ムローヴァさんに続いて、もうひとつ
バッハのヴァイオリン・コンチェルトのCDを。こちらは、
クレーメルがヴァイオリンと指揮を担当した、バッハのヴァイオリン協奏曲集です。収録は、以下の3曲でした。
・2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調(BWV1043)
・ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調(BWV1041)
・ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調(BWV1042)
ああ、こっちの方がヴァイオリンのエッジが立ってまあまあ前、程よく主張している感じ。管弦は少しうしろで残響美しく響いていて、それいてひとつひとつの音はクリアでした。これはすごく好み、メチャクチャいい!!
「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調」、これが超絶にスバラシかった!!カノンのからみの複雑さはふたつのヴァイオリン協奏曲を大きく凌ぐ見事さです!演奏もカッコいい、クレーメルはテンポも速めで1楽章からガシガシ来ます!ザックリいうとカノン、ただ同じ主題が違う調で何度もでてくるので、
リトルネッロ形式かな?そういう意味では、バロック時代の協奏曲の典型ですね。それにしても独奏ヴァイオリン1と2の絡みが見事。同じ主題がずれていくつもかさなる形式なのでゴチャゴチャしそうですが、かさなる部分はデュナーミクを変えて対等にせずに主従関係を作って演奏していました。なるほど、これでダブルコンチェルトというなんとも複雑な形式をすっきりさせるのか。。こうする事自体がすでにクレーメルの考えであって、なんというか…えらく重層的で、
バルトーク的なバッハに聴こえました。これは良かった!
2楽章は1楽章ニ短調の平行調へ長調。これは緩徐楽章的でゆったりすぎないラルゴ。ゆったりと2台のヴァイオリンが安らいだ会話をするような曲想なのですが、クレーメルが待ちきれない(^^;)。速く進みたいのに、それを必死に抑えてる感じ。待ちきれなくなったか、18小節目でクレーメルさん、音符を増やしてるし。後半は我慢しきれずに突っ込むし。天才にも得意不得意があるんですねえ(^^)。
3楽章はクレーメル待望のアレグロ!これもリトルネッロでした。ざっくり構造分析をすると、大まかなアンサンブルパートを挟みつつ、独奏ヴァイオリン1が先行するソロパートが2回、その後に独奏ヴァイオリン2が先行するパートが2回出てくるんですが、この2番目がついにソロを取る瞬間がたまらなかったです。ずっと熱血漢のアカレンジャーのターンだったのに、ふっとクールなアオレンジャーが出てきた…みたいな(^^)。いや~、こういう曲は、一度はスコアを見るべきですね。「え、こんなになってたの?!」と、耳だけでは認識できてなかった発見が色々ありました…って、耳だけで把握しきれなかった僕のソルフェージュ能力が低いだけか(^^;)>。
ところでこのCD、独奏ヴァイオリン2の演奏者のクレジットがないんですが…もしかして、クレーメルがダビングしたのか?いや~、クラシックでそういうことするの、アリなんですねえ。。
「ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調」。1楽章はリトルネッロ形式で、主題の合間合間に独奏ヴァイオリンのソロが入ってきます。2楽章はアンダンテ。部分的にバッソ・オスティナートとなっていて、その上をヴァイオリンがすべるように演奏するのが気持ちよい曲想です…が、遅めのテンポの曲は、個人的にムローヴァの演奏の方が好きかな?クレーメルは表現過多の気がする、音が綺麗な方じゃなくてガシガシしてる感じ。例えば、5小節目に満を持して登場のヴァイオリンの最初のGの2分音符が、「スー」ッと美しく来ないで、ガサガサしてたりね(^^;)。3楽章もリトルネッロ、おーこれはヴァイオリンの見せ場が多い曲ですね(^^)。
「ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調」。これは
バッハの曲の中でも有名なもののひとつです。なんてったって第1楽章の主題がやけにキャッチーだし、形式も3部形式だったりして、古典派やロマン派音楽になじんだ今の僕たちになじみ深いものだし、分かりやすいです。でも逆にいうと、けっこう単純なので、曲としてはダブル・コンチェルトの見事な構造美みたいな感動はないかな?僕が
好きなのは嬰ハ短調アダージョの第2楽章。これ、出だしがバッソ・オスティナートで、その対旋律を作る形で独奏ヴァイオリンが入ってきます。いやあ、これは見事。演奏もたっぷり目で、構造ではなく曲想とロマン派的な演奏にジワッときてしまいました。
クレーメルのバッハ・ヴァイオリン・コンチェルト集、2台ヴァイオリンはガシガシ来る現代的な演奏。1台ものはバロックというよりかなり古典派協奏曲に近づいているような「俺を聴け!」的な面を少し感じて、面白かったです(^^)。それにしても2台ヴァイオリンの協奏曲はよかった、これはオススメです!
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