
スティーヴン・キング
『恐怖の四季』秋冬編がまあまあ面白かったもので、春夏編も読んでみました。それがこの文庫本で、日本版のタイトルは『ゴールデンボーイ』でした。「ゴールデンボーイ」は夏編にあたり、この本には春編の「刑務所のリタ・ヘイワース」も収録してありました。
「刑務所のリタ・ヘイワース」は、映画『ショーシャンクの空に』の原作です。スティーヴン・キングって、ホラー映画の原作者だと思ってましたが、この短編~中編小説4つのうち3つが映画化され、うち2本がホラーではない名作扱いってすごいです。
「刑務所のリタ・ヘイワース」は、無実の罪で終身刑を喰らってしまった男の話です。映画『ショーシャンクの空に』とほとんど同じでした。原作なんで、同じなのは当たり前ですが、原作小説と映画がけっこうかけ離れたものってそれなりにあるじゃないですか。邦画の
『寒椿』なんて、似ても似つかない作品だったし(^^;)。違いは微々たるもので、主人公の無実を証明できるトミーが殺されるわけではない事と、主人公の前に図書係を務めていた人の描写がちょっと違うぐらい。ここまで同じだと、小説か映画のどちらかを見てれば十分かも。しいていえば、小説の方が、19年も刑務所に入ってるというのが、伝わってきやすかったです。映画よりも小説の方が文字が多いので、色々と表現しやすいのかも。
「ゴールデンボーイ」は、少年と、近所に住む元ナチの将校の老人が交流しているうちに、お互いに狂気に見舞われ、人殺しに走っていくというもの。お、『恐怖の四季』4作の中で、やっとスティーブン・キングっぽい小説が出てきました。でも、長い割にはあんまり面白くなかった(^^;)。まったく知りませんでしたが、これも映画化されたみたいです。
読んでいて思ったのは、それなりに面白かったんですが、そもそも小説って、面白い面白くないというだけのものならもう興味を持てない年齢になってしまったのかも知れないな、という事でした。面白いだけだと娯楽にしかならないし、娯楽にしては時間がかかるというか手間がかかるというか。僕は子どものころから本が好きで、小説もけっこう読んだ方だと思うんですが、高校生ぐらいからあんまり読まなくなりました。小説じゃなくて、科学や学問の本の方が圧倒的に面白くってね。だって、「宇宙がどうやってできてるか」なんていう物理の本は、本当に宇宙がどう出来ているかを教えてくれるわけだし、心理学の本を読むと人間の精神構造が理解できてきたりというわけで、そういう本の方が小説より全然面白いと感じるようになったんですよね。小説でも、いつか紹介した
カミュの『異邦人』みたいに、重要なテーマを扱ったものはいいのですが、人が捕まって脱走したとか、人を殺したくなったとかのフィクションって、余暇を潰す娯楽程度にしか感じられなくなった自分がいました。この本も確かに面白くはあったので、若いうちに読んでいたらもっと楽しめた1冊だったかも知れません。
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