パレストリーナと同じ
ローマ楽派の作曲家をもうひとり。エミリオ・デ・カヴァリエーリです。
カヴァリエーリはルネサンス音楽からバロックへと変化していくその瞬間、つまり作曲技法がポリフォニーからモノディへと変化するその瞬間を生きた作曲家で、カヴァリエーリ自身は自分が新様式の生みの親だと主張したそうです。でも、カッチーニも同じ主張をしたので、言い争いになったそうです(^^;)ミニクイネ。そうそう、
オラトリオを最初に書いたのもカヴァリエーリと言われています。
これは、当時のローマ・カトリック教会の復活祭(イースター)に先立つ3日間に詠まれるようになっていたエレミア(旧約聖書に登場する紀元前7~6世紀に生きた預言者で、バビロン捕囚を実体験している)の哀歌を教会音楽化したものです。
まず、
ジェズアルド・コンソート・アムステルダムの合唱が見事!完璧で、ため息が出てしまいました。優れた西洋の声楽でいつも驚くのは、これが当たり前と思って聴いてしまうのですが、よく考えたら、これ、ピアノやオルガンじゃなくって人の声なんですよね…。なんでこんなに正確なピッチで音を出し続ける事が出来て、しかも一糸乱れずに合わせられるのかと驚いてしまいます。そしてこのアンサンブル、マドリガルを中心に歌うようなのですが、ミサ曲やカンタータや
モテットという宗教曲も得意なんだとか。録音もメッチャクチャ綺麗で、非の打ちどころなしといった感じです。
そして、
「エレミアの哀歌とレスポンソリウム」。音楽的には、通奏低音の使われた初期の作品のひとつで、正規の典礼音楽に数字つき低音が使われた最初の作品だそうです。このCDでは、チェンバロやチェロ(ヴィオラ・ダ・ガンバ?)や古楽フルートみたいな音も聞こえて、なるほどバロック音楽という感じ。このCDは2枚組なんですが、1枚目が1600年版の「エレミアの哀歌」とその「レスポンソリウム」。2枚目が1599年版のそれでした。
テキストですが、哀歌が3日分(イースターの前の木曜、金曜、土曜。1599年版は木曜と金曜の2日分だけ)と、それに対するレスポンソリウム(応唱)がつけられてました。レスポンソリウムの方はイエスが出てくるので、「ん?旧約なのにイエスが出てくるの?」と思ったら、レスポンソリウムというのは、新約聖書の観点から歌われる応答なんだそうです。へ~、おもしろいなあ。内容は、旧約の方の哀歌が、本当にバビロン捕囚とかエルサレムの腐敗とかが歌われていて、エレミアという人が架空ではなくて、本当に生きていた人だというのが驚き。
旧約聖書に出てくる人が、本当に詩を書いていて、それが今も残って、いまだに謝肉祭の前にこの曲が歌われてるって、すごくないですか?いや~、口承じゃなくて書いて伝えたのが、ヨーロッパ文化の圧倒的な強みだったんだろうなあ。そして、僕はローマ楽派というとパレストリーナとカヴァリエーリの音楽しか(たぶん)聴いた事がないんですが、ルネサンスからバロックにかけてのこの人たちが作った音楽が、今もローマカトリックで歌われ続けているところに歴史の重厚さを感じて、グッときました。素晴らしかったです!
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