
バロックの合唱音楽を主に扱ってきたフィリップ・ヘレヴェッヘの指揮、シャペル・ロワイヤルの混声合唱による、
ジョスカン・デ・プレ作品集です。ミサ曲に惹かれてヒリアード・アンサンブルによるジョスカン作品集を買ったのに対して、こちらはジョスカン・デ・プレの超人気作「アヴェ・マリア」が入っている事で手にしたのでした(^^)。
「アヴェ・マリア」もジョスカンが開発した通模倣様式という作曲技法によって書かれた曲なんだそうです。とはいえ、最初は同度のカノンで始まっているので、途中がそうという事なのかな?上声2つと下声2つが対話のように絡みながら模倣して、途中と最後がホモフォニー。そして、詩編を読んでいて、
4声がバラバラに動いているのに、詩が綺麗に聴こえる!これぞポリフォニーの魔術、すげえなあ…。他にも通模倣様式で書かれた曲が入っていて、
「めでたし女王、あわれみ深きみ母」は
グレゴリオ聖歌のアンティフォナの旋律を使った通模倣様式。
「めでたし、いと高貴なる創造」も
定旋律を使いつつ、他の5声が模倣。
「スターバト・マーテル」(悲しみの聖母)は、カトリックの聖歌の詞を使った宗教曲で、この詩を使った音楽は数えきれないほどたくさんの人が作曲してますが、僕が今まで聴いたこの詩編の作曲者は、ジョスカンのほか、パレストリーナ、ペルト、
ペンデレツキあたり。マリア信仰って、東洋に住んでると分からないけど、キリスト教圏ではすごく浸透してるらしいですしね。詩はかなり悲しかったですが(キリストが打ち捨てられて…みたいな)、ジョスカン作曲の音楽は救われるような美しさ。途中で短調に変化するところがありましたが、そこは詩に合わせてそうしてるんでしょうね。
ヒリアードと比較しやすかったのは、どちらのCDにも入っていた「神よ、憐れみたまえ」。ヒリアードのシンクロ具合の凄さは前回書きましたが、でもシャペル・ロワイヤルの混声合唱の方が、あくまで宗教曲としてちゃんとあつかえてる気がしました。言葉をすごく大事にして、言葉が通るようにアンサンブルを組みあげてる感じ。実に素晴らしい合唱でした!録音も、こっちの方が中域が分厚くてあったかい感じかな?ヒリアードの合唱と録音はとてつもなく素晴らしいけど、言葉より音楽的に綺麗である事を優先してるみたいで、どこか冷たいヒーリング・ミュージックみたいに感じちゃうんですよね(^^;)。
いや~ジョスカン・デ・プレがフランドル楽派の代表的作曲家にあげられるのが分かった気がします。同じ様式でもこれだけ多様な構造を作って、しかもどれも完成度が見事。それでいて、技巧的な音楽かというと、どこまでも響きが美しく、しかも扱っている聖歌の詩編の言葉が明瞭に聴こえるというのがすごい。
デュファイも
ラッススも
パレストリーナもそうですが、ルネサンス時代の名の通った作曲家の技術は天才的だと言わざるを得ない、聴いていて溜息しか出てきませんでした。すばらしい。。
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