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『ブレーズ / ル・マルトー・サン・メートル他』

boulez_LeMartteauSansMaitre.jpg 現代音楽のステレオタイプに近い作曲家といえば、ブレーズなんじゃないかと思っています。日本だとブレーズは「前衛三羽烏」なんて言われて、また「セリー主義」という現代音楽のメインストリームの代表的作曲家でもあります。というわけで、構造面でもサウンド面でも、ブレーズさんの作品はすごく「現代音楽的」なんですよね。そして、このCDに収められている“le marteau sans maitre (主のない槌)”は、ブレーズの代表作なんて言われています。このディスクには、他に、「ピアノのためのノタシオン」というピアノ独奏曲と、「2台のピアノのためのストリクチュール第2集」という2台ピアノの作品が収められています。結論から言うと、ブレーズのCDを1枚だけ聴くとしたら、僕は間違いなくこのCDを選びます

 まずは「主のない槌」。この作品は、ルネ・シャールというシュールレアリスム系の詩人が書いたテキストが基になっています。で、それをメゾ・ソプラノが歌うんですが、この配置が面白い。詞は「激怒する職人」「孤独な死刑執行人」「美しい建物と様々な予感」の3つに分けられているんですが、これに前奏がついていたり演奏があったりという訳で、音楽全体は9つに細分されています。そして、この配置に関する構造化のシステムが…セリーなんですね。で、セリーシステムは、こういった楽曲様式のみならず、音楽の作曲技法にまで及びます。セリーというのは、根本的に和声法というよりは対位法的な視点からの作曲様式なので、そこから生まれてくるサウンドというのが、よく我々が聴くような音楽とは全然違います。更に、調的重力を否定すらしているので、一歩間違えると、デタラメに聞こえるんですよ。いや、フリージャズを聴くと分かるんですが、デタラメに楽器を演奏すると、デタラメに聞こえないんですよね。本当にデタラメに聴こえるようにするためには、相当に綿密に作曲しないと難しいんですが…この曲の1曲目は、綿密に書かれたがゆえに生じる「デタラメ」の典型なんじゃないかと。で、僕はそれが良い音楽とは全然思いません。無調や12音やセリー音楽の際どさは、ここにあると思います。しかし、この“主のない槌”の場合、そのメゾ・ソプラノが全体を繋ぐ見事な役割を果たすのです!歌は線的に音を繋ぐ楽器ですので、まずデタラメにはなりません。更にこの作品の場合、明確なテキストもあるので、音楽の時間的進行が見事に担保されているのです。つまらない音楽になりがちなセリー音楽を、大変に面白いものにした名作なんじゃないかと。
 また、楽器編成も面白いです。先に言ったメゾ・ソプラノの他が、6つの楽器(アルト・フルート、ヴィオラ、ヴィブラフォン、シロフォン?、ギター、打楽器群)です。そしてこれらの楽器が、単旋律から次第にサウンドのアンサンブル的な重なりが目立つようになる順に配置されていきます。言い換えると、だんだん音の重なりが多くなって面白くなっていって、また音楽の形がはっきりしてくるんですね。 あ、そうそう、ということはですね…逆に言うと、音楽が始まってしばらくは最初は全然面白くないという事でもあります(^^;)。でも、4部あたりから加速度的に面白くなっていくので、最初の7~8分は我慢して聞きましょう(^^)。まあ、そういう音楽上の構造主義的な作品ではあるので、サウンドの印象だけで音を捉えているとすごくつまらない音楽に思えちゃうかと思うんですが、こういった構造に注目して聴くと、実に良く出来ているというか、さすがに戦後の作曲界の主導者のひとりというだけのことはあるという完成度です。そうそう、これはブレーズ自身が指揮をしているという意味でも、価値ある録音なんじゃないかと。

 さて、さんざんブレーズ代表作といわれている「主のない槌」の事ばかり書いてきましたが…僕が少しだけピアノを弾くからかもしれませんが、ブレーズの作品で最も素晴らしいのは、ピアノ曲だと思っています。このディスクに収められている「ピアノのためのノタシオン」なんて、はっきりいって絶品です。これはセリー主義以前に書かれた作品なのですが…いやあ、本当に素晴らしい!!一方の「2台のピアノのためのストリクチュール第2集」は、今度はブレーズがセリー主義の後に書いた作品で、「管理された偶然性」なんていう視点から書いた曲じゃなかったかな?いやあ、これも素晴らしいんですよね。。やっぱりブレーズのピアノ曲は絶品だなあ(^^)。理由は意外と単純な所にあって…ほら、ピアノって、残響が残って、いろんな音が重なるじゃないですか。セリーみたいな線(ものによっては点)の音楽の場合、どうしてもサウンドが貧しくなっちゃう方向に行っちゃうと思うんですが、ピアノ曲だと、意図してかどうかはわからないんですが、それが自ずと解決されちゃう。で、現代音楽的な魅力と楽器本来の音の美しさのどちらも引き立つ結果になってるんじゃないかと。…単純すぎますかね(^^;)。



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Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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