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Category: CD・レコード > クラシック   Tags: ---

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『シェーンベルク:グレの歌 アバド指揮、ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団』

Shoenberg_Gurre no uta_Abbado_WienerPhil 「浄められた夜」「ペレアスとメリザンド」同様、これも後期ロマン派風だったころのシェーンベルクの作品、すべて演奏するのに1時間40分を超え、フルオケに合唱まではいる巨大編成の大作です!後期ロマン派期のシェーンベルクというと、「浄められた夜」「グレの歌」「ペレアスとメリザンド」が有名ですが、この3作の中でこれは真ん中に位置するのかな?ジャンル分けの難しい曲で、オラトリオ的な宗教曲とも、管弦伴奏つき合唱曲とも、芝居抜きオペラともいえそうです。このアバド&ウィーンフィル&ウィーン国立歌劇場合唱団の演奏は、印象としては歌・合唱入りの管弦楽曲という感じでした。

 話はざっくりいうとこんな感じです。中世のデンマークにグレ城という城があり、ヴァルデマール王はトーヴェという少女を愛しています。それに嫉妬した王妃がトーヴェを殺害!怒り狂った王は、王妃を憎めばいいものの神を憎んでしまって天罰が下り、あわれ永遠に天国にいけない亡霊にされてしまいます(第1幕)。亡霊になった王は、同じく幽霊になった家臣たちとともに大暴れ(第2幕)!しかし死んでも王を慕うトーヴェの愛によって、ヴァルデマール王の魂は救済されるのでした(第3幕)。いや~いかにもロマン派らしいお話でした(^^)。

 シェーンベルクと言えば無調か音列技法で、ロマン派時代は習作期ぐらいに思っていたら、超一流のロマン派作曲家ではないですか!!驚きました、これは凄い…。
 冒頭の管弦楽前奏から凄いです。平和な大自然を描く湯たりした音楽から始まるのですが、これが音だけなのに情景が目に浮かぶようなのですよ、すげえ…。これ、木管楽器で反復している音たちは鳥とかそういうものを表現していて、ゆったりと流れる金管楽器や弦は大気とか、風に揺れる大草原とかを表現してるんじゃないかと思うんですが、音でこの情景が浮かんでしまう所がヤバいです。例えれば、ベートーヴェン「田園」ドビュッシー「海」の中間ぐらい。そしてその情景が、日が沈んできてちょっと不安さも増してきて…みたいな。あと、個人的には、トーヴェがはじめて王に愛を告白するクラリの最後の部分の美しさが鳥肌もので大好きです(^^)。
 でも、これだけならロマン派で片付くと思うんですが、さすが後期ロマン派と思う所が満載。例えば、王様が少し不安を感じるところでは半音階の下降が出てきたり、作曲面での表現に使えるパレットがベートーヴェンやモーツァルトの頃とは段違い。もしかするとワーグナーマーラーすら凌駕してるかもと思えるほどの後期ロマン派の芳香にあふれていました。

 でもって、ドラマ部分を表現しているのが詩なんですが、これがロマン派詩ならではのものの感じ方でしびれました。「グレの歌」の第1部は、ほとんどが王と少女のモノローグの交換なんですが、例えば王の来訪を待つ少女トーヴァの独白はこうです。

ああ、月の光の静かに滑りゆくとき、
憩いがすべての上にあるとき、
わが目には海上の波は水と映らず
かの森は木々の集まりとは見えず。
すべては天空を飾る雲となり、
谷や丘はもはや地上の起伏とは見えず、
それは泡沫のごと、形と色との遊びにして、
すべては神のみたまう夢の名残なり。

 いやあ、なんと素晴らしい詞か…。若い頃は、こういうロマン派的な詩って、気障というかナルシストというか、なんでわざわざカッコつけてこんな風に遠回しに表現するんだろうと思ってたんです。でも、この詩の背後にあるものって、「死んだらすべて消えてしまうわけで、すべては理(や神)に帰す泡沫」という観念が背景にあって、そこから逃れられないこの世のあわれを表現してるんじゃないかと感じるようになってから、感じ方が変わりました。でないと、「色々なものがそのままには見えず、それは泡沫」なんて言葉、出てきませんよね。で、こうした観念が「グレの歌」の背景にはずっとあって、王と少女は永遠の死を望むし、王の幽霊は最終的に救済される、みたいな物語になってます。

 そして、こうしたいろんなドラマを通過して最後にドッカーンと来た時の感動が凄い!しかも大オーケストラなもんで、ドッカーンの天井の高さがヤバい!大きな山が1部と3部にそれぞれ1回来るんですが、このエクスタシーは西洋オーケストラじゃないと無理だわ、凄すぎました。。

 音楽的な発見としては、第3部ではやくもシュプレヒ・ゲザング(シュプレヒ・シュティンメ:話すように歌う、シェーンベルクの歌曲の常套句)が出てくるんですね。歌っていたのは歌手ではなくて女優のバルバラ・ズーコヴァさん。話すことにかけては歌手より俳優の方がうまいという事でしょうが、マジでうまい。。ウィーンフィルを後ろにやるなんて緊張しまくりそうなもんですが、堂々たるものでした。俳優って肝が据わってるんだな。。

 アバド指揮ウィーン・フル&ウィーン国立歌劇場合唱団の演奏と、グラモフォンの録音は完璧!これがライブ録音とは信じられないほどの凄さ!音に圧倒されました。いや~、ぜんぜんまとめきれませんでしたが、要するに「ロマン派時代のシェーンベルクの音楽を舐めていたけど、これは凄すぎ、感動でふるえてしまった」と言いたいのでした。超おすすめ!

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Comments
 
今年のベスト記事から遡って聞いているので、せっかくなのでコメントを書こうかなと。
前奏を聞きながら、ドビュッシーの海に似ていると思ったのですが、自分が好きな数少ないオーケストラ曲だったので、書いたら恥かきそうだなと思いつつ記事を読んだら、やはりそうなのですね、よかった。
自分の耳には、ロマン派の分かりやすいお約束メロディ、ハーモニーより、近代のドビュッシー、ラベルのような感じに聞こえ、なじみやすかったです。
ロマン期のシェーンペルクも凄い! 
AKISSH さん、書き込みありがとうございます!

「グレの歌」と言えど、機能和声も、物語性や劇的構造なども、やっぱり根幹にあるセンスはロマン派なのですよね。ただ、そこに新たな技法が入り込んだり、洗練されていたりと、ロマン派音楽の範疇で作ったらこれ以上先はもうないと感じました。なるほど、だから次の一歩に踏み込んだのかも知れませんね、シェーンベルクは。

今のジャズって60年代より後退してしまったように感じますが、その60年代ですら20世紀初頭の「グレの歌」からドビュッシーあたりの音楽のレベルに辿り着くのがせいぜいだったわけで、やっぱりクラシックってすごい音楽だったんだなと思います。ハンコックもビル・エヴァンスも明らかにこのへんの音楽の学習の痕跡を感じますもんね。

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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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