
日本コロムビアがリリースした
山本邦山さんの録音、「人間国宝」シリーズは本曲を中心としたものでしたが、
こちらの「日本の音」シリーズはコンテンポラリー系でした。だって、1曲目からして山下洋輔に
富樫雅彦というフリージャズ寄りなミュージシャンとの演奏ですし(^^)。1曲目にこれを持ってくるって、ジャズとのコラボレーションアルバム『銀界』の大ヒットがあったからなんでしょうね。このCDは5曲収録で、山本邦山作曲が2曲、現代音楽作曲家の広瀬量平さん曲が2曲と、作曲面からみてもやはりコンテンポラリー色の強い尺八CDでした。編成は、独奏、ジャズとの絡み、箏(沢井忠夫)とのデュオ、尺八三重奏、オーケストラとの協奏曲がそれぞれ1曲ずつでした。
心を持っていかれたのは、アルバムの最後に入っていた広瀬量平作曲、N響演奏の「尺八とオーケストラのための協奏曲」でした。
現代音楽と純邦楽のコラボレーションで尺八を含む作曲と言えば、武満徹&横山勝也と広瀬量平&山本邦山のコンビが有名ですが、さすが長年関わってきた両者だけあって、ぱっと書き下ろしたなんて言う安易なコラボレーションではなく、音楽が見事に鳴り響いていました!オケのサウンドは思いっきりコンテンポラリーで、かといって難しだけではなくて実に音楽的。尺八も妙に西洋音楽ナイズされた表現に引き込まれるのではなく、尺八音楽のあの独特のアイデンティティを保てているように感じました。これは『ノーヴェンバー・ステップス』並みに素晴らしいと感じました。
一方で、山下洋輔&富樫雅彦さんとのコラボレーションはつまらなかった(^^;)。結局、邦楽器のスケールを調べてちょっとだけ和声づけをして、あとはセッション…な~んていう程度で、何百年にわたって「ここは揺りをいれて、ここはもっと息を強くして…」と積み上げ、不要物をそぎ落としてきたものと同等のものを作れるほど音楽は甘くないという事なんでしょうね。僕は、前衛やコンテンポラリーな音楽が好きなくせに、純邦楽&ジャズとかジャズ&クラシックとかロック&クラシックとかそういうのが趣味に合わなかったりします。今回、その理由がちょっとだけ分かった気がしました。一緒にやっただけという薄っぺらいものが多いという事なんだな(^^;)。同じことを、沢井忠夫さんとのデュオにも感じました。
でも、コラボレーションへの挑戦自体は良いことだと思ってます。純邦楽って家元制だったり、尺八に至っては本曲が指定されたりするので、悪い意味で専門化するというか、純邦楽以外の世界が存在しなくなってしまうと思うんです。だから、音楽以外の社会も文化も関係なしになって、それが閉塞したオナニーになってしまい、それに危機感を覚えて山本邦山さんや沢井忠夫さんや山田千里さんのような人たちが積極的に動いた時流が生まれたんでしょう。だから問題は外に開こうとしたことではなく、開いたあと、どれぐらい深い作業を出来たかという所だったんではないかと。このCDで言うと、その失敗例が洋輔さんらとの絡みで、成功例が広瀬量平さんとの尺八協奏曲だったんじゃないかと。
というわけで、このCDは最後に入っている広瀬量平&山本邦山による「尺八協奏曲」を聞くためだけにずっと持っていて、それだけでもおつりがくる素晴らしさでした!
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