リヒャルト・シュトラウスの歌曲を集めたCDです。ソプラノはキリ・テ・カナワ。オーケストラ伴奏は「4つの最後の歌」で、
ショルティ指揮ウィーンフィル。残りはショルティのピアノ伴奏の歌曲でした。指揮者って何かの楽器がうまかったり作曲家だったりするもんですが、ショルティがピアノを弾くと知りませんでした(^^)。
まず、
「4つの最後の歌」に猛烈に感動しました!最初にこのCDを聴いた時の感動は言葉に言い表せないほど。今回しばらくぶりに聴いても、やっぱり鳥肌を禁じ得なかった、涙が出そう…。パフォーマンスもスコアも素晴らしかったですが、まずスコアに感動!R.シュトラウスの曲って、初期は普通の機能和声でシンプルな調なんですが、後期になると調感はあるものの「え?これって何調なの?」みたいにふわふわと漂っていくような曲を書く時があります。「変容」とかね。この曲の第1曲「春」もそんな感じ。ものすごく官能的で、しかもフワーッと不思議なプログレッションです。そして、ショルティ&ウィーンフィルの演奏がすげえ!録音が素晴らしい事もあるんでしょうが、理屈でなく胸にグッと来てしまうんです。これぞオーケストラの魔術、心が震えるとはこの事だよ…。
このように、音だけでも鳥肌ものなんですが、
「4つの最後の歌」は、すべて死がテーマで、この詩がまた胸に来る…。最後の「夕映え」がアイヒェンドルフの詩で、残りがヘッセの詩なんですが、第2曲「9月」なんて、死がテーマの詩だと知らなければ、意味が全然変わってきそうです。「薔薇の下にしばらく夏は留まり、平安を憧れる」という一節があるんですが、この夏って、要するに生とか人生という事の気がします。それが静かに閉じていく、みたいな。穏やかな曲なんですが、穏やかに命が終わるというイメージ、こんなの泣くだろ…。
他のピアノ伴奏のリートもいい曲が多かったです。でも、「4つの最後の歌」の管弦が凄すぎて、ピアノ伴奏では太刀打ちできないと感じてしまいました。実は僕、この演奏を聴くまで、歌曲はピアノ伴奏に限ると思ってたんです。実際、初期ロマン派なんてピアノ伴奏が多いですし、古楽でも歌曲ってリュートとかシンプルな伴奏が多いじゃないですか。でも管弦伴奏でもこれほどすごいとは。。
そんな具合で、僕にとっては歌曲そのものの印象が変わった決定的なCDでした。ソプラノの
キリ・テ・カナワさんはニュージーランド生まれでヨーロッパ人とマオリ人のハーフ。イギリスのオペラ界で頭角を現した人だそうです。僕はクラシックの歌手で「これはいまいちだな」という人を聴いた事がないんですが、彼女もやっぱり素晴らしかったです。ただ、「4つの最後の歌」だと、僕はこの後にバーバラ・ボニーさんやジェシー・ノーマンなどなど、色んなソプラノを聴きまして、そっちがまた凄かった…。比較すると、カナワさんはヘッドヴォイスが抜けきらないのかな?でも、そんなの評論しようと思えばそう言えるというだけのことで、聴いてる時は圧倒されて聞き惚れていたぐらいに素晴らしかったです(^^)。
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