展開し…といった形で、ひとつひとつの曲のドラマ性がすごく高いのです。

 しかし、矢沢さんのプロフィールを見るに、ストリングスのアレンジの勉強をしている時間はなかったと思います。つまり、このオーケストレーションを作った誰かがいるのではないかと。その人が、この音楽の本当の主役なんじゃないかと。名前も出てこないのに、高度な仕事をやっている人がいる。中学の頃、ぼんやりとですが音大に行って音楽を学んでみたいと思ったのは、こうしたことも理由のひとつでした。




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Author:Bach Bach
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音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

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プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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