邦題は『クールの誕生』、1949~50年に録音された、
マイルス・デイビス の有名なレコードです!これがマイルス・デイビス名義での初アルバム…のはず。歯切れが悪いのは、
このレコード、もともとは『Miles Davis / Classics in Jazz』というタイトルの8曲入り10インチ盤だった から。これが米キャピトル盤は3曲追加11曲入り(日本盤は4曲追加12曲入り)12インチ盤となっての登場という経緯があるそうです。
「クール」とありますが、個人的な印象は「ワーム」で、すごくあったかく心地よい音楽、これが独特の温かみがあってよかった!! はじめてこのレコードを聴いた時、まだこういう音楽を体験したことがなかったもんで、独特な魅力を感じたのを覚えています。
そして、
ホーンライティングが粋でした! このレコードは3つのセッションを合わせて編集されたもので、どれも8重奏~9重奏と大きめの編成。ここでのホーンライティングや、熱しすぎず心地よく流れるムードなどをひっくるめて
思い出したのが、ジェリー・マリガン・カルテットの音楽 でした。ほら、
チェット・ベイカー との2管でピアノレスの有名なレコードあるじゃないですか。ムードがあれとそっくりなんですよ!でもって、たしかにジェリー・マリガンも参加してるんですよね、このレコード。というわけで、久々に聴いて最初に思ったのは、「これはホーンライティングやヴォイシングの勉強会をやったセッションだったんじゃないかな」という事でした。9重奏なのに、スモールコンボのようにきれいに響くんですよね。このホーンライティングの技術が
ウディ・ハーマン 級の素晴らしさでした。
3つのセッションすべてに参加しているのは、マイルスのほか、ジェリー・マリガン(バリトン・サックス)とリー・コニッツ(アルト・サックス)、ジョン・バーバー(チューバ)。2つのセッションに参加しているのは
MJQ のジョン・ルイス(ピアノ)。あと、アレンジャーとして
ギル・エヴァンス やガンサー・シュラーも参加していたみたいです…やっぱりこれ、若手ミュージシャンのジャズ・アレンジの勉強会だったんじゃないかな(^^)。
いまではこういう50年代初頭のウエストコースト・ジャズ風のサウンドって、歴史の中に埋もれてしまいましたが、でも50年代初頭の合衆国の東海岸や西海岸の都市部って、とんでもなく幸福な地域だったと思うんですよね。労働者もスーツ着てカッコいい帽子かぶって摩天楼の中を颯爽と歩いて、夜になるとジャズクラブに行ったり映画を観たりデートしたり、家族がいればディナーを楽しんだり、ラジオもテレビも面白くて、景気も良くて…みたいな。子供や青年はポップス聴いてたかもしれませんが、当時は大人のための文化もちゃんと残っていて、音楽で言えばそのひとつがジャズ。ジャズだって大衆文化には違いありませんが、それでも今みたいに「スター・ウォーズ」みたいなガキくさいものを大人が見るなんてところまで落ちていなかったと思うんですよね。大衆文化なりにも大人のラインを持っていた、みたいな。そういう大人文化の空気を感じる心地よい音楽でした。もろに自分の趣味というわけではないのに、妙に好きなんです、このレコード(^^)。
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