
1968年録音という事なので、恐らくアンソニー・ブラクストンのデビュー作です。タイトル通り、当時のフリージャズのアルバムとしては、相当に作曲色が強い感じです。しかし、ブラクストン自身のアルト・ソロは作曲の微塵もない、凄まじい光速プレイ!
アンソニー・ブラクストンという人は、シカゴ出身。シカゴというのは、かつてはアル・カポネが政治家から何まで買収して町の帝王になった街であるとか、映画にもなっているほどの暗黒街のメッカだったり、そんな怪しいナイトクラブで演奏される音楽が他でもないブラック・ジャズであったりと、独特なムード漂う所みたいです。行ったことはないんですが…。ロックでも、デトロイト周辺のロックって、ちょっと他と違う感じですよね。日本でいうと、一昔前の川崎とか、西成とか、あんな感じなのかな?で、70年代が近づくと、デトロイトのジャズ系のミュージシャンは組織を作って、ニュー・ジャズの新たな流れなんていうのを作り出そうと画策します。一番の成功例はアート・アンサンブル・オブ・シカゴで、一番の実力者はアンソニー・ブラクストン、という感じでしょうか。
しかし、こういう組織というのは、得てしてミュージシャンのレベルとか、組織としての強度というのが疑わしかったりするんですよね。このアルバムには、良い意味でも悪い意味でも、そういった側面が出ています。ブラクストン自身としては初リーダー作という事で、自分のプレイにしてもコンポジションにしても力が入りまくり。力が入りすぎて、ハッタリっぽい所すらあるぐらいです(^^)。しかし、共演者がブラクストンのレベルに追い付きません。なんというのかな、「ああ、多分ここはこういう風にしたかったんだろうな…」みたいに思える所がたくさんあるんです。しかし、共演者にそれを実現するだけの技術がない。
こういうジレンマって、前衛ジャズ方面では常に付きまとう問題だと思います。コンポジションやコンセプトを具体化できるミュージシャンと使おうとすると、そういう人は他も忙しいのでパーマネントなバンドにすることが出来ず、どうしてもセッションっぽいものになっちゃう。パーマネントなバンドで作り上げていくと、音楽自体はまとまりを増していくけど、それぞれの演奏者の技量に問題が残っちゃう。構想が素晴らしく、また主役のブラクストンの演奏も絶品だけど、共演者の技量が追い付かなかった、大名盤になり損ねた好盤。それが、本作なんじゃないかと思います。あ、こんな事書きましたが、素晴らしい音楽ですよ!!
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