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Category: CD・レコード > ジャズ   Tags: ---

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『Lee Konitz with Strings / An Image』

Lee Konitz_An Image これほど素晴らしいジャズ・アルバムはちょっと無い…いや、これをジャズと呼んではいけないのかも。1958年にアルト・サックス奏者のリー・コニッツが発表したウィズ・ストリングス…というか、アンサンブルものといった方がしっくり来るアルバムです。ジャズ側のバンドはサックス、ピアノ、ギター、ベース、ドラムで、これにストリングス(と、たまに他の楽器も)が被さります。ストリングスはバックで和弦を被せるのではなく室内楽程度の小編成(ダブカル?)で、見事なアンサンブルを奏でていました。これが素晴らしかった!

 1曲目「ラウンド・ミッドナイト」からして息を呑むほど。グロッケンとヴァイオリンだけがユニゾンでイントロ、それが終わるとコントラバスのピチカートだけが鳴り響いてリー・コニッツのサックスがテーマメロを演奏、そのテーマをチェロが引きつぎ、Bパートから弦が重なり…アレンジがクラシック・アンサンブルばりの見事さなのです。しかも、音を分厚くせずに最小限で幾つものラインが重なっていくので、まるでポリフォニーのよう。アレンジってこういうものの事を言うんだよな、ジャズというジャンルでこれ以上のアレンジはなかなか聴けないです。
 この素晴らしさは2曲目以降も続き、お世辞ではなくすべてが名曲、名アレンジ、名演でした。バロック期のコンチェルトのような3楽章制の「Music for Alto Saxophone and Strings」などなど、これはエンターテイメントではない芸術音楽といってよいのではないかと。

 スコア・リーディングやアドリブの対応能力といったリー・コニッツのミュージシャンとしてのレベルの高さや、そのサブトーンがストリングスとの親和性が高かったこともあるでしょうが、このアルバムの本当の主役はすべてのアレンジと、このジャズと近代クラシックを融合したアルバムに見合った曲を幾つも書き上げたビル・ラッソだと思いました。ラッソとリー・コニッツはスタン・ケントン楽団で一緒で、どちらもレニー・トリスターノからレッスンを受け、バッハのインベンションやベルクドビュッシーを一緒に演奏していたそうです。ジャズが世界に知られるようになった20世紀初頭って、ラヴェルストラヴィンスキーが現役で素晴らしい作品を書いていた頃なんですよね。
 サーカスのショーバンド程度に過ぎなかったジャズが、優れた音楽能力を持ったビッグバンドを生むところまで進化した先で、クラシックの卓越した書法と接触するのは時間の問題だったんでしょう。最初にそこまで行き着いたのがウディ・ハーマン楽団やリー・コニッツ、ジミー・ジュフリーといったレベルの高いミュージシャンたちだったのでしょう。これが主流にならなかったのはいくつか理由があったのでしょうが、そのひとつは音楽がつまらなかったからではなく、ジャズと近代クラシックを融合した音楽を書き、演奏できるレベルにあるミュージシャンが多くなかった事にあるんじゃないかと。驚異のサード・ストリーム・ミュージック、今は忘れられかけたアルバムかも知れませんが、これはベートーヴェンの悲愴ソナタやバルトークの弦楽四重奏曲第4番のように、ずっと聴き継がれるに値する大傑作じゃないでしょうか。

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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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