
ルネサンス音楽フランドル楽派の作曲家では、
オケゲムと
ラッススを紹介した事がありましたが、切り札はやっぱり
ジョスカン・デ・プレかも。なんといっても名前がカッコいいしね(^^)。これは、
ヒリアード・アンサンブルによるジョスカン・デ・プレ作品集。収録は以下の通りでした。
(ジョスカン・デ・プレ)・ミサ・エルクレス・ドゥクス・フェラリエ
・モテトゥス「天にましますわれらの父よ/めでたし、めぐみに満てるマリア」
・モテトゥス「神よ、われを憐れみたまえ」
・モテトゥス「御身のみ、奇跡をなす者」
(ニコラ・ゴンベール?)・モテトゥス「ダビデはアブサロンの事を嘆き悲しみぬ」
僕は、ヒリアード・アンサンブルの過度にアーティキュレーションをつけた合唱が、アーリーミュージックを聴く時に演出過多に感じてしまう時があるんですが、それでもこのピッチもタイミングもビッタリ合ったアンサンブルの完成度は鳥肌ものだと改めて思ってしまいました。いやあ、これはすごいよ。。
僕的なこのCDの一番のお目当ては、ジョスカンのミサ曲でした。
ルネサンス時代の作曲家にとって、ミサ曲は一番の大仕事だと思うんですよね。このCDに入っていた
ミサ「エルクレス・ドゥクス・フェラリエ」は、
定旋律ミサでもパラフレーズミサでもなく、ジョスカンのオリジナルなミサ曲だったのもポイント高し。やっぱり、定旋律ミサだと、作曲というよりアレンジの技術という気がしちゃいますからね(^^)。そしてこれが
めっちゃ素晴らしい完成度!4声なんですが、一口にポリフォニーといっても、単声から始まってカノン状になるもの、コンドゥクテュスのように多声ではあるけどリズムが一定で始まるもの、などなど、実にバラエティ豊か。それでいて技巧的な曲かというと、そこよりもなんとも清廉な音楽に仕上がっていて、心を奪われてしまいました。う~ん、これは素晴らしい。。
モテトゥス「天にましますわれらの父よ/めでたし、めぐみに満てるマリア」。
モテトゥスというと、宗教音楽ではあるけれど世俗ポリフォニーという事で、僕は軽く見てしまいがちなんですが、これはジョスカン本人が自分の葬式で聖歌隊に歌ってほしいといったもの。曲も2部から出来ている
6声(!)で、その厳かな雰囲気と重層構造に圧倒されてしまいました。ふたグループのポリフォニーが、またそれぞれを相手にしてポリフォニー化してるような構造なんですよ!いやあ、これは凄すぎる…。
「ダビデはアブサロンの事を嘆き悲しみぬ」。ゴンベール作と書いてるモテトゥスがなんでこのCDに入ってるのか…と思ったんですが、どうもジョスカン作という説もある曲なんだそうで。メインになる
ソロのメロディに、2~3声ぐらいの模倣部分がいくつか続いて…みたいに、普通のカノン状のポリフォニーとは趣が違う技法だなと思ったんですが、なんでも
「通模倣様式」というそうで、ジョスカンが開発した作曲技法なんだそうです。いや~これも素晴らしい、作曲技術も天才的なら、頭でっかちじゃなくてサウンドも素晴らしい、本当にすばらしい。。
「神よ、われを憐れみたまえ」は、モテトゥスと言いつつ19分近い!そして構造がすごかった。。全体は3部に分かれていて、
第4声部がずっと同じ旋律しか歌いません。これが1部ではだんだん下降して終わり。第2部ではだんだん上昇して終わり。第3部ではまた下降して…みたいな感じで、これに他の声部が絡んで見事なポリフォニーが編まれてました。よくもまあこういう構造を思いつけるもんです、すげえ。しかも美しい。
「御身のみ、奇跡をなす者」、これは唯一ポリフォニーではなくホモフォニーで書かれていました。
10曲中9曲がポリフォニーでしたが、同じポリフォニーでもこれだけ多様な構造を作れることに驚き。やっぱりルネサンス期の作曲家って、みんな恐ろしく頭が良かったんじゃないかと思ってしまいます。必須科目として数学と幾何学を修めていたとか、何か理由があるのかも。そして、さすがはフランドル楽派の切り札ジョスカン・デ・プレ、今の職業作曲家と違って、どの作品にも挑戦があるのがすごい。宗教音楽なので、楽理的な挑戦をしなくても良い気もするのですが、そうしなかった事がいまだに時代を代表する作曲家として語り継がれてる理由なんでhそうね。素晴らしかったです!!
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