大バッハと同時代に活躍したドイツ・バロックの巨匠に、
ヘンデルという作曲家がいます。当時は
王室からも手厚く保護されたヘンデルの方が富も名声も得ていたそうです。当時のバッハは教会のオルガン奏者で、一方のヘンデルはオペラなどの劇場音楽の作曲家ですからね、金持ちに着いた方が有利という教訓でしょうか(^^;)。バッハとヘンデルのふたりが、バロックの色んな様式をまとめあげたなんて言われてますが、僕はバッハばかりを聴いていて、ヘンデルはこの「メサイア」と
「水上の音楽」ぐらいしか知らないんです。そのメサイアでさえ、「ハ~レルヤッ、ハ~レルヤッ、ハレル~ヤッ、ハレル~ヤッ、ハレエ~ルヤ~」の所しか覚えてないし。というわけで、聴きなおしてみる事にしよう、そうしよう。
「メサイア」はオラトリオです。
オラトリオというのは、キリスト教を題材にした物語状の劇場用管弦伴奏つき声楽作品です。物語があるのでCDで聴くとオペラっぽいですが、芝居はなく、あくまで音楽だけ。そしてヘンデルさん、当たり前ですがバッハと書法がすごく似ています。カノンやフーガはバッハが確立したんじゃなくて、その時代にあった作曲技法のひとつをバッハやヘンデルが洗練させていった感じなんでしょうね。面白いのは、
バッハもヘンデルも作曲技法がそっくりなのに、バッハは重厚で深い感じがするのに、ヘンデルは軽やかで楽しげです。
「メサイア」なんてオラトリオなのに、まるで古典派の舞踊曲のように楽しく優雅に聴こえる事もしばしば。なるほど、ここに教会オルガン奏者&音楽学者でつましい生活を送っていた人と、貴族に保護されて派手な生活をしていたオペラ作家の差が出てるのかも。
ルカ伝、マタイ伝、イザヤ書など、すべて聖書からの引用で構成されているのに、エグいセリフがありません。バッハの宗教曲では「マタイ受難曲」も「ヨハネ受難曲」も、キリスト殺害から昇天までに絞って、そこをノーカットで思いっきりえぐく扱ってるのに、こっちは「見よ、世の罪を取り除く神の子羊」とか、えぐい表現は避け、「私たちは救われる」みたいな言葉だけを選び出しているよう。これを聴いたキリスト教徒を喜ばせる事を意図して作られたかのようにすら思えました。最後も、バッハはえもいわれぬ救いのようなところに抜けるのに、ヘンデルは楽しげにジャ~ンって終わります。なるほど、このエンターテイメントな感じが、若いころの僕がこの曲を受け付けられなかった理由なんだな。あ、でもこのCD、演奏も音もすごく良くて、素晴らしいと思います(^^)。
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